輝神機のヒーローアカデミア   作:自己顕示欲MAXマン

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2話・ぐちゃぐちゃの心と授かった何か

 今日は雄英受験日。田舎から雄英のある場所までは結構な距離があるため、新幹線での移動になる。…予定であったが、親方が麗日を車で送るついでに俺も送ってくれるみたいだ。

 

 「親方、ホントにありがとうございます。新幹線代も馬鹿にならないんで。」

 

 「別に構わないよ。一人も二人も変わらんし、今まで頑張ってくれた従業員にこれくらいはさせてくれ」

 

 そう言いながらにっかりと笑った。助手席に座っている麗日はガチガチに緊張しているわけでもなく、落ち着いた雰囲気だ。

 かく言う俺も思ったほど緊張はしていないようで、どちらかと言うと実際の雄英を見に行くという高揚感の方が勝っている。柄ではないけど、口角が上がっているのがわかる。

 

 「神機君は笑うと怖さが増すよね。笑い方直したほうがええよ」

 

 俺が雄英に心を踊らせていると、助手席から後ろを覗き込む麗日がいた。自覚してるさ。髪型も横刈り上げのツーブロックからのオールバックで、目付きが悪い。長身も相まって子供からは怯えられることが日常だよ。

 

 「損しとるよね。神機君、不器用やけど優しいのにね」

 

 ニヤニヤと見るな。麗日は勘違いしてるみたいだが、むしろ、俺はこいつに厳しい鍛錬しかしたことはない。優しさを見せた覚えなんてないのに、なんで評価が『不器用だけど優しい』に位置づけられているのか。全く心当たりがない。

 俺が黙ったのを見てなのか「神機君は笑顔は直さなあかんけど、性格は今のまんま、不器用な方がええよ!」と言われ、前を向かれてしまう。……運転している親方から何となく威圧感を感じるが、気にしないことにしよう…。そして、俺は雄英到着まで少しの仮眠を取ることにした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 「黒機!早く走れ!神機もだ!!」

 

 あぁ、これは夢なのだと一瞬で理解した。あの日から見る回数は減ったとはいえ、忘れた頃に思い出す。まるで初めての片思いの相手と、忘れた頃に夢で再開するような感じだ。

 家族と二度と会えなくなった元凶の日だ。

 

 俺の父さんと母さん。そして、俺と兄さんが倒壊していく建物から逃げるようにひたすらに走る。強力な増強型個性を持ったヴィランによる無差別な虐殺と大災害だった。そして、何度見たかわからない場面へとシーンは進んでいく。

 

 「あなた!危ない!!」

 

 上から降ってくる大きな瓦礫を、両手で支えるように母さんは個性で留める。が、あまりの重量に長くは持ちそうにない。そして、そんな母さんを置いていくような父ではない。

 

 「大丈夫だ!これくらいの瓦礫なら俺の個性で!!」

 

 右手に光が集まり、瓦礫を殴りつけるとコンクリートを粉砕する。俺は、こんな危機的状況なのに親の姿に見惚れていた。間違いなく、今この瞬間は、どんなヒーローよりもかっこいい両親だった。だが、瓦礫は無情にも降り注ぐ。家族全員を飲み込むように容赦なく降りかかる絶望の塊。

 

 「黒機!神機!走れ!!俺と母さんがなんとかする!ちゃんとついていってるから、後ろを向かず走れ!!」

 

 そして、俺と兄さんは走り出した。後ろからは父さんと母さんの呻くような声が時々聞こえながらも、家族みんなで走っていることが分かった。

 

 

 

 ドオオオォォォォン!!

 

 

 

 一際大きな揺れが起こった。次の瞬間、俺は後ろから思い切り突き飛ばされた。逆くの字になるように前方に飛ばされ、地面を1回転、2回転と転がる。あまりの痛さにすぐに起き上がることが出来なかった。数分だったのか、数十分だったのか…痛みを堪えながら起き上がると、俺の後ろには山のように大きな瓦礫が積み重なっていた。そして、その瓦礫から上半身だけを出している父さんと、おそらく母さんであろう人物の手だけが伸びていた。

 

 「お……おとうさん!!!」

 

 すぐに駆け寄った。頭の中は真っ白だった。ぐちゃぐちゃだった。助けないと、誰かを呼ばないと、この手は誰?お母さん?、お兄ちゃんは?、お父さんが血を出してる、これからどうする…頭に浮かんでは瞬時に真っ白になる。呼吸は浅くなり、目の前がチカチカと点滅を繰り返す。平衡感覚すらも狂い始める。真っすぐ走ったつもりだったが、フラフラと左右に揺れながら何とか父親の元までたどり着き、手を握る。冷たくなり始めているのが分かった。

 

 「…神機。お前だけでも、無事で、良かった……」

 

 「お父さん!!お父さん!!」

 

 もう何を話せばいいのかも分からない。目の前の現実を受け入れることが出来ない。そして、残っている微かな温もりすら段々と熱を失い、父さんの手が冷たくなる。顔色が白くなっていくのを見ることしか出来ない。

 

 「……神機。お前は、ヒーローが好きだったな」

 

 息も絶え絶えに話す父の言葉が、子供ながらに最後の言葉になると分かった。大声で泣くのを何とか我慢しようとするも、嗚咽が止まらない。涙で父さんがどんな表情なのかもわからない。ただ、頷く。

 

 「お前は、父さんと、母さんの、自慢の息子だ。優しくて、思いやりがあって…泣き虫だけど、きっと立派なヒーローになる。俺と母さんは根拠もなく感じていたよ」

 

 最後の言葉だからこそ、苦しく話すのを堪えて、優しく語りかける。握る手にも力がこもる。

 

 「俺たち家族が、見守ってるぞ。そして、俺はお前を支えるために…もっと近くで見守ることにする」

 

 父親の手がより一層、輝き始める。青白い光からだんだんと赤みを帯びて、最後には真っ赤な輝きを放つ。その輝きから伝わる熱が手から腕、腕から肩、肩から胸と浸透していくのがわかる。そして、自分の鼓動に呼応するように脈打つ。

 

 「神機。俺の個性は神様から貰った個性だ。理由は話せないが、この力を、お前に授ける。」

 

 輝きが収まると、黒髪だった父さんの髪は真っ白になっていた。最後に、どこか遠くを見ながらポツリと、所々が聞き取れないような声でつぶやく。

 

 「…お前達が成長した姿を見れないのは残念だが、~~~~人生にしては本当に幸せだった。~~~には、感謝しないと……流石にもう~~は、出来ないだろうな…」

 

 何度夢で見てもここだけが聞き取れない。ただ、父さんの顔は穏やかだった。そして、この夢を見るたびに俺はどうしても怒りを抑えきれない。大災害の原因になったヴィラン。父さんも、師匠も望んでないとはわかっていながらも…このドス黒い衝動だけは忘れることは出来ないようだ…。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 「~~君!神機くんってば!!」

 

 「んが!?」

 

 女の子の声で、ドス黒い感情から一気に引き戻される。目を開けると、俺の鼻を摘んでいる麗日がニシシと笑っている。別に、普通に起こしてくれてよかったんだぞ?

 

 「普通に起こしたよ。でも、起きへんから…強行策!…うなされとったけど、大丈夫?」

 

 大丈夫だ。夢の中でライオンとパンダとハシビロコウとナマケモノを足して最後にゴリラで纏めた感じの化け物に追われる夢を見ただけだ。と、適当な嘘を付く。少し心配そうにしていた麗日だが、俺の訳のわからない話を聞いて大丈夫と感じてくれたのか「どんな夢なん!」とツッコミを入れてくれる。…その前に、お前はいつまで鼻を摘んでるんだ。離せ。

 そう伝えると、パッと手を離して「早く行こ!」と、雄英へと歩き出す麗日。さっきの夢のせいでやや心拍数が上がっているが、向かっている間に落ち着くだろう。親方にお礼を言おうと運転席へ目をやると、いつもより眼光の鋭い視線を向けられる。

 

 「え~っと…寝てすんませんでした。送ってくれて本当にありがとうございます。帰りは自腹で……」

 

 「帰りも送ってやるに決まってるだろ。んなことより…いや、何でもない。お茶子にも伝えたが、後悔のないようにがんばれよ!!」

 

 そう言って、俺と握手を交わす。手から伝わる温もりが、さっきまで見ていた夢のワンシーンと重なり一瞬フラッシュバックする。

 

 「はい。任せてください」

 

 そう言って車を後にして、俺から少し離れた所で待ってくれている麗日へと合流するために歩きだす…








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