IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜   作:アリヤ

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あらすじざっと今考えたので、変な点があるかもしれません。

ってなわけで、またしても新作です。

正直この作品は話が重たいというか狂っているというか……とにかく酷いと思いますので、プロローグ読んでからどうするか考えてもらえると嬉しいです。



プロローグ
プロローグ


『く、来るな……こっちに来るな!!』

 

 アメリカ合衆国ネバダ州、ラスベガス。カジノが賑わうこの町の夜――とある路地裏である男性が壁に背中を着けながら、怯えた顔をしていた。

 彼はとある人物に追われ、路地裏を使って逃げ延びようとしていたのだが、逃げた先に分かれ道が一つもなかった一本道で、その先は行き止まりだった。

 足音が次第に大きくなってゆき、丁度月の光で近付いてくる人物の姿が見える。アルビノのような色の髪をし、日系アメリカ人もしくは日本人のような顔をした15歳くらいの女性だった。彼女の服装には紋章があり、それを見た彼は誰の命令で動いているのかすぐに理解し、生きることを諦めた。

 

『お、お前はヴォロフの所の人間か……よりにもよって、とんでもない相手に目を付けられてしまったわけか……』

『…………』 

『一つだけお願いしたい。誰がヴォロフに依頼したのかだけでも教えてくれないか? 逃げようとは思わないから、せめて教えてくれ』

『……私は、与えられた任務を遂行するだけ。それ以上の質問は答えられない。それに、依頼内容を教えることは会社の問題でもあるからできない』

 

 英語で会話している辺りからして日系アメリカ人のように思えるが、彼女は日本人である。ある一件で誘拐され、彼が言ったヴォロフという人間に買われた存在。人を殺めることに特化され、それ以外の感情という感覚は消され、ヴォロフの命令のみに従う人間と変わり果ててしまった。ヴォロフに与えられた任務は確実に遂行し、例え命乞いや質問などをされようとも答えるつもりはないほどの惨忍であるが、それもヴォロフによって育てられた結果である。

 彼はせめての質問にも答えられないと言われた時点で、殺される覚悟はすでにできていた。最初に彼女を見かけた時から、とてつもない雰囲気を漂わせていたのは気づいていたし、それ以前にヴォロフの人間だ。ヴォロフの人間から逃げ切れることは絶対にないと、裏の世界では有名な事であり、すでに逃げ道がない時点で逃げ切れると彼は思っていなかった。そのため、彼が取った行動は逃げもせずに潔く殺される覚悟を決め、目を瞑った。

 

『そっか……なら、さっさと私を殺せ。それが、お前の役目だろ?』

『最初からそのつもり。それじゃあ、さようなら』

 

 どこから取り出したか分からない拳銃を握り、一瞬にして銃弾を一発彼に向けて放った。彼女は彼に対して同情をするつもりはなく、それ以前に彼女は彼に対して何も思っていなかった。それもまた、ヴォロフによって植えつけられたものであり、相手に何も感情を持たないようにされた。

 銃弾一発で亡くなったことを確認するために、彼女は彼の首から脈が動いていない事を指で確認した。亡くなっていることが判ると、彼女はすぐさま持っていたスマートフォンを取り出し、とある人物に連絡する。コールする音が鳴っていたが、十秒もしないうちに連絡相手と繋がった。

 

「……F5268。任務遂行しました」

『そうか。ご苦労だ、F5268』

 

 日本語で会話し、通話先から聞こえてくる声は男性だった。彼こそが、彼女に命じた張本人であり、先ほど彼女と彼女が殺した人物の会話で出ていたヴォロフである。

 イリア・ヴェロフ――それがヴェロフの名前で、世界の裏を操る組織のリーダーだ。ある時は武器商人として武器の売買をし、ある時は暗殺の依頼を請け、そしてある時は女性しか使えないIS――インフィニット・ストラトスの技術提供などをしている。

 

『それで、いつも通り迎えを行かせるのだが……』

「……どうか、されたのですか?」

『いや、そういうわけではない。いつもならばこのまま私の所へ戻させるところではあるのだが、続けて依頼が届いたものでな。F5268にはすぐにそちらへ向かってもらいたい』

「そういう事ですか。それで、行き先と依頼内容はなんでしょうか?」

『行き先は日本、しかもIS学園だ。そして依頼内容だが……あの兎に次ぐ天才――織斑春十(おりむらはると)の暗殺だ』

「織斑春十の……暗殺……」

『あぁ、ようやくお前の因縁を終わらせることが出来るだろう?』

 

 織斑春十――最近ニュースで話題となり、唯一ISを操作できる男として有名だ。今年の4月からIS学園に入学することとなり、現在IS学園にて授業を受けている。イリア・ヴェロフが言った兎こと、IS開発者である篠ノ之束に次ぐ天才と言われ、世間では知られていないが、篠ノ之束のみが作れると言われているISのコアを作れる人物でもあった。

 彼女にとって織斑春十という名は特別な意味を持っていた。切っても切り離せない人物であり、イリア・ヴェロフに買われることになった原因の一つ。正確に言うと春十もそれに巻き込まれた側ではあるのだが、彼女が復讐したい人物の一人だった。彼のおかげで彼女の人生は狂わされ、買われる以前も毎日生きた心地がしていなかった原因である。

 しかし、彼女にとって今の生活の方が心地よく思えており、表情には現さないが人を殺めることを快楽と感じているほど狂っていた。

 彼女は人を殺めることを快楽だと思うまで、一度も快楽というものを味わったことがなかった。生きていることがあまりにも窮屈で、苦痛としか思わなかった。そんな彼女が人を初めて殺めた時、人がこんなにも簡単に殺せるものだと感じ、その殺害方法も数多あると知り、次第に快楽へと変化していった。

 基本的彼女が使う殺害方法は拳銃を使ったものが多いが、やはりそれは拳銃を使った方が効率良いという事だけで、状況に合わせてその場のペンなどの先が尖ったものや、ナイフなどの刃物などを殺害道具として使う事もある。最も効率よく殺せる方法を選択し、人を殺めることが成功する――それが彼女にとって一番の快楽となっていた。効率よく殺せる方法の中には、対象相手と交わることもあるが、その行為が快楽だと彼女は一度も思ったことがなく、殺すための手段としか思っていない。それほどまでに彼女はすでに狂っていた。実際彼女は、先ほどの殺害にも快楽を感じていたほどだった。

 しかし、彼女はイリア・ヴェロフに買われている身。無差別に人を殺めることは許されていないし、イリア・ヴェロフの命には絶対に従わなければならない。だが彼女にとって、快楽という感情を教えてもらったのはイリア・ヴェロフであり、彼の命令には絶対に従うようにしていた。春十には復讐したいという気持ちがあるが、そのおかげで今の自分が存在するという事を考えると、彼には感謝したいという点もあった。

 

「しかし、よろしいのでしょうか? 確かに、私はあいつには復讐したい点がありますけど……」

『昔の君ならばこんな命令をしなかったが、今の君ならば大丈夫だろう? 殺人に快楽を持った時は殺人衝動まで持ってしまうのではないかという不安もあったが、その心配はないからな。以前、君に何度も殺人の命令をしたおかげで、殺人衝動に駆られるようになった人間を見ただろう』

「はい……あれを見たとき、さすがにあんな風になりたくないと思いました」

 

 殺人衝動に駆られ、毎日人を殺めなければ気が狂ってしまう人間を、イリア・ヴェロフに一度見せてもらったことがあった。その時見た感想は、殺人に快楽を感じる彼女だとしても絶対になりたくないと尚の事思った。如何にして効率よく殺せるかに拘っている彼女として、単に人を殺めることに快楽を持っている人間には絶対になりたくないと前々から思っていた。人を殺しては生きていられないような姿を見て、さすがに彼女も引いたほどだった。

 

『それでいい。とにかく、荷物などの物は後で届ける。拠点も日本で伝える』

「分かりました。それでは――」

『待て、もう一つ要件がある。こちらは個人的な事だから気楽にしても良いぞ』

「……私はヴェロフ様に買われた身です。これ以上言葉を崩すのは恐れ多いこと――」

『君は相変わらず堅苦しいな……そのようにさせたのは私だが、状況に合わせての対応をもう少し教えるべきだったかな?』

「……それで、要件というものはなんでしょうか?」

 

 ヴェロフに堅苦しいと言われつつも、彼女はその口調を変えるつもりはなかった。それ以前に、これ以上言葉を崩してもよいと言われても、どのように崩せばいいのか彼女には分からなかった。正直にどのように言葉を崩せば良いのか分からないと言えば良かったのだが、そのことを伝えるのがなぜか恥ずかしく思ってしまい、買われたヴェロフ相手にこれ以上言葉を崩すのはできないような言い回しになってしまった。ヴェロフも彼女の言い回しが本当の理由ではないとすぐに理解したため、ヴェロフはもう少し状況把握した話し方を教えるべきだったと思った。

 しかし、今はそんな話に時間を取っている場合ではないため、ヴェロフはさっさと本題の要件について話し始める。

 

『君は……いや、あえて名前で言おうか。一夏(・・)はこの世界をどう思っている? この世界の有様を、一夏は今も昔もかなり深く関わっているだろう? ISが存在する過去から、私に買われている現在まで、同い年の人間とかけ離れた生活をしてきたはずだ。そんな一夏がこの世界をどう思っているのか、私は知りたい』

「……正直に言ってもよろしいでしょうか?」

『もちろん、それを聴くために私は聴いているんだ。思っていることをすべてぶちまけても構わないよ』

 

 彼女――織斑一夏(・・・・)は念のためヴェロフに確認をしてから、この世界の事をどのように思っているのか、正直に話した。

 

「……この世界は、欲望の塊です。欲望の為にハッキングしては世界に知らしめたり、欲望の為に人間を売ったりする。そしてその欲望の線に届かなければ、比較され軽蔑されたりする。人間によって汚れた世界です」

『それは、私も含まれるのか』

「失礼ですけども、ヴェロフ様もその一人です。そして私も――その人間の一人。私は人間という存在が嫌いであり、その中には私自身も含まれています。欲望のためならばなんだってするこんな世界に、私は生まれたくなかった」

『……一夏がそのように思っているとは、初めて知った。しかし、そこまで思っているのならばどうして今も生きようとする? 自殺してもおかしくないように思えるのだが……』

「過去に自殺しようと思ったことはありました。しかし、それは逃げているだけではないかと思ってしまい、以後、自殺しようとは思ったことがありません。この欲望の塊しかない世界で、寿命が尽きるまで生き抜いてみようと思い、今もこの考えは変わりません」

『……ようするに、こんな糞みたいな世界で、何かを見つけ出そうとしているわけか』

「簡単に言えば、その通りになります」

 

 ヴェロフは今まで一夏が他の人間に対して余り興味を持っていないことに気付いていた。ヴェロフはIS開発者である篠ノ之束と過去に何度も会っていた関係であり、束も人間に興味を持たない人間だった。一夏から話を聴くまで、一夏と束は似たような性格だと思い込んでいた。

 しかし、ふたを開けてみれば二人の性格は全く以て違った。束の人間嫌いの方が生易しいくらいで、一夏の人間嫌いは人間に対して絶望してしまい、興味すらない以前に欲望の塊としか思って居ないのだろうとヴェロフは思った。ヴェロフの命令は絶対にする一夏であるが、そのヴェロフに対しても一夏は興味を持ってなく、人間という全てに対してどうでもいい存在だと、実際には思っていた。

 ヴェロフが一夏を買った時から、一夏の目は既に虚ろで死んでいたような感じだった。最初は誘拐された場所でいろいろと薬を投入されたのかと思ったが、投入された薬は性別を変換させる薬だけだと調べた結果分かり、人身売買をするにあたって怪我をさせるのは余りよろしくないため、性的な行為をされるわけもないとその時ヴェロフは思った。どうしてそんな風になった原因は今まで把握しきれていなかったが、今回一夏が思い込んでいたことをすべて話してくれたおかげで、大体把握することが出来た。

 一夏は姉である織斑千冬と双子の弟である織斑春十の三人で暮らしていたが、ヴェロフはそのことを買う以前から知っていた。姉である千冬は第1回モンド・グロッソで優勝し、ブリュンヒルデの称号を授けられ、双子の弟である春十は幼い頃から天才と言われていたがために、常に一夏はその二人に比較され、特に弟が出来るのに兄である一夏が出来ない事が多かったため、出来損ないと言われるほどだった。そして第2回モンド・グロッソの時に一夏と春十の二人が誘拐され、千冬は先に春十を救い出すものの、一夏の行方は掴めず、誘拐された組織で女性に変えられてヴェロフに売られた。

 これが一夏の経歴だが、先ほどの一夏の話を聴いて、軽蔑されてから数年した辺りから人間に対して興味を持たなくなっていったのだろうと、ヴェロフは推測した。そしてそれをさらに加速させたのが誘拐された一件で、千冬に助けてもらえなかったことが、人間は欲望の塊だという結論にたどり着いてしまったのだろう。それがまた、ヴェロフは一夏に対して尚の事興味を持つこととなった。

 

『……ふ、ふははははは!! やはり君は最高だ!! さすが、私の一番のお気に入りだけはある!!』

「…………」

『とにかく、私からの要件は以上だ。もうじき迎えが着くころだろう。君は迎えが来るまでその場で待機してくれ』

「……分かりました」

 

 通話が切れると、一夏は誰もここに来ないように路地裏の入り口前まで移動することにした。入り口から行き止まりまで一本道なため、そこに立っていれば誰かが入ってくれば分かるだろうと思ったからだ。

 そしてヴェロフが言った迎えの姿が見え、その者達は一夏を近くで止めた車まで移動し、車に乗せて空港へと向かって行くのだった――




イリア・ヴェロフはロシア人です。わざわざロシアの名前と苗字を調べてこうしました。
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