俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

115 / 135
第二十六節 小夜啼鳥の再演。1/3

 

 

 

 

 

 人生とは総じて計画通りにならないことが多い。ライフプランなんて立てても、そんなのは大まかなものだけで細かいところまでは気が利かないものである。

 何歳には何々をしていて、何歳には夢を叶えて、あぁ何歳頃に死ねたら幸せだろう。そんな事を考えてはノートに書き記して想い馳せる。考えるだけなら幸せだろう、それは自分にとって最高の人生なのだから。

 でもそんなものはただの想像、ただの希望、そしてただの夢想だ。意味のない現実逃避。結局のところ努力しなければ叶うものも叶えられない。

 俺だってそれなりに努力して計画通りに、知っている通りに生きれたと思う。途中までしかその道筋はなかったから、結局最後はぐだぐだだったけれど。

 でも、うん、だからこそ俺には人生経験が足りないのだと思う。伊達に修羅場を潜ってきたわけじゃないけれど、それらは全て知っている事柄だったから。敷かれたレールの上をただ、がむしゃらに走っていただけだから。だから何とか対処できた、何とか心が折れる事はなかった。

 

 でも、これは?

 

 

 

 

 これは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナン、ダ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リベンジマッチと行こうじゃないか」

 

 そう不敵に笑った鬼舞辻無惨in鬼が生前と同じように鬼殺隊士全員を無限城に落とした。一つ違ったのが鬼舞辻無惨自身が産屋敷邸に来ず、所謂雑魚鬼を操って宣戦布告してきた事だろうか。これによりお館様の特攻は打ち消しになり、代わりに護衛と一緒に無限城の中に落ちてきた。どうやら直接殺すのを止めたらしい。多分殺そうとしても何が何でも自殺する事を理解したからだろう。生前じゃガチの爆破オチしてたからなお館様。ちょっと意味がわからない。

 鬼殺隊士全員と言っても何故かカルデア組も一緒に落とされたのだが、それは多分俺達が一ヶ所に固まっていたからである。そうではないサーヴァント達は取り残されていたけれど、立香が言うには大丈夫とのこと。後で合流するよとも言われたけど、無限城にどうやって入ってくるのだろうか?? 聞こうとしてもはぐらかすので問い質すのはやめたけど。

 

「にしても落ちたのは一緒だったのに逸れるとかありか?」

「ありなんじゃない? 俺としては善逸さんがいてくれたのは有難いけど」

「敵の陣地で一人でいるよりはマシだけど、藤丸さんを守れるのが俺と獪岳だけとか」

 

 チラッと後方を見る。いつもよりも三倍増しぐらいに不機嫌な顔をした彼がこちらを見ては舌打ちを溢してそっぽを向いた。わー怒ってるー。

 良く会ってた善逸曰く、柱合会議の後ぐらいからこんな状態だったらしいが理由は知らないようだ。まぁ俺としては何となく察してはいるけれど詳しくは知らない。生きてるだけで御の字だろうけど、流石にそれだけで喜べないタチらしい。昔は違ったのに……だから許されたのか否なのか。獪岳も何かと運がないよな、サーヴァントになったら絶対幸運Eだよ。

 

「まぁちょっと不安よな」

「あ゛? そりゃどういう意味だよ?」

 

 そっぽ向いたくせに俺が放った言葉にはすぐに食いついた。中途半端にプライドだけはある男なので、食いついてこないはずないとは思っていたけどレスポンスが早い。もう一考ぐらいしてください。

 

「いやパーティ的に。支援一人と攻撃特化が二人、守備は誰がすんだって話だよ」

「ぱ? は??」

「なるほどね。でもできないわけじゃないでしょ?」

 

 さも当たり前のように確認してくる立香に俺は苦笑いを零して、まぁなと返す。できないわけじゃない、適任ではないだけで。

 

「臨機応変に行こうよ。いつまでもここで燻ってるわけにもいかないし」

「まぁそうだな……なら、カルデアとしての方針は?」

「んー、まずは他のサーヴァントと合流。同じ空間内にいるとはいえ、離れてたら魔力供給が滞らないから」

 

 立香ならではの方針だな。普通の魔術師ならば側に行かなくてもなんとかなる。でも彼はそうもいかないから合流しなくちゃいけない、ままならないものだ。

 俺としても異論はないのでそれで行こうかと頷こうとすれば、横から獪岳が割り込んできた。何か異論があるようだ。

 

「お館様はどうすんだよ。落ちたのは見てんだ、探すのが先だろ」

「か、獪岳、お前ッ」

「は? なんだよ。ってかお前って言うなカス」

 

 おっと俺にまでカス呼びが飛んできてしまった。いや別にもう真名隠してないし、バレちゃってるからどうでも良いんだけど。ぶっちゃけクラス名で呼ばれるよりはカスって呼ばれてた方が距離が近い気がするんだよな……気のせいかも知んないけどさ。

 それよりお館様の心配だなんて、お前までお館様モンペになってしまったか。柱稽古前の柱合会議で出会ったのが初めてだろうから、その日からだろうな。何かとプライドはあるけど屈しやすい獪岳はF分の一のゆらぎが効いてしまったようだ。くっころしそうなキャラだけど、そうでもないのが獪岳クオリティ。生き残るのが何よりも最優先です。俺もそうだからわかります。

 不機嫌なままになんだよ? という怪訝そうな表情で見てくる彼に、ふーんとニヤニヤ笑ってやる。それが頭に来たのか脛を蹴ってきたけどサーヴァントなんで効きませ〜〜った!?!? いった!? 魔力乗せられて蹴られた!?

 

「脛はないでしょ! 脛は!? というか人の脚蹴る!? 普通!」

「は? テメェが気色悪りぃ顔してんのが悪いんだろうが!」

「責任転嫁〜ん! 俺はただ単に獪岳にもお館様想う気持ちがあったんだな〜って思っただけなんだけど!?」

「んなのねぇわ!! お館様は鬼殺隊の中枢だ! 崩れ落ちたら全体の士気に関わる!」

「ははーん! そうは言っても守りたいだけだろ? 知ってるぜ!」

「違ぇ!! 死ぬ確率を少しでも下げたいだけだ! 気持ち悪い解釈してんじゃねぇよ! カスが!!」

 

 それにしては慌てたような表情を浮かべてるけれど。獪岳の言い分を素直に聞けない俺は、心底わからないという表情をしてから首を傾げ、そして馬鹿にするようににまーっと笑ってやる。

 

「…………コロス」

「まってまってまって!」

 

 チャキッと鯉口を切った獪岳は表情が全く読めない真っ暗な顔で此方を見ていたが、立香に止められる。全く力もない人間がしがみ付いて来たからか、呼吸も使わずに自分の脚でこちらに来ようとする獪岳。そしてそれに引き摺られる立香。カオスだ、止めてはやらんが。

 

「苛立つのはわかる! わかるからちょっと待とうか!?」

「マタナイアイツコロス」

「流石に目の前で知人の殺人行為は見過ごせないんだけど!?」

「えー? サーヴァントでもない獪岳が? 俺を? 殺す? できるものならどうぞ?」

「———!!!!」

「なんで煽るの!? 善逸さん!」

 

 ただ、無理とは言えないのが獪岳だ。彼の強さは修行時代に嫌ってほど理解してるので、しっかりと強化魔術とか使ってとかなら俺にも傷がつく。壱ノ型一辺倒な俺とは違って、獪岳は応用が利く弐から陸が使えるからなー。

 

「というかそろそろ静かにした方が良いな」

「えっ?」

「は?」

 

 刀に手を添える。鼓膜を震わす音は決して目の前の二人だけではない、そして俺の声と霊核の音でもない。木の板が軋む音、気持ちの悪い音、鬼の音、水が溢れるような音。シィイと小さく空気を零せば、流石に二人も気がついたのか臨戦態勢を取った。

 和室の中に落とされた俺たちは唯一の出入り口である、盛大に開け放たれた襖の方を見やる。ギシギシ、一歩を踏み出す度に響く不協和音。息を吐くような音が聞こえては、見えて来たのは異形の姿。何かを引き摺りながら進んできたそれに息を飲んだ。

 

「…………は?」

 

 グリッと目の部分が動く。瞳孔が此方を定めた瞬間、何かが飛んできた。

 

「獪岳!!」

「チッ!!」

 

 素早く鯉口を切る。明らかに殺意を持って放たれたそれに刀を振るって切断した。納刀、脚に力を入れる。

 

 ———弐ノ型 稲魂(いなだま)

 

 ———壱ノ型 霹靂一閃!

 

 獪岳が牽制し、俺の唯一の技を放って首だと思われる部分を切断した。ボトリと血飛沫と共に頭が落ちるが、その際に見たその鬼が持っていたものを見て目を見開いた。“滅”と書かれた黒い服、鬼殺隊士に贈られる隊服を着た音がしない物体は手足をありと凡ゆる方向へと曲げていた。

 

「(いやいやいや!? 惨い!?)ッ!!」

 

 確実に一本の筋が入ったものではない、支えである骨が全て砕けたような、ただの柔らかい筒を持ったそれが急激に迫って思わず防御の体勢を取る。衝撃が走っては吹き飛ばされた。

 

「善逸さん!!」

 

 立香の悲鳴が聞こえる。心配そうなそれに自身のサーヴァントでもない相手を心配するなんてお人好しが過ぎるぜ、なんて心の中で笑いながら遠くにあった襖にぶつかり知らない部屋の中で転がった。痛くはないけど、一応サーヴァントである俺を吹き飛ばした鬼に驚く。いやこれ相当やばいやつでは?? サーヴァントじゃなくて鬼の音がしていたから生きてる鬼なんだろうけど、え、そりゃ一般隊士が出会っちゃったら何もできないわこれ。

 というかあの鬼、鬼殺隊士を食べずに武器にしてる、なんでだ?……ってかそもそも俺あの鬼の首斬ったよな!? なんで動いてんだ!?

 

「嫌な音させてんじゃねぇよ……!」

 

 起き上がって元の部屋へと戻る。見えて来た巨体にシィイイイと息を吐いては、宙に舞う。

 

 ———霹靂一閃・六連!!

 

 雷の音をさせて室内を縦横無尽に舞う。部屋中を覆い尽くすように蠢いていた手は切断された場所から塵に還っていく。最後の一連を終えてから立香の側に着地すると、獪岳の舌打ちが聞こえてきたのでそちらを向いた。忌々しそうな表情を浮かべる獪岳にニヤリと笑ってやる。

 

「……お〜? なんだ? 未来の鳴柱であろうお方が何をそんなに悔しがってるんですかね? もしかして俺の壱ノ型に見惚れてた? そんなマジマジと見られると照れるんだけど」

 

 飛んできた攻撃を一閃。

 

「ハッ! 誰がテメェなんかに見惚れるかよ! テメェなんて端っこでビービー泣いてる方がお似合いだってまだ気がつかねぇのか? あのまま戻って来ずに蹲ってりゃ良かったんじゃねぇのか??」

 

 向かってきた鬼を避け、傷をつける。

 

「なんかアキレウスとヘクトール思い出すなぁ……」

 

 それぞれが攻撃しながら話し合っているせいか、何かを呟いた立香の声だけは届かずに代わりに雷鳴が鳴り響いた。グズグズに溶け落ちた異形が畳の上で燻る。

 

「グロッ」

 

 思わず呟く。切断したのは獪岳と俺だけれど、焼け落ちのは多分俺のせいだろう。俺の魔力放出には雷の性質があるもんで、一つでも食らってしまえば雷が自分に落ちたような感覚に陥る。つまり本当の雷と大差ないのだから、焼けるのも当然だった。

 肉の焼ける匂い、食欲をくすぐる様なものではなく気持ち悪いそれに口を押さえては立香の下まで下がる。隣に立った獪岳がギッと此方を見た。

 

「テメェ、気色悪りぃ趣味してんな?」

「いや、いやいや! わざとじゃねぇよ!? ただ癖で!」

「結局テメェの所為じゃねぇか!」

「あーはいはい喧嘩しない、とりあえず移動しよう。ね?」

 

 また口喧嘩になりそうだったところを立香に止められる。ここで喧嘩してても意味はないから移動することには賛成である。この場所には鬼舞辻無惨もサーヴァントもいる、モタモタしている間に誰かが死んでいてはいけない。

 立香の言葉にそうだなと頷いて、刀を納めた。

 

 ところで。

 

 

「えー? もう行っちゃうのー?」

 

 

 幼い声が響き。

 

 

「そうだよ、もっと遊ぼうよー」

 

 

 ———あは♪

 

 

 

「「あはははははははは!!!」」

 

 焼けた肉塊の中から何かが這い出てくる。にゅっと滑る様に出てきたそれは小さな子供の姿をしていた。

 

「遊ぼう遊ぼう、もっと遊ぼう」

「ボク達が飽きるまで」

「僕達が満足するまで」

 

「「もっともっと」」

 

 開かれた両目。

 

 そこには。

 

「上弦の陸……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「リベンジマッチだなー兄さん。マァ頑張れよ」
「まて、りべんじまっちとは何だ?」
「へ?」

柱稽古パートは省略…!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。