昨日見たフィオレちゃん作品に感化されて、以前から考えていたネタをちょっと形にしてみました!!

風都の亜種聖戦争で勝利した魔術師を迎えたユグドミレニア。

その根幹ともいえる力、ガイアメモリを取り込んだユグドミレニアは、高い勝算を確信して聖杯大戦へと望む。

そして、そんな大貢献を果たしたマスターは―









「フィオレたんprpr」








 …………変人だった!!

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フィオレちゃんはかわいい。異論は多分出てこないと思う。


プロローグ 聖杯戦争に勝利した男

 

 ユグドミレニア。

 

 それは、時計塔の落後者達の集まりと認識されている。

 

 政治争いに負けた者。魔術回路が衰退していく者。そもそも歴史が浅い者。そんな彼らが集まった寄り合い所帯。

 

 それは、盟主であるダーニック・プレストーン・ユグドミレニアが、デマゴーグが原因で爪弾き者にされた事に由来するからだろう。

 

 故に数は多いが質は低いのが実情。大半が三流止まりで、一流に手が届く者などごく僅か。

 

 ……その認識が若干撤廃されたのは、一つの亜種聖杯戦争が原因だった。

 

 日本の地方都市、風都で行われた亜種聖杯戦争。

 

 そこに、「地元の犯罪組織にケンカを売って滅ぼされかけ、生き残る為に多額の賠償金が必要だった」という理由でユグドミレニアに入った魔術師の家系があった。

 

 ユグドミレニアは同時期に、ある魔術儀式で狂気の願いを叶えようとする

 

 あまりに嘲笑物のその理由に、魔術師達は嘲笑が一周回って憐憫の感情すら浮かべる。

 

 ……その魔術師、荒風家最後の生き残りが、サーヴァント4騎が参戦する亜種聖杯戦争で優勝したという衝撃の事態に、99%の魔術師は度肝を抜かれたのだが。

 

 聖杯戦争。それは、かつて日本の冬木で行われていた、願望を叶える力を持った魔術礼装を作り出す殺し合い。

 

 複数体の英霊をサーヴァントとして召喚し、撃破して贄にする事で願いを叶える力を得る。

 

 その根幹となる冬木の聖杯こそ何者かによって失われたが、そのデータの一部が流れた事で世界各地で亜種聖杯が作られ、亜種聖杯戦争が勃発する事となった。

 

 願望機としては大きく格落ちするが、しかし風都での聖杯戦争は願望機としての機能を発揮する。

 

 ……問題は、その願望の内容が明かされてない事だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ユグドミレニアは魔術教会に宣戦布告した。

 

 ユグドミレニアという組織そのものを新たな魔術教会として独立させる。それも、冬木から行方知れずになっていた大聖杯を象徴として……などと言ってのけたのだ。

 

 権威主義の群れである時計塔は速攻で殲滅の為に精鋭を数十名投入。そして一騎のサーヴァントによって秒で抹殺される事になる。

 

 しかし、唯一の生き残りが大聖杯に接触する事で予備システムを起動。七騎のサーヴァントを味方として召喚できる状況が成立した。

 

 これにより、前代未聞、歴代最大の聖杯戦争。14騎のサーヴァントが殺し合う聖杯大戦の幕が上がったのである。

 

 この戦い、ユグドミレニアは大きく不利である。

 

 大聖杯こそあれど、人員では大きく劣るユグドミレニア。もちろん世界に対する影響力も大きく異なる。

 

 時計塔がその気になれば、その影響力で強力なサーヴァントを呼び出せる触媒を手にする事も容易だろう。それどころか、亜種聖杯戦争で勝利した魔術師を投入する事も可能かもしれない。

 

 こと時計塔の現代魔術科は鬼門だ。ロードであるエルメロイ二世は魔術師としては非才、敗退こそしたが亜種聖杯戦争を生き抜いた逸材。魔術師にとっては配下と言ってもいい教え子は規格外揃いであり、動かれれば圧倒的不利な状況で争う羽目になるかもしれない。

 

 だがしかし、それでもユグドミレニアは動く。

 

 ()()不利な状況なのは当然分かっている。それでも、この千載一遇の好機を逃さねば衰退の果てに滅びるだけだとも思っている。

 

 なら、この博打に全てを賭けるしかない。

 

 ………そもそも、サーヴァントはともかく、マスターの戦闘能力ではこちらが圧倒しているのなら、やりようはいくらでもあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向(ひこう)荒風(あらかぜ)・ユグドミレニアは、飛んだ。

 

 純粋な身体能力でジャンプすると、そのままムーンサルトを決めながら渡り廊下に飛び移り、ポーズを決める。

 

「マイエンジェルフィオレたん! 今日はりりしい顔でいつもと違った鋭い雰囲気なのが俺の心をつらぬぐぼぁ!」

 

 その顔面に、カウレス・フォルウェッジ・ユグドミレニアが拳を叩き込んだのは悪くないと本人は思っている。

 

 目の前の男は、科学嫌いの魔術師業界においてはセレニケに並ぶ科学に理解のあるユグドミレニアだ。このミレニア城砦にネット回線があるのは彼らのおかげだし、その手の内容で会話できるのはそれなりに心安らぐ。

 

 だが、人間的にはどうしても好かない。

 

 セレニケはいい。黒魔術の名門であるセレニケは、しかし半分快楽殺人鬼のようなものだ。真っ当な人間はもちろん、魔術師でも眉をしかめるものはそこそこいる危険人物だ。好かない事はそこまで恥じゃない。

 

 それに比べれば日向はまだマシだろう。アウトローというかマフィアな世界の住人的な側面はあるが、それゆえ一般市民に対する被害に関しては自分より気を遣う側面がある。

 

 だがこの馬鹿っぷりを発揮する奴に、姉であるフィオレをくれてやるものか。

 

 姉はフォルヴェッジ家の当主になる女だ。日向も荒風家唯一の生き残りである以上、家を継ぐ必要がある。この時点で魔術師的に駄目だ。

 

 それに、万が一フィオレと日向が結婚したら、自分はこの馬鹿の義弟になる。蕁麻疹が出る。

 

「……おい日向。相変わらず頭の中で太陽がさんさんと照らしているんだな」

 

「ふっ。何言ってるんだ兄弟? フィオレたんという太陽が俺の近くにいれば、俺の心にはいつもサンシャワーが舞い降りるのさ」

 

「家族扱いすんな!」

 

 思わず怒鳴り返すが、しかしその頃になって我に返ったフィオレがカウレスの袖を掴む。

 

「落ち着いて、カウレス。日向さんにはあなたも恩があるでしょう」

 

「………………いや、確かにそうだけど」

 

「そこまで間を開ける事ないだろ、カウレスくん」

 

 半分呆れ顔になった日向は、しかし一瞬で表情を変えるとフィオレに向き直って跪いた。

 

「フィオレたん。まあ、緊張するのも分かるさ。カウレスくんも割とビビリ気味だしね」

 

 その表情は少しだけ固いが、しかしかなり自然体でもあった。

 

 それを見て、カウレスもフィオレも彼が一角の人物である事を認めるほかない。

 

 サーヴァントの力は圧倒的だ。時計塔が選りすぐった魔術師50名を、全く全力を出す事なく一瞬で殺戮してのけた。

 

 その圧倒的な光景を、彼は眉一つ動かさず受け止めていた。

 

 ユグドミレニアの盟主であるダーニックと同じく、サーヴァントを従えて聖杯戦争を生き抜いたのは伊達じゃない。肝が据わっている。

 

「ま、俺達だって負けるつもりでこんな事をしたわけじゃない。勝ち目はあるんだ。後はそこに注力するだけさ」

 

 そう言って緊張感を和らげるようにカウレスとフィオレに肩を叩いた日向は、にやりと笑うと懐からある物を取り出す。

 

 まるで英単語のNの字のような、特徴的なバックルが施されたベルト。

 

 それを見せながら、日向ははっきりと断言する。

 

「こっちのサーヴァントが敵のサーヴァントを足止めしている隙に、俺達で敵のマスターを殺せばいい。王冠(グランド)だらけで出てこない限り、俺達にはこれがあるから……な」

 

 そう言って新たに取り出すのは、クリスタル上の素材で作られた、スティック状の物体。

 

 カウレスは「でかいUSBメモリ?」と最初に思った事をふと思い出す。

 

「……日向さん。お願いします、たぶん、それの力を最も引き出せるのはあなたです」

 

 フィオレはそう言って、静かに頭を下げる。

 

「我らユグドミレニアに勝利と繁栄を」

 

「頑張るよ。少なくとも、フィオレちゃんの笑顔ぐらいは勝ち取って見せるさ」

 

 ……本気で姉の事が大好きなんだってのは、分かるんだよなぁ。

 

 実力と精神性と、あと確かな愛だけは認めてやらない事もないのだが。

 

 そう複雑な感情を抱きながら、カウレスもまた、スティックの柄や色以外は日向と同じ物を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向の一族が滅びた原因。地球の記憶という、下手をすれば魔術よりも現時点で根源に近いかもしれないものを結晶化し、人をサーヴァントが警戒するほどの超人へと変化させる、魔法の小箱。

 

 名をガイアメモリ。

 

 荒風家はその魅力に憑りつかれ、その力を独占せんと行動。結果としてガイアメモリを流通させる組織、ミュージアムに壊滅させられた。

 

 そこから辛くも生き残った日向は、「イエローモンキーが魔術を使うなどむかつくから、イエローモンキーに聖杯で災厄を与えてやる」などとトチ狂った暴走を引き起こしたユグドミレニアの魔術師を仕留める代わりに、ダーニックの庇護下に入って辛うじて首を繋げる。

 

 とはいえそれも博打だ。亜種聖杯戦争で勝利して生き残り願いを叶えるのは、当たればでかいが外す可能性が圧倒的に大きい博打なのだ。

 

 だが、奇跡を日向は掴んだ。

 

 理由は大きく分けて二つ。

 

 一つは日向とユグドミレニア離反者以外の三人が、「アルカイダ」「KKK」「オウム真理教」のカルト的崇拝者であり、その組織利益の為に聖杯を利用しようとした事だ。

 

 まず間違いなく世界規模のテロという形で具現化しかねない為ルーラーが召喚され、結果的に「日向に願いを叶えさせるぐらいしかまともな願いの叶え方がない」という状況になったのが原因ともいえる。

 

 そしてもう一つが、日向が手にしたガイアメモリだ。

 

 その力でドーパントになった日向は、サーヴァント相手に防戦すら成功。戦闘能力という点では文句なしに最強のマスターとなった。

 

 その結果として日向は聖杯戦争に優勝。そして、聖杯に願ったのは一つだ。

 

―ガイアメモリの魔術的流用発展を行なう為に、阿頼耶識と限定的に接続して知識と知能を借りたい。

 

 人類の集合的無意識を利用して、自分の研究者としての力を一時的に桁違いに高める。

 

 これにより、ミュージアムはガイアメモリの安全性の向上に成功した事もあって日向を見逃す。そしてユグドミレニアは魔術師としての隠匿能力を時折ミュージアムに貸す代わりに、ガイアメモリを格安で提供してもらっている関係になった。

 

 そして、それによって生み出されたガイアメモリの新たなる運用方法。

 

 魔術回路と専用礼装「サーヴァンドライバー」を併用する事により、偉人のガイアメモリを触媒にサーヴァントの力を限定的に引き出す運用技術。

 

 一般流通されるドーパントを凌駕する存在になり、ミュージアムの幹部のみが持つゴールドメモリとまともに戦う事ができる、亜種ドーパント。

 

 サーヴァントドーパント。これこそがユグドミレニアのもう一つの切り札である。

 

 そう、ダーニックはサーヴァントでサーヴァントを倒すという手段を本命にしていない。

 

 準サーヴァントクラスにまで高められたサーヴァントドーパントと、得意を押し付ければサーヴァントから逃げる事もできる通常ドーパント。

 

 ……その力を利用して、圧倒的有利な聖杯戦争を引き起こす。

 

 前代未聞の、マスターの力量差で圧倒する作戦の歴代最大の聖杯戦争。

 

 聖杯大戦は、サーヴァントだけが主役にならない混沌の形で始まろうとしていた。




いろいろ書いているので連載するかどうかはまだ未定。

とりあえず外典の漫画が連載終了することには連載するか決めたいですね。

……何年かかるかわからない? そこまで知るか!!


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