俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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壱ノ型

 

 

1.内緒の桃

 

 

 

 

 そんなこんなで月日が経った。

 あの後、彼と一応宜しくした後に真夜中に何故か外を出歩いていた彼を襲いに来た鬼を倒して一時避難した。彼曰く、晩御飯を探していたとかなんとか。あぁ、金が無くて人が捨てた食べ物とか探してた時期あったなーなんて遠い目をしながら話を聞いて、一応マスターである彼から離れられない為に彼と生活を共にする事にした。まぁサーヴァントなので食事は要らない。金のかからない用心棒のようなものだ、彼にも良い事だろう。俺も欲しかった。

 しかし現界に必要な魔力リソースはどこから来るのか? なんて問題もあったけれど、多分聖杯が何処かにあるのか、それともアラヤかガイヤが呼んだのか……この土地自体が悲鳴をあげていたのかわからないが、聖杯戦争になるなら自然と巻き込まれるだろうと楽観視した。魔力切れの心配はないのだ、軽く考えて良いだろう。でもまぁ、万が一の時を考えて余る魔力は宝石へと貯めている。たまたま見つけたがラッキーだ。お金に変えたかったけど、彼の生活が安定したので別に要らないだろう。

 そう、俺たちはじぃちゃんもとい、桑島慈悟郎に拾われた。修行は相変わらず厳しそうだけど、俺が受けるわけじゃないので応援する側だ。寧ろ懐かしいなぁと思いつつ、思い出して震えるのだが。

 

「食べる?」

 

 隣に座った彼が綺麗な桃を渡してくる。良いのだろうか? これは獪岳の大好物であり、じぃちゃんの所有物だ。裏山で育つそれらを勝手に食べて大丈夫かなんて聞くと、彼は悪戯に笑って内緒な? と言ってきた。成る程無許可。

 

「いただきます」

 

 唯一隠れてない口に桃を運ぶ。

 俺は現界する時、知り合いにバレるのが嫌で少しだけ変装して現界してきたのだ。隊服の上にトレードマークの羽織は着てないし、顔には座で友人の師である元水柱だった育手に貰った狐の半面。白に金の筋が入ったこれは刀と同じ色合いで気に入ってる。

 傍目から見れば狐面を被った鬼殺隊士。マスターにバレてないのはこの為だ。

 因みに髪型は長髪のポニーテール。黒髪の短髪である今の彼からは程遠い姿だが、金髪になった時が困る。疑われるかもしれない。まぁその時はその時だが。

 

「美味しい……」

 

 体感時間で久しぶりに食べた桃はとても甘く感じられた。種類によっては分厚い皮を持つ桃だけど、ここの桃は柔らかい皮を持つ。それに栄養もあるとかなんとか言ってた気がするし、普通はある仄かなえぐみもこれにはない。やっぱりじぃちゃんの桃が一番なのだろう。自然と頬が綻んだ。

 ふとほわほわと嬉しそうな音が聞こえた。思わず音の発生源を見ると、昔の自分が頬を赤く染めて笑っていた。純粋な笑い方だ。

 

「じぃちゃんの桃は美味しいよねぇ。俺、今まで何度か口にした事あるけどここが一番美味しいや」

 

 うんうんと頷く彼に、うんうんと心の中で同意する。それは生前でも思った事だからだ。やはり同一人物だからか考えることは一緒なのだろうか。

 まぁ厳密には同じじゃないのだろうけど、それはまだ確信を得ていない。

 

「今度お小遣い貰えるはずだから、それで饅頭買いに行こう。俺お気に入りのお店があるんだ」

 

 桃を頬張りながら楽しそうに話す彼。口もとにはこぼしたと思われる桃の果汁が垂れていて、袖で拭ってやる。サーヴァントなので汚れとかはすぐ無くなるから、洗濯とかの心配はない。

 

「その時はセイバーも一緒な」

「私もですか?」

「うん!」

 

 そう言って彼は笑う。本当に嬉しそうな音を立てている。彼も耳がいいから困惑した俺の音を聞き取っているだろうけど、それでも気にならないぐらいに純粋にこちらを誘っていた。

 

「だってお前がこうして物を食べるの初めてだろ?」

 

 それはサーヴァントになってからの話だろうか。思い返してみれば、まぁ確かにそうだ。彼が餓死しないように、必要のない己と違って栄養がいる彼に必然的に食事を与えていた。見た目は大人である俺が働いたりして、その給金で食材を買った。だってそうしないとお前、自分の稼いだお金全て彼女に注ぎ込むだろう? 死ぬじゃん。

 サーヴァントにとって食事とは趣味嗜好。決して必要のないものであり、魔力さえあれば睡眠すら不要である。人間の形をしているが、ヒトではないのだ。だから己は食事をせず彼に与えていた。

 こうして二人で食べれるのは生活に余裕があるからである。

 

「えぇ、そうですね」

「だろ! だから今度食べに行こうぜ! セイバーに食事の楽しさを覚えて欲しいんだよ! あ! 勿論、獪岳とじいちゃんには内緒な!」

 

 ウェヘヘへといつ見ても気持ち悪い笑い方をする未熟者である己の頭を撫でた。彼は己だ。過去の自分だ。でも決してそうは思えない。

 だって自分なら、こんな風に必要のない相手に分け与えようとは思わないのだから。

 

 約束ですよ、と指切りげんまんをした。

 

「「指切った!」」

 

 ふふ、と笑い合う。

 

 

 

 

 




宝石〜のくだりは何となくでやったらできちゃった。でも応用はわからないっていう奴。

こんな感じで小話をちょこちょこ連載。
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