午後も午前と似たように俺の席の周りは騒がしいまま過ぎ、帰宅部である俺は「今日は特に疲れたなぁ」とボヤきながら帰路の途中にある商店街を歩いていた。
ふと歩いていると1つの小道が気になる。最近は全然使ってなかったが確かあの小道を通れば家まで近道できたなと。
今日はお袋も親父も夜勤で深夜に帰ってくるって言ってたから早く家に帰って気兼ねなくスマホを弄りながらダラダラしたいなと思った瞬間今日は近道しようと決める。
久々に通る小道。薄暗くゴミや埃で汚れており、毎回通る度に「薄気味悪いなぁ」と思ってしまう。しかしそれは特に気にするほどではなく、それよりも人一人体を横向きになってギリギリ通れる程度の幅しかない為体のあちこちを壁にぶつけてしまうことの方が気になった。
しかしすぐに狭い道を抜けて少し広い道に出る。が、入口で首に掛けていた首飾りが壁から出ていた突起に引っ掛かり切れてしまう。
「あ!御守りが!…あーぁ切れちまったか…」
仕方ない。家に帰ったらまず先にこれを直さないとなと思いながら首飾りを拾おうと屈もうとする。
瞬間空気が一変する。
体全体に重りを括りつけられたような重圧と周囲の温度が一気に下がったような感覚が全身を襲う。
腹の底から沸き上がる吐き気を必死で堪え自分の身に何が起きているのか確かめようと顔を上げる。
そこには
あまりに非現実な生物を目にし腰が抜けそうになるのをすんでの所で堪える。
本能的に理解する。今目の前に居るこの得体のしれない生物は今自分に狙いを定めていると。
そして今自分がすべき事はいち早くこの場から離れコイツから逃げることだと。
震える足を叱責し無理矢理足を動かす。
1度動けば体が本能のままに動き体を後ろに反転させ全速力で駆ける。
後ろからナニカが蠢き物を倒しながら自分に迫って来るのが背中から感じられる。
途中ゴミ箱やビンケース等に足をぶつけ倒しながら別れ道や角がある小道を無我夢中で走り抜ける。
そうやって走っている内に建物の間にある広いスペースに出る。
後ろを振り返ると撒いたのか先程のナニカはおらず、辺りにはゼェゼェと酸素を求めて荒く酸素を求める自分の呼吸音のみが響く。
「ゼェ…ハァ…ハァ…撒いた…のか…?」
安堵により足の力が抜け尻から地面にドサッと座り込む。
(なんだったんださっきのは?明らかにヤバい奴だったけど…とりあえずは大丈夫か…?)
滝のように額から吹き出る汗をブレザーの袖で拭う。
(少し休憩したら動こう…もう足も肺も限界だ)
呼吸を整えるため深呼吸をして自分の肺を落ち着ける。
(あぁ…はよ帰って風呂入りてぇ)
疲れたぁと空を見上げ
…ようとした瞬間。体を衝撃が襲う。
横合いから何かに体を叩きつけられる。そのまま壁際までゴロゴロと転がり壁に体を叩きつけられる。
肺の中の空気が一瞬で抜け苦しくなる。
衝撃に襲われる直前、丁度自分の頭上に浮く化け物がその触手を自分に叩きつけるの見ていた。
撒いてなどいなかったのだ。後ろに居なかったのはただ単に奴がさらに上空まで上がり先回りしていたにすぎなかったのだ。
逃げなければ。一瞬止まっていた呼吸を咳き込んで無理矢理再開し立ち上がろうとする。
瞬間、右足に鈍い痛みが走る。裾を巻くって足首を見れば赤く腫れ足首を挫いたことを認識する。認識した事でジワジワと痛みが強く感じられ動きをいっそう鈍くする。
脂汗が滲むのを無視し、ゆっくりと立ち上がる。
しかしその間に化け物はすぐ傍まで来ており触手で俺の体を絡めとる。
「くっそ…離せよ…!」
体を捻って触手の拘束から抜け出そうとするが拘束は全く緩まない。
そうやってもがいていると化け物の口から呻くような声が漏れる。
『オ……ェ、………う』
「あん?なんだよ?」
『オマえェ、…ウまソうダナぁ、
「匂い…?知るかよそんなモン…!野郎の匂いで興奮してんじゃねぇよ…!」
強がってみせるもののさっきから拘束から逃れられる気配は無い。このままだとコイツに食われる。
『おマェくぇば…おレわい、マヨりも、ツヨくナルぅ…ダァからぁ、オマえをぉ、クウぅ…!』
「…!く、来るな!」
大きな口を俺を丸齧りにしようとする目の前の化け物に思わず悲鳴を上げる。
『イただキマぁす』
思わず目を閉じ来るであろう痛みに備える。
しかし、来るであろうと思っていた痛みはいくら待てど来ない。
変わりに凍てつくような冷気を感じる。
恐る恐る目を開く。
そこにあったのは大きく口を開いたまま体の半分近くが凍り付いた先程の化け物だった。
『ア゙ぁ゙?…カラだガ…ウゴカナい…?』
「その人に手を出さないでもらえる?私の大切な人なの。あなたみたいななり損ない風情が手を出すのは許さないわ。」
凛とした綺麗な声が化け物の背後から聞こえる。
ギシリと化け物はゆっくりと背後を振り向く。
そこには真っ白な少女が居た。
温度を感じさせない程に色白の肌に透き通るような純白の髪。蒼いミニスカとインナーの上に白い着物を羽織り、儚い雰囲気と共に確かな人離れした
あまりの美しさに息を呑むがそれ以上に彼女が見知った人間にそっくりなのに驚く。
「彼から手を引いてくれる?無駄な争いはしたくないの」
『ガ…ぁ、ジャまを…スルナぁ!!』
化け物は無理矢理体の半分近くを封じていた氷を砕き白い少女に襲いかかる。
「危な!逃げろ!!」
思わず声を張り上げ逃げるように促す。
しかし白い少女は逃げる動作を見せず、ただ手を口の前に持ってきて水平にし
「そう。残念だわ。」
「『氷華の蕾』」
瞬間、あまりの冷たさに白い煙となった冷気が化け物を襲い、一瞬にして全身が完全に氷漬けとなった。
白い少女はそのままゆっくりと歩いて氷漬けになった化け物に近づき
「氷の華となって散りなさい」
そっと指で触れる。
すると氷に大量の罅が入り、一瞬にして中の化け物ごと粉々に砕け散った。
「彷徨う亡者の塊よ。輪廻の輪に戻り悔い改めなさい。」
砕けた氷の破片が空気中を漂いキラキラと輝く。
その中心にで静かに黙祷する彼女はまるで雪のように美しかった。
しばらくそんな光景に見とれていたが化け物が消えた事で拘束が無くなっている事に気付き、立ち上がる。
ゆっくりと彼女に近付き己の中にある確信めいた彼女の名を恐る恐る呼びかける。
「…妖間…だよな?」
白い少女はゆっくりとこちらに目を合わせにこりと笑い
「うん。放課後ぶりだね薫くん。」
なんでもないように答える。
あまりになんでもない事のように答えるものだから一気に緊張感が解け盛大な溜息が思わず出てしまう。
「いや…、放課後ぶりって、まるで帰宅中たまたま会ったみたいに言われても反応に困るんだが…」
「あははは!ごめんね?ちょっと緊張を解してあげようっていう気遣いだったんだけど余計だったかな?」
「…いや。実際緊張が解けたからまぁ、良いけど。てか、それよりも説明してくれよ?一体アイツ何だったのかとかお前が何者…なの…」
かとか…と言いかけて意識が朦朧とし始める。
妖間が何か声をかけているのを耳にしながら
視界が暗転し、俺の意識は消えた。
技名とか描写が厨二臭ェ。けど好き(正直)
薫くんはそれなりに肝っ玉はあるけどあくまでただの男子高校生でしかないから主人公だけど非日常の事柄に対しては基本無力。カワイソス。