IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜   作:アリヤ

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第七話

「それでは、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

 最初の授業から実践授業であったために、1組と2組の生徒たちはアリーナの一つを借りて授業を行っていた。

 結局授業に間に合わずに遅れてきた1組の生徒が数名降り、先ほど千冬から出席簿で叩かれたものだから、今も尚頭を押さえていた。その中にはデュノア姉妹の二人も含まれ、余りの痛みに何かあの出席簿には金属でも入れてあるのではないかと思わず疑ってしまうほど痛かった。

 

「まずは専用機持ちの二人にはある人物と対戦実践をしてもらおうか。そうだな……オルコット!! 凰!!」

「え、わたくしですか!?」

「あたしも!? てっきりデュノア姉妹がするのかと――」

 

 まさか呼ばれるとは思っていなかった二人は、千冬から呼ばれたことに思わず驚いてしまった。

 専用機持ちの二人と言っていたが、先ほど1組には有名なデュノア姉妹のコンビがいるし、二人のコンビネーションでも見せるのだろうとてっきり考えてしまっていた。そう思っていた二人だからこそ、呼ばれることはないだろうとつい気楽にしていた。

 そんな気楽にしていた様子を千冬は見逃していなかった。そもそも頼もうとしていたのが、セシリアと鈴の二人だったくらいだ。デュノア姉妹のコンビネーションは国代表ですら倒してしまうという事は千冬でも知っていたくらいであり、今回の実戦で頼むことは余り意味を成さなかったからだ。春十に頼むという考えもあったが、セシリアと鈴の二人が春十と仲が良くないことは知っていたし、うまく連携が取れるとは思っていなかった。はっきり言ってしまえば、消去法でその二人しかいなかったわけだ。

 とはいえ、元々気楽に居てやる気なんてさらさらなかった二人にとって、モチベーションは余りにも低いものだった。見世物扱いにされることに余り好きではなく、テレビのインタビューに答えることもなるべくしたくないくらいだ。そもそも彼女たちが代表候補生をしているのは、ある事に気づかれないようにすることと、フランスの知名度を上げるためだけの理由で、フランスの代表になるためではないのだ。

 

「デュノア姉妹が実践させると、問題があるからだ。とりあえず準備しろ」

「……わかりましたが、対戦相手は一体誰でしょうか?」

「そろそろ来ると思うのだが……」

「ど、どいてくださああああああああああああああいっ!!」

 

 突如聞き覚えのある声が上空から聞こえてきて、見上げると山田真耶が生徒たちがいる方向へ突き進んできていた。その光景を見たデュノア姉妹は何をやっているのかと思わずため息を吐きたくなかった。

 とにかくこのまま止めないというわけにもいかないため、お互いに視線を一瞬だけ合わせ、シャルロットが自身の専用機を展開させて真耶先生を受け止めた。

 

「大丈夫ですか先生?」

「あ、ありがとうございますデュノアさん」

 

 何とか被害がなく終えることが出来たが、こんなのが教師で大丈夫なのかとデュノア姉妹は正直不安になった。

 真耶はシャルロットから離れ、何事もなかったかのように生徒達の方へとISを動かした。これ以上時間を掛けるわけにもいかないと思った千冬は一度ため息を吐きながらも、先ほどから何も準備をせずに立ち続けている鈴とセシリアの方へと振り向き、近づいて二人の肩を叩いた。

 

「そこの二人、何ぼさっとしている。さっさと準備をしろ」

「あ、は、はいっ!!」

「わ、わかりましたわ!!」

 

 千冬に言われた二人はそれぞれ自分の専用機を展開させ、真耶と対面するような形となり、そのまま上空へと上昇していった。そもそもタッグで戦う事すら初めてだったが、とりあえず二人はプライベート・チャンネルを繋ぎ、作戦を考えることにした。

 

『セシリア。あんたはISの性能的に遠距離からの援護をお願いできる?』

『そういうとは思いましたわ。鈴さんの攻撃に合わせばよろしいのですね?』

『えぇ、それでは行くわよ!!』

 

 鈴の合図と共に双天牙月(そうてんがげつ)を展開し、真耶に一気に近づく。

 あまりにも単調で解りやすい攻撃はある事に、真耶は攻撃を仕掛けてくる即座に避ける。もちろん鈴もこんな攻撃が通るとは思ってもいなかったし、避けられた即座に甲龍を大きく捻りながらも、もう片方の右手に持っていた双天牙月(そうてんがげつ)で反転真耶に向けて仕掛けた――っ!!

 

「っ!?」

 

 あまりにも簡単な攻撃をしてきた理由はこれかと真耶はすぐに気付くが、避けきること自体が難しい攻撃だった。だがこんなところでダメージを受けるわけにはいかないので、何とかして防ぐように近接装備で鈴の攻撃を防ぐように行動した。正直防ぎきれるかギリギリのところであり、何とか防げた事に少し安心をした。

 

「やりますね……」

「まぁね。あたしにはISを使ってやりたいことがあるのでね!!」

「そのために代表候補生となって、力を手に入れていたと。ですが――これではまだまだ甘いです!!」

「なっ!?」

 

 突然鈴の双天牙月(そうてんがげつ)が逆に押され始めていた。真耶は鈴に対して加減をしていたのだが、思っていた以上に強かったために加減を少し弱めることにしたのだ。

 鈴は真耶に最初に攻撃を仕掛けようとした双天牙月(そうてんがげつ)空いていた左手で真耶の隙に攻撃を仕掛けようとする。だがそれを読めていた真耶は一気に押し込み、その影響で甲龍が変に傾いてしまったがために真耶へと攻撃が当たらなかった。

 このまま攻撃を繰り返しても分が悪いと考えた鈴はそのまま真耶から少し距離を離れ、体制を整えることにする。そう簡単に勝てる相手とは思っていなかったが、不意打ちの攻撃以外は読まれていたことに少し悔しかった。

 

「鈴さん、やりますね」

「あたしの攻撃を全て防いどいた癖にそのような言葉を言われるのは癪だけど、ありがたく貰っておくわ。だけど、何か忘れていないかしら?」

「え? 一体何の事でしょう――」

 

 真耶が何かを言おうとした刹那、真耶の背後からレーザー攻撃が迫り、そのままISに直撃した。鈴の攻撃が予想よりも強かったことで、セシリアの存在をすっかり忘れていたのだ。

 経った数分でセシリアの存在を忘れていたことに真耶は自分が夢中になりすぎていたと気付き、教師としては余りにも見本にならないことだった。

 

「まったく、あたしを意識し過ぎよ。まるで狙ってくださいと言っているようなものじゃない」

「……そうですね。教師としては良くない見本ですね。ですが、これ以上はこんな失敗はしませんよ!!」

 

 真耶は苦笑せざるをおえなかった。昔ならばこんな失敗をしなかったはずなのに、無駄なダメージを受けてしまったことに自分を悔やんでいた。変なところでダメージを受けてしまう羽目となってしまい、そのことを後で千冬に言われてしまうだろうなとちょっと思いつつも、これ以上このような失敗はするわけにはいかなかった。

 そして真耶は一度セシリアのISであるブルー・ティアーズに向けて一発の銃弾を打ち、遠距離攻撃を仕掛けてくるセシリアから先に攻撃を仕掛けることにするのだった――

 

 

 

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「さて、今の間に……デュノア姉。山田先生が使っているISについて解説しろ」

「解りました。フランス、デュノア社製第二世代型IS――ラファール・リヴァイヴ。苦手とする距離を持たない汎用型のISであり、第二世代最後発のため高い整備性と安定した性能のおかげで七ヵ国でライセンス生産、十二ヵ国で制式採用され、専用機としていろいろなカスタム機があるわ。一番の特徴としてはISの癖がなく、操縦者を選ばない操縦の簡易性となっているわ。また、武装による全距離対応可能になるおかげで、複数機を使ったチーム線で一番使われることが多い機体だわ」

「よし、それでいいだろう」

 

 シルヴェーヌの説明に、生徒達は少し歓声が上がった。

 一言も噛まず、一つも間違えずに言えたことに多少驚き、思わずすごいと思ってしまっていた。

 それからシルヴェーヌはシャルロットの近くまで寄り、鈴とセシリアの戦い方について考察を始めた。

 

「それにしてもあの二人、初めてにしてはかなり上出来じゃない? 初めてという事もあって多少のロスが幾つかあるけど、お互いに任せるところは任せているわね」

「そうだね。初めてだからお互いの性能を生かせずに倒されるという光景が見えると僕も思ったけどね。織斑先生もそうなるだろうと思っていたと思うけど、僕としては上手くタッグが出来なくて無様な姿を晒す結果を望んだのにな……」

「……シャルロット、なんか最近腹黒くない?」

「え、そう?」

 

 シルヴェーヌの言葉にシャルロットは首をかしげるが、自分が腹黒い人間後気付いていないシャルロットにシルヴェーヌは妹なのに思わずドン引きしそうになった。シルヴェーヌの母親を殺したときも足を踏みつけていたし、何事もなかったかのようにシルヴェーヌと会話していたくらいだ。あの時のシルヴェーヌはさすがに母親を殺したことに多少の感情があったけども、シャルロットの場合はシルヴェーヌが死んだとしても憎しみなどを見せずにいつも通りの顔をしていた。

 そしてそれは、シルヴェーヌの母親を殺したとき以外でもあった。シルヴェーヌとシャルロットが共に殺しの任務を受けた時、シャルロットは表情一つ変えずに次々に人を殺めた。その様子を近くで見ていたシルヴェーヌだが、まるでその光景は誰かの真似をしているかのようにも思えた――

 

(っ!? シャルロット、まさかあんたっ!?)

「あ、山田先生が少し本気になったかな?」

 

 シルヴェーヌはようやくシャルロットの正確が変化し続けている原因が誰なのかようやく気付き、シャルロットの方に顔を向けていたが、当のシャルロットはシルヴェーヌが顔を向けられていることに気付かず、上空で行われている戦いをずっと見上げていた。

 まるで少し前のある人物に似ている――その人物はようやく感情を取り戻し始めているが、その近くにシャルロットはその人物の殺し方や暗殺を参考にしてしまったのだろう。敵に対する感情は何一つ捨て、容赦なく殺す一時期の彼の殺し方を――

 このままいけばシャルロットは昔の彼みたいなことになってしまうかもしれなかった。何とかしてそれを阻止したいところであるが、彼のように時間は掛かってしまう。幸い、IS学園に居る限り、殺しなどの任務が与えられることは当分ないだろうと思われるが、急遽呼び戻される可能性だって考えられた。

 とりあえずこのことはヴェロフに報告しておく必要があるとシルヴェーヌは思い、とりあえず今はシャルロットと同じように試合の光景を見届けることにした――

 

「あ、一瞬のすきを見つけて一気にセシリアに近付いたね」

「……山田先生、本気を出しているように見えないのは気のせいかしら?」

「うん、それは僕も思った」

 

 シルヴェーヌは途中から試合を見始めたが、真耶が余りにも手加減なしで戦い始めているように思えた。本気で挑まなければ倒される可能性があると思って本気で戦うようにしたのかもしれないが、正直鈴とセシリアのコンビが真耶を本気にさせないと勝ち目がないというほどなのだろうかとシャルロットとシルヴェーヌは思ってしまった。

 しかしそうなると、意外とあのコンビで戦ってみたいという気持ちも高まっていた。教師を本気にさせるほどのコンビネーションというほどであるのかと思うと、シャルロットとシルヴェーヌは興味をもち、思わず闘争心が芽生えてしまった。

 

「……IS学園でタッグ対戦があれば、一番苦労するのはあの二人かもね」

「まぁ、あるかどうかはわからないけど、是非あのコンビで闘ってみたいものね。フランスで行われたタッグ大会よりは面白そうだわ」

 

 大会がなかったとしても、最悪二人に頼んで模擬戦をしてもらえばいいと思い、シャルロットとシルヴェーヌはその時を楽しみにしていようと思っていた。

 ちなみに戦いの結果だが、真耶が本気を出していたおかげで鈴とセシリアが押されていたが、それでも真耶に攻撃を何度か仕掛けてダメージを与えていたことを繰り返していた。

 しかし、戦いが余りにも長くなりそうだと判断した千冬は授業時間も限られていることもあって中断させることとなり、決着がつかないまま終わる形となってしまうのだった――




シャルロットは色々と不安定です。しかし、そんなシャルロットが次回メインです。
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