俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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第二節 マスターの心得。2/3

 

 

マスターとは何か。

意味で言うと主人とかそういう誰かが仕える人。しかしここではサーヴァントを従える人物の事を指す。マスターの証は身体のどこかに現れる“令呪”と呼ばれる痣のような物で、それがないとサーヴァントと契約を結べないし喚べない。つまりこれが現れて、サーヴァントを召喚し契約した者がマスターだ。

ではサーヴァントとは何か。

サーヴァントとは最高位の使い魔の事であり、人間兵器のようなものだ。生きている頃に何かを成した者、歴史に名を残した者、時代を変えた者など様々な人物が死後、座と呼ばれる世界に刻まれる。そこから引っ張り出してきて使い魔にしたのがサーヴァントである。

サーヴァントは魔力の塊であり、実体を持っていても実は霊体なので普通は攻撃は効かない。サーヴァントを傷付けるのには、神秘……まぁつまり妖とかの力ではないと付けれないのだ。そしてマスターは“令呪”を起点にパスと呼ばれる繋がりを通して、魔力をサーヴァントに送る役割を持つ。サーヴァントはマスターの補助がなければ、ここにいる事も力を使うこともできない。マスターがいなければまず消える存在である。

 

「よくわからない、簡潔に、三行で」

「サーヴァントはめちゃ強い、サーヴァントはマスターに仕える、サーヴァントはマスターがいなくちゃ駄目」

「……それ前も聞いた気がする」

「じゃぁ簡潔になんて言わないでください……」

 

ホワイトボードなんてあればよかったんだが、そんなものはこの時代にないので、仕方なく口頭で説明している。少しだけわかりやすく長々と説明したけれど、見た目の割に頭の悪い善逸は難しい話だったようだ。簡潔になんて言われたけど、それは前に言ったしな。

時は昼前。炭治郎は身体を鈍らせないように散歩に、伊之助は裏山に嬉々として入っていき、善逸は俺と一緒にお勉強だ。サーヴァントについての講義である。

因みにちゃんと朝食後には早朝の事は謝った。綺麗に正座をして頭を下げれば、その時にまた両頬を叩かれたけど笑って許してくれた。俺が言うのもなんだけど、ちょっとチョロすぎないだろうか。大丈夫かな俺のマスター……。

と、そんな事より講義の続きだ。

 

「まぁ今の貴方に必要な知識は魔力について、でしょう」

 

考えていた事を誤魔化すように言えば、善逸は机に手を置いて膝立ちになった。音を聞かなくてもわかる、若干怒ってる雰囲気だ。

 

「そうだよ!セイバー、魔力くださいなんて言ってたじゃん!ないの!?魔力!」

「多少回復したので大丈夫ですが、完全とはいきませんね」

 

俺の返答を聞いた善逸が何で?と疑問符を浮かべて問いかけて来そうだったので話題転換にと、サーヴァントにとっての魔力について説明しましょうか、告げて紙と筆を取り出す。本当は鉛筆が良いのだが、まぁそんなものはこの屋敷になかった。

机の上に広げて、サーヴァントとマスターを簡潔に書く。

 

「サーヴァントは魔力の塊と言いましたよね。身体を形作ってるのは全て偽物だと」

「でも、聞こえて来る音は人間だよ?」

 

そりゃ人間ですから。

 

「元としているのが人間だからですよ。もし元々が神霊の類なら違うかもしれないですが……」

 

話が脱線したな。話を戻そう。

サーヴァントは魔力の塊だ。ならその魔力が尽きれば?当然消える。その為にサーヴァントにはマスターから魔力を送らなければならない。それが魔力供給。

マスター、というか生物には魔術回路が存在する。それが開いているかどうかで魔術を扱えるかが決まる。善逸は俺を召喚している時点でそれは開いている。魔力も無意識ながらに流している。なので彼には魔力操作を覚えてもらう必要があるのだ。

 

「魔力供給はマスターがサーヴァントに魔力を与える事。善逸は必要な魔術回路は開いていますし、魔力の操作を完璧に覚えてもらいましょう。あとは……そうですね、簡単な魔術でもやりますか?」

「魔術……?」

「えぇ。陰陽師とかはご存知で?あの方々が術と称するものは、全て魔術の括りに入ります。細かくすれば系統が違うのですが……私が教えるのは西洋のものですね」

 

西洋のもの……と呟く。まぁ教えるのは簡単な強化魔術だ。別に難しいものを教えるわけでもない。そういうのは魔力の属性によって変わるので、基本的な魔術ならばそれも関係ないので覚えれる。

ので、強化魔術が最適だと思う。実感もできるしな。俺はできないけれど、知識だけあるだけだけど……俺が魔力で力を増すのは魔力放出をしてブーストしているだけだからだ。アルトリアみたいだなって?ちょっと参考にしてる。

 

「私が力を出すには善逸に魔力を送ってもらわなくてはならないのです。別に今のままでも徐々に回復しますが、それではいざという時に機能しません。魔術を覚えてもらうのは、それによって体内の魔力を感じて貰って魔力操作をできるようにする為ですね」

「…………わかった、セイバーがそういうならする」

 

あら珍しい。ちょっと嫌がるかと思ったんだけど。素直に頷いてくれた善逸に、嬉しくてにこりと笑う。

 

「ただ、使えば筋肉痛みたいになると思いますけど」

「ちょっと考えさせて貰っても良いですかね???????」

 

そんなの聞いてないんですけどー!?!?と叫ぶ善逸に、いつもの彼だぁと安心する。彼にしては喚かずにこんな講座を受けているのはちょっと不自然だったから。

まぁ冗談だ、そんなに怒らないで欲しい。

 

「魔術回路は普段、オンオフを切り替えるもの。善逸は何故かずっと開きっぱなしなので、痛みも何もずっと感じているはずなんですよね……ですが、その自覚はない。ので心配はいらないはずです」

「聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど??????」

「そもそも、回路を開きっぱなしでよく魔力が尽きないなぁなんて思ってたんですよ。パスを通じて私に流れてますから、普通生産が間に合わず尽きるはずなんですけど」

「ほんとちょっっっと待っっっって????」

 

ちょんちょんと紙の端に黒い点を作りながらそう呟くと、善逸が静止してきたので顔を上げる。そこには微妙な顔をした彼がいた。

一体全体どうしたというのだろうか。別に変なことは言っていないんだが。

 

「セイバーが言うことをまとめるとさ」

「はい」

「普通は閉じてる筈の魔術回路が俺は開いていて?」

「はい」

「魔術回路はオンオフを切り替えて使うのが普通で、でも俺はずっとオンの状態で、使うときは痛みが走るのにそれすらもなくて?」

「はい」

「セイバーに魔力が流れてるから、普通は尽きるはずなのに尽きてない。セイバーに出会ってからずっと?」

「はい」

「俺、やべぇぇぇえええええヤツじゃねぇえええええかぁあああああああ!!!!!!」

 

おう、この説明で自分の異常さがわかったのか。凄いな善逸、見た目の割に頭が悪いとか言ってごめんな。言ってないけど、思ってただけだけど。

因みにここ数年間で確信しことなのだが、聖杯戦争は起きない。俺自身が大聖杯からバックアップを感じていない。この時代にはもう大聖杯は作られているし、多分聖杯戦争はやっているはずなのだが、第四次聖杯戦争から逆算してもこの時期はなかった……はずだ。ちゃんと六十年周期でやっていたらの話だけれど……まぁ大聖杯と繋がってない俺がなんと言おうと意味はない。俺自体関係がない。

なら何処から膨大な魔力のバックアップがあるのか?それが不思議で……魔力を感じ取る力が未熟である俺にはさっぱり。いつかわかるんじゃないかと、普段は気にしないようにしてる。

いや、嘘ついた。確信がないし、確証もないだけで予想はしてる。でもそれは……あり得ないことだ。

でもま、だからこそこうして教えるんだけど。

 

「一応オンオフを切り替えられるようにはしますが、善逸の場合はオンのままにしておきましょう。ずっとその身体で慣れてきたからと急にずっとオフにしていたら不調を起こす場合もあるかも知れませんし」

「まじかよ!!!!」

 

それはどうだろう。

 

「ただの予想です、まじではないです」

 

今はまだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぃ、ぜぇはぁはっ、がっ、なん、ぜぇ、なんで、はぁんぐ、なんでこんなっ、ゲホッ疲れんの、はぁ」

「やっぱり知識だけじゃどうにもならないんですかね」

「せっぐふ、はぁー……セイバーはやった事ないの?」

「無いです!!!」

「良い笑顔で肯定しないで!!!!」

 

今は強化魔術の時間。魔術回路のオンオフの切り替えはスムーズに行ったので、魔力操作を覚えてもらう為に魔術を指導中だ。

魔術回路のオンオフは身体の中にある魔力を感じてもらう為のものなので、ここで詰んでいたら大変だった。まぁ寧ろ、幼い頃からずっと開きっぱなしなのだから違和感とかわからなくて詰まるとちょっとばかし思ってたのだ。しかし善逸にとっては問題なかったらしく、ちょいと気を抜いたらできたなんて言うから、この天才肌め!!と心の中で罵ったけれど。

ただ彼にとってもこれは予想外だったようだ。オンオフが簡単だったからこれも簡単だと思っていたんだろう。庭でしゃがみながら落ちていた木の棒を握りしめながら、絶望した表情を浮かべていた。因みに四つん這い。見事なotzだ。

 

「この魔術は魔術の中でも基礎の基礎。しかし極めるのは難しいとも言われてます」

「じゃぁやらすな!!!」

「誰も極めましょうなんて言ってませんよ。善逸が極めるのは霹靂一閃のみで充分です」

「お?喧嘩売ってんのか?多才じゃないってか?喧しいわ!!!!俺もわかってんだよ!!俺はどうせ霹靂一閃以外できないよ!!できてても鬼は倒せてないけどな!!!!」

「ただ、ある程度できる様になればサーヴァントの一撃すら受け止めることができますよ」

「えっ、無視?俺の渾身の自虐を無視しちゃうの?」

 

無視しちゃう。俺も散々やったやつなので。

 

「でもさぁ、こんな棒切れに使って刀受け止めれんの?さっきからスパスパ斬られてんだけど、できる気しない」

 

まぁ普通そう思うよな。でも刀も受け止めれるんだよ。Fateシリーズ最初の強化魔術使いは殺された相手にただの雑誌で対応したのだから。武器で言うと槍対雑誌だ。普通なら雑誌が簡単に折れる。ついでにサーヴァント相手なので自分の腕も折れる可能性があった。

ま、そのサーヴァントは手加減していたようだけど。人間相手じゃ手加減しないとすぐ殺してしまうしな。

 

「できる気しないんじゃなくてやるんですよ。もし鬼がいて、手元に日輪刀がなかったらどうするんです?逃げてばかりでは倒せませんから、代わりのものが必要でしょう。その為の魔術です」

「いや、日輪刀でもないのに倒せないだろ」

 

日輪刀以外の何かで攻撃しても倒せないだろ?って言いたいのだろうか。確かに今までじゃ、日の光の力を持つ日輪刀で頸を飛ばすか、藤の花の毒で殺すか、日の光を浴びさせるかぐらいでしか倒す方法がない。しかしそれは日の光と藤の花が明確な弱点であると言うだけで、もしそれを克服したならば鬼を倒せない。

ならその明確な弱点がない本当の鬼がいたら?日輪刀で頸を飛ばそうとも、藤の花の毒を服用させようとも、日の光を浴びさせようとも死なないだろう。ならどうするか?答えは簡単だ、神秘を纏った攻撃で倒せば良い。

 

……試した事ないけど。

 

「試した事ないので何とも言えませんが」

「試した事ないのかよ!!」

「攻撃を防ぐ手段にはなるでしょう」

「それが怪しいって言ってるけどね!!」

 

できるわけねぇでしょうがぁあああ!!!!!なんて叫びながらゴロゴロ転がりだす善逸を見ながら、ふぅと息を吐いた。強化魔術を覚えれば何かも便利だから覚えて欲しいけれど、最悪できなくても魔力操作だけは覚えてもらいたい。そうしないと宝具を出せないかもだし、善逸から勝手に魔力を巻き上げると言う手段もあるが……それは負担がかかるかもしれないからあまりやりたくない。

それに、魔力を回せ!マスター!って言いたいしね。

全身に付く土汚れも気にせずまだ転がり回っている善逸を見ながら、すぅーと息を吸った。

 

「頑張れ!頑張れ善逸!!頑張れ!!!お前ならできる!!!!」

「炭治郎みたいなこと言ってんじゃないよぉおおおお!!!!もぉおおおおお!!!!!」

 

わぁああああ!!!と大粒の涙を流しながら地面に突っ伏す彼にもう一度息を吐いた。

炭治郎みたいなこと?当然だ、何せ台詞をパクったんだからな。でもま、善逸に対してはこんな励ましは効かないから、言葉を変えて言おう。

 

「できたら、鰻でも食べに行きましょうか」

「絶対にやってやる……ッ!!!!」

 

即座に決意に満ちた目になった善逸にくつくつと笑う。

本当に、現金なやつだ。俺だけど。

 

 

 

良い店予約しておこうか。

 

 

 

 

 




そのお金はどこから?

はて、どこからでしょうね。
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