オーマジオウ(2068)の、オーマジオウになるまでの半生を駆け足で回顧(妄想)する物語。勿論大半は妄想・捏造設定です。

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逢魔載記

 私は孤独だった。

 バス事故で早々に両親を喪ってからというもの、親類の助けもなく孤児院で育った。それでいて「王様になりたい」などと言い続ける私に、友達らしい友達など出来ようはずも無かった。

 

「なるほど、君は王になりたいのだね?」

 ウォズと名乗る胡散臭い男は、そう私に話しかけてきた。

「ああ。過去と未来を超越した、永遠の王になりたい」

 私は夢に繰り返し見ていた。王にならないと、やがてこの世界は砕かれ、遠からず滅びるのだと。

「ならばこれを使うといい。『ジオウドライバー』。この本にあるとおり、やがて君が時の王となるとき、これは王のための神器に姿を変えるだろう。その時こそ、私は貴方に永遠の忠誠を誓おう」

「これを、どう使えばいい?」

「『仮面ライダージオウ』となり、ライダーの力を集めるのです。この世界は『仮面ライダーの存在』に支えられているが、それ故に不安定だ。他の19人の仮面ライダーを倒し、その力を得たとき、『仮面ライダーが一人になった』この世界は滅びを免れるでしょう」

「ただひとりの……仮面ライダーに……なる……」

 

 それから私は、他の仮面ライダーを狩る長い旅路に身を投じた。

 冒険者がいた。ジャーナリストがいた。篤志家がいた。旅人がいた。探偵も、警官もいた。

 様々な仮面ライダーがおり、それぞれがそれぞれの正義のために変身していた。だが、私にはそれ以上の大義、『世界の存続』のためにそれらを討った。

 きっと彼らに救われた人々は数多くいて、そういう人々から見れば私は悪の親玉のように見えただろう。それでも、そうするしか無かった。

 

 それらを倒し終えた私は、ウォズに尋ねた。

「なあウォズよ、18人しか居ないようだが?」

「いいえ? 19人目は向こうから勝手に来ますよ。――ほら」

 突然、虹色の緞帳が空間に現れ、その中からマゼンタ色の仮面ライダーが姿を現した。

「ほう――何だ、この世界は。さっぱり分からない」

 マゼンタの男は首を傾げながら言った。

「彼は仮面ライダーディケイド。どの世界にも姿を現すがどの世界にも属さない仮面ライダーです」

 男に代わってウォズが説明する。

「つまり、こいつが最後のライダーか」

「そう言うことになるね……この本の範囲では」

 

 ※ ※ ※

 

 ディケイドは、強敵だった。何しろ「他18名の仮面ライダー全てに変身できる」のだ。

 私がクウガの力を以て殴れば奴はクウガの肉体で受け止める。私がアギトの刃を以て斬りかかれば奴はアギトの素速さで避ける。私が龍騎の炎を振り撒けば奴は龍騎の盾で凌ぐ。

 奪った力で戦う限りにおいて全くの五分と五分。ならば、私自身の力で戦うほか無い。

(世界滅亡の夢が予知夢ならば、私には未来を見る力があるはずだ)

【カメンライド・カブト】【クロックアップ】

【ライダータイム・カブト】【クロックアップ】

 カブトの超加速を使ってきたディケイドを、やはりカブトの力で迎え撃ち、いなした。

(眼を凝らせ。未来を視て、それを越えろ)

「フン、千日手か。ならばこうするしかあるまい」

 ディケイドは携帯端末のようなものを手に持つと、それを触り始めた。

【クウガ! アギト! 龍騎! ファイズ! ブレイド! 響鬼! カブト! 電王! キバ! 】

【ダブル! オーズ! フォーゼ! ウィザード! 鎧武! ゴースト! エグゼイド! ビルド!】

【ネオ・コンプリートフォーム!!】

 ディケイドの身体にありとあらゆるライダーの絵姿が貼りついた様子は、まるで遺影のように見えた。

 ライダーたちの最強フォームの力を使うネオ・コンプリートフォームは、私の力を上回っていた。電王ライナーフォームの電車斬りを辛うじて電王の力で避け、キバ・エンペラーフォームの剣をキバのキックで受け、吹き飛ばされた。

「どうやら最強フォームの力は得ていないと見えるな……この世界もこれまでか。破壊する」

 ディケイドの宣告に、私に代わってウォズが反論した。

「それはどうかな?」

 敗色が濃厚になった瞬間……はっきりと見えた。ファイナルアタックライドを発動し、とどめのキックを叩き込むディケイドの姿が。

(分かった未来なら、変えて見せる!)

【ファイナル・アタック・ライド】

 ディケイドがカードを構えた瞬間に、私は対処をした。

【ライダータイム・龍騎】【スチールベント】

 私の構えた龍騎の剣が鞭のように延び、ディケイドから必殺技に必要なカードを奪い取った。

「……何!?」

「これで、お前の力を幾ばくか奪った。そして! 今こそ私は王になる! 王になって世界を救う!」

 ジオウドライバーが白から金色に変貌し、ボディも銀と赤から黒と金に塗り替えられていく。

【宿命の刻!】

「……変身!」

 いつの間にか夜空に星が輝いていた。あれが王の宿命の星であろうか。

【最優! 最悪! 最新! 最凶王! オーマ! ジオウ!!】

 地がひび割れ、炎が巻き起こり、私は王としてそこに立っていた。

「逢魔時王……必殺撃」

 私は即座に高く舞い上がり、ディケイドに蹴りを入れた。

 

 

「だいたい分かった……強いな……ジオウ」

 変身を解いたディケイド・門矢士は瀕死の状態だった。

「お前の力、全て貰い受ける」

「それで? 俺の力を奪うってことは、世界を破壊する力も持つってことだが、それでどうやってこの世界を守る?」

 世界を破壊する力?

「どういうことだ、ウォズ」

「世界の生死与奪を司る、王に相応しい力ではないかね? 今こそ忠誠を誓おう、我が王よ」

 ウォズは顔色一つ変えずに跪いた。

「破壊する力など与えてどうする気だと聞いている!」

「さて? 我が王よ、それは貴方が世界を壊したくないなら、単に使わなければ良いだけのこと。もしこの世界を不出来とするならば、その時こそ世界を壊せば宜しい」

「……まあいいさ。お前が王様になるって言うなら、また次か次の次の『俺』が会いに行くこともあるだろうよ」

 門矢士が、ディケイドが、現れた時と同じようにオーロラに包まれて消えていく。

「待て!」

 慌ててその腕を掴んで力を奪い取ろうとしたが、その全てを奪えたかどうかは、今以て確信は無い。

 

 ※ ※ ※

 

 私が唯一のライダー、『王』になったところで、それを知る者は私自身とウォズしか居ない。そう思っていた。

 夢で見た通りの滅びが訪れるまでは。

 

 ※ ※ ※

 

 その日、突如現れた巨大機械「ダイマジーン」と歩兵「カッシーン」は、ウォズとよく似た扮装をした連中・「クォーツァー」に率いられて、各地で破壊を行っていた。

「茶番は終わりだ。今こそ、お前を倒し、お前の力を簒奪し、この不出来な世界を舗装し直す」

 クォーツァーの首領は言った。その傍らにウォズも居た。元々、クォーツァーから遣わされた工作員だったのだという。

「不出来かどうかは貴様の決めることではない」

「これを見てもそう言えるか?……変身!」

【ライダータイム・バールクス!】

 そこに現れたのは、私の知らない新たなライダーであった。

「貴様が何者であろうが、私は王だ! この日この時を預言された、生まれながらの王だ! この世界の出来不出来は、私だけが決める!」

 こうして私はバールクスと名乗る仮面ライダーと戦い、特に苦戦することもなく勝った。

 だが、如何せん私は一人だった。一人ではダイマジーンとカッシーンによる破壊を止めるには人手が余りに足りなかった。それら全てを止めるまでの間に、粗方の文明都市は破壊され、地上の総人口の半数近くが死んだという。

 

 ある意味において、世界は滅んだのだ。

 

 人々はダイマジーンやカッシーンの現れる場所に居る私の存在を知った。私の現れる処でダイマジーンらが破壊を働くのだと誤解した。

 斯くして、人々は私を『最低最悪の魔王』と渾名するようになった。

 世界は守られた。しかし、『それまでのような文明文化のある世界』という意味であれば、私は世界を守ることは出来なかった。

 私は不出来な王だ。『最低最悪』と呼ばれてもやむを得ないと思った。

 それでも私は君臨し続けなければならない。ダイマジーンの残機が、ライダーと戦った怪人の残滓が、或いは人々の反乱軍が襲い来るたび、私はそれを一蹴した。

 オーマジオウは最早老いることはない。傷つくこともない。それはオーマジオウのスーツが即座に修復するし、不具合な未来は修正できてしまう。

『オーマジオウの存在』が喪われたら、この世界は崩れ落ちる。そのことを今や私だけが知っているのだから。

 

 ※ ※ ※

 

「我が王よ」

 数年か数十年かの治世が過ぎ、ある日、懐かしい声を聞いた。ウォズだった。時が流れたというのに、私と同様にこの男にも老いの気配がない。寧ろ、私の若い頃と何ら変わらないようにすら見えた。

「久しいな。お前はクォーツァーと共に滅んだものと思っていたが」

 玉座に腰掛けたまま私は答えた。玉座と言っても、そもそも私に付き従う者は何一人居ないのだが。

「さて。クォーツァー自体滅んだと言っていいものやらどうやら」

 跪いてウォズは答えた。

「……何だと?」

「王よ、今や貴方はこの世界ただ一人の王にしてライダーだ。では、この世界でないならば? 貴方はかつて未来を視てそれを変えた。今や他の可能性すら見渡すことが出来るのでは?」

 考えたこともなかった。眼前のこの世界の有り様が全てだと思っていたのだから。

 想像する。私にはきっと『他のオーマジオウ』を探し、見つけ、交信する力があると想像する。

 他の有り得たオーマジオウを想像する。独裁者がいた。征服者がいた。圧政者がいた。革命を起こされ倒れた者がいた。

「……大して私と変わらぬな。負けた私も居たようだが。私である以上、当然か」

「そうでしょうか? では、『王に勝った者』にあって、王に無かったものは何でしょうか」

 ああ、そうか。

 私は突然気付いた。私は一人だった。私は孤独だった。そして、『ゲイツ』と名乗る革命家には、仲間が居た。

 もし私に、あのような仲間が居たならば。クォーツァーやカッシーンと戦う手がもっとあったなら。或いはそれ以前からの友が居たならば。最低最悪の未来ではなく、マシな未来を選び取れたのではないか。

「分かったぞ。ウォズよ、レジスタンスに混ざれ」

「……は?」

「レジスタンスに混ざり、力を与え、それらの信用を得て、それを過去の私の仲間にしろ」

「何と! 王は常に私の想像を超える!」

「そして私を越えろ。これは勅命である!」

 

 ※ ※ ※

 

 そして私は想像する。

 新たな敵と、新たな友を。

 友を得て絶望の未来を越える私自身を。




 ついカッとなって書いた。今日中にアップロードできればよいと思った。今は反芻している。

※『載記』:紀伝体の史書で、『正当性のない帝王・国家』の記述を特に本紀や列伝、志などと区別するときに使うジャンル名。ここでは「やがて来るべき王者=友のいるジオウ」を正当とする史観から、オーマジオウ(2068)を覇者とみて『載記』を用いた。

※Q:なんで【アーマータイム】じゃなくて【ライダータイム】やねん
A:オーマジオウ(2068)がアーマータイムしないところから逆算すると、オーマジオウになる前のジオウって別にアーマータイムしなかったんじゃねえかなあ、と妄想してわざとそうしてます。他ライダーのアーマーを纏う描写もしてません


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