戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
ミカ戦とは同時進行なので雷と切歌たちの掛け合いは少なめ、大体どのタイミングなのかはわかるようにしています。
タイトル決めが一番難しい……!
友里が調と切歌のバイタルを確認しているが、今までとは異なる点があった。
「シュルシャガナとイガリマ、装者二人のバイタル安定……?ギアからのバックファイアが低く抑えられています」
「一体どういうことなんだ?」
共に戦っている正規適合者である雷はともかく、調と切歌はギアを纏うには適合係数が足りていないため、体に少なくない反動があった。かつてであればウェルの開発したリンカーで反動を抑制していたのだが、今はそんなものは無く、ここまで安定するのはあり得ないことだ。
当然、突然適合率が上がるなんてことはなく、後天的に正規適合者となった響でさえ、元々が融合症例であったからこそ成し得た例外中の例外なのだ。
心当たりのあった緒川が口を開いた。
「さっきの警報……そういうことでしたか……」
「ああ……。アイツ等メディカルルームからリンカーを持ち出しやがったッ……!」
「まさかmodel_Kを……?!奏の残したリンカーを……」
model_K。かつてのガングニール装者、天羽奏用に調整されたリンカー。ウェルの開発した物よりも旧式であるため、体への負担が大きく、危険度が高い。それを彼女たちは使用したのだ。
姉さんが知ったら怒るだろうな。と思いながら(実際、後回しにしているだけで、すでに雷はカンカンに怒っている)、それでも調達はこの危険度の高いリンカーを打ち込んだのだ。
「ギアの改修が終わるまで!」
「発電所は守って見せるデス!」
○○○
チフォージュ・シャトー城内で玉座に鎮座しながら、キャロルは各地のの発電施設襲撃をモニターしていた。各地ではそれぞれオートスコアラーが破壊任務に就いている。
レイアが、
「対象、派手に破壊完了……」
ガリィが、
「まるで積み木のお城。レイアちゃんの妹に手伝ってもらうまでもないわね」
ファラが、各々の錬金術でもってして破壊の限りを尽くしていく。しかもそれに無駄な動きはなく、最小限の動きで最大限の被害をもたらしていた。
彼女が主であるキャロルに報告のため、錬金術による通信を繋いだ。
『該当エリアのエネルギー総量が低下中。まもなく目標数値に到達しますわ』
「レイラインの解放は任せる。オレは、最後に仕上げに取り掛かる」
キャロルが事を起こすために玉座から立ち上がる。
『いよいよ始まるのですね……』
「いよいよ終わるのだ。そして万象は、黙示録に記される」
本部の停泊している基地では、遂にミカが動いた。
カーボンロッドを携え、上空から切歌に殴りかかる。
「そ~りゃ~!」
「ッ?!」
その一撃こそ受け止めてしのいだものの、彼女の圧倒的な出力によって上から抑え込まれてしまう。そしてそこに調が救援に入り込もうとしたが、それをミカが読んでいたのかもう片方の腕からもロッドを取り出し、ゴルフのように切歌をぶつけた。
突然のことに防御姿勢も避けることもできず、二人はまとまって吹き飛ばされ、基地の外壁に叩きつけられてしまう。
突然のミカの強襲に雷も反応できず、
「切ちゃん?!しらちゃん?!」
「あ痛たたた……」
「簡単にはいかせてもらえない……!」
大したけがはないようだ。襲撃してきたオートスコアラー、ミカを雷が見据える。
彼女はさらにもう一本ロッドを取り出し、その上にやじろべえのように乗っていた。
「じゃりんこ共~、あたしは強いゾ~」
「私が相手になってやるッ……!」
ユニットを展開し構えるが、ミカはどこか不思議そうな表情を浮かべている。そしてとなりを見て誰もいないことを確認すると、不機嫌そうな声でさっきまで自分のいたところを見上げて言った。
「何してるんだルシフ~!早く下りてくるんだゾ!」
「はいはⅠ……☆。下りればいいんでしょ、下りれBA……☆」
「ルシフ……!」
ルシフはまたもジャグリングしながら、気だるげな雰囲気を纏って勢い良く落下してきた。しかし、落下の衝撃を感じている様子はない。エルフナインの情報通り衝撃をエネルギーに変換しているようだ。彼女は平然とジャグリングを続けている。
「君の相手はボクNE~☆どこからでもかかってきなさ~Ⅰ☆」
「切ちゃん、しらちゃん……。任せた」
「了解デス!」
「任せて……!」
彼女たちは向かい合い、さらに追加でリンカーを投与する。オーバードーズで鼻血が出ようとも、それでも彼女たちは償いのために戦うと決めたのだ。
切歌は鎌を二本取り出し、融合させることで三日月型の刃を両端につけた特殊な鎌を形成する。
『対鎌・螺Pぅn痛ェる』
調はツインテールのバインダーを変形させ、先端部分に高速回転する大型の鋸を回転させたアームへと形を変えた。
二人は並び立ち、ミカへと立ち向かう。
「お?!おもしろくしてくれるのか~?!」
ミカは跳躍し、両手のロッドを投擲した。
調と切歌、二人の歌が重なり、フォニックゲインを上昇させてミカと激突する。
雷はユニットから稲妻を放出したまま、未だにジャグリングを続けているルシフと対峙する。彼女はニタニタと笑みを浮かべながら、
「じゃ、ミカも戦ってることですSI☆こっちもやりますKA☆!」
「なッ?!」
そういうや否やルシフは投げていたクラブを放り捨て、着地の際に吸収した衝撃を利用して一気に詰め寄った。踏み込みの力と進んだ距離があまりにも違いすぎるため、雷の脳に混乱を生んだ。故に、反射的に拳を振り抜いてしまう。
だが、これは彼女にとって悪手だ。
ルシフは指一本で雷の拳を受け止め、吸収した威力を自らの力へと転化する。そして流れるようにブレイクダンスのウインドミルのような動きで雷の足を払った。
が、簡単に倒れるような彼女ではない。払われる直前にバク転で距離をとると、ルシフの錬金術を攻略すべく思考を回す。
(エーテル……。アリストテレスの提唱した天体運航を司る永遠に回転し続ける物質……。恐らく受けた衝撃を、体内の器官で回転させることで反射しているはず。打撃はダメ……、なら雷の攻撃なら?)
やってみるしかないだろう。
雷はバックステップで距離をとった後、全身のユニットから放たれるの稲妻をヘッドギアに集約し、一気に放射した。
『天雷白毫』
アルカ・ノイズの解剖器官ですら分解しきれないほどのエネルギー量を誇る一撃だ。これがだめなら稲妻だけの攻撃は全て無に帰すだろう。
だが、周囲が光り輝き、地面が熱で沸騰するほどの稲妻の奔流であろうとも、ルシフは健在だった。しかもただ健在というだけではない。放射されている稲妻を真正面から押し返していた。いや、彼女からすれば普通に歩くのと大差ないだろう。
ルシフは遂に雷の前に立ち、
「ざぁんねんでしTA~☆」
「嘘……でしょ……」
無造作に胸のコンバータユニットを掴みかかった。
咄嗟に腕を流したことで回避できたが、彼女の脳内に暗い影を落とす。
(打撃も駄目、雷も駄目……?どうすればいいの……)
すべての攻撃が無意味。それどころかこちらの首を絞めるだけ。解決できない問題が混乱を生み、混乱が理解不能を生み、理解不能が恐怖を生む。
この世は何がヒントになるのかわからないものだ。雷は混乱し、回転する問題そのものに答えを見出した。
(回転……、そうだ!それだ!)
「O☆?ついにやる気になっTA☆?」
「来なよ……!」
「じゃあ遠慮なKU☆!」
雷の放った稲妻のエネルギーを力にしたルシフは、その圧倒的な威力でもって雷に殴りかかった。雷はそれを避けようともせず、真正面から迎え撃つ。
通信機から藤尭達の声がうるさいほど聞こえてくる。
『駄目だ雷ちゃん!避けないと!』
『雷ちゃんの体が壊れてしまうわ!』
それでも避けない。
雷は迫りくる拳を右手で流し、左手でルシフのほうに向けて押し込んだ。本来ならあり得ない動きであるが、ルシフの拳が速かったために出来たことだ。ルシフは自らの拳を鳩尾に喰らってしまう。
「ぐッ?!……マスタァ以外にダメージを与えられるとは思ってもみなかったYO……☆」
「やった……!」
ダメージは入ったようだ。
如何やら自分で放ったものは取り込むことが出来ないらしい。攻略の一手に見えたが、かなりギリギリの条件だ。自分が受け流せるだけの威力を持ちながら、ルシフが途中で攻撃をキャンセルできない程度の威力でなければならない。当然、彼女も対策をとってくるだろう。
頬に汗が伝う。ルシフを見据えたまま深呼吸を入れた。
(集中を切らすなッ……!切れれば終わるッ……!)
自分に気合を入れる、その瞬間だった。突然、発電用のパネルが大爆発を起こした。丁度そこで調達とミカが交戦していたのだ。調と切歌が爆発で吹き飛ばされる。
「「きゃあぁぁぁぁッ!」」
「しらちゃん?!切ちゃん?!」
雷と言う少女は身内に対して非情になれない質だった。聞こえてきた彼女たちの悲鳴に思わず反応してしまう。
それが命取りとなった。
「よそ見してる場合かNA☆?」
「しまっ?!」
すでにルシフは目の前にやって来ていた。彼女の放ったつま先での蹴りを横から喉を貫くように喰らってしまい、頭から吹き飛ばされる。
「カハッ……」
「一発入れられちゃったけど、それだけだったNE……☆」
ルシフは無造作に雷の首を掴んで持ち上げ、歌えなくした。最後の手段である絶唱すら封じられてしまった雷は暴れるが、全てルシフの力になるだけだ。その証拠に、締め付ける力が強くなっている。
空いたもう片方の手でコンバーターユニットを掴んだ。
「ほらほRA☆、抵抗しないと壊れちゃうYO~☆ま、抵抗したところで無駄なんだけどNE☆?」
ルシフは嬲るように、ゆっくりとコンバーターを壊していく。
雷の意識が死で埋め尽くされ、混濁していく。
切歌のイガリマも、ミカによって破壊された。
本部ブリッジでは、未来が悲鳴を上げ、マリアが怒りに震えていた。メディカルルームからやって来ていた響もこぶしを握り締めている。
「雷っ……」
「切歌!雷!……私に力さえあれば……!」
弦十郎や緒川も助けに出たかったが、ミカが召喚した無数のアルカ・ノイズ。ルシフの錬金術によって手を出せないでいた。
友里が叫ぶ。
「雷ちゃんの意識レベル、急速に低下していますッ!」
「何だとッ?!まさか……」
「雷ちゃんのフォニックゲイン、意識レベルと反比例して急速に上昇していますッ!」
藤尭の言葉に本部が揺れた。
フォニックゲインの上昇を証明するように、雷の纏うギア、その灰色の部分が金色に発光し始める。すでに雷の意識はない。それでも、彼女の生存本能に反応してケラウノスの決戦機能『雷帝顕現』が発動しようとしていた。
だが、ケラウノスの放つ絶唱を軽く凌駕する膨大なフォニックゲインに、半壊したコンバーターが耐えきれるわけがない。ギアとしての形を保つことが出来ず、崩壊し雷は一糸まとわぬ姿となってしまう。
「もうちょっと楽しませてくれると思ったんだけどNA~☆」
変化を見せたケラウノスを見て、楽し気に目を輝かせていたルシフだったが、興味を無くしたのかぽいっと雷の体を放り投げた。
雷の体が地面を転がる。
切歌のイガリマもミカによって破壊され、調のシュルシャガナはアルカ・ノイズの蹂躙によって分解されていた。
すべてが万事休すだった。
「誰か……調を……。誰かぁぁぁぁッ!」
適合係数の低さからターゲットにされた調に、アルカ・ノイズが触れようとした、その時だった。思わず目を瞑っていた切歌だったが、何時まで経っても調の悲鳴が聞こえてこない。恐る恐る目を開けると、アルカ・ノイズの解剖器官が切断され、ハチの巣になっていた。調も震えながら目を開けた。
「え……?」
「誰かだなんて、連れねえこと言ってくれるなよ」
見覚えのある剣が煌めき、安心させるようなクリスの声が聞こえてきた。
「剣……?」
「ああ、振り抜けば風が鳴る剣だッ!」
翼が剣をふるい、アルカ・ノイズが赤い粒子へと姿を変える。
強化型シンフォギアへの改修が完了した。三人の戦いは、無駄ではなかったのだ。
ルシフやっぱ強いですわ。急遽弱点を追加したくらいですもん。(弱点とは言えない弱点)
因みにキャロルは彼女を瞬殺できます。まあ、逆回転のエーテル叩きこめば無効化できますしね。