俺を喚んだのは過去の俺 作:鬼柱
2.カミナリ様
「やだやだやだぁああああ!!!!」
パチリ、と目を覚ます。ふわりと欠伸をして、またかと嘆息した。きっとじぃちゃんと稽古をやるやらないの攻防を繰り広げているのだろう。拾ってくれた恩から家事やらなんやらの手伝いは進んでやるが、稽古や修行だけは嫌がる。俺だってあの修行をもう一度なんて言われたら全力で首を横で振るから、気持ちはとてつもなくわかる。というか己だし。
よっこらせ、とジジ臭く起き上がって霊体化する。この部屋は彼の部屋で、年頃の男子なのだから絶対に入るなよとじぃちゃんと獪岳に言いふらしてる場所だ。この時代でのエロ本ぐらいしかヤバいものはないが、それでも彼らが入らないと確信しているためにこうして昼寝ができる。ずっと起きていられるとはいえ精神的に寝なくては参ってしまう。
え、何故じぃちゃんや獪岳が入ってこないと確信できるって?
……そりゃぁ、彼らは俺のプライベートに微塵も興味がないからだよ。
「(さて、今日はどんな方法でぐずってんのやら)」
たまに俺がやらないような方法でやる事がある為に結構面白いのだ。飽きもしない為に暇つぶしとして鑑賞してる。霊体化すれば誰にも見えないしな。
しかしながら、昔の己が恥を晒す姿を見て面白がる事になるとは思ってもみなかった。座にいる友人が今の俺を見たら頭を打ってないか疑いそうだな。
「降りてこい! 善逸!」
どうでも良い事でクスクス笑っていると、怒ったじぃちゃんの声が聞こえてきた。少し遠いがこの音が聞こえる位置からすると、中庭の端っこ。そこに何があったっけ? と思考を巡らすと、じぃちゃんのさっきの言葉が蘇る。
———ゴロゴロ。
「ぁっ」
じぃちゃんの降りてこいという単語、そして先ほど聞こえた龍の唸り声。そこから導き出される答えは。
「雷に撃たれるの! 今日か!!」
———ビシャァアアア!!!
と言った瞬間に落ちたー!?!?
善逸ーーーーーーッ!?!?!? というじぃちゃんの叫び声が木霊する。床を壊さない最小限の力で飛び出し、中庭にいた彼らの姿を目に止める。
———ゴロ、ゴロロロ。
「ッ!」
まずい。何がまずいって色々まずい。説明してる暇もなく飛び出して彼に手を伸ばした。
「善逸———ッ!!!!」
思ったよりも高いところから頭を下にして落ちてくる善逸を衝撃を殺して抱きしめる。所謂お姫様抱っこで、野郎にやられるのは嫌だろうけど我慢して欲しい。俺はお前なのだから。
「ぁ、ぅ? せ、いば?」
焦点の定まらない目が此方を捉えた瞬間に善逸の頭を抱えて羽織を出現させた。彼を俺から出さないように更に抱きしめ、羽織の中へ仕舞うと、俺は魔力放出をできるだけ自分自身を覆うように展開した。
———ピッ、シャァアアアア!!!
唇を一文字に引き絞る。魔力放出をやめてはいけない。それをやめた瞬間に俺たちは焼かれておしまいだ。唯一心配であるじぃちゃんを見ると、その俊足を持って離れていた。流石だ、そこなら被害を喰らわないだろう。この辺りは焦げ付くだろうけど。
「———っ」
長い。落雷が長く感じる。本当ならあり得ない程の、人一人簡単に死ぬエネルギーをずっと注がれている。俺の魔力放出によって受け流しているから平気だが、俺がいなければ気絶して落ちてきた善逸に追い打ちをかけるように落雷していただろう。そして彼は命を失っていたに違いない。
あぁ、神よ。
これ以上善逸に何をあげようというのだろうか。
これ以上善逸から何を奪おうというのだろうか。
己が邪魔か? 本当はいない己が邪魔か? だが呼んだのは彼だ。応えたのは己だ。この世界が歩む道が、本当の世界と違えど、確かにこの地を踏みしめているのだから見逃して…………否。
否。
否!!
見逃してくれなんて思わない! だって善逸は己だ、己は善逸だ。なら、彼が奪われたら俺が奪われたも同然。
立ち向かおう、刃向かおう。何が神だ、何が龍だ。雷に隠れる何かに愛されたって嬉しくもない。雷を落とす何かに疎まれていたって嬉しくもない。
だって、だって、だってだって!!
己が雷神だッ!!!!!!
「失せろッ!! 何にも知らねぇ傍観者がッ! これは己のモノだ! 己だ! 誰にも神にも鬼にも渡しはしない!! もしまた奪おうと己を害そうと考えるのならば、そのかっ頸を貰うまでッ!!!」
だから!!!
消えろッ!!!!!!!!!!!!
———ピカッ。
一際光ったかと思いきや、ずっと落ちていた光の筋は鳴りを潜めた。放出していた魔力を止める。俺の魔力と周りに流れた雷のお陰で、綺麗な白い小石は焼け焦げ真っ黒に、側にあった縁側の木の板達も見るも無残に散っている。
被害が甚大だな……なんて思いながら、俺は。
「善逸!」
じぃちゃんの叫び声を最後に気を失った。
善逸を殺しにかかってる。
因みに魔力放出(雷)のスキル持ち。己が雷神だと言ってるのも深くはないけど意味はある。きっと善逸好きな皆様には分かる事でしょう。というか多分想像はする、絶対誰か書いてる。だってあの場面かっこよすぎるもんなぁー!!