戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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G編最終回!


歌が紡ぐもの

 宝物庫の中に飛び込んだ雷たちは中に巣食うノイズの群れを全滅させるため、各個で攻撃を続けていた。また、ネフィリムに拘束されたマリアの救出を妨害されるのを防ぐ目的もある。

 槍の聖遺物であるガングニールを纏う響が右の腕部バンカーユニットを変形させ、槍の先端部分のようにした手甲を構築し、

 

「うおぉぉぉッ!」

 

 ブースターを点火して加速。

 

「行っけぇぇぇぇッ!」

 

 文字通り一番槍となって直線上に存在するノイズのサイズを問わず刺し貫いていく。

 翼は手に持つ刃をふるって一刀に切り伏せ、巨大なノイズには脚部のブレードを巨大化させてコマのように回転し、みじん切りにする。

 クリスはアームドギアをさらに巨大化させ、自身の周囲を覆うように砲門を形成。前方に存在する無数のノイズに向けて一斉に発射し、爆散させていく。

 雷は右のユニットに稲妻を収束させ、それによって形作られた八尾の龍を召喚してノイズの群れを喰い破らせる。彼女自身は目にも止まらぬ速さでネフィリムの放出する触手を切歌と共に誘導し、時に弾き飛ばしながら調がマリアを救出する時間を稼ぐ。

 だが、聖遺物やそのエネルギーを捕食するネフィリムの攻撃はかすっただけでも致命傷になりうる。故に彼女たちは姉妹のように息の合ったコンビネーションでお互いを守りながら戦っているのだが、流石にその集中力にも限界が来ていた。

 二人が叫ぶ。

 

「しらちゃん!後どれぐらい?!」

「調!まだデスか?!」

 

 見上げた先には調がロボットに変形させたアームドギアで触手を切り裂こうとしていた。無限軌道によって回転する刃は切歌や翼のような振って斬るのではなく、押し当てることで切断する。よって限界まで押し当て続けることでアームドギアは損壊したものの、マリアを救出することに成功する。

 

「マリア……!」

「一振りの杖では、これだけの数を……制御が追いつかない……!」

 

 二人のもとに雷と切歌が集まる。ネフィリムに超電磁の竜巻を叩きこんで動きを封じ込めながら雷が口を開いた。

 

「制御なんてしなくていい!門を開けるんだッ!」

「マリアさんは、杖でもう一度宝物庫を開くことに集中してくださいッ!」

「何ッ?!」

 

 響が続く。マリアは意味が分からず、困惑を隠せない。

 

「外から開けられるのならッ!中から開けることだって出来るはずだッ!」

「鍵なんだよ!そいつはッ!」

 

 翼が切り裂きながら、クリスが砲撃で吹き飛ばしながら叫ぶ。彼女たちの意図を理解したマリアは、

 

「セレナぁぁぁッ!」

 

 今ここに居ない、今の自分を残してくれた最愛の妹の名を叫びながら今までで最も大出力の光線を放ち、宝物庫を内側から開門する。

 

「脱出デス!」

「ネフィリムが飛び出す前に!」

「先に行って!ギリギリまで止めておくからッ……!」

 

 雷は額に汗を浮かべ、ネフィリムを拘束しながら促す。それに頷き、動き出したマリアの後をついていくようにして調と切歌が飛翔する。

 翼はデッドウェイトとなる脚部ブレードをパージし、そばで砲撃を続けているクリスに、

 

「行くぞ!雪音ッ!」

「おおっ!」

 

 クリスもアームドギアをパージし、それぞれを砲弾として発射。その結果を見届けてから、翼に追随する。

 

「不味いッ……!」

 

 自身を拘束している超電磁の竜巻とて聖遺物。ネフィリムはそのエネルギーを喰らって無力化し、最も近くにいる雷を喰らうべくその手をふるう。

 

「雷ッ!」

「ごめん響……!逃がしちゃった……!」

 

 そんなことはさせないと響が彼女に手を伸ばして離脱し、みんなと合流すべく飛ぶがネフィリムは膨大なエネルギーを持つ彼女たちを逃がすまいと門の前に立ちはだかる。

 七人は出口を前にしてたたらを踏み、

 

「迂回路は無しか……!」

「ならば、行く道は一つッ!」

「手を繋ごう!」

 

 翼とクリス、そして響と雷が手を繋ぎ、調と切歌が手を繋ぐ。この出来事の中心人物であるマリアと両方に関係を持つ雷を挟んで並び立った。

 

「マリア」

「マリア……」

「マリアさん!」

 

 調と雷が手を指しだす。同時にマリアは胸の宝石から両刃の剣を抜き放ち、二人と手を繋いで宣言した。

 

「この手、簡単には離さないッ!」

 

 雷を中心にして七人が並ぶ。そして手をつきあげ、

 

「「「「最速で最短で!真っ直ぐに!」」」

 

 刃が粒子へと変換され、装者たちを銀の輝きが包み込む。そして飛翔し、ケラウノス、ガングニール、そしてアガートラームの装甲が彼女たちから分離。ガングニールは金の右腕を、アガートラームは銀の左腕を形作り、両の拳を彼女たちの進行方向に組み構え、

 

「「「一直線に――ッ!」」」

 回転を加えながら突き進む。

 彼女たちを捉えるためにネフィリムは触手を伸ばそうとするが、分離されたケラウノスが稲妻そのものとなる。それは竜巻のように回転しながら装者たちの行く手を阻むネフィリムを拘束し、何物にも妨げられない一直線に行く道を作り出した。

 七人の声と想いが重なり、正面から激突する。

 

       『Vi†aliza†ion』

 

 束ね重なった圧倒的なエネルギーを持つその一撃はネフィリムをたやすく貫通し、勢い余って門の外へと叩きつけられる。杖は地面に突き刺さり、装者たちはあまりの衝撃に立ち上がることが出来ない。

 

「ッ……!杖が……すぐにゲートを閉じなければ……まもなく、ネフィリムの爆発がッ……!」

 

 マリアはダメージを必死にこらえながら手を伸ばそうとするが、体は限界を迎えていた。それは全員が同じだ。だが、それでも、

 

「まだ……だ……」

「心強い仲間は、他にもッ……」

「仲間……?」

 

 まだ仲間はいる。そういう翼とクリスにマリアは思わず問いかける。その問いに雷と響が答えた。

 

「私達の……」

「親友だよ……」

 

 二人の目線の先には砂浜を全力で走る未来の姿があった。彼女は砂に足を足られながらも走り続ける。

 

(ギアだけが戦う力じゃないって響が教えてくれた!私だって……戦うんだッ!)

 

 彼女の手が杖に到達する。未来は一気にそれを引き抜き、全身の力を込めて門に向けて投擲し、叫んだ。

 

「お願いッ!閉じて!」

 

 エネルギーを吸収できなくなったネフィリムの体から光が漏れ始める。刻一刻と臨界へのタイムリミットが近づいてきていた。

 

「もう二人が……誰もが戦わなくていいような……世界に――ッ!」

 

 ソロモンの杖が輝きを放ちながら加速し、ネフィリムの光があふれ出る寸前に飛び込み、門を閉じる。大爆発が起きたのが異空間でありながら、その膨大なエネルギーは現実世界にも視覚で確認できるほどだった。

 未来は安堵に膝をついて息を吐き、雷と響は寝転がって目を閉じた。

 

○○○

 

 時間は流れ、すでに日は傾き、夕暮れ時となっていた。この事件を収拾するためにやって来たヘリのローター音が響く。

 ウェルは銃を持った軍人に連行されながら、

 

「間違っている……。英雄を必要としない世界なんて……」

 

 彼はまだ自分のことを英雄と思い込んでいるようだ。

 緒川は事件の発生による影響を確認し、弦十郎に報告する。

 

「月の軌道は、正常値へと近づきつつあります。ですが、ナスターシャ教授との連絡は……」

 

 彼の報告を聞いて察した弦十郎は少女たちに目を向ける。

 マリアや調、切歌に加えて過去に親しくしてもらっていた雷がオレンジ色に染まった空を見上げる。マリアの胸元のアガートラームは半壊し、文字通り半分だけとなっていた。

 

(マムが未来を繋げてくれた……。ありがとう……。お母さん……」

「マリアさん……」

「っ」

 

 後ろから響に声をかけられ、振り返る。すると彼女はガングニールのペンダントを差し出していた。マリアは少しだけ優しさと悲しさが入り混じった表情を浮かべ、

 

「ガングニールは君にこそふさわしい」

 

 それを聞いて響は黙ってペンダントを握りしめる。そして再びマリアは月を見上げ、

 

「だが、月の遺跡は再起動させてしまった……」

「バラルの呪詛か……」

「人類の相互理解は、また遠のいたってわけかッ……」

 

 クリスが悔しそうに言う。

 

「へいき、へっちゃらです」

 

 だが、沈んだ空気を響の明るい声が吹き飛ばした。思わずマリア達が目を丸くする。

 

「だってこの世界には、歌があるんですよ!」

「響……」

「そう言うと思った!」

 

 未来は胸に手を当て、雷は楽しそうに笑い、翼とクリスはお互いに笑みを浮かべる。そして響は満面の笑顔を浮かべた。

 切歌は反芻するように、

 

「歌……デスか……」

「いつか人は繋がれる……。だけどそれは、どこかの場所でも、いつかの未来でもない。確かに、伝えたから」

「うん」

 

 響は頷く。横からマリアが声をかけた。

 

「立花響。君に出会えてよかった」

 

 二人はお互いに見つめ合う。そして今度は雷のほうを向き、

 

「雷、元気で……」

「もう、そうじゃないでしょ?マリア……またね」

「っ」

 

 少しだけ頬を膨らませた後、笑顔を浮かべて言った。雷は再開を確信していた。確証はない、それでもマリアは口に出したくなった。約束を叶えるために。また会うために。

 

「ああ。……またね」

 

 そう言って彼女たちは緒川に連れられてヘリに乗り込んでいった。

 

○○○

 

 暫くしてフロンティア事変のほとぼりが冷めたころ。

 雷はF.I.S.のスパイ疑惑によって遅れる形でマリアの後をついていくこととなったため、彼女の姿はない。このことに響や未来だけでなく翼やクリスも激しくうろたえたが、弦十郎たちが全力を尽くすという言葉に安堵し、今では万全とは言えないが落ち着きを取り戻していた。

 響は未来と共に登校しながら翼とクリスの姿をみとめると、手を振りながら小走りで近づいていった。

 

「翼さーん!クリスちゃーん!」

 

 未来が彼女の後をついていく。翼はどこか残念そうな表情を浮かべていた。逆にクリスは顔を赤くしながらそっぽを向く。

 

「聞いてくれ立花。あれ以来、雪音は私の事を先輩と呼んでくれないのだ」

「だーから―!」

 

 顔を赤くしながらかみつくが、響がニヤニヤとしながら近づき、

 

「なになに~。クリスちゃんてば翼さんの事先輩って先輩って呼んでるのぉ?」

「ちょっと響ったらぁ……」

 

 そんな彼女の物言いにクリスは眉を引く突かせながら、

 

「いい機会だから教えてやる。アタシはお前より年上で!先輩だってことをー!」

 

 未来と翼はそろってため息をつき、二人を引き離す。未だクリスは「もってけダブルだぁ!」などと口走っていたが、

 

「二人ともそのくらいにしておけ……。傷もまだ言えてないというのに」

「ねえ響……。体、平気?おかしくない?」

 

 心配そうに眉を顰める未来の前に回って彼女を抱きしめる。

 

「心配性だなぁ未来は。私を蝕む聖遺物は、あの時きれいさっぱり消えたんだって」

「響……」

「でもね……。胸のガングニールはなくなったけれど、奏さんから託された歌は、絶対に無くしたりしないよ」

 

 翼が嬉しそうに笑い、クリスが微笑む。

 

「それに、それは私だけじゃない……」

 

 そして響は太陽に手を伸ばし、まるでつかむように握って胸に当てる。

 

「きっとそれは、誰の胸にもある、歌なんだ……!」

 

 響の胸に、星が音楽となったあの日が蘇る。そんな時、響の電話にメールが届いた。

 

「誰だろ……?」

 

 そう言ってアプリを開く。そこにかかれていた名前は……。

 

「……雷からだ!」

「えぇ?!」

「どうした?!」

「なんて書いてんだ?!」

「ちょっ?!ちょっと待って……」

 

 響の声に全員が反応する。いくら落ち着いていったと言ってもどうなるか不安だったのは皆同じだったようだ。

 メールには仲のよさそうな四人の写真と共に、

 

「『私もマリアもしらちゃんも切ちゃんもみんな無罪!いろいろな手続きとかしたらすぐに帰るから!』……だって」

 

 響が内容を読み上げた瞬間、自然と笑いがこぼれた。

 

「まったく、こっちの気も知らないで」

「帰ってきたらお灸をすえないとな!」

「心配させてぇ……もう……」

 

 響も笑いながら空を見上げる。同じ空の下、別の場所で、雷が同じように空を見上げていた。




少々幕間をしてからGⅩ編に行きます!

???「ようやくボクの出番ってわけⅮA☆期待してくれよNA☆」
???「どこの誰だこいつを起動させたのは!こいつの出番はまだまだ先だ!」

……フライングすんなぁッ!
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