戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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そろそろ二期も終わりますね。
オリジナルオートスコアラーの設定を固めていきます。まあ、出番はミカと同じくらいなのですがね。


肥大化する欲望

 独房を映す監視カメラに、俯いた調の姿がうつる。

 気が沈んでいるように見えるが、実際には雷の助言で響にどうぶつかるかを考えている。

 

「助けてほしい。そう言ったのか?」

 

 そんな調の様子を見ながら、弦十郎は緒川からの報告を聞いた。調の言葉は、雷が目覚める前に聞いたものだ。彼はシュルシャガナのペンダントを弦十郎にわたす。

 

「はい。目的を見失って暴走する仲間たちを、止めてほしいと」

「うむ……」

 

 そんな時に指令室のドアが開き、響と未来を先頭に雷と翼、友里が姿を現した。すでに目が覚めているのを緒川から聞いていたため、雷が居ることを驚いてはいない。当然、彼女の話したウェルの計画の読みも話している。しかし、未来がそこにいるのが問題だった。

 

「まだ安静にしてなきゃいけないじゃないか!」

「ごめんなさい。でも、いてもたっても居られなくて……」

「クリスちゃんがいなくなったと聞いたら、どうしてもって……」

 

 弦十郎は少女たちの主張にとりあえず納得し、

 

「確かに、響君とクリス君が抜けたことは、作戦遂行に大きな影を落としているのだが……」

「でも、翼さんに大事が無かったことが本当に良かった。致命傷を全て躱すなんて、流石です。それに雷ちゃんの目が覚めたのも、不幸中の幸いね」

 

 友里の言葉を聞いて、翼が眉を顰める。

 

(躱した?あの状況で雪音の射撃を躱せるものか。だとしたら、あれは……)

 

 そんな彼女の顔を、雷が横眼で見ながら予測を立てる。

 

(友里さんの話と翼さんの表情を見る限り……。案外早く決着がつくかもしれない) 

 

 だが、彼女はその予測にほとんど確信を持っていた。後は響が私を信じてくれれば全てが万事解決する。そう思うと、口角が自然に上がってきた。ニヨニヨと不思議な笑い顔になっていたところを、藤尭の声が真剣な顔に戻した。

 

「フロンティアへの接近は、もう間もなくです!」

 

 モニターがその威容を映した。

 

○○○

 

 フロンティアのブリッジにまでエレベーターのようなものでやって来たウェルとマリアは、ここの中心にある紋様の刻まれた球体のもとに歩を進めた。

 ウェルが懐から薬液の入った注射器を取り出す。

 

「それは……?」

「リンカーですよ」

 

 ことも何気に言い、自らの左腕の白衣を捲る。

 

「聖遺物を取り込む、ネフィリムの細胞サンプルから生成したリンカーです」

 

 いびつに表情を歪めながら、ためらいもなくそれを打ち込む。ネフィリムの細胞を打ち込んだ彼の腕は、瞬く間に異形の物へと変質する。ネフィリムと人間のはざまの腕へと変わり果てていた。

 その手で球体に触れると、聖遺物であるフロンティアを取り込み、我が物へと変えた。パネルのようなところに文字の羅列が走っていく。

 

「ふふへへッ……早く動かしたいなあ……。ちょっとくらい動かしてもいいと思いませんかぁ?ねぇ、マリア」

「っ」

 

 パネルのようになっている石の一つから、アメリカ艦隊の映像が表示された。

 丁度その時、ナスターシャは制御室でエネルギーのコントロールを行なっていた。

 

(フロンティアが、先史文明期に飛来したカストディアンの遺産ならば、それは異端技術の集積体……。月の落下に対抗する手段もきっと……)

 

 水晶のようなモニターに一つの情報が表示される。

 

「っ。これは……」

 

 それと同時にブリッジからウェルの通信が届いた。

 

『どうやら、のっぴきならない状況の様ですよ?一つにつながることで、フロンティアのエネルギー状況が伝わってくる……。これだけあれば、十分にいきり立つぅ……」

 

 ウェルは恍惚とした表情を浮かべる中、

 

『早すぎますッ!ドクターッ!』

 

 ナスターシャの焦った声が聞こえてくるが、彼は耳を貸そうともしない。

 

「さぁ、行けぇーッ!」

 

 ウェルの声に呼応するように、塔のようになっていた三本の柱それぞれ三つの光が伸び、雲を突き破って空中で一つとなる。そしてそれは巨大な腕となり、月へと到達。月を上から抑え込んだ。

 

「どっこいしょぉーッ!」

 

 その結果、フロンティアが、音を立てて浮上し始める。

 それまで冷静だったナスターシャも焦りを隠せない。

 

「加速するドクターの欲望!手遅れになる前に、私の信じる異端技術で阻止して見せるッ!」

 

 彼女のコンソールを操作する動きが、段々と速くなっていく。

 

○○○

 

 巨大なフロンティアが浮上したことによって海流が攪拌され、潜航していた二課の潜水艦を大きく揺らす。

 ものに捕まっていなければ、まともに立つことすらできない状態だ。

 

「一体、何が?!」

「フロンティアが浮上したんだ!多分!」

 

 響の問いに雷が予想を口にする。藤尭が観測した結果を報告する。

 

「広範囲にわたって海底が隆起!我々の直下からも迫ってきます!」

 

 潜水艦が上昇してきた海底に着底する。

 新天地フロンティア。その全容が、太陽の光を背に受けて浮上した。空中に浮遊している攻略対象に、アメリカ艦隊は困惑を隠せない。

 

「作戦本部より入電です!制圧せよと……」

「あんなのとは聞いてないぞ……」

 

 艦砲射撃を行うが、有効打にはなっていない。第二次世界大戦期の戦艦ならば効果はあっただろうが、現代の艦艇による砲撃では傷一つ、着くことはないだろう。

 そんな光景をモニターで見ながら、

 

「楽しすぎてメガネがずり落ちてしまいそうだぁ……」

 

 ネフィリムの腕を介して、ウェルがフロンティアに指示を出す。

 島の底にある突起が光を放ち、航行していた艦艇を持ち上げ、空中で押しつぶした。圧壊し、耐えきれなくなった艦艇から爆発が起きていく。

 その光景を満足げに眺めながら、

 

「ふぅん……。制御できる重力はこれくらいが限度の様ですねぇ……。フフハハハハハ!」

(果たしてこれが、人類を救済する力なのか……?)

 

 高笑いを続けるウェルの横で、マリアが思う。

 

「手に入れたぞ……!蹂躙する力を……!これで僕も英雄になれるぅ!この星のラストアクションヒーローだぁ~!」

 

 彼は眼鏡をはずし、そう言った。既に彼はドクターでも、英雄でも何でもない。下卑た笑い声をあげ、

 

「やったぁーッ!」

 

 高らかに叫んだ。

 

○○○

 

 この出来事は、テレビ局によって世界中に中継されていた。

 

「御覧ください!大規模な地殻変動と発表された海域にて、軍事衝突です!米国所属の艦艇が一瞬で……!う、うわぁぁぁぁッ?!」

 

 ヘリが全方位から潰され爆発。その言葉を最後に中継が途絶えた。ビルの巨大液晶の画面が切り替わる。

 その中継の顛末を見ていた創世たちは、

 

「テラジ、こういう事件て……」

「まさか立花さん達も……」

「関係してたりして……」

 

 画面の向こうにいる友人たちの無事を祈った。

 

○○○

 

 既にフロンティアの領域内にいた二課は、艦艇やヘリの受けた攻撃の内側に逃げ込んでいた。自分を攻撃する武器などありはしない。

 フロンティアの全容と潜水艦の状態を確認し、

 

「下からいいのをもらったみたいだ!」

 

 響は未来を支え、翼が雷を支える形になっている。雷と未来はお互いに支え合っている状態だ。

 

「計測結果が出ました」

 

 友里がこの揺れの原因を突き止める。

 

「直下からの近く上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込むことで……」

「フロンティアを引き上げた……?!」

「はい……!それだけでなく!」

「月を……引き寄せたのかッ……!」

 

 雷の頬を冷や汗が伝う。流石の彼女もここまでの事とは予測できなかったらしい。そもそも、島が浮く。なんてことを想定に盛り込むなど、土台無理な話だ。

 これを引き起こしたフロンティアのブリッジでは、ウェルが悪びれもなく「月を引き寄せた」と、言い切った。

 そんな彼にマリアが詰め寄る。

 

「月を?!落下を速めたのか!」

 

 ウェルを押しのけて、コントロールしようと試みるが、

 

「救済の準備は何も出来ていない!このままでは本当に、人類は絶滅してしまう!」

 

 そんな彼女の必死な思いとは裏腹に、球体が光を失ってしまう。もとよりネフィリムの力で取り込み、強引に動かしていたのだ。彼女に動かせるはずがない。

 

「どうしてッ?!どうして私の操作を受け付けないのッ?!」

「リンカーが作用している限り、制御権は僕にあるのです」

 

 下卑た笑いを浮かべ、

 

「人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね。これが僕の提唱する、一番確実な人類の救済方法です」

 

 ウェルは両手を広げ、自らを誇示するように言う。

 

「そんなことのために、私は悪を背負ってきたわけではないッ!」

 

 ウェルに詰め寄ろうとするがギアが無ければマリアとてただの女、男であるウェルに力で勝てるわけがない。右腕で振り払われてしまう。

 

「ここで僕を手をかけても、地球の余命が後僅かなのは変わらない事実だろう?!ダメな女だなぁ!フィーネを気取ってた頃でも思い出してぇ、そこで恥ずかしさで悶えてな」

 

 マリアは打ちひしがれ、すすり泣くことしか出来なかった。

 

「セレナ……!雷……!私ッ……!」

「気が済むまで泣いてなさい。帰ったらぁ、わずかに残った地球人類をどう増やしていくか。一緒に考えましょう」

 

 そう言ってコントロールするための球体のもとへ向かって行った。




そう言えば、ケラウノスの見た目の設定をあんまり考えていませんでした。
因みに、意外かと思う方もいるかもしれませんが、ガングニールのようなスパッツ型ではなく、ザババよりも丈の長いレオタード+スカート型です。
 そこにグレーの腰マント、マントの接続部にライデンユニット。脚部はブーツのようになっていて、腰部のよりも大きなユニットがついています。上半身はガングニールに近いです。バンカーユニットが変わっているだけですので。ヘッドギアは耳あての部分に稲妻がデザインされています。
 ユニットの形は箱型。展開方式はUCのデストロイモードみたいな感じ。
 雷帝顕現発動時にはグレーの部分が金色に輝きはじめ、ユニットは電光を放ったまま開きっぱなし、マントは雷がマント状になったものに戻ります。

 意外とかわいらしい見た目をしている……。
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