俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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*パライソちゃんの真名バレがあります。


第三節 蜘蛛に紛れて蛇が這う。4/4

 

 

「がっはっ……!」

 

びちゃびちゃと血を吐くパライソを見て舌打ちが零れた。隊士達を一掃するのに加え、パライソもついでに倒せたらなとは思っていたが、そうはいかなかったらしい。まぁ簡単に倒せたらサーヴァントなんてものになってないだろう。

周りに転がるただの泥になってしまった隊士達を一瞥してから、ついとパライソの方を向く。大きく斬り裂かれた腹を押さえて後退する彼女は信じられない様な目で此方を見た。

 

「今の、ごふっ、威力はなんでござるか。宝具か……?」

 

いや?

 

「ただの型だ」

 

英霊になってから編み出した新たな雷の呼吸。生前、俺は柱になってからは継子を取らなかったし、育手にもならなかったので俺が最後の雷の呼吸の使い手だった。いや、多分使い手はいたんだろう。ただ柱になるまでの人は、育手になる様な人はいなかっただけで……大体雷の呼吸に合う人って結構少なかったらしいし。

そんな俺が死んでから編み出した技なので、この世には広まってない型だ。

 

雷の呼吸 捌ノ型 旋風迅雷

 

それがこの型の名前。

壱ノ型の延長線上の技ではあるけど、漆ノ型とは違って速さや技の威力を極めたわけではない。壱ノ型をし、刀を抜く瞬間に刀に沿わせる様に魔力放出をして相手の懐に入ってからくるりと一回転。自分を起点に円状に斬りつける技だ。そしてそのまま通り過ぎる。雷光が走り、竜巻が発生するのが特徴的だな。

まだ、ギリギリ壱ノ型の範囲内なのかできた技だ。編み出せたのは偶然で、魔力放出が出来る!と思って座でキャッキャ!しながら、アルトリア・オルタの剣から魔力放出しながら攻撃するというのを真似して、それをしながら壱ノ型をしたらどうなるんだろう?と好奇心のまま放ったら魔力放出の出力を間違えて一回転してしまった感じ。それを型にまで昇華したのがこれだ。

いや改めて考えると、これ本当に偶然が過ぎる。漆ノ型とえらい違いだ……あれめっちゃ苦労して編み出したのにさ。ちょっと悲しくなったわ。型にするのには苦労したけどさ、やっぱり努力の量が全然違ったから、本当。

 

「型……?これが、ただの剣術の型と言うのか?そこの鬼殺隊の者達など、バラバラに砕け散ったのに?」

「……それはバラバラになる様にしたからだ。細切れにすれば動かないし、これ以上泥も広がらないだろ?」

 

因みにちょっと獪岳の血鬼術も参考にしている。妖術の類である血鬼術を普通の魔力放出で再現するってのは無理だが、生憎様俺の魔力放出には雷の特性がある為にこの攻撃を喰らった者にはまるで雷が落ちたかのような衝撃が走る。つまり身の内から焼け死ぬ。いやほんとこれ初見殺しだよな。これを血鬼術で編み出した獪岳は天才だと思う。俺なら思いつきもしない。

ただ、根本は魔力で攻撃してるだけなのでサーヴァントにはあまり効かないのが欠点だ。斬撃にはなるが、付属特典はあまり効果はでなかったらしい。斬りつけた腹が少し焼けた程度か。

あれ?でも、俺が持ってる権能でも乗せてたらもう少しダメージは与えれてたんだろうか……?どうなんだろ。

 

「やはり貴様はここで倒しておかねば、お館様の身が危ぶまれる!」

 

お面越しに見える彼女の顔はとても歪んでいた。泥が溢れる様な気持ち悪い音と共に聞こえてくるのは、怒りと決意の感情。彼女は俺を自身のマスターの為に倒そうとしている。少し言動が違えどやはり彼女は彼女らしい。忠誠心が天元突破している。

バッ!と広げた両手と共に数十の苦無が宙に浮かんだ。それら全ては黒い炎に包まれており、つい先程その苦無達に追いかけられた記憶が蘇る。ひくりと頬が引き攣った。

 

「マジかよッ!!!」

 

踵を翻し走り出す。後ろを振り向けば追いかけてくる大量の苦無達。地獄絵図過ぎて吐きそうだ。俺に向かって突き刺さろうとする苦無達をしゃがんだり、飛び跳ねたり、刀で落としたりするが数は一向に減らない。

足の速さを上げながら文句を垂れ流す。

 

「いや!いやいやいや!!これはない!!これはないでしょ!!!忍なんだから忍んでくれよ!!マジで!!!!おかしいでしょ!?ハッ!ここはNA◯UTOだった!?」

「何を騒いでいるのでござるか!!」

「お前も来んのかよッ!?!?!?」

 

刀を構えて突貫してくるパライソを見て、これは避け続けることはできないと判断する。いやこれさっきもしたな!?

仕方がない。剣術は得意じゃないってのに!

 

「捌ノ型改、ただの魔力攻撃!!!」

 

刀を抜き上段に構えて魔力放出で刀を覆う。刀身の何倍もの大きさに膨れ上がったそれを地面に向けて放つ。ぶわりと魔力が辺りに広がり、黄色い閃光が走って苦無達と打つかった。それを見届けてから刀を納めて、向かってくるパライソへと突貫する。

 

「壱ノ型、霹靂一閃!!」

「その攻撃はもう見切った故効かぬぞ!!」

「嘘でしょ!?」

 

彼女の打刀で簡単に軌道を逸らされ、思わず悲鳴をあげる。俺これしかできないのに!?見切られたの!?マジかよ!サーヴァント強すぎ!!いや、黒死牟も見切ってきてたけどさ!!!

 

「ぐぅっ!!」

「もう一撃、でごさるな」

 

おあいこ、なんて可愛いものではない。パライソが打刀と短刀で攻撃してくるのを防いでいたら背中に残っていた苦無達が突き刺さった。次々と衝撃を持って突き刺さるそれに我慢しながら、パライソを退け逸らせてから後退する。

あぁ!痛い痛い痛い!でも背中だから抜こうにも手が届かないし、少しでも動いたら苦無がより食い込む!結構痛いなこれ!あと脊髄に刺さってる気もするんだけど!?気のせいかな!?動けてるから気のせいだよね!

 

「こふ、お互い致命傷でござるな。拙者もあと少しで消えてしまいそう……しかし、このまま消えるわけにもいかぬ」

 

せめて、とパライソは持っていた刀を捨てた。そして内包しているはずの魔力が吹き出す。その量は徐々に増えていき、まさかと俺は冷や汗を流した。

 

「せめて、我が宝具にて呪い殺してあげましょう」

 

本来の口調かはわからないが、綺麗な敬語でそう告げ笑った彼女は瞳を閉じた。

まずいまずい不味い!!宝具は不味い!アサシンの宝具って大体即死とか!呪いとか毒とかそういう搦め手であることが多い。俺の様な純粋な火力とは違うそれを喰らってしまえば、回復能力を持ってない俺にしては致命傷。致命傷に致命傷重ねたら死ぬ。普通に死ぬ。

 

「呪え、我が血を。祟れ、我が罪を」

 

まずい、詠唱が始まった。こうなればすることは一つ。宝具を発動する前にその頸を刎ねる!!

俺の身体から大量の魔力が放出される。ごめん善逸、ちょっと魔力貰っていくから!

繋がっているパスから足りない魔力を補い、詠唱を始めた。

 

「甲賀三郎より幾星霜、雪げぬものが此処にはあろう」

 

「これこそが我が生み出せし我が代名詞、我が力、我が忌み名。雷神の力、とくと御覧じろ」

 

シィイイイ、息を思いっきり吐く。目の前が冴える。これが宝具を放つ感覚。でも生前で一回だけ放った技。感覚は今でも覚えている。肉を断つ感覚、身体を襲う痛みも全て。

身体の中を駆け巡る魔力と空気が俺に力を与える。大丈夫、必ず勝てる。震える手脚に力を入れた。

 

---口寄せ。

 

---雷の呼吸 漆ノ型

 

 

「『伊吹大明神縁起(いぶきだいみょうじんえんぎ)』!!!」

 

「『火雷神』ッ!!!!」

 

 

刹那、雷神と邪神がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ははは。やはり、忍では剣士に勝てぬでござるな」

「いやいや、忍でここまでとか寧ろ自分を褒めていいって、俺なんてもう消えそうなんだけど。消えないけどさ!」

「嫌味、というやつでござるか」

 

違いますけど!?

刀で身体を支えながら彼女を見る。横たわって笑っている彼女の首は半分程切り離されている。正直グロいだろうけれど、そこから光が溢れているのであまりグロくはない。

俺の宝具で彼女の頸を刎ねたと思いきや、彼女は宝具を放った後首を少し捻って避けようとしていた。避けきれず半分程斬れているけれど。正直流石だと思う。常に気を配る忍だからこそ、気づけたのだろう。だがそれでもトドメになったようだ。光の粒子を身体中から放っている。FGOで見た退去する時のあれだな。とても綺麗だ。

ぐふ、と血を吐く。裂けた左肩を押さえつける。止血するために呼吸をするが、頭の中ではあぁ!もう!と悪態を吐いていた。だって左肩でしょ?胸にも切り傷あるし、背中にだって苦無が刺さってる。消えかけてはいるけどさ、左肩に至っては呪いだしな。

パライソの宝具はヤマタノオロチの分身か何かを召喚するものだったのだろう。それっぽい大蛇で俺の攻撃防いでいたし、最後に宝具放った時も完全に実体を持つ前だったはずなのにすれ違いざまに一撃貰ってしまったし。正直、怪我の多さならこっちの方が多い。だって彼女に与えたの、腹の一撃と首のだけ。それも不意をついてだ。

初のサーヴァント戦とは言え、俺の弱さが嫌になる。鬼相手ならまだポテンシャルが違うので大丈夫だが、サーヴァントとなると別だ。鬼は術を使ってくるが宝具なんてないし、手脚を切り落とせばそれなりに機動力は落ちる。上弦ともなると回復力は異常になるけどな。ほんと上弦とサーヴァント、どっちが強いのやら。

ごふり、また血を吐く。割とやばい。さっきから魔力をパスを通じて貰ってはいるけど、どこかパスが細いし、充分に貰えてない。どうにか流れている魔力で大丈夫だけど。

……うん、マスターが心配だ。魔力貰うついでに探しに行こう。いやパス辿ればすぐなんだけどさ。

そうして立ち上がろうとして、手脚の痺れにまた膝をつく。唐突に来たそれにきょとんと目を丸くして、自身の手と足を見た。黒い隊服の隙間からは赤黒い炎のようなものが肌に走っていた。なに、これ。

 

「あぁ、安心召されよ。その呪いは我が宝具。拙者が消えれば効果も消える故、精々回らないように安静にしているといい」

 

あっ、呪いもちゃっかり貰っちゃってたのね!手足の感覚がちょっと薄いんですけど!すれ違い様に傷つけられてこれとか、まともに喰らってたら死んでたなこれ。

はぁ、と息を吐く。本当に喰らう前に倒せて良かった。いや本当に。

 

「して、貴殿の名前は何という……?」

「は?」

 

突然なにを言いだすんですか、お前さんは。

言ってる意味がわからないという感情を隠しもせずにパライソの方を向くと、彼女はわかっていたように苦笑した。

 

「せめて拙者を倒した者の名を座へ持ち帰りたい。記録にだけになるだろうが、しっかりと刻んでおきたいのでござるよ」

 

成る程そういう事。なら良いよ、教えてやろう。きっと俺はもう何処にも召喚されることはないだろうから。

 

「俺は善逸。我妻善逸だ」

「そうであったか、善逸……良い名前でござるな……」

 

しみじみと呟いた彼女に俺は、あ!と声を上げる。まだ繋がっているだろうお前のマスターには教えるなよ?と言えば、彼女はそんな無粋なことはしないと笑った。

 

「……拙者の名は望月千代女と言う」

「急に何を?」

「いや何、名乗ってくれたのなら名乗り返さねばなと思ったまで」

 

 

 

 

 

 

そう、千代女。良い名前じゃん。

 

 

ふふ、本当は千代と言う。

 

 

じゃぁ、千代。また会えたら話そう。今度は殺し合いじゃなくて、ただ出掛けるんだ。色んなお店行って、喫茶店とかでお茶して。千代は美人だから色んなもの似合うだろうし、楽しいよきっと。

 

 

そう、なれば……楽しいだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

「あぁ……お館様、いいえ無惨様……不甲斐ないサーヴァントで、もう……し、わけ」

 

さらりと金の粒子が空へと昇っていった。身体の中にある違和感や、背中に突き刺さっていた苦無達が消えたことから完全に消滅したのだろう。

最後の最後にとんでもない爆弾を落としていったサーヴァントだけど……でも忠義を尽くそうとしていただけなのだから彼女に罪はない。

登っていく粒子達が月に照らされて消えていく様を呆然と見つめながら、はふと息を吐く。

 

「…………勝った、のか」

 

実感はなんだか湧かないけれど…………こうして召喚されて初のサーヴァント戦は、俺の勝利で終わったのだった。

 

 

 

 

 




捌ノ型 旋風迅雷(せんぷうじんらい)

英霊になった善逸が座にて編み出した捌番目の雷の呼吸。魔力放出でコーティングした刀を壱ノ型で突っ込み、一回転しながら通り過ぎる型である為に鯖善逸にしか使えないと思われる。
名前の由来は疾風迅雷+旋風。名の通り、雷と竜巻が起こる。
唯一の広範囲攻撃だが、その威力故に中々使えない。使ったら周りが(サーヴァント以外)即死する。やばい。

そんなオリジナル呼吸でした。
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