戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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こんなの読んでて面白いのかなとたびたびネガティブになる私。伏線もまったく回収できてないしね。


漆黒の烈槍と黄金の神雷

 基地の食堂で遅めの昼食をとっていたマリアは、かつてのナスターシャとの会話を思い返していた。昨夜響に言ったことが自分にはないものであることを痛感しているのだ。

 車椅子に座ったナスターシャはセレナのシンフォギア、アガートラームをマリアに差し出した。マリアはそれを受け取り、

 

「これは、セレナのアガートラーム……」

「破損したシンフォギアを作戦行動に組み込むことはありません。持っていなさい。」

 

 なぜ突然これを託されたのか、マリアは目を丸くしているとナスターシャは目を瞑り、

 

「これから、偽りを背負って戦わなければならないあなたに……、小さなお守りです……」

 

 損傷したペンダントをマリアは握りしめる。自然と涙がこぼれてきた。彼女をそれを胸に当て、

 

「ありがとうマム……。大丈夫よ……。私……、セレナのように強く輝けるかな……?」

 

 その答えはいまだ見つかっていない。かちゃりと音を立てて皿にフォークが突き立てられる。照明の光を反射してフォークが特有の鈍い輝きを放った。

 

「強く……ッ?!」

 

 マリアがそう呟いたとき、食堂にアルカ・ノイズ出現のアラートが鳴り響いた。机に手をつき、がたりとそのままの勢いで椅子をどかして立ち上がると、

 

「アルカ・ノイズ……!」

 

 そのまま出入り口のほうへと駆け出していった。

 当然アルカ・ノイズの出現を検知していたブリッジは即座に出現位置の座標を絞り込む。

 

「アルカ・ノイズの出現を検知!座標絞り込みます!」

「エルフナインちゃんからの情報で、捕捉精度が格段に上がっている……!」

 

 絞り込んだ結果、アルカ・ノイズは雷たちの周囲に出現していた。モニターを見る限り、彼女はすでにケラウノスを身に纏っている。だが、状況から見て劣勢ということには変わりはない、弦十郎が歯噛みした。藤尭が、

 

「急ぎ装者たちに対応を……ッ」

「調ちゃんと切歌ちゃんのコンディションで戦闘行為は無謀です!使用可能なギアがない以上、翼さん、クリスちゃん、マリアさんだって出せませんッ!」

 

 そう、現状リンカーなしでまともな運用ができるのはガングニールとケラウノスの二基のみ。後手に回らざるを得ない立ち回りの状況的にも、戦力やその頭数的にも圧倒的に分が悪い。

 

「まともにギアを運用できるのは、響君と雷君のみ……」

 

 そしてその頼みの綱であるギアを纏える装者のうちの一人、響はガングニールを起動できない状態であった。その情報は即座に司令部にも入ってくる。

 

「歌わないのではなく……」

「歌えないの……?」

 

 この不測の事態に対応すべく、弦十郎は緒川に指示を飛ばした。

 

「緒川ッ!」

「心得ていますッ!」

 

 これぞまさしくツーカーと言うのだろう。彼が何を言わんとしているのかを即座に察し、緒川は行動に移した。こういった場面においては弦十郎よりも緒川のほうが適任と言える。それを知っての指示だ。彼が司令部を飛び出そうとすると同時に、反対側からマリアが現れた。危うく正面衝突しそうになったが、お互いに立ち止まり、マリアが道を譲りながら、

 

「一体何がッ?!」

「響さん達の援護に向かいますッ!」

 

 そう言ってすぐに駆け出していった。そしてマリアもその後をついていく。

 

○○○

 

 守るべき対象が増えたことで状況はさらに劣勢になった。現状においての最優先事項は響や未来たちの生存。その為、雷は何時でも防御に移れるようにユニットを展開した。だが、下手に相手を刺激してしまえば即座に攻撃を喰らうのもあり得る話。故に展開はしたものの稲妻は放出しない。

 

「なんで……聖詠が浮かばないんだ……」

 

 響の言葉を聞き流しながら状況を打破する方法を考えるが、雷一人の身では難易度が高い。オートスコアラーだけならば兎角、アルカ・ノイズの存在はあまりにも大きい。最悪の場合ケラウノスまで分解され、全員が全員抵抗もできずに塵へと変えられてしまうだろう。

 そんな彼女たちを見てガリィはあくどい笑みを浮かべながら、

 

(ギアを纏っているのはレイアが言っていたアイツのみ。マスターからアイツはルシフに相手をさせるって厳命されてるし……ここは試しに、仲良しこよしを粉と引いてみるべきか……?)

 

 彼女にとって最優先破壊対象はガングニール。ならば響がギアを纏わざるを得ない状況へと持っていけばいい。アルカ・ノイズに指示を出そうとしたその時、

 

「あぁまどろっこしいなぁ……」

 

 突然詩織が口を開いた。それも普段の彼女とはかけ離れた粗暴な口調でだ。思わず全員が詩織のほうを向いてしまう。彼女は数歩前へ踏み出し、

 

「アンタと立花たちがどんな関係か知らんけど、だらだらやんのならアタシら巻き込まないでくれる?」

「お前こいつらの仲間じゃないのか……?」

「じょーだん!偶々帰り道が同じだけ……。ホラ、道を開けなよ」

「ッ……」

 

 ガリィは苛立ちながらアルカ・ノイズを後退させる。

 その瞬間、雷は詩織の作戦を理解し、自身の策に組み込んだ。これでケラウノスを失ったとしてもガングニールは残る。

 ニヤリとほくそえみ、

 

「走って!」

「行くよ!」

 

 彼女の言葉を合図に創世が未来の手を掴み、アルカ・ノイズの間を縫って走り出した。彼女たちを守るために雷が電磁波を飛ばしてレーダーにしながら最後尾を走る。

 弓美が走りながら、

 

「アンタって、変たところで度胸あるわよね!」

「去年の学祭もテンション違ったし!」

 

 電光刑事バンのオープニングを歌った時の事だろう。あの時も詩織は謎のハイテンションで歌っていた。少々状況を掴めていない未来が、

 

「さっきのはお芝居?!」

「たまには私達が、ビッキーとライライを助けたっていいじゃない!」

「我ながら、ナイスな作戦でした!

「ホント助かったよ!詩織のおかげで先に繋げられた!……ッ?!来るよッ!」

 

 少しだけ表情を緩めていた雷だったが、展開したレーダーでアルカ・ノイズに動きがあったことを捉えた。あの性悪の事だ、逃げれたと思わせてから追い詰めるのつもりだったのだろうと見切りをつけた。雷の言葉に全員の気が引き締まる。

 丁度後ろを向くとアルカ・ノイズが巻いていた腕の発光している解剖器官を伸ばしていた。周囲の街灯やベンチ、レンガの道を赤い粒子へと分解していく。ガリィはアルカ・ノイズの後を足元を錬金術で凍らせ、スケートのようにしてついて来ていた。

 

「上げて落とせば、いい加減戦うムードにでもなるんじゃないかしら?!」

「アニメじゃないんだからぁ!」

 

 雷が響に伸ばされた解剖器官を足に纏わせた斥力フィールドで迎撃する。この間の戦闘で分かったことだが、いくらエネルギーを含んだ万物を分解する力を持つと言えど、斥力と言う形無き反発力を分解することは出来ないようだ。

 そんな時、ギアの通信機から、

 

『雷!立花響からガングニールを受け取ってッ!』

「マリアッ?!わ、わかった!……響!ガングニール貸して!」

「う、うん!」

 

 二人ともいきなりの事で面食らってしうが、速やかに指示通りに動く。すると横から黒色の車がすごいスピードで回転しながら突っ込んできた。

 そこから緒川とマリアが飛び出し、

 

「雷!」

「マリア!」

 

 阿吽の呼吸で雷が思いっきりペンダントをマリアにぶん投げた。彼女は走りながらそれを片手で受け止め、

 

「Granzizel Bilfen Gungnir Zizzl」

 

 響とは異なる漆黒のガングニールを身に纏う。彼女はダブルコントラクト、ガングニールとアガートラームの二重適合者である。故にこのような芸当が可能なのだ。だが、リンカーを投与していない以上その負荷は重い。

 だが、

 

「アルカ・ノイズは任せる。オートスコアラーは私が」

「了解、マリア。マリアにはノイズなんて指一本触れさせない」

 

 

 両の手甲を組み合わせて構築した大槍を構え、同じくユニットを展開した雷と並び立った。




アルカ・ノイズに対する防御手段をケラウノスが持つためアルカ・ノイズの撃破を任せるマリアさん。
それにこたえる雷ちゃん。
信頼関係的にも能力的にもなかなかいいコンビなのではと思う。
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