IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜   作:アリヤ

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第十八話

 東南アジア――無人島某所――

 

「それで、その情報は本当何だろうな、スコール」

 

 一人の女性が、スコールと呼ばれていた女性と共に歩き、先ほど聴かされた情報に嘘がないか確認していた。

 スコールと呼ばれていた女性が言った内容が本当のことであれば、彼女たちが所属している組織が崩壊の道をたどる可能性があったからだ。あまりにも一大事なことであったので、スコールから言われたことは信じたくなかったからだ。

 

「本当のことよ。ドイツ軍が私たち亡国機業の本部に対して総攻撃が行われるわ。先ほど本部から要請があって、至急本部へ急行するようにと」

「けっ、こういう時だけ私たちが頼りなのかよ。いつもは私たちの評価がいいものだから支部に配属させるくらいなのに。それで、要請には従うのか?」

「オータム、解っていながら聴いてないかしら?」

「さぁ。一応スコールの口から聴くのが下にいる私たちの役割だろう?」

 

 確かにオータムと呼ばれた女性の言うとおりであるが、言い草からして知ったような話し方をしてきているので、スコールは溜め息を吐きながらも話した。

 

「……オータムが言った通りよ。だけど要請に応じない理由はしっかりとあるわ」

「それはあるのか。てっきり仕打ちが酷いからないと思っていたが」

「従わなかったら私たちの状況が尚更酷くなるだけよ。釈然しないけど、上層部の命令には従わないと」

「……で、その理由というのは?」

「明らかに怪しいと思わないかしら? あの上層部が私たちよりも情報を仕入れるなんて」

「……それもそうだね。何か罠があるとしか考えられない」

 

 スコールの言い方からして、オータムは納得していた。いつもならば、スコールを部隊長とする部隊から本部に情報を伝えることがかなり多く、本部からの情報が来るとしても今回みたいな緊急時である場合の要請くらいだ。しかし、今回みたいに情報を仕入れたから要請があるなんて、明らかな罠としかスコールは思えなかった。これは、スコールに部隊を要請に応じるように促しているのではないかと――

 その刹那、緊急を知らせるアラームが鳴り響き始めた――

 

《全員に告げる!! 北西の方向からISの反応が多数ありっ!! 明らかにこの支部に向かっていますっ!!》

「っ!? オータム!! 今すぐ管制室に向かうわよ!!」

「解ってる!! スコールが怪しいと思っていた理由はこれかっ!!」

 

 緊急事態だと知ったスコールとオータムは、即座に管制室へと急行した。

 そしてこのときスコールはすべてを察した。亡国機業本部への襲撃させる情報をあえて流し、要請の準備をしている間に襲撃するつもりだったと。それによって指示を変更しなければならないため、多少の混乱をさせている間に襲撃しようとしていたと。

 

「くそっ、本部襲撃というのは錯乱するための嘘かっ!?」

「……オータム、それは違うと思うわ。本部襲撃の情報は本当のことでしょうね。ドイツ軍は今回の襲撃作戦で亡国機業を再起不能にするつもりでしょう。あのイリヤ・ヴェロフが敵対している私たち亡国機業を残しておくと思えない」

 

 スコールとオータムが会話している間に、目的地である管制室にたどり着いた。扉を開けて中にはいると、既に画面には敵のISが映像に映されており、その中心辺りにオータムと同じでスコールの部下にあたる、織斑千冬を高校生くらいに若くした女性が立っていた。スコールとオータムは即座にその彼女へ近づき、状況を聴こうとした。

 

「M、状況はどうなっているのかしら」

「……スコールか。それとオータムも」

「おい、私はついでかよ」

「二人とも、今は喧嘩している場合ではないわ。とにかく、状況を伝えてもらえるかしら?」

 

 彼女――Mの一言でオータムと一触即発になりそうだったが、スコールが割り込んで阻止した。Mとオータムはスコールの言葉に従ったが、お互いに目線を合わせようとせず、Mはスコールに言われたように状況説明を行った。

 

「……相手の部隊は二十前後。一機を除いて全て同じ機体のようだ」

「イリヤ・ヴェロフが開発した、団体戦専用のフォーマット機体ね。それで、多分部隊長である機体は?」

「イリヤ・ヴェロフが造ったものだから情報がないが、同乗者については誰か把握する事ができた」

「一体誰かしら」

「部隊長らしき機体をズームしてくれ」

「はい」

 

 Mの指示で、管制室にて画面を操作していた女性の一人が答え、言われたとおりに部隊長らしき機体を拡大してくれた。そこには銀髪で左目を眼帯している女性が乗っており、その人物がなにものなのかスコールは即座に思い出し、最悪な状況だと知ってしまった。

 

「シュヴァルツェ・ハーゼの隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。またの名を、イリヤ・ヴェロフのクイーンと呼ばれている内の一人」

「よりによってクイーンの一人かよっ!?」

「それほど、本気で壊滅させるつもりでしょうね……」

 

 スコールの言葉に、オータムも状況が最悪だということを把握した。クイーンをこの支部に投入している時点で、スコールの居場所が知られているということだろうからだ。クイーンと聴いて今からこの支部を捨てて、逃げ出すことをスコールは咄嗟に考えたが、既に間に合わない状況なので即座に切り捨て、迎え撃つ選択肢しかなかった。

 

「オータムとMを除いて、迎え撃つように総員へ伝えなさい。相手はクイーンが指揮する部隊――ミスしたら殺されるという緊張で挑みなさいと伝えなさい」

「は、はいっ!! 総員に告げる――」

「スコール、一つ今更なことを聴いてもいいか?」

「M、どうかしたの?」

 

 スコールが指示した女性が支部の全員に伝えている間、Mは今まで疑問に思っていたことをスコールに確認することにした。

 

「クイーンという人物がどれほど危険な人物だという事は聴いている。たが、どのくらい危険かよく解っていないから、今の内に教えて貰っても構わないか」

「……そうね、オータムとMにもクイーンと戦うことになるかもしれないから、知っている範囲で再度説明しておきましょうか」

 

 スコールは元々相手の戦力をある程度落としてから、自分を含めオータムとMにも参戦してもらう形にする予定だった。そのため、今の内にクイーンについて話しておいた方が、戦う際の状況が変わるかもしれないとスコールは思い、オータムとMには知っている範囲を詳細に説明することにした。

 

「初めに、イリヤ・ヴェロフについてだけど、ドイツとフランスを裏で操っていることは知っているよね?」

「確かそうだったな。ドイツは秘密裏にやっていた人体実験が目的で、フランスは第二世代までしかISを作れなかったのを利用して、その結果両国を裏で操れるようになったとか」

「その辺は噂でしょうけど、間違っていないでしょう。それで、ここからが本題だけど、クイーンと言われている人間はその二国から、イリヤ・ヴェロフが気に入られている人物を集めた三人が呼ばれていて、イリヤ・ヴェロフを守護する最強の三人だということは知っているよね?」

「その辺は前に聴いたな。ラウラ・ボーデヴィッヒ以外のクイーンは把握していないということも……」

「M……揚げ足取らないで。とにかく、その内の一人であるラウラ・ボーデヴィッヒが今攻めてきていることを考えると、状況的には最悪……」

「だが、クイーン一人ならまだ何とかなると、スコールは考えているのだろう?」

 

 スコールの否定的な言葉に、オータムは嫌らしい笑みを浮かべながら言う。スコールはそんなオータムを見て溜め息を吐きながらも、頷いて答えた。

 

「その通りよ。ラウラ・ボーデヴィッヒはクイーンの中でも指示能力がかけ離れている。けど、そのラウラ・ボーデヴィッヒを攻略すれば、一気にこちらの優勢に持ち込めるわ」

「しかしスコール、クイーンと呼ばれている一人だぞ。そう簡単にうまくいくとは思えない」

「確かにオータムの言うとおりよ。けど、自ら犠牲になって突っ込んでくるジャックス部隊や、他のクイーン、そしてジョーカーと呼ばれている人物たちに比べたら一番勝率があるのよ。」

「要するに、個人としての実力を考えると、他のクイーンやジョーカーより劣ると。だから部隊を混乱させるようにすれば、勝ち目があるということか」

「そういうことよ。シュヴァルツェ・ハーゼについての実力は知らないけども、流石にジャックス部隊よりは危険ではないでしょう」

 

 スコールの言いたいことを把握したMは、スコールの言いたいことを要約して纏め、それに付け足すかのようにスコールは話した。確かにそれなら勝ち目はあるかもしれず、ここから逃げ出せる可能性だって考えられた。

 

「それで、作戦内容としてはどういう方法を取るんだ?」

「既に手は打ってあるわ。咄嗟の判断だったけど、私たち三人を残したのはラウラ・ボーデヴィッヒに気づかれず反撃するのよ」

「ってなると、気づかれないようにする方法が難しいな。ハイパーセンサーがある以上、気づかれないようにするなんて……」

 

 スコールが考えた作戦は確かに良いが、気づかれずに行動するということは難しいとオータムは思った。スナイパーするような兵器はMのサイレント・ゼフィルスに搭載されている星を砕く者(スターブレイカー)というレーザーライフルくらいだ。しかし、それも今現在ならば遠いので手段として問題ないが、次第に近づいてくると考えると不意打ちは難しいだろう。そもそも、だった一発でシールドエネルギーをゼロにしなければならないと考えると、好ましいものではなかった。

 そう考えると、気づかれないようにする方法として、一番考えられるのは囮を用意して攻撃する選択肢くらいしかなかった。ハイパーセンサーがある以上、誰かが囮にならなければその囮に対して意識が向けられる。それを利用して残り二人のISで、シールドエネルギーをゼロにするような一撃を与えるという作戦だ。

 その考えに至ったスコールは誰が囮になるか決め、それをオータムとMに話した――

 

「……私自ら囮になって、オータムとMは不意打ちを狙うようにしなさい」

「なっ、なんでスコールがわざわざ囮なんかになる必要がっ!?」

「ドイツ軍の目的は確実に私よ。だからこそ私が囮になることで、ラウラ・ボーデヴィッヒの隙を大きく作るのよ」

「しかしっ!!」

「オータム、私の指示に従いなさい」

「っ!? 解ったよ、くそっ」

 

 オータムの言葉にもスコールは意見を変えず、納得していないがオータムが折れる形となった。

 スコールとオータムはいわゆる恋人関係だ。オータムとしては、スコールに危険な行為をして欲しくないと思いでの否定だった。

 しかし、スコールとオータムの上下関係がある以上、オータムが折れるしかなかった。

 

「……とりあえず今のところは先に準備させている全員が出撃次第、状況に応じて私たちも出動するわ」

「了解だ」

「了解した」

 

 スコールはオータムの気持ちも解っていたが、オータムを励ますことをせず、とりあえずは様子を見てから動くことを伝えるのだった――

 

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