戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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前話の最後と少しだけ繋がっています。
やめてくれよ……。ハリーポッターに鬼滅の刃も書きたいのに、防御全振りまでネタが思い浮かんで書きたくなってきたジャマイカ……。やめてくれよ……。ネタが渋滞起こしてんだよ……。特にハリポタなんか伏線を滅茶苦茶張るってのに……。


こんな嘆きはシンフォギアを全編書いてからだ!まだ伏線張りっぱなしなんだぞ?!一本も回収できてねえしまだ張るってのに……。


雷の推理

 S.O.N.G.基地内のとある一室。

 そこでエルフナインからもたらされるキャロルの詳細や、その他もろもろを聴取していた。弦十郎と装者全員が彼女の話に聞き入っている。

 因みに雷は両掌から出血していたため、先にメディカルルームで治療を受けていた。何かわかったことや、違和感を彼女の話から感じたらすぐに話すようにと弦十郎から言われている。

 包帯やガーゼの具合を確認しながら他のメンバーと同じく話に耳を傾けた。

 

「僕は、キャロルに命じられるまま、巨大装置の建造に携わっていました。ある時アクセスしたデータベースより、この装置が世界をバラバラに解剖するものだと知ってしまい、目論見を阻止するために逃げ出してきたのです」

 

 能動的ではなくあくまで受動的……。雷は脳内でノートに書き記した。ただそれだけのことだが、この少しの違いだけで相手方、キャロルへの対応も変わるのだ。

 クリスが疑念を持ちながらも、

 

「世界をバラバラにたぁ穏やかじゃないな……」

 

 エルフナインが頷く。

 

「それを可能とするのが錬金術です。ノイズのレシピを元に作られたアルカ・ノイズを見ればわかるように、シンフォギアをはじめとする万物を分解する力は既にあり、その力を世界規模に拡大するのが建造途中の巨大装置、チフォージュ・シャトーになります」

「装置の建造に携わっていたということは、君もまた、錬金術師なのか?」

 

 翼の問いにエルフナインは、

 

「はい……。ですが、キャロルのようにすべての知識や能力を統括しているのではなく、限定した目的のためにつかられたにすぎません……」

「作られた……?」

「装置の建造に必要な、最低限の錬金知識をインストールされただけなのです」

「インストールと言ったわね?」

「必要な情報を、知識として脳に転送・複写することです」

 

 エルフナインは眉をハの字にして俯き、

 

「残念ながら、僕にインストールされた知識に計画の詳細はありません……。ですが、世界解剖の装置、チフォージュ・シャトーが完成間近だということは分かります!」

 

 彼女は身を乗り出し、感情的に、

 

「お願いです!力を貸してください!そのために僕は、ドヴェルグ=ダインの遺産をもってここまで来たのです!」

 

 そう言ってエルフナインは手に持つ匣に目を向ける。その匣の中に、複数のルーン文字によって封印された、非常に強力、もしくは危険な何かが閉じられているのだろう。

 

「ドヴェルグ=ダインの遺産……?」

「アルカ・ノイズに、錬金術師キャロルの力に、対抗しうる聖遺物……。魔剣・ダインスレイフの欠片です……!」

 

 エルフナインは匣の蓋を開け、聖遺物、ダインスレイフの刀身の欠片と思わしきものを取り出した。

 ひとしきり聴取を終え、エルフナインの身体情報を確認しようとブリッジに移動していた弦十郎だったが、雷に呼び止められた。

 

「すみません、弦十郎さん」

「ん……。すまんが先に向かっておいてくれ!」

「分かりました」

 

 装者たちを先に向かわせ、雷と共にエルフナインのところに戻っていく。他のところでもいいはずだが、エルフナインにも聞かせた方がいいと言うのだ。流石にさっき出て言ったばかりなのにすぐに戻ってきた二人にエルフナインが面食らっている。

 

「ど、どうしたんですか?」

「少し、雷君が話があるようなんでな……」

 

 雷は深呼吸して調子を整え、

 

「結論から言います。すべてはキャロルの手のひらの上です」

「ッ?!どいうことだ?!」

「そんなはずありませんッ!キャロルの放った追手から、命からがら逃げだしてきたんですよ?!」

 

 衝撃的な彼女の発言に弦十郎が驚愕し、あり得ないとエルフナインが詰め寄る。

 だが、雷は首を振り、

 

「君がキャロルの計画をデータベースから見つけ、ダインスレイフを持って逃げ出し、ここに収容されること。たぶん、その全てがキャロルの計画の一部なんだ」

「ッ」

 

 エルフナインが言葉を詰まらせ、項垂れる。何せ自分のしてきたことすべてがキャロルの計画に入っていたのだ。そうなるのも無理はない。

 弦十郎は腕を組み、唸り声を上げながら、

 

「そう結論に至った根拠は?君の事だ、当然理由があるのだろう?」

 

 はい。と雷は頷き、

 

「正直なところ、逆算なので運がよかったところもあるのですが、筋は通ってると思います。まず一つ。追っ手の戦闘能力です」

 

 そう言って一本、指を立てた。

 

「戦闘能力?」

「はい。エルフナインを追っていたオートスコアラー。あれはクリスと拮抗する程度、少なくとも彼女以上の戦闘力があります」

 

 エルフナインを追っていたオートスコアラー、レイアはクリスと互角の戦闘を繰り広げるほどの力がある。それは勝利条件が異なっていたとはいえ、交戦した雷も身に染みて理解していた。

 話を続ける。

 

「それだけの力を持っているにもかかわらず、君の殺害、および捕獲をしなかった……」

「なるほど、確かにそうだ……」

 

 弦十郎があごに手を当てた。

 

「二つ目。エルフナインが計画に触れたのが受動的だということです」

 

 そう言って二本目の指を立てる。

 

「受動的?」

「データベースを閲覧してその計画を知った、ということ自体がキャロルの手中にあるんだよ。重要な計画なら自分の頭の中だけにとどめるか、データベースに置くとしても誰にも解けないようなセキュリティーのもとに置いておくはずなんだ」

 

 エルフナインがはっと顔を上げる。思い当たる節があるらしい。

 

「それを僕が見れたということは……!」

「キャロルが意図的に見せたという方がつじつまが合うし、その計画を打破するためにはダインスレイフが必要……。というふうに見せることが出来る」

 

 なぜダインスレイフなのかは流石にわからないが、重要なのはそこではない。その聖遺物は向こう側から意図的に提供された、というのが重要なのだ。

 

「エルフナインはダインスレイフをシンフォギアに搭載するつもり、なんだよね?」

「はい……、そのつもりですが……。まさか?!」

「改良されたとしても出力上限は知られている……か」

 

 雷は頷く。そしてエルフナインの瞳を覗きこみ、

 

「おおよそ間違ってないと思うけど、どうかな?()()()()?」

「え……?」

「どういうことだ雷君……」

 

 二人は困惑を隠せない。なぜエルフナインに、さらに厳密に言えばその瞳にキャロルと呼びかけたのか?雷はさも当然のように、

 

「こんな綿密な計画を練るような奴です。何らかの手段で監視をするはず。これが通常の人間相手であれば盗聴器などを使いますが、相手は錬金術師。最も確実で最も正確に相手方の様子をうかがうならば、目で情報を一方通行に得るでしょうから」

 

 と言い放った。

 エルフナインは自分がしてきたこと、していることすべてがキャロルの手のひらの上であることを再認識し、目に涙を浮かべる。雷は彼女の頭に手を置き、撫でながら、

 

「恐らくは確認用だから気にする必要ないよ。君のやるべきことは、例えそれがキャロルの思惑通りだったとしても必要なことだから」

 

 弦十郎は拳を手のひらに打ち付け、

 

「その後は俺たちに任せろッ!今までが計画通りだったとしても、それを凌駕し、彼女の目論見を阻止して見せるッ!」

 

 それはエルフナインに言い聞かせるようにも、彼女の瞳からこちらをうかがうキャロルに宣言しているようにも見て取れた。弦十郎は不安を取り除くように豪快に笑う。そして雷もにっこりとほほ笑み、二人につられるようにエルフナインもぎこちなく笑顔を浮かべた。

 

「弦十郎さん、そろそろ行かないと……」

「それもそうだな。俺たちも向かうとしよう」

 

 弦十郎が時計を確認すると結構な時間が立っていた。二人は廊下を歩きながら、

 

「しかし、良く気づいたな?」

「もし、彼女が計画を知ったのが自分から調べつくし、間違いはないと確信して逃げ出してきたのなら。もしくは昨夜の戦闘を経験していなければ、気のせい程度で済ませていたかもしれませんでした。全部が偶然の産物ですよ」

 

 当たり前のように言っているが、普通は気づかないことだ。

 これで逆に迷いなく動くことが出来る。向こうにこちらの情報が筒抜けなのが分かった以上、包み隠さず行動がとれるようになったのは大きい。情報を意図的に制限することもできるし、こちらの出方と向こうの出方を照らし合わせて今回のように推察することも可能だ。更に強化後の最大出力を知られているのも分かったため、もしもの時に身構えておける。

 その時ふと彼女がフィーネの正体に行きついたときのことを思い出した。その時と同じように雷の頭を撫でる。

 

「わわっ。いきなりはやめてください!」

「ハハッ、すまんすまん!」

 

 口ではそう言っているが嫌ではないようだ。大人に褒められ慣れていないというのもあるだろう。ほおが緩み、にやけたような表情を浮かべている。

 二人はみんなの待つブリッジに向かって行った。




G編でなかった雷の頭脳をフルで回すとこうなる。

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