戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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VSレイア!
あとオリジナルオートスコアラーの名前が出てきます。


陽動陽動また陽動

 ノイズとは似て非なる存在、アルカ・ノイズによって翼のシンフォギア、天羽々斬が分解されていく。しかし、歴戦の防人である彼女は直ぐ様二の太刀をバインダーから射出。自身のギアを分解した侍のような見た目のアルカ・ノイズを両断する。

 

「はぁッ!……ッあ!」

「翼ッ!」

 

 だが、それは苦し紛れの一撃。ギアが耐えきれるはずもなく、ついには粉々に砕け散ってしまった。倒れ込む翼にマリアが駆け寄る。

 女のほうを向く。彼女が召喚したアルカ・ノイズはまだ相当数残っており、ギアを持たぬマリアからすれば進退窮まった状態だ。もし持っていたとしても一歩間違えれば翼の二の舞となる。攻略は難しいだろう。

 女は剣を持ち、ポーズを決めながら、

 

「システムの破壊を確認。これでお仕事はひと段落ね……」

 

 そう言って軽くステップを踏むと、彼女の足元に陣が形成される。それは一瞬だけだったが、次の瞬間にはアルカ・ノイズの群れが陣の中に消えていった。

 

○○○

 

 一方、クリスのシンフォギアも限界を超え、完全に分解されてしまっていた。

 

「クリスさん!」

 

 倒れた彼女にエルフナインが駆け寄る。

 

「クリスさん!クリスさん!」

 

 必死に声をかけるが反応が返ってこない。完全に気を失っていた。こちらでアルカ・ノイズを召喚した女が街灯から飛び下りる。

 S.O.N.G.ではあまりの出来事に現実が受け止めきれていない。

 

「イチイバル……反応途絶……」

「ノイズに……嘘だろ……?だってシンフォギアが……」

「あの分解は、ノイズの炭素転換ではないのか……?!」

 

 この事態には弦十郎すらも立ち尽くすことしか出来ない。そんな絶望的な空気が漂う中、一人の少女の声が通信から響いた。

 

『轟雷!交戦、開始しますッ!』

「無茶だ!相手はギアすらも分解するんだぞッ?!」

「そうよ!今はクリスちゃんと252を回収して撤退してッ!」

 

 藤尭と友里が交戦を宣言した雷に反対意見を言う。当然だ。場所は違えどシンフォギアを二基も失い。ともすれば人命だって失ってしまうかもしれないのだから。だが、雷はその反論はすでに想定内と言うように間髪入れずに対応した。

 

『策はありますッ!それに、クリス達の事なら切ちゃんとしらちゃんを呼んでいますので大丈夫ですッ!」

『リンカーもなしに彼女たちを?!危険す……』

 

 雷は強引に通信を切った。それは自分が一番よく分かっていると言う言葉を胸に秘め、今は前だけを向いた。

 右の脚部ユニットを展開し、電光が足全体を覆う。体を横倒しにしながら体をひねって回転を加え、女の脳天に向けて回し蹴りを叩きこんだ。

 

       『稲玉落とし』

 

「でやあっ!」

「ッ?!」

 

 完全な不意打ちだったが、女は咄嗟に両腕を頭上でクロスすることで何とか受け止める。蹴りを受け止められた際の反動で雷は地面へと着地する。その瞬間にクリスとエルフナインに向けて斥力フィールドを展開し、切歌たちが来るまでの時間稼ぎとした。

 先手を打ち込んだ雷だったが、二の手をすぐに打とうとはせず、動きを止めた。しきりに目を動かし、何やら脳内から該当する言葉を引っ張り題しているようだ。一撃を受け止められた際に引っかかるところがあったらしい。

 

改造人間(サイボーグ)……違う。……人造人間(アンドロイド)……これも違う。……自動人形(オートマタ)……か?」

 

 彼女の中で確信に至った。分かりづらいが人形のような球体関節。陶器のように固く、異様に白い肌。その全てが証拠として彼女の脳内に突き刺さった。

 女は一瞬目を見開き、口元に微笑みをたたえ、

 

「地味だが慧眼だ。マスターが目をつけるだけのことはある」

 

 正確にはオートスコアラーという呼び名があるのだが、一目で見抜いたことに敬意を抱き、あえて訂正はしなかった。

 雷には「マスター」というワードが引っかかったが、今は優先すべきことではないとかぶりを振る。相手が人形ということが分かった以上、人体構造を超えた動きをする可能性がある。そのことを勘定に入れ、雷は距離を詰めるべく眼前にいるアルカ・ノイズに拳を叩きこんだ。稲妻を纏った拳がアルカ・ノイズを吹き飛ばし、赤い粒子へと姿を変えた。予想が確信へと変わる。

 

「発光器官以外は普通のノイズと変わらない……か」

 

 試しに発光器官に向けて稲妻の矢を放つが、すげなく分解されていく。これで確定した。ならばやりようはいくらでもある。さらに一歩踏み込み、回し蹴りで邪魔をするノイズを蹴り飛ばしながら女の前へと躍り出た。

 

「っ」

 

 女はコインをどこからともなく取り出し、雷に対して集中的に放つ。が、

 

「押し通るッ!」

 

       『AssaultForce』

 

 全身のユニットから強力な斥力フィールドが彼女の周囲に展開され、襟に追加されたユニットから稲妻がマフラーのように放出された。エネルギーのほとんどを防御と速度に振っているため、動きの一つ一つが加速する。そしてその機動力と防御力に物を言わせ、ばら撒かれるコインの弾幕を意に返さず一直線に突破した。

 

「派手に突破してきやがる……!」

「はぁッ!」

「ッ……!」

 

 懐に入り込んだ雷は拳を叩きこむが、女はコインをトンファーのようにしてそれを受け止める。女の体が少し後ずさった。

 この状態では攻撃のために稲妻を使うことは出来ないが、生み出される加速力によってインパクトそのものの威力は上昇する。だが、決め手に欠けるのは事実。更に彼女の全身を覆う斥力フィールドは時間経過で減衰してしまうのだ。

 このままではらちが明かない。しかし、もうそろそろだと雷はほくそ笑む。丁度その時、上のほうから声が響いてきた。

 

「姉ちゃん!待たせたデス!」

 

 女の顔が切歌のほうを向いた。雷はその隙を見逃さず、前蹴りを入れて強引にクリス達から距離をとった。視界の端で見たが、なぜかヒーローのように体に旗のようなものを巻き付けていた。そして彼女は勢いよくそれをはぎ取り、

 

「Zeios Igalima Raizen Tron」

「取るなら何でつけてきたの……」

「それは言わないお約束デス!」

 

 雷のツッコミを返しながらイガリマを纏い、鎌のブレードをブーメランのように投擲した。

 

       『切・呪りeッTぉ』

 

 雷の展開した斥力フィールドを突破しかけていたアルカ・ノイズを刈り取っていく。着地すると同時にリンカーを使用していない適合係数の低さから彼女の体に痛みが走る。

 雷は女と相対しながら、

 

「切ちゃん!ノイズの発光器官に触れちゃダメ!ギアでも分解される!」

「了解デース!」

 

 そう言って鎌を勢いよく自分の体ごと振り回し、コマのようになってノイズの群れへと突入する。

 

       『災輪・TぃN渦ぁBェル』

 

 ひとしきり切り刻んだ切歌は次なる目標へと跳躍した。

 女は雷とにらみを利かせ合いながら、

 

「派手にやってくれる……」

「自慢の妹分だよ」

 

 この状況をS.O.N.G.も捉えていた。

 

「切歌ちゃんが状況介入?!」

「リンカーを投与せずにか?!」

「雷ちゃんが言っていたのはこういう事だったのか!これでいければ……!」

 

 少女に命をかけさせなければ状況を打破できないという現実に、弦十郎は悔し気に歯を食いしばった。

 切歌がアルカ・ノイズの群れを斬滅していくが、それに気をとられているうちに完全にフィールドが解除されてしまった。

 背後に忍び寄っていたアルカ・ノイズに気づかなかったエルフナインは慌てて振り返る。だが、群れてきたノイズを無数の小型鋸が飛翔し、切り裂いていく。調も到着したのだ。彼女は一息に跳躍し、上空から面制圧を仕掛ける。

 

       『α式・百輪廻』

 

「女神……ザババ……」

 

 助けが来て緊張の糸が切れたのか、倒れかけたエルフナインを調が回収する。

 

「派手な立ち回りは陽動……?」

「その通り……だッ!」

 

       『雷乱神楽』

 

 雷は腕部ユニットから小型の矢を稲妻で形成し乱射、目くらましとして調と共に離脱する。切歌も同じくして脱ぎ捨てた旗を回収し、それで一糸まとわぬ姿のまま気絶しているクリスの体を包み込んでから離脱した。

 

「陽動もまた陽動……」

 

 調は鋸を車輪のようにして道路を疾走する。途中でアルカ・ノイズが向かってきたが、それを難なく引き切り裂いた。が、調も切歌と同じくリンカー不使用の適合係数の低さから体に激痛が走り、痛みから展開を解除してその場で停止する。

 

(やっぱり、私達の適合係数では、ギアをうまく扱えない……!)

 

 切歌が街灯の上に着地し、雷が調の横に並んだ。

 

「調!」

「しらちゃん……」

「大丈夫!今はそれよりも……」

「分かってるデス!」

「ごめん……」

 

 切歌は威勢よく返事をし、雷は申し訳なさに謝罪を口にした後、夜明けの迫る街を駆けて行った。

 雷と相対した女、レイアが独り言のように誰かに話しかける。

 

「予定にない闖入者。指示をください」

 

 通信の相手、マスターことキャロルはサイズの合わない玉座に鎮座しながら、

 

「追跡の必要はない……。帰投を命ずる……。ファラも十分だ」

「分かりました……。ではその様に……」

 

 ロンドンで翼たちと相対したオートスコアラーの女、ファラはテレポートジェムを地面に落とし、一瞬で姿を消した。

 

○○○

 

 チフォージュ・シャトー内でキャロルは足を組み、起動している三体目のオートスコアラー、ガリィに指示を出した。

 

「ガリィ。ルシフを起こせ」

「いいんですかマスター?ミカちゃんだけで十分な気がしますが」

「構わん」

「りょうか~い」

 

 キャロルの言葉にガリィはニマァっといやらしい笑みを浮かべ、カラコロと可愛らしい音を立てながらシャトーの最奥へと下りて行った。




オートスコアラーの名前の法則は、属性に関係のある天使の名前と、トランプのスートです。
天使の名前は正直、こじつけと言うか連想ゲームなので意味がつながれば使う錬金術も戦い方も想像できてしまうと言うね。

因みにフルネームは『XMH_666 ルシフ・バウアーズ』です。彼女の細かな設定は最後の幕間にでも。

私の貧困なボキャブラリーではこれ以上いい名前が思いつかんかったんや。ゆるしてくれ。
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