俺を喚んだのは過去の俺 作:鬼柱
10.始まり
「いぃいいいやぁああああああ!!!!」
どうしてこうなったのだろう。いつもの様に起きて、いつもの様に後輩とのやり取りにホワホワして、いつもの様に朝食を取って、いつもの様に新たな特異点が見つかったからとレイシフトして…………って最後のが原因だな、うん。
「っあっ!」
と考え事してたら足を取られた。咄嗟に受け身を取って起き上がり走り出す。頬に泥ついたし、なんならちょっと打ったけど止まるわけにはいかない。
「ギャハハは! 喰わせろォ!!」
「いやいやいや! 喰わせろと言われてハイそうですか! って喰わせるわけないでしょ!! 馬鹿なの!?」
「誰が馬鹿だ! テメェ!!」
「怒らせちゃった!!」
やらかしたァ! と思いながら走る。森の中だからか多少足場は悪いが何のその。俺が第四特異点で何をしたと思う? 女神を抱えて大英雄から逃げ切るっていうヤベェことを成し遂げてんだ! こんな事ぐらいで挫けるわけねぇでしょ!
「いやもう! なんなの!! 人!? 人じゃないよね!? だって目が血走ってるし! 明らかに人の動きじゃないし!! なんかツノ生えてるし!! アッ鬼かな!?」
「わかってんじゃねぇかよォ!!」
「正解を求めてるわけじゃないんだよ! チクショウ!!!」
律儀に返してくれる鬼を呪いながら俺は走り続ける。とにかく走って人目のつく場所に行けば、こいつも俺の事を殺そうとしないだろう。多分だけど! なんか見てたら話せるけど理性蒸発してます! みたいな感じだけど! アストルフォきゅんは今日も可愛いです!!
「いやそうじゃないんだよなぁ!!」
「なぁに喋ってんだ!大人しく喰わせろ!!」
「嫌だと言ってんだろ!」
———
「“カルデア戦闘服”! からの! ガンド!!!」
走っていた足を止めて、滑りながらも方向転換する。その際に着ている魔術礼装をいつもの極地用カルデア制服からカルデア戦闘服へ切り替える。何かとずっとお世話になっている服だ。魔術礼装はどれも機能性抜群で良いけれど、この礼装のスキルには特によく使う。ガンドがめっちゃ便利。
ピストルを撃つように手を曲げて構えれば、油断してくれたのかそのまま突っ込んでくる鬼。ニマリと笑ったその歯には立派な八重歯が生えていて、あぁ酒呑を想い浮かばせる。酒呑ちゃんの方が可愛いけど!笑いながら内臓掻き回してくるけどネ!!!
「アッガ、なんだ身体が!」
「暫く痺れてると思うから大人しくしてて!」
あのサーヴァント達だって長い事固まってくれる代物だ。鬼とは言え英霊ではない者なら大分痺れたままだろう。
ばいばい! と手を振って、悪態を吐いてくる鬼から逃げ出す。
「(逃げ切れた……! とはいえ)」
鬼って居たんだ。いやいると思うけど、普段の特異点で見た鬼とは違って居た。あれは根本から鬼だってわかるような体型してたけど、あの見た目はあれは……ほぼ人間だ。
わからないな、ここどこなんだろう。取り敢えず魔術礼装変えておくか。ガンド使ってしまったから暫く使えないし、鬼が着て居た服が着物だったからこれじゃ目立つ。カルデア戦闘服じゃ現代でも目立つんだけど、それはさておき。
……あれ? 和服って新年のお祝いのやつしかなくない?
あれ明らかに私服って感じの和服じゃないんですけど!! 詰んだ!? いや、何とか誤魔化せばいける? どっかに婿行くの? とか聞かれたらどうしよう。いやそんな服じゃないんだけどさ。
仕方ないか、はぁと溜息を吐いて前を向けば知らない人がいた。
「人間! 人間人間人間人間食う!!!」
アッ、鬼だ。
「あ、あぁああああああ!!! 鬼だぁああああああ!!!」
瞬間に走り出した。
二体目!? 二体目ですか!?!? ここは鬼の倉庫!? いや宝庫!! この短時間で鬼二体と会うとかどういう星の巡りなんだろうか! 俺たち星見だけど!!
「全体強化! んで!」
———
「“アトラス院制服”!!」
ガンドはもう暫く使えないので敵の妨害はできない。アトラス院制服は味方単体に無敵状態を暫く付与できる。これで攻撃されても大丈夫ってもんだ。発動するタイミングが重要だけど!
「あいでっ!」
心の中で一人突っ込みしてたらまた躓いた。今度は石だ。さっきは木の根だったし、連続で同じ足で躓いてるから地味に足の甲が痛い。というか挫いたかもしれない。立ち上がろうとしたら痛みが走ったし。
「あぁああ! 痛い! 地味に痛い!! 全体強化で緩和されてるかも知れないけど! それでも走るのに支障が出るレベル! ほらもう鬼に追いつかれそう!!」
「人間人間人間ニンゲンンンン!!!」
「お願いだから人間以外話してくれ!! バーサーカーか!!!!」
喚いていても仕方ないのはわかる。これから逃げきれなければ現状を打破できない。しかしいつまで? いや、逃げる事だけ考えろ!
そういや、いつもの様に喚いていたら最近新しく来たセイバーに友人にマスターはよく似ていると言われた。そいつはめちゃくちゃ優しい奴で、英雄なのにここまで優しくて頼り甲斐のある人なんていなかったから、そんな彼が零した友人の話はよく覚えてる。
いつも喚いて泣いて、でもいざという時はカッコイイ友人と、ずっと強さを求めていて力も強く常識が欠けてるけど頼りになる友人。友人の話をする彼はとても楽しそうで寂しそうだった。何故か付いてきた妹と戯れながら、眉を下げていて。
で、俺はその喚いている奴に少し似ているらしい……言動とか。ふーんと相槌を打ちながら、いやそれはその人に失礼では!? なんて思ったのは内緒だけど。
「ってそうだよ! セイバー!!」
サーヴァントを呼び出せば良かったんだ! 今回のレイシフトで入れていたメンバーのうち、そのセイバーだけが今繋がっている。繋がっているのはわかっていたけど、それが当たり前すぎて気づくのが遅れた。
レイシフトの事故なのに、こうして俺のサーヴァントと繋がってくれてて感謝します! 神よ! 特に信仰してないけど!! うちに神様いるし!
「オリシスの塵!!」
保険として自分に無敵状態を付与してから立ち止まる。やはりというかずっと付いてきた鬼は俺に襲いかかったけれど、見えない壁にぶつかって数メートル跳ね返った。エ、無敵ってこんなのだっけ??
ってそんな事考えてる暇はない! 今のうちだ!
「令呪をもって命ずる。サーヴァント・セイバー、来いッ!!!!!」
右手の甲にある令呪が一画消え、赤い雷が走ったかと思うとボォオ! と燃え出した。それは次第に俺の目の前で渦になり、やがて晴れると彼はいた。
彼の人間性が好きすぎて、速攻でレベマ&フォウマにして聖杯は諸事情でなかったので金フォウをあげてしまった俺の推しの一人である。実の本人に推し鯖なんです! なんて言ってないけど、あぁやっぱりその背中は頼りになる。
「サーヴァント・セイバー。真名、竈門炭治郎。マスターの呼びかけに応じ参上した」
「むん! むん! むーん!」
兄妹でニコイチな彼らはくるりとこちらを振り返って、笑った。優しい赤い焔と同じ瞳が、桜と同じ色彩がこちらを見ている。
目尻を優しく下げたそれは安心する笑顔で、俺はそれを見た瞬間思わず腰を抜かしてしまう。まだ敵はいるのに腰を抜かすなんて情けないにも程があるけれど、許してほしい。
だって、だって……。
「大丈夫か! マスター!」
「むむん!」
推し鯖がこんなにもかっこ可愛い。
えっ、ふざけないで?
こちとらふざけないとやっていけないんだ!! ごめんな!!!
亜種並行世界EX
悪鬼鬼哭大正浪漫 鬼滅
日と共にいる鬼
———開幕!
特異点の名前はなんちゃってな感じなので気にしないでください。
あと善逸みたいだな、善逸……?って思うかもしれませんけど、立香です。割とふざけたり叫んだりする方の藤丸立香(男)です。
って事で序ノ呼吸、終わりです。拾ノ型までしかありません。
次回は鯖善逸のなんちゃってFGOプロフィール。本誌ネタバレやこれからのネタバレも含むのでOKな方だけ呼んでください。
それとその後は一区切り付いたので、しばらくお休みを頂きます。10日ほど。ネタはできてる、でも字に起こせてない。申し訳ない。
ただ色々と書きたい欲求が出てきたので原作準拠の話に鯖善逸が出しゃばる何かを書くかも知れない。
…………というかこれ、20話で終わらんな!!