フィオレちゃんとアサシンに板挟みにされる俺氏。   作:黒三葉サンダー

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今回はちょっとシリアス。

胸糞注意!!


召喚されし救いの手

 痛い。痛い。痛い。

 編み上げた魔方陣の中心で膝をついて項垂れる。身体中がアザだらけで、切り傷も傷口が開いている。そこからドクドクと真っ赤な血がこぼれ落ちていく。

 

「何をしている。早く立て。休んでいいとは言ってないぞ」

 

「ごめん、なさい。父さん……」

 

 膝に力を入れて立ち上がろうとするが、力が入らずガクンと崩れ落ちる。それを両腕で支えてなんとか倒れ伏すのは避けた。

 けれど支えている両腕も限界が近く震えてしまっていた。過剰な連続魔術行使に魔力は底をつきかけ、魔術回路に負荷が掛かっている。

 

「チッ。早く立て! アレはもっとスムーズにこなしていたぞ! これくらいは欠伸をしながらでもこなせていた!」

 

「はい……父さん……」

 

 身体に残った力を振り絞り立ち上がろうとした瞬間、身体中を鋭い刃物で切り刻まれるかのような痛みに苛まれて血溜まりへと倒れる。

 顔だけでも父さんへと向けると、その表情を苛立たしげに歪ませていた。

 

「この出来損ないがっ!!」

 

「ガッ!」

 

 父さんの蹴りが脇を抉り、呼吸が一瞬出来なくなる。

 何とか肺に酸素を送り込もうとカヒュー、カヒューと浅く呼吸を繰り返す。

 痛い。痛い。痛い。痛い。

 

兄さん……どうして僕を置いていったの……?

なんでも出来る兄さんに憧れた。だから兄さんに追い付けるようにって必死に魔術の勉強をした。身体の動かし方だって学んだ。兄さんが言っていた科学技術だって触れてきた。

兄さんが褒めてくれたから。兄さんだけが僕を見ていてくれたから。

 

だから僕は頑張ってこれたのに。

 

「クソッ! やはりコレではアレの代理品にすらならないか! あぁぁぁ!! 腹立たしい!! アレほどまでの才能は今後生まれるともわからんというのに!! こんな出来損ないだけを残して消えるなど親不孝ものがっ!!」

 

「うぐっ!がぎゃっ!」

 

「腹立たしい!腹立たしい!腹立たしい!!コレでは我らが歴史を飾れぬ!!奇跡から見捨てられる!!クラヴェルト家の可能性がチンケなものへと成り下がってしまう!!」

 

血反吐を吐いても、痛みを訴えても父さんは僕を蹴り続ける。

痛い。痛いよ兄さん……助けてよ……。

 

なんで僕は殴られなきゃいけないの?

なんで僕は蹴られなきゃいけないの?

なんで僕は兄さんに見捨てられたの?

 

……なんで?

 

 

 

 

 

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そっか。兄さんは僕が嫌いになっちゃったんだ。

だから兄さんは居なくなっちゃったんだ。

僕がグズだから。僕が下手だから。僕が弱いから。僕が泣き虫だから。僕が頼りないから。

 

僕に、価値がないから。

 

 

 

 

じゃあどうすればいい?

 

僕がグズじゃないと、僕が下手じゃないと、僕が弱くないと、僕が泣き虫なんかじゃないと、僕が頼りになると、僕に価値があると兄さんに知って貰えばいいんだ。

 

じゃあどうやって?

 

僕が何かを、偉業と呼ばれるような何かを成し遂げればいい。

魔術協会も、ユグドミレニアも、父さんも、兄さんもが認めるような偉業を。

 

欲しい……そんな機会が……そんな力が……。

 

願う。ひたすらに願う。抗える力を。暴力的なまでの力を。

無いもの尽くしの僕が得られるような力を!

 

 

「……っ!あつっ!……?」

 

 

只のちっぽけな弱者が願う不可能。叶う筈のない奇跡。

見たことのない刻印が僕の手の甲に焼けるように現れた。それからは暖かくて、力強い魔力を感じる。

 

そして僕は、知らない筈のそれを口ずさむ。

まるで抗えない程の大きな何かに導かれるように……

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

手向ける色は赤。

 

降り立つ風には壁を。

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

 

 

「――ん? なんだ? なにをしている?」

 

 

父さんが訝しむように僕を睨み付ける。

けれど詠唱は止まらない。

 

 

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

 

繰り返すつどに五度。

 

ただ、満たされる刻を破却する。」

 

 

「これは……!?やめろ!!今すぐにやめろ!!」

 

 

 

父さんが何かに気付き、僕を止めようと蹴る力を強くしていく。

けれども僕は止まらない。まるで自分の意思とは関係なく。

 

 

 

「――――告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

 

 

「その詠唱が何をするのかお前は知っているのか!?それはお前には出過ぎたものだ!!今すぐに止めろ!」

 

 

父さんがヒステリック気味に叫ぶ。まるで兄さんが消えたあの日みたいに、無様な姿だ。

僕はにやける顔を隠そうともせずに続ける。

どうせもう止められないし、止めるつもりもない!! 

例えこれが破滅を呼ぶとしても!あんただけは絶対に道連れにしてやる!!

 

 

「誓いを此処に。

 

我は常世総ての善と成る者、

 

我は常世総ての悪を敷く者。

 

 

 

汝 三大の言霊を纏う七天、

 

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

僕の真下にある魔方陣が光り輝き、僕も父さんも目を開けてられずに閉じる。

すると、身体から謎の浮遊感を感じる。

いや、これは……抱き抱えられてる?

太陽の光のような暖かさに包まれているかのようだ。

 

 

恐る恐る目を開けると、そこには僕を抱き抱える圧倒的な存在が───英雄がいた。

 

 

 

「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ参上した。オレの槍をマスターの為に振るうことを誓おう」

 

 

「ラン、サー……」

 

 

 

 

ランサーは状況が理解出来ずに呆ける僕に向かって優しく微笑んでくれたのだった。

 

 

 

──────

───

 

 

 

「……ん」

 

「起きたか、マスター」

 

 

静かに目蓋を開けベッドから身体を起こすと、壁に背を預けて此方を見ていたランサーと視線があった。

あれが夢だと分かっていても、そこにランサーがいることに安堵する。

 

「黒のセイバーはどうだった?」

 

「あれは紛れもない英雄だ。本気で戦うに値する」

 

「じゃあそのマスターは?」

 

「正直脅威にもならないな。だが、一人だけ気になった奴がいる」

 

「気になった?ランサー程の英雄が?」

 

僕はランサーを最強のサーヴァントと信じている。だからこそ彼が気に掛ける相手を僕も気になってしまう。

 

「あぁ。得体の知れない何かを感じた。場馴れしていたとも思える。サーヴァントの戦いを前にルーラーと談笑していた胆力には感服したぞ」

 

「へぇ……それは、僕も確認しないとね」

 

ランサーが興味を持った相手だ。もしかすると黒のセイバーと同レベルの存在かもしれない。

準備は怠らないようにしよう。あの胡散臭い神父にも……いや、もう知ってるか。

 

 

「見ててね、兄さん。僕はランサーと一緒にこの戦争に勝って見せるから。そしたらきっと───」

 

 

また褒めてくれるよね?兄さん。

 

 

 




弟にヤンデレの兆しが見えるっ!

そして沢山の応援コメントと高評価ありがとなす!
この作品の内容については広い心で許してくれよな………頼むよぉ……。

因みに感想や評価コメントはきちんと全部読んでるから安心するんやで。

それでは次回を待て!しかして希望せよ!

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