大空は夜空を求めて繰り返す 作:秩序の夜空
暴れて数時間、ようやく俺は正気を取り戻した。地面に座り込んで、もうこれから何を信じれば良いのか分からなくなった。
あの出来事は未来から帰って来た後に起こるらしいが、あんなもの回避のしようがない。どう足掻いても絶望だ。
ユリアさんはこんなものを見せて何がしたいのか。俺を絶望させて、死なせるためか? それとも別の目的があるのか。もうそんなことはどうでも良く思えるくらいに、疲弊していた。
「ユーリャ!! だからデーチモには早いと言った!! これで彼の心が壊れた時には、お前とて許さない」
「落ち着いてください、ジョット。これくらいで折れてしまっては、大いなる運命をはね除けることは出来ません」
俺はユリアさんに頭を撫でられると、何故な心が落ち着いていく。これも彼女が何かしているのか、それとも別の何かなのか。
「精神安定の加護を与え、そして少し力の枷を外しました。この記憶を持ったまま一度外の世界を見てください。少し経ったら、また招待します」
どんどん意識が遠くなり、目の前が真っ暗になっていく。そして完全に意識が無くなった。
次に目を覚ました時、俺が見たのは見知らぬ天井だった。横を見ると京子ちゃんとハルがベッドにもたれかかって寝ていた。それも十年前、俺が知っている二人だ。
今は精神が安定していて、冷静でいられるが、これからの未来では裏切られるんだよな。そんな未来にならないように、頑張らないと。
そこへ自動扉が開かれて、ラルが入ってきた。ところどころ傷が見られるが、無事なようだ。
「目を覚ましたか」
「うん、どのくらい時間経った?」
「一週間だ。林の中で倒れていた時は肝を冷やしたぞ」
「心配かけてごめんね。ここはどこなんだ?」
俺はベッドから静かに起き上がって、ラルと部屋から出た。少し体が重たいけど、なんとか動かせる。
ラルの話によると、ここはボンゴレの日本支部であり、ジャンニーニが作った秘密基地らしい。ここには獄寺君、山本、京子ちゃん、ハル、十年後のフウ太とビアンキ、ジャンニーニ、そしてリボーンがいるらしい。
その他の守護者たちは行方不明らしい。
「沢田、貴様に何があった? あんなところで倒れていたのも不自然だし、何より貴様の目は……」
「目?」
ラル言葉に俺は首を傾げる。
「……いや、なんでもない」
ラルは俺から視線を逸らすと歩く速度を早める。それに付いていこうと俺も足を早めようとしたら、足がもつれた。
そういえば一週間ずっと寝たきりだったんだから、体が上手く動くはずもなく、前のめりに倒れそうになる。それで自然と手が前に出て、何かを掴んだ。
むにゅん、というプリンのように柔らかくて、餅のように弾力がある感触が伝わってくる。これは一体何だ、と目を開けると、ラルの胸を両手で揉んでいた。
「んん」
ラルは頬を少し赤く染めながら、媚声を押し殺していた。ラルってそこそこ大きいけど、感じやすいのかな。そう何故か冷静に思いながらも、俺は慌てて両手を引っ込めた。
「ご、ごめん。足がもつれて、手が当たっちゃった」
「……貴様が一週間寝たきりだという事情が無ければ、八つ裂きにしているところだが、まぁいいだろう。それよりも、行くぞ」
なんとかラルに許してもらえた。
監視ルームという並盛全体の映像が見られるところに行くと、ジャンニーニとリボーンの姿があった。リボーンは真っ白なボディスーツを着ていた。
「ツナか、もう体調は良いのか?」
「ああ、大丈夫。それよりもお前も未来に飛ばされてたんだな」
「まぁな。外はノン7³(トゥリニセッテ)で汚染されてて、オレたちアルコバレーノは外に出られねぇから、ずっとここにいるけどな」
リボーンは前よりも顔色が良くなってて、調子を取り戻したようだ。そういえばラルもアルコバレーノなのに、外に出てたよな。
そう思っていたら、リボーンが俺の肩に飛び乗って、ラルのおしゃぶりを指した。そこには半透明なカプセルみたいなものがあり、それがおしゃぶりを覆っていた。
「あれでノン7³という害悪から守ってるんだぞ。それにラルは特別なんだ」
「なりそこない、とも言うがな」
ラルはそう言うと、どこか遠い目をしていた。何か事情がありそうだから、あえてここは突っ込まない。そして俺は監視カメラの映像を見た。
並盛の住宅街には怪しい人間が何人もいて、とても危険な状態のようだ。それにしても獄寺君と山本の姿が見られない。
「二人は雲雀の行方を探すために、並盛神社へ向かったぞ」
「こんな危険なところに二人を行かせたのか?」
俺は静かに、だけど確かな怒りを滲ませながら、リボーンを睨んだ。やつはポーカーフェイスのまま、俺から視線を逸らして、頷いた。
頭では分かっている。自分は倒れたままで、まともに動けるのは山本と獄寺君だけしかいないことぐらい。これは自分への怒りを八つ当たりでぶつけているだけだ。
「………ちくしょう」
なんて自分は弱いんだ。こんなことでは全員が俺を裏切るのも当たり前だ。このままでは、どんどん俺から人が離れていく。
そして俺はあの未来みたいにリンチにされて、最後は精神が病んで死んでしまうのか。
「沢田、顔色が悪いぞ。やはり無理をし過ぎだ。今は休め」
「いや、俺も直ぐに向かう」
懐から死ぬ気丸を出して、直ぐに飲み込み、ボゥ、と額に炎が灯った。超死ぬ気モードになり、グローブを着ける。ラルの心配する気持ちはありがたかったが、やはり俺はこのままでいちゃダメだ。
自分が死んででも、彼らだけは守って見せる。
「ツナ、おめぇは大人しく休んでろ。もうすぐ戻ってくる」
「映像から二人の姿が見えない。一部のカメラが霧の炎により細工されている可能性もある」
そう言いながら、俺は歩き出そうとしたが、また意識が遠くなり、ふらりと倒れそうになる。今回は踏ん張って、倒れない。
「はぁはぁ……」
「ダメツナ、たった数秒で息が切れてきているじゃねぇか。今のおめぇが行っても、足手まといになる」
「分かってる!! そんなことは!! でも、行かないと二人が!!」
「その必要は無いよ」
俺がリボーンにそう叫んだ後、部屋の入口から聞き覚えのある人物の声が聞こえてきた。そこには十年後の姿になった雲雀さんが、いつもの獄寺君と山本を背負ってやって来ていた。
「ご苦労だったな、雲雀」
「雲雀……さん」
二人の姿を見て気が抜けてしまい、俺は超死ぬ気モードを解除した。そして地面に座り込んだ。もう頭が痛くて、目の前がボヤけてきた。
「ワォ、キミ本当に沢田綱吉かい? その目は」
まただ。
ラルが行っていたように、雲雀さんも俺の目がどうとか、と指摘してきた。俺の目がなんだと言うのだ。そう思いながらも、既に限界を超えた疲労感で倒れた。
「沢田!!」
「ラル、わりぃが、ツナを個室に運んでやれ。そして手を目が覚めるまで、握ってやれ。おめぇもツナがおかしいのは気付いてるだろ?」
「……分かっている」