戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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海だー!


夏の日差しの中で

 イグナイトモジュール、ダインスレイフの呪いに打ち勝った響を見て、マリアは弱い自分に苦悩していた。レセプターチルドレンとしてF.I.S.に来た時から、今の今まで運命に翻弄されてきた自分が不甲斐なく感じる。

 

(強くなりたい……。翻弄する運命にも、立ちはだかる脅威にも負けない負けない力が欲しくて……。ずっと……、もがいてきた……)

 

 海の波が浜を行ったり来たりしている。暑い夏の太陽が照らし、海の青が光を反射してキラキラときらめいている。

 マリアを水着を着た調達が、

 

「おーい。マリアー」

「何をやってるデスかー?」

 

 悩みを抱え、沈んでいるマリアは同じく水着姿でサングラスをかけ、熱い太陽を見上げている。そしてなぜか笑みをたたえながらサングラスを外し、彼女たちに応えることなく、

 

(求める強さを手に入れるため、私は、ここに来たッ!)

 

 今のこの意味不明な状況を説明するには、時を少し戻さなければならない。

 

○○○

 

 雷、調、切歌の胸には各々のシンフォギア、そのペンダントが強化型シンフォギアと回収されて戻って来ていた。改修の理論構築を担当した雷は、実感として強化したという感覚が湧かないな、と思っていた。

 彼女のケラウノスは幸いなことに、聖遺物をプロテクターとして固着させる部分の損傷だけで済んでいたため、他のギアと同時進行で回収することが可能だった。コアの部分がやられていたら、恐らくだがキャロルとの戦いには間に合わなかっただろう。

 

「壊されたケラウノスと……」

「切ちゃんのイガリマに……」

「シュルシャガナも改修完了デス!」

 

 三人が喜び合う。

 

「機能向上に加え、イグナイトモジュールも組み込んでいます。そしてもちろん……」

「復活の……アガートラーム……」

 

 雷の顎の下でエルフナインが笑った。最近ずっとこんな感じなのだ。エルフナインは彼女に後ろから抱きしめられたままマリアのもとへと歩いて行く。調と切歌は理由が理由なだけに口出しできず、少し悔しそうにしている。

 エルフナインはワンピースのポケットから修理したアガートラームを取り出し、

 

「改修ではなく、コンバーター部分を新造しました。一度神経パスを通わせているので、身に纏えるはずです」

「パスを傷つけずに新造するための理論構築、大変だったんだよ~……」

 

 雷の顔は少しやつれていた。だが、やり切ったという達成感があふれ出ている。

 雷の構築した理論はそれなりの時間と技術が必要なものであったが、エルフナインと言う技術担当を得た今、時間はかかっても確実にマリアがアガートラームを纏えるようにプランニングしたのだ。

 マリアはペンダントに目を落とす。

 

「セレナのギアをもう一度……。この輝きで、強くなりたい……!」

「うむ。新たな力の投入に伴い、ここらで一つ特訓だッ!」

「「「「「「「特訓?!」」」」」」」

「?」

 

 装者たちの中で、響が目を輝かせ、クリスが嫌そうな顔をしていた。エルフナインはよくわかっていない様子だった。

 

○○○

 

 そして今に至る。

 水着に着替えた響が、一緒にやって来ていた未来とエルフナインに水をかけて笑顔を浮かべて遊んでいる。

 弦十郎曰く、オートスコアラーと復活するであろうキャロルとの再戦に向け、強化型シンフォギアとイグナイトモジュールを使いこなすことは急務である。つくばの聖遺物研究機構にて、調査結果の受領任務がある。諸君らはそこで、新進の鍛錬に励むといい……。とのことだ。響が特訓と言えばと言ってコーチ役を買って出たのだが、やっているのは遊びである。彼女に防人たる翼まで丸め込まれ、水着になっていた。

 クリスが浮き輪に乗って波に揺られ、調と切歌は砂で城を作り、雷は日傘の下に敷いたレジャーシートの上で山のように本―錬金術や聖遺物関連の学術書や伝承、歴史などその他諸々―を積み、読書に耽っていた。

 一方、緒川と藤尭はつくばの聖遺物研究機構にやって来ていた。

 

「これは……」

「ナスターシャがフロンティアに残したデータから構築したものです」

「光の……球体……?」

「そうですね。我々も便宜上、フォトスフィアと呼称しています。実際はもっと巨大なサイズとなり、これで約四千万分の一の大きさです」

 

 フォトスフィアには地球儀のように陸地や海が表示されており、所々に配置されている点から線が伸び、球体中を網羅している。

 

「フォトスフィアとはいったい……」

 

 調査結果の受領を終えた緒川は翼に通信を入れた。

 

「調査結果の受領、完了しました。そちらの特訓は進んでいますか?」

『くッ……!なかなかどうしてッ、タフなメニューの連続ですッ!』

「ん?」

『後でまた連絡しますッ!詳しい話はその時にッ!』

 

 通信が切られてしまった。

 装者たちは特訓、の前に肩の力を抜くためのビーチバレーをしていた。他のみんなはレクリエーションであることを理解し、楽しんでいるようだが、翼だけは特訓だと本気で思い込んでいる。

 未来は隣に立つ響に声をかけた。

 

「翼さん……本気にしちゃってるよ……?」

「とりあえず肩の力を抜くためのレクリエーションなんだけどなぁ……ははは……」

「ちゃんとレクリエーションだって言わないから……」

 

 響が肩を落とし、雷はそんな彼女を見て苦笑いを浮かべた。因みに雷は包帯を巻いておらず、水着の上に長袖のジャケットを羽織り、ジッパーを限界まで引き上げている。

 丁度エルフナインのサーブだ。クリスが威勢よく声を出す。

 

「おらおらぁ!バッチコーイ!」

「それっ……あれ?」

 

 ボールを放り投げ、ジャンプサーブをしようとしたエルフナインだったが、空ぶってしまった。ボール共々浜に落下する。

 

「なんでだろう?強いサーブを打つための知識はあるのですが、実際やってみると全然違うんですね!」

「背伸びをして誰かの真似をしなくても大丈夫。下からこう、こんな感じに」

 

 マリアはボールを持ってエルフナインのもとに歩み寄り、下からボールを打ち上げて手本を見せた。それをみてエルフナインは縮こまり、

 

「はぅ……ずびばぜん……」

「弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つことだから」

 

 マリアはエルフナインの視線に合わせ、優しく言う。そんな彼女に励まされ、エルフナインは笑顔を浮かべた。

 

「はい!頑張ります!」

 

 マリアも笑顔で応える。

 暫くビーチバレーを繰り返しすと、装者たちの大半が疲れ果て、ビーチチェアに寝転がっていた。調が目を瞑りながら、

 

「気が付けば特訓になっていた……」

「何処のどいつだぁ~……?途中から本気になったのはぁ~……」

 

 クリスは溶けるようにビーチチェアにへばりついている。因みに同じく体力のない雷も同じようになっていた。

 そんな中エルフナインは脚を組み、太陽を見上げ、

 

「晴れてよかったですね!」

「昨日、台風が通り過ぎたおかげだよ」

「日ごろの行いデース!」

「ほーう?夏休みの宿題、自力で頑張るんだ?」

「て、手伝ってほしいデース!」

 

 雷にジト目で煽られ、切歌が叫んだ。思わず笑い声が漏れる。そんな全員が笑い合う中、響が周りを見渡して、

 

「ところでみんな―……、お腹がすきません?」

「だがここは、政府保有のビーチ……」

「一般の海水浴客がいないと、必然売店の類も見当たらない……」

 

 そうなればやることは一つ。全員が起き上がり、一か所に集まる。

 

「「「「「「「「コンビニ買い出しジャンケンポン!」」」」」」」」

 

 一瞬の静寂。

 それを破ったのは響の笑い声だ。翼の手を見てお腹を抱えて笑っている。

 

「あはははは!翼さん変な直出して負けてるし!」

「変ではない!かっこいいチョキだッ!」

「斬撃武器が……」

「軒並み負けたデス!」

 

 翼と調、切歌の斬撃武器を扱う装者たちがチョキ、他がグーだった。当然、三人の負けだ。マリアが負けた切歌と調に対し、

 

「好きな物ばかりじゃなくて、塩分とミネラルを補給できるものもね!」

「はい。いるかなと思って用意しといた。二つを補給できる食べ物、飲み物リストだよ」

「ありがとう。姉さん」

「いえいえ」

 

 雷が調に塩分とミネラルの補給に最適な飲食品をリストアップしたメモを手渡した。

 翼は負けたのが悔しかったのか、未だに彼女曰くかっこいいチョキを難しい顔で見つめている。そんな彼女にマリアは自身のサングラスを掛けてあげ、

 

「人気者なんだから、これ掛けていきなさい」

「母親のような顔になってるぞ。マリア」

 

 そう言い残し、三人はコンビニに歩いて行った。




水着は着るが肌は見せない雷ちゃん。ボロボロの肌を見せてみんなが変な気分にならないように配慮しています。ついでに泳げません。
彼女の水着を用意したマリアは、水着が見れなかったことに涙を流したとかなんとか。
お母さん力の強いマリアとお姉ちゃん力の強い雷。
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