後輩に勧められてデッキを組んだMUR 。意気揚揚とラダーに挑んだ彼に、フェザーの呪文リサイクル戦法が襲いかかる。それに対してMURのとった行動とは?

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7月頃からちょくちょく加筆していたので現在のメタゲームとは違うと思います
個人の感想が多く含まれます
(淫夢mtgは)初投稿です


fuckin3HAGE

「つまりBO1でフェザーに勝てない、ってことですか?」

 

 読んでいた漫画を置いたKMRが、意気消沈したハg……MURに聞いた。

 かけられた言葉に、項垂れるMURは力無く頷く。

 8月に入りますます蒸し暑くなった部室内、いつもの3人組は例の如く駄弁っていた。

 そんな彼らが話す内容は勿論、基本無料で大好評配信中のマジック ザ ギャザリング アリーナ。

 現実では高くて手が出せないデッキでも、アリーナではレアリティが同じであれば等価値なので組みやすい。

 まだ若くお金が必要な3人は、新しいデッキを気軽に試せるアリーナにのめり込んでいた。

 

「そうだよ。ヤンリンくらいしか神話を入れないって聞いたから組んだけど、全然勝てないぞ〜〜」

「ということはシミックフラッシュの有名な型ですか。1マナの除去2種8枚が使いまわされるとなると、確かにキツイですね」

 

 自分のターンには土地を出すだけで何もせず、相手のターンに呪文を打ち消すなどの行動をとる。

 いわゆるドロー・ゴー戦術のデッキがシミックフラッシュだ。

 このデッキに入る神話レアはムー・ヤンリンが2枚だけなので、これ幸いと組んでみたMURは試しにランク戦に挑んだ。

 が、フェザー相手に手も足も出ずに轢き殺されたのだ。

 

「狼とマーフォークで蓋できる単色アグロはいいとして、フェザー相手だとこっちの生物が簡単に除去されるんだよなあ」

「強化呪文を打ち消しても再利用されますし、どのみち対象にとられた際の効果は誘発しますからね。フェザーデッキの8割はニマナ生物で出来てますよ」

「…………」

 

 ここに一人、会話に参加せず顔を万華鏡のように変化させ続ける男がいる。

 野獣先輩こと田所浩司だ。

 MURの口から紡がれるテンポのいいデッキ使用感に、田所は参加するタイミングを逃していた。

 しかし彼は会話に加わりたくて仕方がない、いや、加わりたい理由があった。

 何を隠そう、MURにシミックフラッシュを薦めたのは田所なのである。

 

『早い、安い、何より自分のターンは何もしないので楽。これはMURせんぱぃにぃ、おすすめですよ』

『おっ、そっかぁ。試してみるぞ』

 

 普段からアホ面を晒しているMURでも数をこなす事で習熟できる、そう思ってのことだった。

 だからこそ予想していたよりも遥かに使いこなしていることに驚いている。

 試合中に考える時間が実質半分という快適性は、MURの肌に合っていたらしい。

 想定していない行動というものは思考を硬直させてしまう。

 今の田所がまさにそれだ。

 

(今日は初歩的なコンバットトリックとかを教えようとしていたのに、既にデッキの組み替えの領域にきてるとは)

 

 だがデッキ構築はカードゲームの華、トライアンドエラーもいいが他者との意見交換も乙なもの。

 ここは自分も語りたい、そう考えた彼はとにかく話に入る取っ掛かりをと、ついに口を挟んだ。

 

「おっそうだKMRさ、メインのピアスを本質の散乱に変えればいいんじゃないか?」

「3ハ、ん゛ん゛っ、3テフェが環境に居るからピアスを抜くのはちょっと……」

「くぅ〜ん」

「ポッチャマ……」

 

 焦れた田所はなんとか流れに乗ろうとして安牌な案を投げてみるも、バッサリ切られ敢え無く撃沈。

 平成最後のドミナリアから環境を支配し続けるハゲは、令和になっても強キャラのままだった。

 ついでに流れ弾が「ハゲ死ね」という風評被害に心を痛めているMURにも直撃。

 魂が抜け、無限への突入コンボを眺めている時のような面のまま蹌踉めく。

 しかし部活後の時間は有限、崩れ落ちたMURを余所に無情にも会話は続けられた……ホモはせっかちなのである。

 

「最近はスケープシフトも流行してますからね。相手が3マナ以上あるときは、クリーチャー以外も対処できるカードを使いたい」

「土地……無限湧きゾンビ……妨害手段のほぼ無いリソースは駄目ってハッキリわかんだね。火消しなら打ち消す相手を選ばないけど、土地が伸びる相手には後半無力だしな〜〜」

「あっ! おい待てい」

「「!?」」

 

 畳にうつ伏せになりながらも後輩達の会話を聞いていたMURが急に立ち上がる。

 その急な行動に2人は振り向くと、そこにはカードを漁るMUR大先輩の姿。

 デッキを取り出して構築する真剣な表情は、先程までの池沼顔とは似つかない戦士の貌だ。

 急な変貌に驚いたKMRは田所との会話を切り上げ、MURの手元を覗いた。

 

「先輩、急にどうしました?」

「いいこと思いついたゾ。野獣、お前フェザー入れたデッキ作ったって言ってたよなぁ、ちょっとケツ出せ」

「ファッ!?」

 

 ……

 ……

 …………

 

 

 田所 LP20 MUR LP20

 

 ダイスロール!

 6面ダイス2個 出た目が大きい方が先手

 

 田所 2d6=11 MUR 2d6=5

 

 先手:田所

 

「先行は田所先輩ですね。お互いマリガンは……無しですか、じゃぁ、ヨーイスタート」

 

「おっすお願いしまーす」

「よろしく頼むゾ」

 

「先手1手目大安定の凱旋の神殿タップイン! デッキトップを占術で……下へ送り、エンドしますぅ」

 

「ドロー。繁殖池タップイン、エンドするゾ」

 

「アンタップアップキープドロー。鋳造所ショックイン、第10管区の集団兵をcast! そしてそのままcombat! 2点です」

 

 田所 LP20→LP18 MUR LP20→18

 戦場 第10管区の集団兵

 

「じゃぁターン貰うぞ。ドロー、沼セット」

「なるほど、黒を足したんですね。これなら既に盤面に出てしまったクリーチャーやプレインズウォーカーにも干渉できます」

「そうだよ。というわけでほれ、見ろよ見ろよ」

 

 得意げな表情を浮かべたMURは、手札から引き抜いたカードを場のクリーチャーの上へかざす。

 唱えた呪文は暴君の嘲笑、モードは破壊を選択。

 あわれ野獣のクリーチャーは爆発四散、そのまま墓場行きとなった。

 

「メインで除去!? ちょっとヘイト向けすぎでしょぅ!」

 

 自軍の主戦力を奪われた田所は思わず唸る。

 フェザーデッキは強化呪文に枠を割くため、軽いデッキにしてはクリーチャーが少ない。

 場に残す為の除去耐性を付与する呪文も当然入れているが……。

 

(黒が入っているとなると、ゲームの進め方を考え直す必要があるな。送還でバウンスされるのとは訳が違う)

 

 1本先取のBO1では、相手の想定を崩壊させるのも戦術の一つ。

 占術ランドで下に送った呪文が実は最適解だった──なんてこともあるのだ。

 

「そのままターン渡したら盤面制圧されるんだから当然だぞ。エンド」

 

(……実際その通りなんだよなぁ。俺の手札には無謀な怒りと神々の思し召しが揃ってるから、除去されなければ2ターンは主導権を握れたはず)

 

 手札にはフェザー、強化用のインスタントが2枚、ショック、平地。

 先手を取れたこともあり、通常なら盤石の構えだった。

 

「メイン1までいって平地置いて……悩みどころですねぇ! 出すか、出さないか。ヌッ」

「除去に備えて平地は立たせておきたい、けれど今着地させなければ次ターンから打ち消しが来るかもしれない。難しいですね」

「さっき殆ど考えずに除去を切ったということは、あと最低一枚は手札に抱えてる……んですかねぇ。うーん?」

「野獣先輩がクリーチャーを手札に抱えていない読みで、占術で山札を掘らせない為に倒した……というパターンもありえます」

「一色足しただけで選択肢増えスギィ!? か、考えるの辞めたくなりますよ〜〜〜」

 

 これがフェザーデッキの難しい所だった。

 クリーチャーを強化して戦う関係上、強化対象の生物を盤面に残し続けたい。

 その為に除去を回避できるカードも積んでいるし、単純に生物を強化していけば火力で焼かれることもなくなる。

 コントロールが積んでいる肉議場やクラリオンも強化後なら耐えられる。

 そして今回の対戦デッキであるシミックフラッシュの生物は、単体のサイズが小さい。

 先手を取ったこともあり、先に強化を始めてしまえば押し切れる。そう考えて田所は生物を占術ランドで下に送った。

 5ターン後にはフェザーで強化を使いまわして勝つプランだ。たとえフェザーをカウンターされても既に場に居る集団兵の誘発効果で占術を連発し、引き込んだ強化呪文で殴りきる算段だった。

 しかし今回はそれが裏目に出た。

 基本的に盤面に干渉するカードがヤンリンと送還くらいしか無いので、出した生物が死ぬことを思考から外してしまったのだ。

 

「おう田所ォ、アクしろ〜〜」

「ぬ、ぬ、ぬぅぅぅぅ! ぬわ〜〜ん疲れたも〜〜〜ん!! ……もういいや、フェザー出、出ますよ!」

 

 最終的に田所は数少ない生物が打ち消される事を恐れ、手札のフェザーを戦場に着地させる。

 この判断の結果は、すぐに知れた。

 

「アンタップアップキープドロー……あ」

「?」

「暗殺者の戦利品使うぞ」

「ふぁっ!? くぅ〜〜ん……」

 

 田所は崩れ落ちた。手札に生物は居らず、抱えているのは2点火力と不要牌と化した強化呪文だけ。

 

(戦利品のデメリット効果で俺の土地は伸びる。1ターン目に生物を下へ送っちまったけど山札のシャッフルでそれもリセットだ。でもそもそもの生物の割合が……)

 

 己のデッキをMURが山札をカットするのを見ながら田所は思考する。

 そういえば、目の前の対戦相手は自分達の会話を聞いてデッキを組み直したのだった。

 そして追加した色は黒。クリーチャー除去に優れる色であり、緑と組み合わせた場合は盤面への対処手段が大いに増える。

 ならば生物やPWなどの盤面に干渉する、土地をも破壊できる暗殺者の戦利品が入っているのは当然とも言えた。

 

(これは次のドローで決まる。生物を引ければ勝ちの目はある……けれどそれ以外じゃ間に合わない)

 

 既にMURは島を立てエンドした。

 野獣のターン、アンタップアップキープを終えて引いたカードは…………

 

(……戦いの覚悟、かぁ。これはもうダメですね)

 

 引いたカードは強化呪文。生物では、なかった。

 これ以上の継続は無駄に思い、野獣は白旗を揚げた。

 

 

「よっしゃ勝ったぞ〜〜!!」

 

 MURは勝鬨をあげた。その喜色満面の顔は、幼さすら感じさせる。しかしその表情は無理もない。

 自分の考えたデッキで勝つことは、カードゲーマーの至上の喜びである。

 

「やりますねぇ!」

「おめでとうございます!」

 

 勝利の喜びに震えるMURを祝福する後輩達。

 2人もまた、笑顔であった。

 敗北は悔しいが、それを乗り越えて勝つ事の喜びを知る故に。

 ガンメタ張られて負けたとしても、対戦相手のリスペクトは忘れない。野獣先輩は人間の鏡。

 

 だが2人は敢えて言わなかったことがある。

 ……今回は上手く戦術がハマったが、毎回上手くいくとも限らない。

 

 何より、()()()()()()()()()()

 

 

 後日。

 

 田所が部室に入ると、そこには困った顔をした後輩が1人。

 その視線の先を見れば、畳に突っ伏したMURの姿があった。

 

「KMRぁ、先輩どうしたんだよ」

「序盤から三色を揃える為にショックインランドを増やしたせいで赤単に焼かれて、スケシには先手2ターン目ハゲ着地で狩られたそうです」

「フェザーは?」

「それがほとんどマッチングしなかったみたいで」

「あっ(察し)」

 

 今の世は正にバントスケープシフト時代、ハゲが定着してしまうとインスタントタイミングで動くシミックフラッシュは無力であった。

 ゾンビを生み出す土地のサーチ手段が豊富な事に対し、土地を破壊できる戦利品はサーチ手段が無い。

 対策カードを入れていても引けなければ無意味であり、そもそも土地を伸ばしてしまう戦利品は死者の原野以外に使いたくは無い。

 しかし3ハゲが場に出ている場合、絶対に除去しなければならないのだ。

 致命的なまでの相性の悪さがそこにはあった。

 そして少ない生物を強化して殴るフェザーも、横並びするゾンビの群れに苦しめられていた。

 結果として最大の仮想敵として対策したフェザーは数が少なくなり、思ったより万能除去が効かなかったバントスケープシフトに蹂躙されることになってしまったのだ。

 

「先輩はピアスも入れたままだったけど、4積みしてるわけじゃ無いしな」

「やっぱりあのハゲ禁止になりませんかね」

 

「デフェリ”ィ〜〜〜!!! お前が憎いぞぉぉ……」

 

「あぁ、ついに先輩もこちら側に……」

「えぇ……」

 

 熱気で天井に雲がかかりそうな部室に、3人の怨嗟の声が響く。

 茹だるような暑さが続く8月現在、テフェリーは未だ環境を支配していた。




ハゲ禁止して♡
オチが弱く申し訳ナイです

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