ジン成り代わりに助勢した者   作:白炉丸

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東雲 15

 とあるマンションの一室。二人の男が向き合う様に机を挟んだソファに座っていた。

 

 その内の一人、組織の中ではジンというコードネームで呼ばれ、組織の任務では西川銀我(さいかわぎんが)という名を使っている彼、黒澤陣(くろさわじん)は、それぞれの肘を膝に乗せ、重い雰囲気を纏いながら組んだ両手で目元を覆っていた。

 

 彼のその姿を眺めながらコーヒーを嗜むのは、コードネーム グラッパ、組織では東野出雲(ひがしのいずも)という偽名を使っている雲雀恭弥(ひばりきょうや)

 

 

 

「 それで?君はいったい何を落ち込んでいるんだい 」

 

 雲雀はコーヒーカップをソーサーに置いた後、脚を組み直す。雲雀は、体勢も変えずに一時間以上も座り込んでいる陣にいい加減話せよ、かまってちゃんかと話しかけた。流石に3杯もコーヒーを飲めばもういらない。

 

 

 陣はポツリポツリと口を開く。

 

 

「あばよって…、しちまった…。

………ウォッカが銃を取り出しやがって、咄嗟に特殊警棒で、撃たれる前に、こう…ボカッっとな」

 

 

 雲雀もその言葉を聞けば彼に何が起こったのかの察しもついた。

 だがそれこそ、彼が何故気に病むのか疑問に思う。わからないのなら調べればいい。雲雀はそう考え、陣に問いかけた。

 

 

「……いや、今まで原作から逸れて救済できてたからな。小さな名探偵を生み出す事なく、原作を進めることができればと考えていたんだ。……それを、ウォッカのヤツが」

 

 とのことだ。

僕達はまだ、世界の中心を変えることはできないということだね。

 

 

 

「 起きたことは変えられないんだ。過去を悔やむより先にこれからの事を考えなよ 」

 

「………あぁ、、そうだな。原作が始まっちまったんだ。もうゆっくりなんてしてられねぇな」

 

 

 陣はひとつ息をつき体を起こした。

目の前の冷めたコーヒーを口に運ぶと一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グフッ!!!

 

黒い液体が霧状となって宙に飛び散った。

 

「ゴハッ!ガハッ!ガフッ!ッッ!ガッ!ゴホッゴホッゴホッ!!なっ、こっ、かっ」

 

 陣は喉を押さえて転けるように水場に向かって走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

「 まったく、汚いなぁ 」

 

 

 雲雀はニヤける顔を隠しもせずに呟いた。

 

 

「 フッ。必殺タバスコ星 ver.スコーピオン、てね 」

 

 

 

「ひ“は“り“ィ“ー!!」

 

 濁点混じりの怒鳴り声が響いてくる。

 

 

「 たく…ニオイでわかるだろう? 気づかなかった君が悪い 」

 

 

 

 

 雲雀は小さく笑ったあと少し息をつき、ソファの背に凭れかかった。

 

 

( 遂に原作が始まったか…。まずはこの世界が一年を繰り返すのか、それとも365日の中に出来事が詰め込まれるのか、それを調べなくちゃね )

どちら?

  • 一年を繰り返す。ループ軸
  • 一年ですべてが終わる。詰め込み軸

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