IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜 作:アリヤ
本当ならば、この投稿している第一話の内容は予定ではカットする場面だったのだけど、鈴やセシリアの立ち位置について書く場面がないことに気づき、第二話の内容を書いている途中で急遽こちらを書いた感じというww しかもすでに半分も書き終わっている状態w
なので、次に投稿するもの多分この作品だと思われ。
それではどうぞ!!
第一話
「え、二組に転入生? なんでこんな時期に」
四月下旬のIS学園にて、男性で唯一ISを動かすことが出来る織斑春十は同じ教室に居た数人の女子生徒と話をしていた。その中には幼馴染でありIS開発者である篠ノ之束の妹、篠ノ之箒の姿もあった。
それにしても、この時期に転入生というのはおかしかった。入学式から二十日程度しか経過していないし、普通なら入学式に合わせてくるはずだ。わざわざ遅れてIS学園に転入してくる理由がよほどの事であったのではと春十は考えた。
「そう!! 何でも、中国の代表候補生なんだって!!」
「……中国、まさかね」
中国と聞いて、春十はある人物を浮かんだ。その人物とは春十にとってあまり仲が良かったわけでもないが、現在行方不明になっており、春十の兄である織斑一夏とはとても仲が良かった。春十にとって一夏は料理しか取り柄のない屑でしかなく、その一夏と知り合いだった人物とは一夏のことで口喧嘩する事が多かった。一夏が行方不明になってから約一年後に家の事情で中国へ行ったようだが、春十は厄介者が消えたとしか思っていなかった。
春十は最初、その人物が日本に戻ってきたのかと考えるが、そこまで世の中が狭いとは思っていない。しかし、完全に否定しきれないところもあり、その中国の代表候補生がどんな人物なのか知りたかった。
「まぁ、誰であろうと天才の僕に勝てる人なんていないだろうし」
「そうだな。一ヶ月後にはクラス対抗戦があるが、専用機持ちも春十とオルコット、あと四組代表だけだからな。オルコットが別のクラスだったら問題だが、私たちと同じクラスだからな。気にするべきなのは四組代表だけだろ? 十分優勝も狙えるはずだ」
「篠ノ之さんの言うとおりだよ!! それに、優勝したらデザートフリーパスが貰えるのだから、織斑君には頑張ってもらわないと!!」
別に春十はデザートフリーパスに興味があるわけではないが、クラスの期待には応えてあげたいとは思った。
ちなみに、春十は一組のクラス代表であるが、クラス代表になるにあたって同じクラスの専用機持ちであるセシリア・オルコットとクラス代表決定戦が行われた。その結果は春十が勝利を収め、春十がクラス代表となった。またセシリア・オルコットだが、入学した当時は女尊男卑の影響を受けている典型的な人物の一人だったが、クラス代表決定戦の後、今までの事を反省して春十に一度謝っている。しかし、セシリアは春十に対して価値観が合わず、仲が良いというところまではいっていない。今現在も春十に集まっている女子生徒に混ざってはおらず、他の女子生徒と話し合っていた。
「……その情報、古いわよ」
春十達が話し合っていると、突然女性の声が教室のドアの近くから聞こえてきた。全員がそちらに顔を向けると、ツインテールをした見覚えのない女子生徒が立っていた。
彼女を見た春十は、突然嫌そうな顔をした。彼女こそ、中国の代表候補生の話を聴いて浮かんだ人物であったからだ。そして彼女も春十の方に視線を向け、その視線は軽蔑するような嫌な目だった。
「……久しぶりだね――
「相変わらずのフルネームで呼ぶのね、あんたは」
「なんだ? 一夏みたいに
「はぁ? そんなわけないでしょ。あんたからその呼び名で呼ばれるのは不快なんだけど」
先ほどまでの和やかな会話から、春十と鈴が発するただならぬ雰囲気により、空気が一変した。
「……相変わらず僕には刺々しいな。正直おまえと再会したいとは思っていなかったのだけど」
「それはこっちのセリフよ。元々IS学園になんか行く予定ではなかったのに、どこかの誰かさんがISを起動させたから行かされる羽目になったし」
春十に向けて放った言葉は要するに嫌味で、鈴がIS学園に来るきっかけとなった本当の理由ではない。確かに鈴はIS学園に通う予定ではなく、中国の学校で高校生活をするつもりだった。その後、春十がISを起動させたことによって中国から行くようにも言われたが、最初はIS学園に通うつもりはないと断っていた。しかし、何度も同じことを話しかけられていく内に、IS学園へ通うメリットを考えてゆき、行方不明となった一夏を探すにはもってこいの場所かもしれないという結論に辿り着いた。IS学園に通うことによって自由度は無くなるかもしれないが、中国に居るよりは情報が手に入るのではないかと考え、入学式に遅れることになったが転入する決意をした。
鈴は行方不明となった一夏を中国の時から探し回っていた。しかし、鈴一人で手に入る情報なんて良くて一握りであり、全く以て情報が手に入らなかったと言ってもいい。それでも鈴は諦めず、情報を手に入れるために場所を変えて、一から始めようと思っていた。
いがみ合っていると、突然春十が口を開いて鈴に忠告をする。
「あ、そうそう。そろそろ後ろを確認した方が良いよ」
「はぁ? あんた何言って――」
「織斑の言うとおりだ。いつまでそこに立っている」
「げっ、この声は……」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた鈴は、冷や汗を掻きながらもゆっくりと後ろへと振り向いた。そこに居たのは春十と一夏の姉である織斑千冬が仁王立ちしていた。
「ち、千冬さん」
「織斑先生だ。とにかく教室に戻れ」
千冬は持っていた出席簿で鈴の頭を叩いた。鈍器のような痛みを感じた鈴は、どうやったら出席簿でこれほどの痛みが起こせるのか疑問に思いつつも、涙目になりながらも教室へと戻って行った。
そんな様子を見ていたクラスの生徒達だが、教師が来たことをすっかり忘れて自分の席へと戻らずにいた。
「いつまでその場に立っている!! 授業をはじめるぞ!!」
その千冬の言葉で立っていた生徒は慌ただしくも自分の席へと戻り、その間にも千冬は教卓の前に立ち、全員が席に座ったのを確認してから授業を始めた――
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「……久しぶりね。この国も」
飛行機で日本へと降り立ち、空港から交通機関でIS学園がある街へと着いた一夏は、周りの建物や景色を見て日本に戻ってきたのだと実感し、その場に立ち止まった。日本に居た頃の思い出は無いに等しいが、やはりそれでも懐かしさというものは一夏にもある。春十に比較されたことによって同級生の女性生徒などに虐められ、生きた心地がしない日々を過ごしていたが、それでも助けてくれた友達は一夏にも居た。しかし、その友達がどうしているかというのは、今の一夏にとってどうでもいいことになっており、たとえ再会したとしても、何をしていようが気にしないだろう。自分はイリア・ヴェロフに買われた身……それ以上でもそれ以下でもない存在なのだから――
立ち止まって数分後、一夏は持っていたスマートフォンを取りだす。マップ画面を表示させ、自分が拠点となる住所を入力し、現在地からその住所までのルートを表示させ、そのルート通りに一夏は歩み進めた。元々一夏は地図を読むことすらあまり得意としていなかったが、イリア・ヴェロフに買われてから強制的に覚えさせられた。地図が読めなければ目的地まで行けないし、目的地まで向かってくれないことだってある。そのためには地図が読めなければ困るため、イリア・ヴェロフの下に居る人間は全員地図が読めるように特訓させられた。
「あれは……」
拠点に向かっている途中で、一夏と同年代の学生や、一夏と同じように双子の弟が姉を追いかける姿もあった。一夏はそんな姉弟の様子を見て一度足を止めたが、すぐに歩み始めた。一瞬だけその様子を見ていたが、あのままあの光景を見続けてしまうと羨ましくて殺しかねなかったからだ。一夏がずっと昔から望んでいた姿であり、そんな光景を崩さないためにも見続けずに先に進むことを選んだのだ。
それからもありとあらゆる人が通り過ぎていった。子供連れの家族が楽しそうにしている姿や、学校帰りであろう学生が他愛無い会話をしている姿。しかし一夏はそんな光景をあまり見向きもせずに歩いて行った。
「……ここね」
そんな光景を無視しながら先へと歩いていくと、一夏が拠点となるマンションが見えてきた。四階建てのよくあるマンションで、この建物の三階にこれから一夏の拠点となる場所があった。一夏は三階へと上がり、指定されていた番号の前に着くと、持っていた鍵を開けて中へと入っていった。家の中は引っ越した時のようにダンボールが積み重なっている……という光景はなく、家具や必要な道具などは全て片付けられていた。
いつでもIS学園へと出られる状態になっているが、今回の命令はいつもと違い、単独行動で動くことを禁じられている。イリア・ヴェロフから毎回連絡があり、その時に指示されるような形で動くように事前に言われていた。自分の作戦で暗殺してよいというわけではないため、拠点に居たとしても暇になる時間の方が多かった。こういう命令は何度もあるわけではないが、一夏も数回経験している。その数回に共通していることは、暇な時間ほど退屈で一日の時間が遅く感じてしまう事だ。何か一つ趣味などがあれば暇な時間も退屈せずにできるが、一夏に趣味なんて言うものは一つもない。興味を持つ時間すら、誘拐される以前も以後もなかった。
「……寝よう」
一夏が取った行動は睡眠だった。無駄に時間を費やすのならば、少しでも寝ていつでも備える様にしておこうと考えた。それから一夏はベッドに倒れ、夕方まで寝ることにするのだった――