月 フォン・ブラウン市郊外
「……」
クレア達にリリー・マルレーンから追い出され軟禁生活を余儀なくされたシーマは、椅子に体を預けると
軍服を始め自分がシーマ艦隊の長だった物は奪われ、唯一奪われなかったのは掌の二つのサイコロだけだった。
「……ゲール」
行方のわからない恋人の名前を呟くと、シーマはサイコロを机に置いてブラインドの隙間から外の様子を眺める。
これから仕事場や学校に行くのか、多くの人間が歩いていた。ただ一人、こちらに視線を向ける小太りな男がいた。シーマはその男を知っている。
デフキサ・ザケルフ軍曹。
シーマ艦隊に所属する諜報工作員だ。
「……」
ザケルフはその後何事もなかったかのようにその場を離れた。
「何を考えている?……クレア」
軟禁生活から一週間、すでに何十回としている状況整理にシーマは疑問の言葉を呟いた。
不可解なことだらけだった。まず監視役が戦闘経験に乏しい若いコック二人だということ。先ほどのザケルフのようにシーマ艦隊の手のものが時々様子を
いくら男二人といえど幾多の修羅場を
部屋にはナイフや拳銃はないもののカッターナイフやハサミなど武器の代わりになる物はいくらでもある。
窓には格子、外に出るドアには鍵がかけられているものの、どれも少し時間をかければ突破できるものだった。また警報装置などのシーマの逃亡を防ぐ装置などは一切設けられていなかった。
「……」
シーマは
「明らかに力不足の監視役にあまりにも甘すぎる逃走防止設備。私ならここから逃げ出せることなどクレアは知っているはず。……それにコッセルがこんな穴だらけの軟禁をするとは思えない」
まるでいつでも逃げ出して下さいと言っているようだった。
もう一つ不可解なことがあった。それはなぜ『クレアが自分を裏切り、コッセル達がクレアについたのか』。
「……あの時クレアは私を裏切った理由を出世だと言った。それならばさっさと私を連邦に売れば良かった。その機会はあったはずだ。それに自分の出世のために私を裏切ったクレアになぜコッセル達がついていく?クレアが何か好条件を出したのか?それでもコッセル達が私を裏切るほどの条件をクレアが出せるとは思えない」
考えるシーマだったがいくら様々な謀略を巡らせた彼女でもなぜ自分を姉のように慕っていたクレアが裏切り、コッセル達がクレアについたのか分からなかった。
考えても答えが見つからないことに疲れたシーマは別のことを考える。それは軟禁場所から逃れた後。
「オサリバンを頼るか……いや」
シーマは自分の意見を否定する。
「あいつは私と取引をしていたんじゃない。
シーマは机に置いたサイコロを見る。
どうせこの世は
今でも忘れることのできない男、ゲール・ハントが口癖のように言っていた言葉が脳裏をよぎる。その声を思い出すと我が身を売るという考えに嫌悪感を覚えた。
「シーマ様……じゃなかった、おい!シーマ!!……飯が出来たぞ!今日はお前が食べたいといっていたナポリタンだ!部屋から出て来い!!」
「……とりあえず飯は旨いわけだし。もう少し考えよう。まぁ、時間はある」
シーマは苦笑すると監視役の双子がいる台所へ歩を進めた。
前話でとんでもないミスをしていました。
「よしグルト、カナフ、ケレン、ザナヴは右を相手にしろ」
『お頭は?』
「私は左を相手する」
宣言通りクレア機が右側のサラミスに、グルトを先頭とするゲルググMが左側に展開した。
……クレアの嘘つき!(相変わらず誤字が多すぎorz)
誤字訂正してくださる方には本当に頭が上がりません。本当にありがとうございます。おかげで安心して投稿できます(それじゃあダメですね汗)