戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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すみません!誤解を招くような書き方をしてしまって申し訳ないです!
雷のイグナイトはもうちょっと後です!



呪いの旋律を身に纏い

 イグナイトが不発に終わった翼とクリスを焚きつけるため、キャロルが地に這いつくばる二人に向かって歩を進める。

 

「尽きたのか……あるいは折れたのか……、いずれにせよ立ち上がる力ぐらいはオレがくれてやる……!」

 

 頭上にアルカ・ノイズを召喚するためのジェムをばら撒く。

 彼女の行動は、イグナイトモジュールによって強化されたギアで倒されることを望むようであった。キャロルに投げられ、空中で割れたジェムから錬金陣が展開される。そこから四足歩行する動物のような母艦型のアルカ・ノイズが姿を現し、その足のような部分にある穴から無数の航空型アルカ・ノイズが飛び出してきた。

 翼がこの光景を見て歯噛みする。

 

(くッ……!ここにきて、アルカ・ノイズを……!)

 

 航空型アルカ・ノイズは翼を回転させ、カッターのようにして街へと降り注いだ。

 アルカ・ノイズによって分解された建物から赤い煙が巻き上がり、二次災害にて大爆発を引き起こす。翼たちは立ち上がることが出来ず、見ることしか出来ない。そんな二人をキャロルが煽る。

 

「いつまでも地べたに膝をついていては、市街の被害は抑えられまい……」

 

 全身の痛みはまだ残っている。それでも、キャロルの攻撃から街を守るために歯を食いしばり、懸命に立ち上がる。

 

(手をつく力をッ……!)

(奴に突き立てる牙をッ……!)

 

 何とか立ち上がった二人だが、戦えるような状態ではない。立っているだけでふらつき、痛みを堪えるのが精いっぱいだ。

 そんな翼たちにとどめを刺さず、キャロルはさらに街に被害を加えることで焚きつける。

 

「歌えないのなら……、分解される者共の悲鳴をそこで聞けぇッ!」

 

 その言葉の通り、街へのアルカ・ノイズの攻撃はさらに苛烈になっていく。市街は赤い煙と爆炎に包まれ、逃げ切れなかった人々の悲鳴がそこかしこで響く。

 そんな中、クリスだけが背後から聞こえてくるミサイルの推進音に気づいた。後ろを向くと、本部潜水艦から五発のミサイルが放たれている。その中の一発に改修され、イグナイトモジュールを搭載して強化型シンフォギアとなったガングニールを身に纏い、サーフィンのようにミサイルを乗りこなす響の姿があった。

 彼女は雄たけびを上げながら、ギアの腕部バンカーユニットを限界まで引き出し、ミサイルに乗りながら母艦型アルカ・ノイズを殴りつけた。ユニットによって発生した衝撃波がアルカ・ノイズを貫く。乗ってきたミサイルが圧壊し、爆発する直前で響は飛び下りる。残りのミサイルは、母艦型を避けてほかの航空型アルカ・ノイズを巻き込んで爆発する。

 

「漸く揃うか……」

 

 先ほどルシフによって破壊されたケラウノスを除き、これで主力のシンフォギア装者が全員揃った状態だ。

 翼とクリスの目の前で響が着地する。

 

「すまないッ……!おかげで助かったッ……!」

「とんだ醜態を見せちまったけどよぉ……!」

「イグナイトモジュール……もう一度やってみましょう!」

 

 響の提案した再抜剣に翼たちは苦い顔をする。

 さっき失敗したばかりなのだ、不安になるのも仕方のないこと。それでも響は引くわけにはいかない。現状、キャロルを倒すにはそれしかないのだから。

 

「未来が教えてくれたんです!自分はシンフォギアの力に救われたって、この力が、本当に誰かを救う力なら、身に纏った私達だって、きっと救ってくれるはずッ!だから強く信じるんですッ!ダインスレイフの呪いを破るのは……!」

「いつも一緒だった、天羽々斬ッ……!」

「アタシを変えてくれた、イチイバルッ……!」

「そしてガングニールッ!」

 

 三人は向き合い、決意を固める。

 

「信じようッ!胸の歌をッ!シンフォギアをッ!」

「フッ……、この馬鹿に乗せられたみたいでカッコつかないが……」

「もう一度行くぞッ……!」

「イグナイトモジュールッ!」

「「「抜剣ッ!」」」

 

 翼の声で装者三人がコンバーターのウイングスイッチをいれ、ギアから取り外して掲げる。掲げられたコンバーターが赤く輝き、モジュールが起動したことを示した。それを証明するように、コンバーターから無機質な『ダインスレイフ』と言う音声が聞こえてくる。

 取り外されたコンバーターは空中で変形し、光の刃を装者たちに突きつけた。そしてそれは勢いよく彼女たちの胸を刺し貫き、ダインスレイフの漆黒の呪いが心に流れ込んでいく。響、翼、クリスの中を勢いよく駆け回る。

 ブリッジはその様子をモニタリングしていた。

 気を取り戻した雷が切歌と調の肩を借りながら、ゆっくりとした足取りでやって来た。

 

「このままではさっきのように……!」

 

 友里の懸念はもっともだ。だが、

 

「呪いなど斬り裂けッ!」

「撃ち抜くんデスッ!」

「恐れずに砕けばきっとッ……!」

 

 未来と雷は何も言わず、未来は黙ってモニターを見つめ、雷は静かに微笑んだ。響ならやってくれると、確信を持って。

 響はダインスレイフの呪いに抗いながら、

 

(未来が教えてくれたんだ……!力の意味を……!背負う覚悟を……!だからこの衝動に塗りつぶされてッ……)

(((なるものかぁッ―!)))

 

 ついに彼女たちはダインスレイフの呪いをねじ伏せ、我が力へと変えた。

 ギアの一部がはじけ飛び、全身を呪いの力が覆いつくす。そしてギアの所々が禍々しく鋭角的に変化し、黒く攻撃的なシンフォギアへと形を変えた。

 三人は黒色の燐光を纏いながら、それぞれがアームドギアを構えて打つべき敵を見据える。

 

「モジュール稼働!セーフティダウンまでのカウント、開始します!」

 

 藤尭の言葉通り、モニターに『999』カウントが表示された。

 マリアが手のひらの損傷したアガートラームを握りしめ、念じる。

 

(悪を貫く強さを……!)

 

 キャロルはバックジャンプで距離をとりながら無数のアルカ・ノイズを召喚した。

 その総数、約三千。だが、今の響たちにとっては道端に転がる小石も同じ。勢いを落とすことなく、響はど真ん中に突進を仕掛ける。そして黒く染まったバンカーユニットを展開し、真っ向から殴り抜き、貫いた。

 翼は通常よりも長大な刀を頭上に掲げる。すると刀身が展開し、中から青いエネルギーが放出された。そして翼は勢いよく振り下ろす。

 

       『蒼ノ一閃』

 

 放たれた一閃はアルカ・ノイズの群れをたやすく刈り取り、さらには大型のアルカ・ノイズまでも真っ二つに両断する。

 クリスは腰部の小型ミサイルの装填されたアーマーを、さらには背部から四本の大型ミサイルを展開し、全弾正面のアルカ・ノイズに向けて解き放った。

 

       『MEGA DETH QUARTET』

 

 この技は本来であればエネルギーチャージに時間がかかるのだが、イグナイトの力によって出力の高まっている今では発動することなど造作もない。その圧倒的な火力でもって地上だけでなく、大型ミサイルからばら撒かれた小型ミサイルによって空中に存在するアルカ・ノイズまでも消し飛ばした。

 キャロルは『ダインスレイフ』の力を使いこなす響たちを見て歓喜し、

 

「臍下あたりがむず痒いッ!」

 

 跳躍してアルカ・ノイズもろとも響を切り裂きにかかった。更にクリスにもエーテルの錬金術を撃ち放つ。

 

「強大なキャロルの錬金術……ですが、装者たちもまた、それに対抗できる力を……!」

 

 確かに緒川の言う通り、今のところキャロルに対抗できる力を得ただろう。だが、すでに分かっているのだ。この力の限界を知られているということを。それでも、現状を一つ打破出来たということには喜びを禁じ得ない。

 未来と雷は戦う響を見つめながら、

 

(それでも響は、傷つけ傷つく痛みに、隠れて泣いている。戦える雷と違って私は何もできないけれど、響の笑顔も、その裏にある涙も、拳に包んだ優しさも、全部抱きしめて見せる……!)

(私には響を抱きしめれないけど、戦えない未来の代わりに、響の隣に立つことは出来る。彼女の背負う痛みや悲しみを、少しでも受け止めて見せる……!)

((だからッ……!))

「「負けるなッ―!」」

 

 彼女たちの思いが伝わったのか、響は腕に巻きつけられた弦を引っ張ることで逆にキャロルを手繰り寄せる。

 

「稲妻を喰らえッー!」

 

 ブリッジに弦十郎の声が響く。

 それに呼応するように翼がキャロルに斬撃を、クリスが強大な矢を放った。キャロルは弦を束ねてそれらを粉砕するが、その隙をついて響が炎を纏い、火球となってキャロルに突撃した。

 彼女は受け止めるが、イグナイトによって強化された出力差によって強引に押し込まれ、周囲の設備を巻き込みながら、鳩尾に拳を喰らったまま基地の外壁に叩きつけられた。ダウルダブラのファウストローブもダメージに耐えきれず、ボロボロになってしまっている。

 響は追撃の手を止めず、空中から腕部と脚部のブースターを点火し、落下する速度も併せて飛び蹴りを放った。衝撃で大爆発が引き起こされ、煙が晴れる。そこには漆黒のギアを纏った響と、ファウストローブを纏う前の幼い姿に戻り、腹部から血を流して瓦礫にもたれかかるキャロルがいた。

 ブリッジで状況を確認してる調と切歌は笑顔で向かい合い、

 

「勝ったの……?」

「デスデス、デース!」

 

 かわいらしい謎の雄たけびを上げた。

 響は大粒の汗をかきながら肩で息をし、キャロルは息も絶え絶えだ。

 

「キャロル……」

 

 エルフナインはこれがキャロルの計画の第一段階だと分かっていても、それでも彼女の痛ましい姿に思わずこぼしてしまう。

 響はキャロルに歩み寄り、手を差し伸べた。

 

「キャロルちゃん……。どうして、世界をバラバラにしようなんて……」

 

 響が差し伸べた手は、すげなく払われてしまう。

 

「忘れたよ……理由なんて……。思い出を焼却、戦う力と変えた時に……」

「……」

 

 響は何も答えない。

 キャロルは様々な感情がごちゃ混ぜになった瞳を響に向け、

 

「その呪われた旋律で誰かを救えるなどと思いあがるな……!」

「っ」

 

 その時、キャロルはニヤリと笑った後、奥歯をかみしめた。彼女の体がゆっくりと倒れ込む。

 

「キャロルちゃん?……キャロルちゃんッ?!」

 

 そして地面に倒れ伏すと、キャロルの体は真っ黒に変色し、緑色の炎で焼却された。奥歯に毒を仕込んでいたのだ。

 キャロルの死は、響に「呪われた旋律では誰も救えない」と言う彼女の言葉を残酷に突きつけた。響の悲痛な叫びが、空へと響く。

 

○○○

 

 チフォージュ・シャトーでは主であるキャロルが死亡したことで、計画が第二段階に移行していた。

 レイア、ファラ、ガリィ、ミカ。四機のオートスコアラーの頭上に各々が行使する錬金術に該当した布のようなものが垂れさがる。

 響は燃えるキャロルの亡骸を見つめ、

 

「呪われた旋律……、誰も救えない……。そんなことない……、そんな風にはしないよ……。キャロルちゃん……」

 

 薄暗い空に巻きあがる煙を見ながら、呟いた。

 ブリッジでは、雷が調達の手を借りずに弦十郎の前に立っていた。彼女は正面から彼の瞳を見上げる。エルフナインと視覚がつながっているキャロルだが、彼女が死亡した今なら問題ないだろうと見切りをつけていた。そして彼女は一つ深呼吸を入れ、

 

「キャロルによる世界解剖計画。その対抗計画の概要を、説明します」

 

 戦いは、まだ、終わらない。




さて、雷のキャロルに対する対抗計画とは何なのか?この計画の全貌は追々わかるということで。
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