俺を喚んだのは過去の俺 作:鬼柱
「———問おう。貴方が私のマスターか?」
目を開けて一番初めに見えた金の瞳に向けて、は? って言う言葉を出さなかっただけ褒めて欲しい。英霊になってからの一番初めの召喚時のセリフは元祖アルトリアのセリフを言おうと決めていた俺だ。
「は、え?」
英霊が何騎もいるカルデアじゃなかったら決行だな、と嫌々ながらも召喚に応じた。目が慣れない中、森の中であろう場所に僅かに差す月の光りに、明らかに真夜中であるこの場所にカルデアじゃないぞ! と確信して言葉にした。うん、カッコ付けには成功した。Fateを好きになった時に、英霊になったらこの台詞言うと短冊に書いたことあるのだが、その夢が叶った。もしかしたら織姫と彦星は本当にいるのかもしれない。一年に一度の恋人同士の逢瀬に願い事する意味をいまだに知らないけれど。
勿論この台詞にしたのは訳がある。カッコつけもそうだが、普段の俺を晒せば、何此奴使えなさそうとすぐ様捨てられない様にだ。訳も分からずすぐに自害させられ、もう一回召喚とかされたら巫山戯んなと言いたくなるだろう。気分は多分、ヘラクレスじゃないからとリマセラされる鯖達。
でも、でもさ……こうなるとは思わないじゃん?
「え、えっと、君……誰?」
雑に切り揃えられた黒髪に、桜を思わせる眉毛をした少年。不安げにこちらを見る目は逆さにした夕焼けを思い浮かばせる。逆さにした夕焼けってなんだよと思うかもしれないが、語彙力のない俺が一生懸命考えた比喩だ、許せ。
「…………セイバー、とでも呼んでください。貴方は?」
とりあえず正体隠す為にアルトリアの口調真似よう。敬語なだけだけど。というか自分の口からこの声で敬語とか壊滅的に似合わないな。やっぱり元にしている彼女を想像しているからこそ、違和感が半端ないのだろう。何せ聞こえてくる声の齟齬が凄い。
そう告げて見上げている彼を見ると困った様に眉を下げた。偽名だと思ったのだろう。実際偽名だし、真名は教える気はない。教えられても困るだろう、だって君が一番良く知ってる名前だ。
「俺? 俺は……」
だって、君自身の名前なのだから。
「俺は我妻善逸、だけど」
そう言った彼はおずおずと此方を見上げてきた。その仕草は幼くて、声音も確かにずっと聞いてるものより高かった。きっと本当に幼いんだろうな。俺が一番人生が長く感じた全盛期と思われる時期よりも更に幼い。けれど何度瞬きしてもその姿が変わることもなく、これが夢というオチがある訳もない。
しぶしぶ現実を受け入れて…………俺は眩いほどに星々が輝く空を仰いだ。
召喚に応じたら過去の自分がマスターとか、還って良いですかね?
あらすじでめちゃくちゃ喚いてるのは、これから善逸要素が皆無になるから。
誰これ?善逸?と思っても思い出して、成り代わりです。