俺を喚んだのは過去の俺 作:鬼柱
柱稽古が始まった。
元々鬼舞辻無惨が俺たちが知っているのと同じ行動をすれば、つまり世の鬼達が消えたならば決行すると決まっていたので不思議はない。ただ……ただ、そこに。
「俺たちも参加するとか聞いてないんですが!?!?!?!?」
「参加する側っていうか主催者側?」
「冷静に言わないで!!!!」
あぁ〜嫌だぁ〜! と駄々をこねる子供のように俯く。ママ〜許してごめんなさい、何でもするので柱稽古だけは、柱稽古だけは嫌なのです。そりゃ刀鍛冶の里では善逸や炭治郎、伊之助相手に稽古したよ? 原作よりも弱くなってるんじゃないかって少し心配だったからね。でもそれは身内が相手だから別に苦でもなかっただけで、知らねぇ相手にするほどの気力はねぇわ。え? 生前? 何のことですかね?
「仕方ないだろう、カルデア側も協力すると決めてしまった。そもそも一人でではないよ、サーヴァント総出だ」
「そうだとしても!! してもだよ!? 俺たち柱組以外は他の柱の手伝いじゃん!! 何で俺たちだけ他の柱と同じようなことすんの!? 意味なくない!?」
「人に教えるってのが壊滅的に下手だからな、サーヴァントというのは」
「それブーメランだからな?? 炭治郎」
あとサーヴァント関係ないからな? と言えばぐうの音も出ないのか、ぐぅっと押し黙った炭治郎。いや出てるがな、というか図星かよ。
やだやだやりたくねぇよ、炭治郎と伊之助だけでやってくれ〜! と騒いでいると話していた俺たちの側でしゃがみ込んだ伊之助がちらりとこちらを見た。何だ?
「ギャーギャーうるせぇな。人がどんぐりを選別してる側で騒ぎ立てんな」
「寧ろ話に加わらずどんぐり見てるお前なんなの」
「ア゛ァ!? いいだろうが! 何しても!!」
「いやちょっとは空気読め!?!?」
「テメェには言われたくねぇわ!!」
「そうだね!? ごめんね!?」
「そもそも空気なんて読めねぇだろ! どうやって見んだ!」
「意味わかってないのかよ!?」
じゃぁ何でお前に言われたくないなんて言ったんだろうか、こいつは。まぁ大体雰囲気で返してるところあるよなぁ。
ふんす、鼻息を荒くして少しだけ怒った音をさせた伊之助は立ち上がっては屋敷の中に入っていく。きっと中にいる水柱と禰豆子ちゃん、立香に、あと零余子ちゃんにも見せにいくのだろう、そしてそれから食べる為に加工すると見た。中にはピカピカのどんぐりもいたのでそれ以外だとは思うけど。
柱稽古はその名の通り柱の稽古。まぁ俺たちが刀鍛冶の里で小さな炭治郎達にした事を他の柱が鬼殺隊士達にするのだ。今のところ水柱と蟲柱以外が参戦、生前ではいなかった炎柱までもが稽古に参加してる為に大幅なパワーアップが狙えるはずだ。
そしてその柱達のサポートに俺、炭治郎、伊之助以外のサーヴァント(但し沖田オルタは除く)がサポート、そして俺たち三人は最後の柱稽古として待機中だ。場所は水柱邸を提供してもらってる。参加しないしな、あの人。
「というかなんで最後なんだよ、最初で良くない?」
「俺もそう思ったんだが順番決めの時にどういうのをするのかを話し合ったんだ、そのときに俺たちのやり方を話したら何故か引かれて」
「なして????」
「わからん」
「そもそも俺たちの柱稽古って今の柱達から受けた稽古の経験を元にしてんだけど?? 引かれる謂われなくない???」
「それな」
あらやだ、炭治郎が女子高生みたいな返した方を……ってほぼ俺の所為か。座で散々一緒にゲームやりまくったし、殆どぐだぐだと過ごしてたから俺が言った言葉が染みついていても不思議ではない。
「で、柱稽古は期間制だろう? 決まった期間の中で全ての稽古をしないといけない。勿論間に合わなくて最後まで受けれなかった人だっている」
「まぁ俺たちは何とか最後まで行ったけどさー、あれはキツい。柱達の合格基準も何気に厳しいし、みんな個性派揃いで怖いしで、死ぬ可能性がない分最終選別よりマシだけど」
「川で溺れかけてた人が何か言ってるな」
「その節はご迷惑を」
「それでだ、その期間内で最後まで行けるのには相応の実力がある。今回は煉獄さんもいるから相当だろう?」
「うーん、まぁ?」
「だから全て抜けれた人は俺たちの柱稽古でも問題ないんじゃないかっていう話になって、それで最後なんだ」
「なるほど、わからん」
「どっちなんだ……つまり、最後まで来た人はサーヴァント相手でも何とかなる! ということだな」
「んー、度し難い」
「それは誰に言ってるんだ??」
誰でもない誰か。
まぁ理由はわかった。こうして嘆いていても仕方ない事もわかった。確定事項なら今俺がとやかく言っても変わりないのだから、諦めるしかない。
ふぅと息を吐いた。
「結局俺たちが参加なのは変わりないか……で、どうすんだよ? 俺たちのやり方じゃ時間かかるんじゃないの」
「そうだな。一人ずつ別れて相手しようと思ったけれど、最後だと来る人数がわからないからな……新しいのを考えた方が良いか」
うんうん、そうしてくれ。そして俺は参加しない方向でどうにかしてくれ。何かすることあるのか? って聞かれたら無いって答えるしかないけど、どうにも三人で一つの柱稽古する意味がわからない。俺サポート側に回りたいなぁ、サーヴァントとしての機能は完全に戦闘型ではあるけど。
新しいの、新しいのと呟きながら考え込む炭治郎を尻目に生前受けた柱稽古のことを思い出す。わりと皆さん、それぞれの特徴を活かした稽古だったとは思うけど、多分自分達の経験を基に教えていたんだろうな。恋柱とかそんなんだったし……男にレオタードはキツいよ恋柱さん……昨今の体操選手は長ズボンだからね?? 決してスクール水着みたいなのではないはずだ。いや大正は知らないけど、調べたこともないから違うかもだけど。
「うーん、実戦さながらっていうのはどうだろう」
そういやそういうのなかったなーと思いつつ口を開くと、炭治郎が考えるのをやめて此方を見た。続きを離せと視線が訴えている。
「一応戦闘ってのはあったよな、多対一っていう風柱の」
「不死川さんは工夫が苦手そうだからな」
「結構失礼なこと言うなお前。それで、相手は風柱だったじゃん? 木刀持った。でもさ、俺たちが相手するのって鬼だろう?」
剣なんて知ったこっちゃない、血鬼術で攻撃してくる。肉体戦に持ってっても相手は素手かも知れないし、変な武器を持ってるかもしれない。けど風柱は剣士だ、それを相手にするとなると必然的に剣士の間合いや癖を無意識に理解する。でもそれは変幻自在な鬼相手には通用しない。
「まぁ相手によって間合いとか変わるからそこまで深く考えなくて良いけど、でも対策しておいて損はないと思う」
元々鬼達は剣とは無縁の生活を送ってきた場合が多い。鬼殺隊士が鬼になる場合もあるが、それよりも一般人を鬼にした方が効率は良い。鬼殺隊士が使う呼吸は鬼の血と相性が悪いのか、鬼になるのに時間がかかるし。だから剣相手ってよりは素手相手の方が良いんじゃないだろうか。
「で、ここにはそれに適した人が二人もいる」
「……女の子第一のお前がする提案だとは思えないな」
「勿論本人の意思次第だぞ? 流石に強制なんてしない」
「それは必須条件だ」
「そうですかい」
「けど、柱達はともかく一般隊士達が黙ってるとは思えない。通達されてはいるとはいえ、批判的な意見が多いと思うから彼女達に危険が及ぶ」
「俺たちが守るよ。ここに柱やサーヴァント以外に俺たちに敵う鬼殺隊士がいると思う? そりゃ俺は弱いよ? でもサーヴァントに敵う人間なんていないくらいわかってっから」
「そこは“俺が守るよ”じゃないんだな」
「一人の力には限界があるのは炭治郎も知ってるだろ?」
それでも自身の妹を参加させるのには抵抗があるんだろう。サーヴァントは神秘の塊、鬼殺隊士が刀を振るうぐらいでは傷を付けることさえ敵わない。まぁ日輪刀じゃわからないし、神性を持ってない炭治郎相手だったら少しぐらい切れるかも知れないけど。
「もし心配なら炭治郎も参加すれば良い。あと伊之助もな。お前ら、刀無くても戦えるでしょ?」
こいつらが最初に出会ったときの衝撃はまだ残ってる。剣士の癖に素手で殴り合うし、怪我人の俺を放置するしで、炭治郎の頭突きはやべぇし、やべぇ三昧な出合い方をした彼らは例え刀が無くとも戦える。まぁそもそも炭治郎は戦闘センスが凄くて、伊之助は野生で育ったのでそう言った技術があってもおかしくはない。ただまぁ鬼相手じゃあまり出番がないだけで。
なるほど、と呟いた彼が俺の意見をどこまで参考にするかはわからない。この稽古の主導者は彼であるし、三人ですると言っても俺と伊之助は補佐役だ。主役である炭治郎がどういった決断をするのか、それを俺はのんびりと待つだけだ。
少し相談してくると屋敷の中に入っていった炭治郎に軽く手を振ってから、縁側に座った俺はポーチの中から小さな宝石を取り出す。たまたま見つけたこれ、多分起業家か何かが落としていったのかわからないそれをぎゅっと握りしめて魔力を込めながら、息を吐いた。
少しばかり疲れるこれ。でも必要なことだと言い聞かせて、いつの間にか貰った饅頭を頬張りながら空を見上げた。雲一つない真っ青な晴天。空から降り注ぐ眩い光を浴びながら、大丈夫、そう心の中で何度も唱える。
「(きっと)」
束の間の平和を享受しながら、微笑んだ。
「上手くいく」
はずなんだ。
一ヶ月に一節にする!!!!するったらするの!!(駄々を捏ねる子供)
って事で9月11日更新です。