戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
XV編で出てくるノーブルレッドのお姉ちゃんよりお姉ちゃんしてる雷。
夜遅く、とある理由のためにクリスの家に雷たちがやって来ていた。テーブルの上には色とりどり、種類豊富な菓子が並べられている。時間も時間なため、全員が先に入浴を済ませ、パジャマ姿でリビングに集まっている。クリスが来客用のコップをキッチンから持ってきて、眉をひくひくさせながら、
「で、どうしてあたしンちなんだ……?」
と、言った。こんな時間に同じ目的とは言え大人数が集まるのは流石に不満だったらしい。ナイトキャップをかぶったまま詩織が立ち上がり、
「すみません、こんな時間に大人数で押しかけてしまいました」
「ロンドンとの時差は約八時間!」
「チャリティロックフェスをみんなで楽しむにはこうするしかないわけでして……」
詩織に弓美、創世が続く。詩織と創世はともかく、弓美などは悪びれもしていない。そんな少女たち返事にクリスは唇を尖らせるものの、響がそばにやって来て、
「ま、頼れる先輩ってことで!それに、やっと自分の夢を追いかけられるようになった翼さんのステージだよ?」
「みんなで応援……、しないわけにはいかないよな!」
「そしてもう一人……」
未来の言葉を聞いて調たちが嬉しそうに、
「マリア……」
「歌姫のコラボユニット、復活デェス!」
「前は半端だったけど、今回はぶっ通し!」
そう言って雷は拳を握りしめた。
もうそろそろ開演の時間となったので立っていたクリスと響が席に着いた。テレビの中では照明が輝きを増し、ステージの主役たる二人をライトアップする。星天ギャラクシィクロスの名を冠する歌の通り、ステージは星をイメージしたライトの演出、空を自由に飛び交うように水上を滑るように歌う翼とマリアに全世界が魅了された。
興奮のヴォルテージが上限を突破し、ペンライトをぶんぶんと振っている弓美が、
「こんな二人と一緒に友達が世界を救っただなんて、まるでアニメだねぇ~!」
「あぁ……うん。ホントダヨー」
「ソウダネ―……」
雷と響があいまいな表情で答えた。
○○○
すべての歌を歌い終わり、マリアがエレベーターに乗って下に降りると、二人の黒服がマリアを出迎えた。
「任務、ご苦労様です」
マリアは少し怒気を声に含ませながら、
「アイドルの監視ほどではないわ」
「監視ではなく警護です。世界を守った英雄を狙う輩も、少なくはないので」
言葉の裏が見え透いていた。そうにもかかわらず従うしかないマリアは黒服を引き連れながらステージを後にする。
元F.I.S.に所属していた彼女を良く知る切歌たちが憂う。
「月の落下とフロンティアに関する事件を収束させるため、マリアは生贄とされてしまったデス……」
「大人たちの体裁を守るためにアイドルを……文字通り偶像を強いられるなんて……」
「限られた、監視された自由。篭の中でさえずるカナリアに過ぎない……か……」
「そうじゃないよ」
暗くなっていく雷たちの間に明るい未来の声が響いた。思わず彼女のほうを向いてしまう。
「マリアさんが守っているのはきっと、誰もが笑っていられる日常なんだと思う」
「未来……」
「確かに、そう考えた方が楽しいか!」
「そうデスよね!」
「だからこそ、私達がマリアを応援しないと……!」
切歌と雷が嬉しそうに笑う。家族なのだから、と。
○○○
夜の帳が完全に落ち切ったころ、金のコインが回転しながら宙を舞った。それは空中で何かに弾かれたように勢いよくコースを変え、中にガソリンが大量に入ったタンクローリーに放たれる。数発放たれたソレは遂にタイヤに命中、破裂した結果ハンドルが利かなくなり、ガードレールを破壊して崖から転落。町のど真ん中でに横転したタンクローリーの開けられた穴からガソリンが流れ出し、運転手は命からがら逃げ出したもののエンジンの火が引火、爆発した。
雷と響、クリスのもとに通信が入る。相手は弦十郎だ。
『第七区域に大規模な火災発生。消防活動が困難なため、応援要請だ』
「了解!」
「はい!すぐに向かいます!」
「二人とも……」
「大丈夫。人助けだから!」
三人が立ち上がり、不安そうに言う未来を響が安心させる。次いで調たちが立ち上がり、
「私達も……!」
「手伝うデス!」
勇んで言うが雷が、
「二人は留守番!リンカーもないのに出すわけにはいかない。これはお姉ちゃん命令です!」
「「むぅ~……」」
人差し指をビシッと立てて妹分である調と切歌に宣言し、飛び出して行く。姉のように慕う彼女からの命令とは言え、不満から頬を膨らませた。
また、マリア達のほうでも異変が発生していた。様々な衣装を着たマネキンが並ぶ廊下に風が吹いたのだ。ここは密室、空気の流れはあっても風が吹くのはあり得ない。緊張が高まり、警戒態勢をとる。
「誰かいるの?!」
「……司法取引と情報操作によって仕立て上げられたフロンティア事変の汚れた英雄、マリア・カデンツァヴナ・イヴ……」
「何者だッ?!」
どこからか女性の声が聞こえてくる。しかし、姿は見えず、人形が並べられているために周囲に目を見やっても判別が出来ない。
すると突然、並べられた人形の中の一体、フラメンコドレスを着た女性が黒服の一人に襲い掛かる。そして右腕を彼の首に回して引き寄せ、強引に口づけを交わした。
「離れろッ!」
もう一人の黒服が銃を抜くが女は聞き入れようとせず、口づけを交わし続ける。
するとみるみるうちに黒服の髪の毛は白髪化し、四肢はだらんと力なく垂れ下がり、目からは生気が消えた。代わりに彼女のみどりの瞳が怪しく輝く。
唇を離し、もう用はないと言うように襟を首を掴んで床に落とす。それと同時に黒服が三発発砲した。しかし、女は微笑をたたえたままスカートを翻す。すると彼女の周りに竜巻のような暴風が発生。銃弾を跳ね返し、弾は三発とも黒服に命中した。そのうちの一発が眉間に直撃した。即死だ。
明らかに人知を超える力を示した彼女はフラメンコのステップを踏んでマリアと向き合う。その圧倒的な実力にマリアが驚愕していると、
「纏うべきシンフォギアを持たぬお前に用はない……」
同時刻、日本では箱を抱えた少女が逃走を続けていた。ディーラー風の女性は何処からともなく指の間にコインを召喚し、
「踊れ、踊らせるがままに……」
フッと軽く放る。しかし、それは空中で加速し、まさに銃撃の様に少女に降り注いだ。近くにあった車のガソリンタンクに直撃。大爆発を引き起こす。その爆発によって少女の纏っていたローブが巻き上げられ、盛大に吹き飛んでしまう。が、何とか道路を転がって受け身をとり、大急ぎで階段を駆け下りる。
燃え広がる建物を前にして、そっくり瓜二つの姿をした豪奢なローブを纏った少女が上から見下ろしていた。
雷たち装者を乗せたヘリが火災現場へと急行する。
弦十郎が詳細を説明していた。
『付近一帯の避難は、ほぼ完了。だが、このマンションに多数の生体反応を確認している』
「まさか人が……?!」
『防火壁の向こうに閉じ込められているようだ……。さらに気になるのは、被害状況は依然四時の方向に拡大していることだ』
あごに指をやりながら言った。雷が、
「まさか、人為的に……?」
「馬鹿猫が暴れていやがるのか?」
『響君は救助活動に、クリス君は被害状況の確認。雷君は救助活動を終えたのち、被害状況の確認にあたってもらう!』
「了解!」
「了解です!」
通常では出来ないことだが、最速のシンフォギアであるケラウノスだからできる荒業である。火災現場に到着し、響がヘリの後部ドアを開けて身を乗り出す。
「任せたぞ!」
クリスの声を背中に受けた雷と響はペンダントを掲げ、
「任された!」
「任せてよ!」
そして二人は一息に飛び下り、ケラウノスとガングニールの起動聖詠を口ずさんだ。
「Voltaters Kelaunus Tron」
「Balwisyall Nescell Gungnir Tron」
フロンティア事変の際に発動したXDモードの限定解除の影響でケラウノスの姿が少し変質していた。ヘッドギアに元々あった稲妻型の耳あての他に二本の稲妻型と細長いひし形の角がティアラのように追加。更に首と肩の間に小型のライデンユニットが増設されている。
二人の装者が火災現場に降下した。
○○○
一方、マリアは謎の女と交戦していた。
女は剣を取り出し、マリアに振るう。しかしそれをバク転で回避し、振り下ろされた一撃を跳んで避ける。そして空中で首に蹴りを叩きこんだ。だが女はそれを苦にすることもなく逆にマリアの体を押し上げた。
「しまったッ?!」
女はフラメンコの様にスカートをはためかせ、剣を真っ直ぐに突き上げられた。
GⅩ版ケラウノス
変化箇所。
・五本に増えたヘッドギアの角。因みにヘッドギアの角は両端のとがった稲妻。
元々思考でアームドギアである稲妻を操っていたケラウノスだが、この増設された二本の角で更に的確に、繊細に、大胆に操ることが可能となった。カラーはグレー。
中央のひし形の角は稲妻以外、斥力や磁力操作などのアームドギアの副産物を制御するために使う。センサーのようにも使用可能。カラーは黒。
イメージ的には某1000%ライダーを参照。
・新たに増設されたユニット。
通常よりも細く、普段は格納されているが、『雷帝顕現』と新たに追加された機能を行使する際にのみ起動する。詳細は後々。また、排熱機構でもあり、これの追加であることが出来る様になった。
雷の心象の変化によって生まれた。