IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜   作:アリヤ

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かなり遅れてごめんなさい。

半年近くも投稿してなかったとは思わなかった……

出来るだけ早く投稿できるように次回から努力していきます……


第十一話

「うん、僕がこの前伝えたバグやエラーはすべて取り除かれているね」

「本当にっ!?」

「後は確認を行えば……って顔が近いよ!!」

「あっ……ごめんなさい!!」

 

 シャルロット・デュノアは前回整備室に来たときは更識簪にアドバイスを行っただけで、整備室に来た理由であった自分の専用機の整備が出来なかったため、時間が空いた今日を使って整備を行おうとしていた。

 しかし、整備室に来てみると、前回来た時と同様に簪の姿が見え、簪もシャルロットの姿を見つけ、シャルロットに駆け寄ってきた。

 駆け寄ってすぐに簪からこの前の事について感謝されたが、その後申し訳なさそうに再度バグやエラーなどの確認を行ってほしいという事で、結局断りきれずに手伝うことにした。

 その結果、特にこれと言った問題はなく、最後にしっかりと動くかどうか確認を行い、それで問題がなければ大丈夫だろうとシャルロットは伝えようとしていたところで、現在に至り、シャルロットは簪に話を続けた。

 

「とりあえず、バグなどを取り外せたことだからここまで出来ているのであれば問題ないかな。あとは自分好みの調整を行うようにしたりするくらいだから、僕がアドバイスするようなことはこれ以上ないと思うよ。まぁ、その辺の調整とかも実際に載って確認するしかないけど」

「……わざわざ助けてもらってありがとう。なにか、お礼をしたいのだけど――」

「別に気にしなくていいよ。僕が勝手に手伝ったようなものだし、簪さんを最初見た時に昔の自分を見ているようで、単に見ていられなかっただけだから……」

「それでも、なにかお礼しないと気が済まない」

 

 何かお礼するまで諦めないかのような眼差しを向けられて、シャルロットは少し考えることにした。

 今すぐ何かしてほしいようなことがあるわけでもないし、今度何かを奢ってもらうのも気が引けてしまう。

 しかし、何かお礼をさせないと整備室に来た本来の事が出来なくなってしまうこともあり、とりあえずこの状況を終わらせるためにシャルロットはある策を使うことにした。

 

「ならさ、また今度考えさせてもらっていいかな? お礼と言われても、何をしてもらうかすぐに思いつかなくて……」

「……そう言ってお礼させないとかではないよね?」

「そこまでしないから!! たとえば何か手伝ってほしい際に伝えるからさ!!」

「……解った。なら連絡交換しておこう?」

「あ、うん。それくらいならいいよ」

 

 渋々ではあったが、何とか納得することができたシャルロットは多少疲れはしたが、納得してくれたおかげで何とか助かったと思う。このまま断り続けていればどのくらい時間を使われたか解らないし、そのことを考えると少し恐ろしく思った。

 そのあと、簪はシャルロットに一度礼をしてから整備室を後にし、整備室にはシャルロット一人だけとなっていた。ようやく自分がしようとしていたことをできるとは思ったが、その前に先ほどから気になっている人の気配(・・・・)を先に対処しておこうと考え、気配がする方向へと体を向けた。

 

「……それで、さっきから僕を監視している生徒会長さんは僕に何の用かな?」

「あら、ばれちゃった?」

「さっきまでしていなかった気配が、突然感じてしまえば僕でも気付くよ? まるで、見つけてほしいと言っているみたいにしか思えなかったけど……」

 

 物陰から現れたのはIS学園の生徒会長であり、先ほどシャルロットが話していた簪の姉に当たる更識楯無だった。

 整備室に来るまで楯無の気配を感じることはなかったが、簪と会話したとたんに何者かの気配をシャルロットは感じていた。簪と話している間に一度だけ視線を気配に向けてみると、簪と同じような水色の髪の色をした女性が見えたため、簪と会話してすぐに気配を感じたことからして更識楯無であろうとシャルロットは結論に至り、確定ではないにしても生徒会長だと決めつけて楯無の方に話していたわけだ。

 しかし、簪が居なくなったこともあって、この状況は余りにも悪いとシャルロットは思った。フランスとドイツ――この二国が何か怪しげな行動をしていると、暗部組織である更識家が気づいていないはずがない。そもそも、イリア・ヴェロフという名前が裏社会にて有名なこともあり、どこまで情報を知っているか解らないが、関係性があると思われていたら面倒だとシャルロットは思っていた。

 とにかく、今は相手の出方次第を待つしかないと考え、シャルロットは会話をしつつ、更識家がどのくらい情報を知り得ているのか探ることにした。

 

「それで、僕に一体何の用なの?」

「そんなに睨まなくても、もう少し和やかに――」

「和やかにする気がないくせに、よく言うよ。聴きたいことは一体――」

「どういう理由で妹に近づいたのかしら?」

 

 先ほどまでの悪巧みするような顔が一変し、真剣な雰囲気を楯無は出した。殺気を出していたわけではないが、その顔から察するに冗談で返せるような顔ではないとシャルロットは思った。

 簪と会ったこと自体はそもそも偶然起きたことに近く、その延長線上で整備の手伝いをしたりしていたくらいで、これと言って何か目論見があるわけでもなかった。そのことを正直に話しも構わないが、それでは楯無がどのくらいの情報を知っているのかという事を探ることができない。

 しかし、探るとしてもそう簡単にこちらの情報を渡すわけにもいかず、シャルロット自身の正体まで知られるわけにはいかない。とはいえ、質問の返答が遅れることも怪しまれる理由としてなってしまうため、本当のことを混ぜながら返答していくようにシャルロットは考えた。

 

「別に、近づいた目的なんてないよ。そもそも最初に会った経緯ですら僕が自分の専用機を整備しようとしていただけで、様子を見ていたらどうしても気になっただけ。それ以上でもそれ以下でもないよ」

「本当にそうなのかしら?」

「その前に、どうして僕が妹に近づいたくらいで疑われるのかな? それ相応な理由を見せてくれないと、これ以上答えるつもりはないし、生徒会長さんの事を疑うし嫌うことになるよ」

 

 たとえ嫌われたところで楯無にとってはさほど痛いわけではないだろう。重要なところはそこではなく、ここで答えないなどという返事をしてくるのであれば、楯無の信用性を失うという言葉の方が問題だ。

 もし見当違いであれば嫌われるだけで問題はないかもしれないが、なんらかの企みがある場合には多少だとしても情報を引き出せなくなってしまうかもしれない。暗部組織とはいえ情報を入手するには難しく、入手できる情報であれば多少であっても欲しいというものもあった。

 また、シャルロットを疑っているという点については実はある理由がある。最近、フランスとドイツにて不穏な動きを見せているという噂が更識家にも伝わってきているのだが、転入してきたシャルロット・デュノア、シルヴェーヌ・デュノアについては何一つ怪しそうな情報が何一つもなかった。

 ラウラ・ボーデヴィッヒについては軍人という点があるため、それだけで怪しいとは思われたが、デュノア姉妹の何一つ怪しいところがないというのは逆に怪しいとしか思えなかった。人間、それがどうでもいいことであろうとしても、何かしら一つくらいは怪しそうな部分がある筈だ。それすら何もないという時点で怪しかった。

 さらに言えば、数週間前にIS学園には所属不明のISと織斑春十の暗殺を企てた一件があったにもかかわらず、フランスは特に気にせずにデュノア姉妹を転入させたことも気になっていた。これはドイツにも言えることではあるが、普通そんな暗殺未遂が起こった場所に国が送るとは思えなかった。

 それに、何も怪しいところがないということ以外にも、デュノア姉妹が転入する前に、母親であるクラリス・デュノアが殺されたにもかかわらず、何事もなかったかのように転入をしてきたことも謎なところだ。生徒たちはその話題を避けようとしている仕草を何度か見受けられたが、異母違いであるシャルロットは別としても、実母にあたるシルヴェーヌは一度も悲しげな表情を今のところ見せたことがなく、シャルロットと仲が良いという事がよく耳に入ってくることしかなかった。

 それらを総合的に考えて、デュノア姉妹は何かしらの裏が存在するとしか楯無には思えなかった。今回接触した大きな理由としては何かしらの企みがあって妹の簪に近づいたと思ったが、逆に追い込まれるような形となってしまった。

 しかし、ここで何か言わないと情報が手に入らないこともあり、咄嗟に思いついた答えを楯無は答えることにした。答えよとしている内容は余りにも意味をなさず、もしシャルロットが何らかの組織に属しているとしたら本音でないと思われるだろうが、考える時間がない楯無はそれ以外な返し方が見つからなかった。

 

「疑っているわけではないわ。単純に簪ちゃんが最近生き生きとしているように思えてね……」

「だとしても、気配を消していた理由には――」

「正直に言うけど、あまり簪ちゃんと仲が良くないのよ。仲直りはしたいのだけどね……」

 

 楯無が思っていた通り、半分くらいは嘘だろうとシャルロットは思ったが、それでも楯無の表情からして本当の事ではあろうと思った。

 事実、シャルロットが簪と最初に会った時よりも生き生きとしているようには感じていた。そこまで詳しいことを話したわけでもないが、簪の事情はなんとなく知っていた。

 その辺の事からして、楯無は簪と仲を取り戻したいのだろう。しかし、それは楯無の立場的に難しいことで、結局見守るという選択肢しかとれず、シャルロットが簪と接触する前も簪の様子を見ていたのかもしれないとシャルロットは思った。

 そしてまた、手助けをしたいとも内心では思っていたことに、シャルロットは気付いていた。

 

(……駄目だね僕は。仮にも敵である人間に対して情を持ってしまうなんて)

 

 こういうことに関して、本当に自分は情に流されやすいとシャルロットは思った。仮にもイリア・ヴェロフの下にいるシャルロットとしては、情を捨てなければならないのだが、事情を聴いてしまうとどうしても助けてやりたいという気持ちになってしまう。

 一夏に救われて以降、自分なりに人助けをしたいという気持ちがあり、一夏に感情を取り戻そうとしているのも、シャルロット自身が一夏に救われたことも関係しているが、救われたことと関係なく救いたいと思っていた。

 

「はぁ、まさかそんな話を聞かされるとは思わなかったけど……」

「私もこの話をするとは思ってなかったわよ……」

「でしょうね。とりあえず多少の手助けはするから後は自分でがんばってね」

「え? 今なんてっ!?」

「そんな顔をされると、こっちが気になって仕方ないから手伝ってあげるよ。セッティングとかは全部僕がするから、詳しいことはまた今度で」

 

 これ以上、楯無と一緒にいると何かが崩れそうな気がしたから、シャルロットは急いで整備室を後にしようとしていた。けど楯無がシャルロットの言葉に驚いて呆然としていたため、追いかけてくる様子はなくかった。

 そして、整備室からある程度離れたところで、シャルロットはため息を大きく吐いた。人助けをしたいという自分の気持ちを抑えられず、つい楯無の前で手伝うようなことを話してしまったことに後悔をしていた。こんな話をシルヴェーヌやラウラに話したら呆れた顔をされそうなのは目に見えるし、しかも独断で決めてしまったものだから、もし気付かれてしあうようであれば面倒な事になるだろうと想像がついた。

 とはいえ、一度承諾してしまったものでもあるし、結果的に言えば話の論点がずれたおかげで楯無から逃げられることができ、更識姉妹の仲直りをしている間は楯無から何か問われることは少なくなる事だろうとは思っていた。それだけでもまだよかったのかもしれないとシャルロットは考え、寮の自室へと帰ることにした――

 

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