とあるマンションの一室。二人の男が向き合う様に机を挟んだソファに座っていた。
その内の一人、組織の中ではジンというコードネームで呼ばれ、組織の任務では
彼のその姿を眺めながらコーヒーを嗜むのは、コードネーム グラッパ、組織では
「 それで?君はいったい何を落ち込んでいるんだい 」
雲雀はコーヒーカップをソーサーに置いた後、脚を組み直す。雲雀は、体勢も変えずに一時間以上も座り込んでいる陣にいい加減話せよ、かまってちゃんかと話しかけた。流石に3杯もコーヒーを飲めばもういらない。
陣はポツリポツリと口を開く。
「あばよって…、しちまった…。
………ウォッカが銃を取り出しやがって、咄嗟に特殊警棒で、撃たれる前に、こう…ボカッっとな」
雲雀もその言葉を聞けば彼に何が起こったのかの察しもついた。
だがそれこそ、彼が何故気に病むのか疑問に思う。わからないのなら調べればいい。雲雀はそう考え、陣に問いかけた。
「……いや、今まで原作から逸れて救済できてたからな。小さな名探偵を生み出す事なく、原作を進めることができればと考えていたんだ。……それを、ウォッカのヤツが」
とのことだ。
僕達はまだ、世界の中心を変えることはできないということだね。
「 起きたことは変えられないんだ。過去を悔やむより先にこれからの事を考えなよ 」
「………あぁ、、そうだな。原作が始まっちまったんだ。もうゆっくりなんてしてられねぇな」
陣はひとつ息をつき体を起こした。
目の前の冷めたコーヒーを口に運ぶと一気に飲み干した。
グフッ!!!
黒い液体が霧状となって宙に飛び散った。
「ゴハッ!ガハッ!ガフッ!ッッ!ガッ!ゴホッゴホッゴホッ!!なっ、こっ、かっ」
陣は喉を押さえて転けるように水場に向かって走り去っていった。
「 まったく、汚いなぁ 」
雲雀はニヤける顔を隠しもせずに呟いた。
「 フッ。必殺タバスコ星 ver.スコーピオン、てね 」
「ひ“は“り“ィ“ー!!」
濁点混じりの怒鳴り声が響いてくる。
「 たく…ニオイでわかるだろう? 気づかなかった君が悪い 」
雲雀は小さく笑ったあと少し息をつき、ソファの背に凭れかかった。
( 遂に原作が始まったか…。まずはこの世界が一年を繰り返すのか、それとも365日の中に出来事が詰め込まれるのか、それを調べなくちゃね )
どちら?
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一年を繰り返す。ループ軸
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一年ですべてが終わる。詰め込み軸