俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

26 / 135
第四節 カルデアin柱合会議。3/4

 

 

 

 

後ろで待機していてくださいと言われてずっと待っていたけれど、襖の向こうから聞こえて来た怒鳴り声と飄々とした敬語に炭治郎がプチと血管を切ってしまった。怒ってる。炭治郎の顔を見たくない。きっと凄い表情をしているのだろう。俺に向けられてないから助かってるけれど、この怒気を真正面から受けたあの善逸って人は大丈夫だろうか。お面をしているにも関わらず随分青ざめた顔をしている。怖いんだろうなぁ、俺も怖い。特に他の柱と呼ばれてた彼らが。誰だよこいつ?みたいな表情と、射殺すような視線で俺の隣にいる禰豆子ちゃんを見てるから。炭治郎が言うには全盛期の炭治郎よりも強かったとかいう人たちなので俺に刃を向けられたら死ぬ自信しかない。いや死んでは駄目なんだけど。

 

「合図もなしに勝手に出てきてしまったことをお許しください、お館様」

「良いよ、元より君達には出てきてもらうつもりだったからね」

 

相変わらずの脳に直接来る声だ。ふわふわする。ダ・ヴィンチちゃんやホームズが言うにはF分の一の揺らぎというものらしいけど、これは確かに上に立つ人物だ。英雄王とか騎士王とか見てきてる俺にとってはちょっと方向性の違う人だけど。

 

『先輩、サーヴァント反応です』

 

通信越しにマシュがそう忠告してきた。

それはさっき聞いた。ここに来る前にサーヴァントがこの先にいると言われたから少し身構えてたのだ。産屋敷さんとの話はダ・ヴィンチちゃん達に任せてたけど、実際に相対するのは俺だしね。他のサーヴァント達を置いてきた今、頼れるのは目の前の彼らだけだし。

で、誰から出てるの?そう小声で尋ねると、彼女も小声で返してくれた。最初からそうしてください。ちょっとドジっ子なところも可愛いけどね。

 

『炭治郎さんに善逸と呼ばれた方です』

「えっ、あの人が?」

 

スッと顔を上げる。前に出た炭治郎の向こう側にいるこの時代に似つかわしくない金髪の人。その側には白髪に、桜餅みたいな髪色の人と炎みたいな髪色の人がいるからあんまり目立ってないけど、俺もちょっと麻痺してるけど、日本では見かけない髪色をしたお面を被った人。

まるで寝ているかのように見える狐の面で隠れてない口元は恐怖でガチガチ音を鳴らしている。炭治郎が少しずつ前に歩いて行くたびに、少しずつ後退していくのが少し面白い。いや面白いとか言っちゃ駄目なんだろうけど、そんな人がサーヴァントには見えなかった。ほら、英霊の人ってちょっとぶっ飛んでるし、一般人にはないオーラがあると言うか何と言うか。そんな風には見えない。

 

「いや!ちょ!ごめ、ごめんね!そんな怒らなくても!ほら、ちょっとカッコつけたかっただけだから!!主以外の人には跪かないってカッコいいよね!決して膝突いたら石で足痛いだろうななんて思ってないから!全、然!全く!これっぽっちも思ってないから!」

「それでも生前仕えた事には変わりないだろう?確かに善逸が柱になった時はお世継ぎの方に変わっていたが、お館様には変わりない。あとサーヴァントはそんな事では痛がらない!」

「俺は痛がる!膝突いた瞬間血が出るね!俺ってば弱いからさ!」

「善逸がそんなんだったら俺は歩いた瞬間に骨が折れるぞ!」

「イタイイタイ病かよ!嘘吐け!!」

 

イタイイタイ病知ってるのか。

 

『イタイイタイ病とは日本の四大公害病の一つですね。富山県で発生した公害であり、一九一〇年代から一九七〇年代前半までに多発した病です。その症状は様々で、日本に広く知られているのは骨軟化症。末期の症状で、くしゃみやちょっとした衝撃で骨折してしまうほど脆くなるとか。あの方が言っているのはこの事ですね』

 

おぉ、流石マシュウィキ。イタイイタイ病が骨折以外の何かしらの症状がある事や、富山県で起きた事、この特異点では今現在流行ってることなんて知らなかった。でも昭和の話かと思っていたけど、大正の時代から流行ってたんだ。そりゃ知ってるか。

 

『因みにだけど、イタイイタイ病と名付けられたのは一九五五年だよ。つまりこの時代に生きてる人間なら知り得る情報じゃないんだ。まだ公害病だとは広まってないだろうしね!サーヴァントじゃなきゃ説明がつかないよ』

 

ダ・ヴィンチちゃん……人の心を読んだように説明を付け足して来るんだね、流石だよ。

これであの人がサーヴァントだと確信した。反応があった時点で確信できるけれど、どうにもあの態度がそうには思えないのだ。トロイアの英雄も自分をおじさんと呼んではちょっと卑下してたりするけど、あそこまでじゃないし、彼の場合それ相応の自負があるから嫌味にも聞こえない。ただ目の前のあの人はわざとそう言ってるんじゃないかってぐらいに自分を卑下してる。サーヴァントになる、英霊になる時点で充分過ぎるほど凄いことなのに。あろうことか弱いだなんて。

よくわからない人だなぁ、と思いながら俺も炭治郎に伴って産屋敷さんの一歩後ろで止まり、庭にいる人達を改めて見る。柱と呼ばれる鬼殺隊の幹部。その実力は人間辞めてるとしか思えない程であるとかなんとか。敵方の幹部十二人のうち、下弦と呼ばれるまだ弱い方の幹部を普通に倒せちゃう程なんだとか。炭治郎伝で聞いただけなのであまり詳しくはわからないし、その下弦の鬼ってのもどれぐらいの強さなのかわからないから比べようもない。とりあえず凄い人達なんだなって理解はしてる。

 

「……ってうん?炭治郎がいる」

 

何か押さえつけられて傷だらけの炭治郎がいる。羽織着てないけど、何か驚いたまま炭治郎と善逸さんを見てるし、何なら隣にいる禰豆子ちゃんも見てる。首が忙しなくめっちゃ動いてるけど大丈夫かな?

 

…………て。

 

「…………人選間違えたかな」

 

生前の炭治郎がいるだなんて聞いてない。

 

『だねぇ……』

 

ダ・ヴィンチちゃん、肯定しないで。事実だけど!

 

「ね、禰豆子……?なんで、いや俺がいるのもおか、セイバーさん善逸って呼ばれ……えっ」

 

混乱してる。わかりやすく目をぐるぐるさせた彼からは湯気が出ていた。明らかにキャパシティーオーバー。普段から考える癖は付けているとは言っていたけど、流石にこれは予想外だったらしい。鬼の血鬼術?なんて呟いてるけど、そうじゃないよ、鬼の術じゃないから現実だから。

流石に混乱してる彼を宥めようと前に出るわけにはいかないから産屋敷さんの斜め後ろで正座する。半歩後ろに禰豆子ちゃんが座り、俺に気づいた炭治郎がその隣に座った。彼に凄まれていた善逸さんは渋々とその場に膝をつく。その瞬間に後ろから漂ってた怒りが消えた事に安堵の息を吐いた。

 

「驚いたかな?私も初めは驚いたよ。でも慣れて欲しい。これは現実だからね」

 

見えていない目を細めてほけほけと笑う産屋敷さん。相変わらずのマイペース加減だけれど、それ故に個性豊かな柱相手に振り回されていないことが伺える。誰も彼の言葉を遮りたくないだけかもしれないけれど。

 

「では自己紹介をして貰おうか」

 

前を向いていた産屋敷さんが小さな女の子達に手を引かれて半歩下がり此方を見た。見えていないはずの真っ白な瞳がこちらを射抜き、俺は思わずコクリと頷いた。

スッと手を膝の上に置き、お辞儀をする。この時は深々としなくて良い、挨拶程度なのだし。

 

「初めまして、柱の方々。俺は人理継続保障機関フィニス・カルデアから参りました、藤丸立香と申します。後ろに控えますのは俺の従者である竈門炭治郎とその妹、竈門禰豆子です」

 

するりと二人がお辞儀した気配がした。目の前にいた生前の炭治郎はごくりと生唾を飲み込みこちらをじっと見ている。それにごめんねという意味で苦笑いを零しながら、俺は続きを話し出す。

 

「皆様の大事な話し合いを中断させてしまったことはお詫び申し上げます。本日は貴方方に許可を頂きたく参上しました」

「彼らは世界を守る組織からやってきたそうだ。詳しくはわからないけれど、歴史を守ることによって世界を救っているそうだよ。元々は遥か未来にいたそうだ……えーと、なんだったかな?」

「レイシフトです。それを使って、俺達はこの時代から約百年後の世界からやってきました。未来が漂白した今、過去を正すことによって未来を取り戻す。それが俺たちの使命」

 

漂白は別の問題だけどね、と小さく呟いたダ・ヴィンチちゃんに心の中で黙ってて!と突っ込む。何故こういう時に限って茶化してくるのか。ダ・ヴィンチちゃんの巫山戯る基準がわからないや。

 

「つまりこの時代にその未来が無くなる何かしらの原因があるということだね。そしてその原因が私達の最終目標と一致した為に、カルデアの方々と手を組むことになった」

「それはつまり、あの鬼舞辻が」

「うん、世界を壊しかねないほどの力を手に入れたってことだ」

 

今日のおやつは何だったかな?なんて聞きそうなぐらいの声音でとんでも無い事を言った産屋敷さんに柱の人達が息を飲んだ。めちゃくちゃ驚いてるのがわかる。俺の話を聞いている時は半信半疑そうだったのに、産屋敷さんが肯定した瞬間事実だと受け入れた。くっ!これがカリスマの差か!産屋敷さんがサーヴァントになったら絶対カリスマ持ってんねコレ。

 

「は!世界を壊すってか!良いじゃねぇか!派手で!んな力持った鬼舞辻を倒すとなりゃァもっと派手になんな!」

「よもや、仰ってる事がさっぱりわからんが!鬼舞辻が力をつけたという事だな!しかし俺たちのやることは変わらない!!鬼を滅す!ただそれだけだ!」

「(煉獄の言う通りだ。かるであとやらはわからないが、目標は変わらない。ただ俺達は鬼を)斬るのみ」

「ふふ、冨岡さん?それじゃぁ言いたい事も九分九厘も伝わってませんよ?それだから皆さんに嫌われるんですよ?」

「…………(嫌われてない)」

「心の中で言い返さないでくださーい。しかし人を守るはずの鬼殺隊が今度は世界を救う、ですか。鬼も人も仲良くすれば良いのに、ふふふ。これじゃぁ無理そうですねぇ」

「はわわ(宇髄さんの派手好きも煉獄さんの熱さも鬼舞辻が強くなったって聞いても変わらないのね、素敵だわ。そしてあいも変わらず寡黙な冨岡さん!そんな彼に飛んでいくしのぶちゃんの毒舌やっぱり鋭いわ!かっこいい……好き)」

「…………お腹空いたな」

「あぁ、遂に世界まで脅かす存在になってしまったと言うのか。何という哀れな生き物。お経を、お経を唱えなければ。南無阿弥陀……南無阿弥陀……」

「未来から来たなど信じられるか。そんな眉唾物を話す頭のイカれた奴なんて信用できない。俺達鬼殺隊が人々を守っている中でのこのこと後からやって来て、この世界は壊れる、未来はないなんて宣い、俺達では守れないから手伝うと申し出てくる時点で俺達をコケにしているだろう。巫山戯るな、俺は認めない。そもそもそこにいる竈門炭治郎はなんだ?どうして二人もいる?双子だったのかね?その隣にいる奴など鬼だろう?まだ裁判は終わってない、早急に頸を刎ねるべきだ」

「はわわわっ(時透くんお腹空いたのね、何かあげたいけど何も持ってないの、残念だわ。あっ悲鳴嶼さんのお経が聞けるなんて!とても良い声で唱えるのね、素敵。ハッ!伊黒さんのネチネチ加減が上がってる!本当はまだ言いたいのにお館様の前だからってきっと我慢してるんだわ……!抑えてもこのしつこさ、素敵……!)」

 

さっきから桜餅の人、はわわしか言ってない。どうしてだろ。頬を染めて周り見てるけど、変わった人だ。他の柱も個性ありすぎだけども。

襖を挟んで聞いていたけど、実際に見て話す方が何倍もヤバイ。サーヴァントの人達に負けず劣らずの個性の塊だ。紛れてても違和感ないよ、これ。

 

「うん、信じられないのはわかるけどね、事実だから。それに手を組む事と彼らを知ってもらいたかったから、こうして皆に紹介したんだよ」

「ではお館様、質問よろしいでしょうか?」

「何だい?しのぶ」

 

スッと手を挙げたのは二人いる女の人の一人、蝶を模した髪飾りが特徴的なずっと笑顔を浮かべてる人だ。物凄く顔が整っている。黄金律(顔)っていうスキルを得られそうなぐらいに整ってる。ダ・ヴィンチちゃんも小声でモデルになってほしいとか何とか言ってる。

 

「その藤丸立香という方の後ろに控えているのは、炭治郎君と禰豆子さんでしたよね。その二人は私の目の前に一人、また箱の中にいるはずです。それにそこのお館様が聖刃と呼んでいた方は、そこの炭治郎君が善逸と呼んでいました。その名は我妻善逸君の事ですよね。彼なら今蝶屋敷にいるはずです……容姿は同じかどうかはわかりませんが、この理由を教えていただきませんか?一体……彼らは何者ですか」

「それは」

『それは私から説明しよう!!!』

「(ダ・ヴィンチちゃーーーん!?!?)」

 

俺の驚愕を他所に随分楽しげな声を上げて自己主張したダ・ヴィンチちゃん。突然聞こえてきた第三者の声に警戒する柱達にあわあわしながら、どうしようかと目を泳がせる。途中で善逸と呼ばれた人と目があった気がするけど、全力で首を振って視線を逸らされた。ちょっと泣きそう。

産屋敷さんは言葉を遮られた事すら怒らずににこりと笑って此方を見た。やって良いよって事だろうか。まぁ俺には上手く説明できる自信がないから全て任せるしかないんだけども。

腰のベルトに付けている通信機器を目の前に差し出す。因みに今の服は極地用カルデア制服だ。これが今の制服だからとこの服で来た。ポチと側にあるボタンを押せば、ただの通信機器は投影機能を発揮する。光と共に映し出された映像には相変わらず笑顔なダ・ヴィンチちゃんが映ってた。

 

『はいはーい、初めまして。鬼殺隊諸君!私は人理継続保障機関フィニス・カルデアでナビゲーターを務めている、レオナルド・ダ・ヴィンチだ。気軽にダ・ヴィンチちゃん、と呼んで欲しいかな?』

 

うーん、相変わらずのロリっぷりで。愛嬌もある笑顔でそう告げたダ・ヴィンチちゃんの挨拶に、柱の方々は言葉を失ったようで食い入るようにダ・ヴィンチちゃんを見ている。正確にはそれを投影している機械にだけど彼女には関係ないようで、そんなに見られたら穴が開くよと苦笑い浮かべていた。ダ・ヴィンチちゃんも恥ずかしいのだろうか。

転がってる方の炭治郎も驚いたように彼女を見ていて、その様子がカルデアに来始めの頃の炭治郎を思い浮かべるものだからちょっとほっこりした。頼りになるし、癒しだよね。

そんな俺を他所に警戒していた柱の一人は正気に戻ったようで、ハッ!としてからよもや!と言葉をあげた。よもや好きだなあの人。

 

「よもや!青白い女人が笑顔で話しかけてくるとは!それにやけに小さい!!なんだこれは!?」

 

あれ!?

 

「「そっち!?!?!?」」

 

思ってた反応とちゃう!と言葉を上げれば善逸と呼ばれた人と声が被る。思わずそっちを見ればまたもや全力でそっぽを向けられる顔。二度目ともなれば涙が溢れた。

 

辛い。

 

 

 

 

 




立香「…………人選間違えたかな」
鯖炭「…………」←自分がいるって知ってたけど黙ってた奴

アニメ最終回でしたね。最高の作品をありがとう。
しっかしこれ、もし次があるとなると四、五話目ぐらいで煉……いや何でもないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。