戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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友人が「メイドインアビス」にハマりまして、私が「ボ卿が一番好きなキャラだ」と言うと「だろうな」と即答されてしまった……。曰くそっくりらしい……。ナズェダ……。


悩み、考え

 未来を抱えて戦線を離脱しようとしていた響だったが、そんな彼女のもとに現れた道化師のような恰好をしたオートスコアラー、ルシフ・バウアーズとの戦いに敗北し、ガングニールを破壊されてしまっていた。

 モニターには、響への興味を無くしたルシフが地面に落としたボールを拾い、再び楽し気にジャグリングをしている彼女が写っている。アルカ・ノイズこそ従えていないものの、予測のつかない彼女の動きからどのように戦況が変化するか想像がつかない。

 そしてルシフがガングニールを破壊した同じタイミングで、ミカ・ガリィコンビがテレポートジェムで姿を消した。それと連動するようにルシフも姿を消す。

 

「オートスコアラーの撤退を確認!」

「響ちゃんの救出を!」

「急行します!」

 

 緒川がブリッジを飛び出して行った。響がやられた、という報告は雷のもとにも通達されており、モニターに映る彼女も大急ぎで響のもとへ向かっている。響と未来の保護と周囲の安全確認、緒川との早急な合流が現在の彼女の任務だ。

 遂に何の制限もなしに起動できるギアがケラウノスだけとなってしまった。誰に言われるでもなくそう認識した翼とクリスが、

 

「アタシらならやれる!だから、Project IGNITEを進めてくれ!」

「強化型シンフォギアの完成を!」

 

 もとよりそのつもりだ。ガングニールかケラウノス、このどちらかが破壊されたならばすぐに実行に移れるよう、準備は進めてある。エルフナインは振り返り、モニターに映るProject IGNITEによってなされる強化型シンフォギアの姿を見据えた。

 傷ついた響を乗せたストレッチャーが本部の廊下を転がる。

 彼女のそばにはドクターを除いて未来と雷、翼、クリスがいた。

 未来は目を開けない響に必死に声をかける。

 

「響!目を開けて響!」

 

 そんな彼女の声は届かず、ドクターたちはメディカルルームへと響を収容した。

 

「響……」

「私がもっと、早く着いていれば……!」

 

 雷が自らの不甲斐なさに壁を殴りつける。その拍子に手のひらについていた傷口が開き、ガーゼに赤いシミを作り出した。そんな彼女たちの肩に、翼がそっと手を乗せる。

 

「大丈夫だ。立花ならきっと」

「たりめえだぁ!あのバカが、こんなことで退場する者かよ……!」

「その通りだ……!私達とて、このままくすぶっていられるものか!」

 

 翼が拳を握りしめる。

 響の先達として戦うことのできなかった自分を不甲斐なく思う。声には静かな怒りがこもっていた。

 

○○○

 

 テストの練習でピアノ伴奏をしている未来は、ピアノを弾きながら心ここにあらずと言う表情を浮かべていた。自分の親友たちのことが頭から離れないのだ。

 響が敗北してから一週間がたっている。

 

(あれからもう一週間……。ずっと眠ったままの響、目が覚めて、胸の歌が壊されたことを知ったら、どう思うのだろう……)

 

 そして未来は教室の中の一席、一週間ずっとあいたままの椅子を寂し気に見つめた。雷の席だ。

 彼女は響の歌が壊されたのは自分の所為だと己を責め、本部の一室にこもってこれからの事を必死に思案していた。そのためノートやメモ帳にとどまらず、壁や床一面に呪詛のように、文字や計算式が書きなぐられている。またエルフナインと協力してProject IGNITEの理論構築をも行っていた。

 

(雷……。貴方がいなくなるのは、もう嫌だよ……。あんな悲しい思い、したくない……)

 

 自分を閉ざし、過去の殻に閉じこもってしまった雷の姿を思い出す。

 気持ちが沈み、ピアノを弾く指が止まってしまった。

 そんな未来を見て、

 

「心ここにあらず、と言ったところですね」

「あ……あ、いえ。……すみません……」

「小日向さんは、試験の日まで悩み事を解決しておくように。では、次の人」

 

 担当の教師が優しく問題点―問題点と言うようなものではないが―を指摘し、交代させた。

 

○○○

 

 寄港し、物資の補給やメンテナンスを行っている本部潜水艦のブリッジで、Project IGNITEの進捗や整備の進み具合が報告されていた。

 

「Project IGNITE。現在の進捗は89%。旧二課が保有していた第一号、および第二号聖遺物のデータと、エルフナインちゃん、雷ちゃんの頑張りのおかげで予定よりずっと早い進行です」

「各動力部のメンテナンスと重なって、一時はどうなることかと思いましたが、作業や本部機能の維持に必要なエネルギーは、外部から供給できたのが幸いでした」

「それにしても、シンフォギアの改修となれば機密の中枢に触れるということなのに」

 

 緒川が当然の疑問を口にした。

 雷と言う関係者がいるとはいえ、まったくの部外者であるエルフナインにシンフォギアシステムの全貌を公開することになるのだ。しかも、そのシステム内容はキャロルに筒抜けになっている。それでも、

 

「状況が状況だからな……。それに、八紘兄貴の口利きもあった」

「八紘兄貴って……誰だ?」

 

 突然出てきた人名にクリスがオウム返しに弦十郎に聞くが、それよりも先に翼が答えた。

 

「限りなく非合法に近い実行力を持って、安全保障を陰から支える政府要人の一人。超法規措置による対応のねじ込みなど、彼にとっては茶飯事であり……」

「とどのつまりが何なんだ?!」

 

 あまりにも淡々とその人物の概要を述べるだけの翼に、業を煮やしたクリスが詰め寄った。翼はスッと視線を外す。

 そしてそんな彼女に変わって緒川が二の句を紡いだ。

 

「内閣情報官、風鳴八紘。指令の兄上であり、翼さんの御父上です」

「だったらはじめっからそう言えよな!蒟蒻問答が過ぎるんだよ!」

「私のS.O.N.G.編入を後押ししてくれたのも、確かその人物なのだけど……、なるほど、やはり親族だったのね」

 

 風鳴という名字がほとんどないため、マリアは翼や弦十郎の関係者なのではと疑っていたようだが、如何やら的を射ていたようだ。

 だが、父親の話をしているというのに翼の表情は芳しくない。

 

「どうしたの?」

 

 マリアの声に翼は答えない。そんな彼女を見て弦十郎は頭をかいた。

 背後でドアが開く音がすると、未来が歩いてきた。

 

「響と雷の様子を見てきました」

「響さんは生命維持装置に繋がれたままですが、大きな外傷もありません。雷さんのほうはマリアさん達の励ましもあって落ち着きましたし、ああ見えてしっかりと休息をとっているようなので心配ありませんよ」

 

 響のほうも心配だったが、雷が体を壊さないのか心配だった未来は彼の報告を聞いて安堵した。如何やら食事はともかく休息、睡眠は年齢の割に少ない程度のようだ。

 

「ありがとうございます……」

 

 未来は眉をハの字にし、少し寂しそうに言った。

 

○○○

 

 試験管やフラスコが並ぶ木でできたテーブル、石でできた壁。地面に描かれた化学式や地面に転がる錬金術に使う材料。

 中世ヨーロッパの時代。この家に今と変わらぬ姿の幼きキャロルと彼女の父、イザークが二人で住んでいた。

 キャロルが分厚い本を読んでいると、イザークの悲鳴と共に小さな爆発音が聞こえてきた。思わず肩を跳ねさせ、驚いてしまう。

 

「パパ?」

「……爆発したぞぉ?」

「……ウフフフフッ」

 

 顔を黒くしたイザークを見て、キャロルはおかしくなって吹き出してしまった。

 本を片付け、テーブルに戻ってみると、目の前には焦げた肉のようなものとパン、スープが並べられていた。キャロルは恐る恐るフォークを刺し、ナイフで切り取った。

 お世辞にも良いとは言えない肉の感触に、キャロルはイザークに「本当に食べれるの?」と言うように視線を向けた。苦笑いしか向けない彼の反応に意を決して口へと運ぶ。

 

「はむ……んぅ?!」

「っ……。うまいか……?」

「苦いし臭いし美味しくないし、零点としか言いようがないし」

 

 キャロルはフォークで空中に零と書いた。覚悟はしていたが、娘の辛辣な返事に溜息をつき、背もたれに体を預けた。

 

「料理も錬金術も、レシピ通りに作れば間違いないはずなんだけどなぁ……。どおしてママみたいにできないのか……」

 

 イザークが天井を見上げていると、キャロルがにこやかな笑顔を浮かべて椅子から立ち上がった。彼女は腰に手を当て、無い胸を張ると、

 

「明日は私が作る!その方が絶対美味しいに決まってる!」

「コツでもあるのか……?」

「内緒。秘密はパパが解き明かして、錬金術師なんでしょ?」

 

 口元に指を立てて笑った。

 そんな娘の言い様にイザークは一本取られたなと言うように頭に手を当て、

 

「アハハハ……、この命題は難題だ」

「問題が解けるまで、私がパパの料理を作ってあげる」

 

 楽しそうにキャロルが笑う。

 そんな光景はだんだんぼやけてきて、エルフナインは現実に引き戻された。うっすらと目を開ける。白い無機質な天井と、さっきまで自分が読んでいた本を読んでいる少女が目に入ってきた。体が近いことから、如何やら膝枕されているようだ。

 

「ん……夢……?数百年を経たキャロルの記憶……」

「あ、起きた?」

 

 膝枕をしていた少女、雷が本をずらし、こちらに微笑みを向けてきた。彼女はエルフナインを手伝うためにこの部屋にやって来ている。目元にうっすらと隈があることから、少々無理をしているのだろう。

 おもむろに視界を時計のほうへ動かすと、十分ほど眠っていたようだ。慌てて跳び起きる。当然、予想外のタイミングで起き上がってきたエルフナインを避けることが出来ず、下を向いていた雷は彼女と額をぶつけてしまった。

 

「すみません!十分そこら寝落ちてました!……痛いッ?!」

「痛った~……。十五分経ったら起こすつもりだったんだけど、大丈夫?」

「こっちは大丈夫です、すみません。でも十分寝たんで、頭は冴えた筈です!ギアの改修を急がないと」

 

 エルフナインは額を抑えながら起き上がり、修復中の天羽々斬と向き合った。雷も椅子を動かし、キャロルの行動予測と理論の精錬を図る。

 エルフナインは自身の記憶の中にあるキャロルの記憶がよみがえる。

 

(パパは何を告げようとしたのかな……?その答えを知りたくて、僕はキャロルから世界を守ると決めて……。でも、どうしてキャロルは錬金術だけでなく、自分の思い出まで僕に転送複写したのだろう……?)

 

 エルフナインが答を探す一方で、雷はキャロルは何時動くのかを考えていた。

 ケラウノスを残して主力のギアが全て損傷した今、ガングニールを破壊したルシフと戦闘特化のミカで攻撃を仕掛けてくるであろうことは予測し、弦十郎に伝えていた。

 

(ダインスレイフをこちらに提供した以上、強化型シンフォギアの完成が目安となるのは確実。私なら稼働可能ギアの抵抗を含めて、慣らしもなしにぶっつけ本番にならざるを得ない今を選択するけど……)

 

 そして今日この日が、彼女が最も襲撃確率の高いタイミングであると予測した日であった。

 

○○○

 

「頃合いだ、仕上げるぞ」

 

 チフォージュ・シャトーの玉座に座するキャロルは、エルフナインから送られるギアの改修具合を見て、呟くように宣言した。

 雷の予測が的中する。

 本部のモニターにアルカ・ノイズ出現のアラートが鳴り響いた。




『StrikeAssault Ready?』
 Assault・Force使用時の楽曲。英語の歌詞が多く、全体の三分の一が英語。因みに前回の響との合図に使われたReady Goは歌詞でもある。

今回の雷とキャロルの頭脳戦は雷に軍配が上がりました。ですがまあ、次回はギア破壊回ですよ。ええ。
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