戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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さぁて、舞台はフロンティア!雷も目覚めましたし、暗かった空気をかなぐり捨てていきましょう!



皆さんはどの声優さんの声で再生していますか?意外と気になります。


フロンティア起動

 モニターが浮上したフロンティアを捉える。

 

「これがF.I.S.の求めていたフロンティア……!」

「海面に出ている部分は、全体から見てほんの一部。フロンティアと呼ばれるだけのことはありますね」

 

 藤尭が解析したフロンティアの全貌を見て言う。

 その時、警戒音が鳴る。

 

「新たな米国所属の艦隊が接近しています」

「第二陣か……」

 

 丁度、日本政府から通信がつながってきた。ここに連絡をしてくる政府の人間など、斯波田を覗いて他にはいまい。前と同じようにそばを啜っている。

 

「まさか、アンクル・サムは落下する月を避けるためフロンティアに移住する腹じゃあるめぇな?」

「我々も急行します」

 

 そう伝えた。

 

○○○

 

 潜水艦のメディカルルーム、そこで神獣鏡から解放された未来は治療を受けていた。目立った外傷はなかったが、念には念を入れてだ。

 スライドドアの開く音がして、彼女の親友の一人が駆け込んできた。

 

「未来ッ―――!」

 

 そして彼女に抱き着く。流石の未来もこれには少し驚いたようだ。続いてクリスからの銃撃を受け、頭に包帯を巻いた翼と、タブレットを持った友里が歩いて入室した。

 

「小日向の容態は?」

「リンカーの洗浄も完了。ギア強制装着の後遺症も見られないわ」

「よかったぁ!ほんとに良かったぁ~」

 

 響の喜ぶ顔を見て、未来の頬が緩む。翼も軽く微笑んだ。

 

「響……その怪我……」

「うん」

 

 響は何でもないように答える。

 

「私の……私のせいだよね……!」

 

 未来は口元に手を当て、涙を流す。結局大切な人を傷つけてしまった。しかし、塔の響は彼女を責めるようなことはしない。

 

「うん!未来のおかげだよ」

「へ……?」

 

 顔を上げ、響のほうを見る。

 

「ありがとう、未来!」

「響……?」

 

 首を横に振り、

 

「私が未来を助けたんじゃない、未来が私を助けてくれたんだよ!」

 

 すると、友里がタブレットを操作し、モニターに響のレントゲン写真を映し出した。

 

「これ、響……?」

 

 以前の写真ではガングニールの欠片が彼女の体を侵食している様が映されていたのだが、今写っている写真にはそういった物が一切見られない。体内に残っていた欠片ごと消滅していた。

 なぜこのようになったのか、友里が理由を説明する。

 

「あのギアが放つ輝きには、聖遺物由来の力を分解し、無力化する効果があったの。その結果、二人のギアのみならず、響ちゃんの体を蝕んでいたガングニールの欠片も除去させれたのよ」

「ふぇ……?」

「小日向の強い思いが、死に向かって疾走するばかりの立花を救ってくれたのだ」

「私がホントに困ったとき、やっぱり未来は助けてくれた!ありがとう!」

 

 そう言って両手で未来の手を握る。

 

「私が……響を……」

 

 曇っていた彼女の顔にパッと笑顔が花開く。

 

「うん!」

(でも、それって……)

 

 事の結果を理解した未来は、暗い表情で俯く。

 

「だけど、F.I.S.は遂にフロンティアを浮上させたわ。本当の闘いはこれからよ」

「F.I.S.のたくらみなど、私一人で払って見せる。心配など無用だ」

「一人?」

 

 未来が周囲を見渡し、

 

「そういえば雷とクリスは?」

 

 全員の表情が曇り、翼は軽くそっぽを向く。翼に銃撃を加え、寝返ったのだから。

 響が俯いたまま、

 

「雷は……まだ……」

 

 戦えない。そう言おうとした次の瞬間、友里の持っていたタブレットからピコン!と音が鳴った。全員がそれに目を向ける。友里がメールを確認し、一瞬だけ目を丸くした。それと同時に廊下からけたたましい音を立てながら、誰かがこっちに向かって疾走してきていた。

 友里以外の全員が急に聞こえてきた足音に驚き、扉に目をやる。そして扉が開き、そこにいたのは、

 

「はぁっ……はぁっ……ふぅ……。響!未来!ただいま!」

 

 膝に手を当て、深く深呼吸して呼吸を整えている雷だった。そして呼吸を整えた後、彼女は満面の笑みで二人に跳びついた。

 

「あ、雷?!」

「目が覚めたの?!」

「うん!心配かけてごめん!」

 

 翼も目を丸くして、

 

「轟……もう、大丈夫なのか?」

「はい!心配をお掛けしました!」

 

 そう答えた後、雷は二人から体を離す。そして、真剣な顔をして、

 

「未来、ごめんなさい」

 

 頭を下げた。

 

「へ?!」

「一番傷つけたくなかったのに、あんなことしちゃって。その後も連絡とらないで、逃げてたから……」

 

 頭を下げたまま謝罪を続ける雷の体を、今度は未来が優しく抱きしめた。

 

「未来?」

「ううん。大丈夫、私は気にしてないよ。あの時一番しんどかったのは雷だから、追い詰められちゃうのは仕方ないよ」

「許してくれてありがとう。未来」

 

 未来よりもさらに怪我人らしい包帯の捲かれた腕で未来の体を抱き返す。

 

「ごめん、もっとこうしていたいけど、響に言いたいことがあるんだ」

「私?」

「うん。いいよ」

 

 そう言って雷は未来の体から離れ、響と相対する形で向き合う。

 

「今度の作戦で、やってほしいことがあるんだ」

「やってほしいこと?」

「うん。だから耳を貸して……」

 

 響の耳元で雷がささやいた。

 

「……ッ?!ほんとに、いいの?」

 

 心配そうにしている響に対して自信満々の笑みをたたえ、

 

「私を信じてよ」

 

 そう言い切った。

 

○○○

 

 F.I.S.とクリスはエアキャリアをフロンティアに着陸させ、その中枢へと向かおうとしていた。

 

「こんなのが海中に眠ってたとはな……」

「あなたが望んだ新天地ですよ」

 

 そう言ってクリスはフロンティアを見上げた。脳裏に翼を打った時のことが蘇る。

 

『仲間を裏切って、あたしたちに着くというのデスか?』

 

 拳銃に変形させたアームドギアをチラつかせ、

 

『こいつが証明書変わりだ』

 

 切歌は困惑し、

 

『しかしデスね……』

『力を叩き潰せるのは、さらに大きな力だけ……。アタシの望みは、これ以上戦火を広げないこと。無駄に散る命は一つでも少なくしたい』

 

 しぐさや声色を見る限り、その言葉は本物だ。切歌はクリスを正面から見据え、頷いた。

 フロンティアの中をクリスを先頭にして進んでいく。敵側から裏切ったのだ、先頭を歩かせて罠がないかを確認するのは当然と言える。

 そんな彼女にマリアが問う。

 

「本当に私達と戦うことが、戦火の拡大を防げると信じているの?」

 

 クリスは目だけで後ろを向いて、

 

「フン。信用されてねぇんだな。気に入らなければ、鉄火場の最前線で戦うアタシを、後ろから撃てばいい」

「もちろん、そのつもりですよ」

 

 クリスを矢避けにして進むうちに、フロンティアの中枢へと到達する。

 ナスターシャが、

 

「着きました。ここがジェネレータールームです」

「何デスかあれは……?」

 

 紋様が描かれた石でできた球体を見て切歌が言った。

 ウェルがネフィリムの心臓部の入ったトランクケースをもって足早に進んでいく。そして球体のもとに近づくと、ケースから心臓を取り出し、球体に押し付けた。すると、心臓部から血管のようなものが伸び、ジェネレーターが起動する。そして球体は宙に浮遊し、エネルギーを供給し始めた。金色の輝きが流れていく。

 マリアが驚愕した。

 

「ネフィリムの心臓が……?!」

「心臓だけとなっても、聖遺物を喰らい取り込む性質はそのままだなんて……。卑しいですねぇ……」

 

 そう言ってウェルは邪悪に下卑た笑みを浮かべる。エネルギーを供給されたことでフロンティアには緑が現れはじめ、本来の姿を取り戻していく。

 輝く球体の様子を見て、

 

「エネルギーが、フロンティアにいきわたったようですね……」

「さて、僕はブリッジに向かうとしましょうか……。ナスターシャ先生も、制御室にて、フロンティアの面倒をお願いしますよ」

 

 と、言って去っていった。

 切歌の脳裏に、調の言葉が蘇る。

 

『ドクターのやり方では、弱い人たちを救えない』

「そうじゃ無いデス。フロンティアの力でないと、誰も助けられないデス!調だって助けられないんデス!」

 

 広いジェネレータールームに、切歌の叫びが響いた。




サテ、問題が発生しました。
最後のヘルアンドヘブン。彼女は何処に手をつなげばいいのでしょう?

アンケートしまーす!

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