俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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第五節 雷に愛された男。3/4

 

 

 

「炭治郎、善逸さんってどんな人?」

 

柱合会議にお邪魔した次の日、俺たちは蟲柱の胡蝶しのぶさんの蝶屋敷へと向かっていた。

昨日この時代の炭治郎と善逸さんが去った後、産屋敷さん達と少し話してから鬼殺隊本部へと泊まった。本部だからか部屋も結構良い部屋を用意してくださって、会議前に言ってた食堂でラーメンも食べた。久し振りに食べる炭水化物の塊はそりゃとても美味しかったとも。夜中に食べるラーメンぐらいには。

そして合流した彼らとワイワイしながら就寝した後、この時代で召喚されたサーヴァントである善逸さんに会いに行こうということになった。彼と別れる際に後でね、と言われてたし、情報共有と協力を結べたらなとは思ってたから。

そんな道中。隠の人に案内して貰いながら、隣で歩いてる炭治郎に善逸さんについて聞いた。

 

「そうだなぁ……あ、ほら!前に友人が二人いると話しただろう?」

「うん」

 

炭治郎がとても楽しそうに話してたから今でも覚えてる。喚いて泣いてるのが俺に似てるのと、常識が欠けてる友人。後者は俺たちの後ろで何故か剣戟を繰り広げてるけど……苦無と二刀流ってちょっと分が悪くない?

 

「その普段泣いて恥を晒してる方が善逸だ!」

「待って?」

 

実質二分の一の確率というか、もう片方が判明してる時点でもう片方は確定事項だけれども!その言い方だと俺まで普段恥を晒してるって言われてる気がするな!!

少し待ってほしいと炭治郎に言うと彼は首を傾げてどうしたのか?と問うてきた。その純粋な瞳で上目遣いはやめてほしいです、ハイ。俺の心が浄化されていく気がして仕方がない。

 

「……俺って恥晒してたりしますかね?」

 

その視線から逃れる為に顔を覆いながらそう呟くと彼はすかさず、そんなことない!と叫んだ後、と思うと小さく付け足した。確定してないのなら叫ばなくても良かったのでは?

しかしやはりと言うか、善逸さんは炭治郎の友人の一人だったらしい。三人全員英霊になってるのか凄いな、なんて。

 

「前も言ったと思うが、善逸は凄く頼りになるんだ。普段は恥を晒してるけど、戦闘になると心強い。それにとても優しい奴だから、きっと立香と仲良くなれる」

 

そう、かな。

いやどんな人でも協力関係は結ばないといけないのだけれど、サーヴァントとか関係なしに仲良くなれる人は貴重だ。なったからと言って気を抜いてはいけないが、それでも俺が気を許してる英霊の一人である炭治郎にそう言われる相手なら大丈夫か、と思えてくるから不思議だ。

柱合会議での善逸さんの言動を思い出す。お面越しであまり表情がわからなかったが、声音が泣いていたし、仕草は少し大袈裟だった。怒った炭治郎相手に喚く彼。炭治郎の言う通りならば普段からあんな感じなのだろう。

 

「炭治郎がそう言うならそうなんだろね。禰豆子ちゃんもそう思う?」

 

炭治郎とは反対側、俺の隣で歩いていた彼女はきょとりと此方を向いて目を細めてから頷いた。ぶらりと放り出していた左手を彼女は握って前後に振る。何が嬉しいのかふんふん♪と鼻歌を歌い始めた。

 

「禰豆子もそう思うって」

「今のどこにその要素があった???」

 

ただ単に俺の手を取って喜んだだけにしか思えないんだけど。いや可愛いから良いんだけどね。カルデアでのジャックやナーサリー、ジャンヌ、それにバニヤンを思い浮かべるから。良くパンケーキ食べようとかお茶会しようと誘ってくれた時に似てる。

 

「禰豆子もきっと善逸と会うのが楽しみなんだろう。座にいた時には会えなかったから」

 

俺は善逸と結構会ってたんだけどな。

そう言った炭治郎の横顔は少し寂しげだ。妹である彼女のことを想っているのだろう。心優しい彼が家族や友達の事を話す時の表情と同じだった。

 

「禰豆子も座に刻まれたとはいえ、それは俺と一緒だったからだ。座にいても俺の中にいるだけでこうして出てくることはなかったから」

 

それは聞いた。カルデアで俺の部屋で話してる時に話してくれた事。ダ・ヴィンチちゃんやマシュ達には話していない事。

炭治郎と禰豆子ちゃんはニコイチとは言え、アン・ボニーとメアリー・リードの様に二人で一つの霊基を待ってるわけじゃない。だからと言って坂本さんとお竜さんの様にサーヴァントとその宝具というわけでもない。彼らはそれぞれ霊基を持っていて、でも一つのサーヴァントとして現界している。言ってみればオリオンなのにアルテミスな夫婦の様なもの。あれ、本体が熊の方なのだから詐欺だよね。

ただアルテミスとは違って現界についてきたのではなく、座に刻まれる時に禰豆子ちゃんが炭治郎について来てしまったんだそうだ。ただきちんと霊基が足りない為に幻霊の様な禰豆子ちゃんを炭治郎は取り込んだ。

 

「(んだそうだけど……そういやカッツもそんなことしてた様な)」

 

あの人も幻霊なんだよね。何かと何度も会うからそんな感じには思えない。カルデアにまで付いて来てたこともあったし……数時間すれば消えてしまったけれど。

 

「……ありがとう、マスター」

 

彼と同じ様な存在である禰豆子ちゃんを見てると、ふと炭治郎が礼を言って来た。突然過ぎて俺は思わず首を傾げる。

 

「俺を喚んでくれて」

 

え、そのお礼?なんで。

 

「お礼言うなら俺の方だよ。応えてくれてありがとう」

「いや俺の方だ。立香に喚ばれなきゃ禰豆子とこうして過ごせなかったし、伊之助にも会えなかった」

 

くるりと振り返った彼は伊之助ー!と呼んだ。炭治郎よりも少し低いその背が勢い良く此方を向いた。被っている猪の被り物の鼻からふんす!と力強い鼻息が漏れる。

 

「なんだ!権八郎!俺はこいつとの勝負に忙しい!!」

「僕は勝負をしていた覚えはないのですが、貴方が勝手に刃を振るって来たから応戦したまでです」

「んだとこの野郎!刀受け止めた時点でこれは勝負だ!」

「違います」

 

仲良くしてくれ。いや喧嘩するほど仲が良いと言うのだろうか。そういう間柄はカルデアに結構いる。天才的なクズなんて殺されそうなのに笑ってるし、幼馴染に対してずっと喧嘩腰なのもいるし、サーヴァントになってからの悪縁というのもあるし、犬猿の仲ってのもある。英霊というものは生前の縁がちょっと拗れ過ぎなんじゃないかな。目の前の彼らは生前会ったこともないんだけれど。

 

「こら伊之助!小太郎さんは先輩だぞ!ちゃんと敬意を払って挑むんだ」

「いやそこじゃないと思うんですよ炭治郎さん」

 

やはりこの長男、どこかズレてる。

霊地であった藤襲山で召喚した三騎のサーヴァントのうちの二騎。鬼ヶ島で初めてあった時から何かとお世話になってる風魔一族頭領風魔小太郎と、生前の炭治郎の友人であり猪の被り物をしているという他に類を見ない個性の持ち主である嘴平伊之助だ。

小太郎の方はアサシンが欲しかったのでカルデアの方から呼んだのだけど、伊之助に関しては別。彼は何故か召喚陣が勝手に回り出して召喚されてた。彼は炭治郎見かけた瞬間に猪突猛進!と四字熟語を叫びながら突進してたけどサーヴァントになったという自覚はあまりないらしいく、曰く中になんかいるからだろとかなんとか。マシュウィキでは。

 

『嘴平さんからは神性が感知できました。今は霊基が安定してますが本来嘴平さん自体は幻霊と言われるものかと。何らかの要因で神性を持った別の霊基と融合した可能性があります』

 

とかなんとか。良くわからなかったので、つまり擬似サーヴァントかな!?と言ったら少し違います!と言われてしまった。デミなのか擬似なのかハイなのか……はっきりしてほしいな。ややこしいが過ぎる。

 

「んで、何だ豆悟郎」

「もうすぐ蝶屋敷に着くからな、小太郎さんに挑むのをやめて欲しかったんだ」

「はぁん!?そんな事の為に俺を呼び止めたのかよ!」

「む!そんな事とは何だ!しのぶさんに会えるんだぞ!」

「ッ!しのぶを持ち出してくるのはずるいだろ!」

「ずるくない!」

 

しのぶさんは柱合会議でダ・ヴィンチちゃんに口説かれてた女の人で、これから行く蝶屋敷の持ち主だ。生前からの知り合いなのか、とも思ったけどこの時代の炭治郎が蝶屋敷でお世話になっているのなら知り合いかと納得する。

それにしても炭治郎、伊之助が召喚されてからというもの言動が少し幼くなった気がする。その方が今の姿に合っているから良いんだけど、もしこれが素だったんならちょっと凹む。前にダ・ヴィンチちゃんに聞いたところ炭治郎との絆レベルは既に六らしいんだけど、やっぱり十にならないと教えてくれない事だってある。完全に全て心開いたわけではないから、こういうこともあり得る。

 

「まぁまぁ、炭治郎も伊之助も落ち着いて。こんなに騒いでたら迷惑になるし、勝負も後で申し込めば良いでしょ?手合わせぐらいなら小太郎もしてくれるって」

 

ね?と振り返れば、主殿!?と驚かれた。

 

「多分伊之助は身体に違和感があるんだと思うよ。生前とサーヴァントじゃ力加減が違うし、勝手も違うらしいから。お願い、小太郎」

「……主殿の頼みならば。しかし成る程、それならば先程斬り合ったときに感じた違和感はそれが原因ですか」

「違和感?」

「えぇ、少し強張っていた様に感じて」

 

なるほどなぁなんて呟く。良くある漫画での思考と身体の動作が一致してないとかそういうのだろうなぁ。頭でわかってるのに動かないみたいな、スポーツ初心者あるあるだろうけど彼らは達人と言って良い程の人達だ。その違和感は半端ないんだろう。

 

「後でなんて遅い!今したいんだ俺は!」

「善逸さんいるよ?彼なら伊之助の事もわかるだろうし、手合わせにはぴったりだと思うけど」

「早く行くぞ!子分四号(マスター)!」

 

変わり身早ッ!?

ガハハハ!と笑い声をあげながら隠の人に早くしろ!とせっついている伊之助に駆け寄る禰豆子ちゃんを見ながら、隣で微笑んでる炭治郎にそういえばと話しかけた。

 

「座に師範がいるって言ってたけど、その人も英霊?」

「鱗滝さんのことか?」

 

そんな名前だった。こくりと頷く。

座でも少し世間話してたとかなんとか言ってた気がするから。あと再臨すると被る狐面は鱗滝さんにもう一回作って貰ったとか言ってたし。

俺の言葉に炭治郎はうーんと唸ってからゆるりと首を振った。違うと思う、そう言った彼は困った表情をしていた。

 

「何かこう気配が薄かった気がするし……多分英霊じゃない、はず」

「えぇ……なんで座にいるの?」

「それが……」

 

英霊にならなければ座に刻まれない。ということは英霊じゃない鱗滝さんは幻霊か何かだとは思うけれど、何故か炭治郎の座にいたらしい。

整っている眉を下げた彼はポリポリと後頭部を掻いた。

 

「良く分からないんだ」

 

何でいたんだろう、そう呟く彼に俺は微妙な表情を浮かべた。

 

「……ここってぐだぐだ時空だっけ?」

『違うと思います!先輩!』

 

今まで黙ってたのにこういう時だけ間髪入れずに返事しないでマシュ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで蝶屋敷に到着。隠の方がお辞儀をしてから去っていき、勝手知ったるの如く門を潜り玄関の戸を開けた。

 

「ごめんくださーい」

「「「はぁーい、少しお待ちくださーい」」」

 

代表して俺が声をあげて言うと返事が返ってきた。見事にハモった言葉が聞こえてきてから直ぐに、トタタタと小さな足音が鳴り三人の少女が出てきた。え、めっちゃ小さい。こんな子達までいるの?まじか。

 

「どちら様ですか?」

「あれ?炭治郎さんに伊之助さん?どうしてそこに?」

「駄目じゃないですか、安静にしてないと」

 

あう、面倒な事になってる。伊之助が黙っている間に話題転換をしないと。

 

「藤丸立香と言います。胡蝶さんに話が通ってるはずなんですが」

「藤丸立香さんですね、聞いてます」

「しのぶ様におもてなしするよう言われてます」

「お待ちしておりました」

「しばらくここでお世話になると思いますのでよろしくお願いします」

「「「はい、よろしくお願いします!」」」

 

素直な子たちだ良かった!

それではお部屋に案内しますねと言った彼女達について行くために靴を脱ぎ上がった。立派な玄関口を抜ければすぐ廊下で、部屋が幾多も並んでいた。それぞれの入り口に名札がぶら下がっており、救護室やら診察室やらと書いてある。炭治郎によると主に重傷者の受け入れをしているそうだ。生前散々お世話になったとか。鬼殺隊の治療を担っているのだろうか。前線に立つ人にとって後方の医療担当には頭が上がらないのはどこも同じなのだなと納得する。

何回か廊下の角を曲がったあと、一つの部屋へと到着する。最初の区画とは雰囲気が変わったそこは宿泊用の施設として借り出しているようだ。今まで洋風の仕切りだったのが、純和風へと変わっていた。

 

「この部屋をお使いください」

「何かあれば蝶屋敷の使用人に、私達と同じ様な格好をしてます」

「しのぶ様は今出かけていらっしゃるので後程お伺いしますね」

「はい、ありがとうございます」

「「「どういたしまして!」」」

 

三人一組な彼女達はにこりと笑ったあとお辞儀をして軽い足音を立たせながら去っていった。

 

「そういえば!」

 

かと思えば最後の一人が曲がり角で止まりこちらを覗いてくる。その視線の先には炭治郎がいた。

 

「炭治郎さん、善逸さんがもうすぐ起きると思うのでちゃんと薬飲んだか見てあげてください!」

 

でないとアオイさんに怒られちゃいます、と言った彼女に言われた側である炭治郎はきょとりと瞬きをしてから苦笑して頷いた。

 

「あぁ、伝えておく」

「お願いします!」

 

では!と今度こそ去っていった彼女達を見送り、部屋の中に入り襖を閉める。隙間から覗き込む小さな光が俺たちを照らした。

 

「さて、蝶屋敷についた事だし、今後の方針ね」

 

パチリと小さく手を叩いてから注目を集めた。随分とおとなしい伊之助は相変わらずどこを見ているのかわからないけど、まぁ身体ごとこっちを見たから大丈夫だろう。禰豆子ちゃん含め四人の視線が此方を向いた。

 

「これからサーヴァントである善逸さんへ話を聞きに行くけど……炭治郎、彼の居場所は?」

「バッチリだ」

「よし。で、聞きに行くメンバーは俺と炭治郎、そして伊之助。小太郎は周辺や蝶屋敷の捜索をお願い。今回も一人になっちゃうけど良い?小太郎」

「忍は諜報がメインです、ご心配なさらず。寧ろこういう場面でお役に立たなければ喚ばれた意味がありません」

「ありがとう」

 

じゃそういうことで!と言った瞬間に小太郎は消え、この場には炭治郎と禰豆子ちゃん、そして伊之助が残る。小太郎は相変わらず仕事にとりかかるのが速い。

 

「それで炭治郎と伊之助だけど、見た目の姿形を変えて欲しいんだ。この屋敷にはこの時代の炭治郎と伊之助がいる。混乱するといけないからさ」

「さっきみたいにか?」

「そういうこと。ここには彼等以外の人達もいる、それこそあまり関係ない人達が。そういう人達にも混乱させるといけないからね」

「どいうことだよ?」

 

俺の言葉に炭治郎は頷いて、伊之助は首を傾げていた。よく分かってないのだろう。一応姿は変えられるのか?と聞くと応!と元気よく返事してくれたので大丈夫なんじゃないかな、多分。

金の粒子が舞い間から見える影が徐々に大きくなる。俺より低かった身長が大きくなり、少し見上げた位置に頭がある状態だ。大体一七四ぐらいだろうか。正確な身長はわからないけれど、俺より高いのは何かと安心感がある。今まで低かったから何だか俺が保護者みたいな見た目だったから……見た目の年齢を考えれば当たり前なのだけれど。

そうして金色が消えると短かった赤髪は長くなりポニーテールに、服装はあまり変わってないことからすると第二再臨の姿か。第三になると格好が豪華になるしね、これが妥当だ。

 

「これで良いか?立香」

「うん。これだったら見た目そっくりの大人ってだけになるね。伊之助もこんな感じに……」

 

と振り返ると彼も既に姿か変わっていた。体格は炭治郎と同じぐらいに大きくなり、被っていた猪頭は何故か胴体部分の皮が付いていて肩に移動している。青みがかった髪は後ろだけはボブと呼ばれる長さで、もみあげの部分だけ肩につく程長い。炭治郎のパターンからするとこれが彼の大人の姿なのだろう。

推測はできるが、一言言わせて欲しい。

 

「美人すぎひん?」

 

顔は気にはなってたけど、ここまでだとは思わなかった!

 

『作業の傍見てたけどこれは声を上げざるを得ないね!なんだいその黄金比!蝶飾りのあの子と言い、美人が多いね!実に素晴らしいな!もちろん私の可愛さには劣るけどね!』

 

筋肉質な体型とのアンバランスさが実に良いね!なんていう彼女には少し同意しかねるけれど。美人だという評価には首を頷かせる以外に選択肢はなかった。

というか俺の関西弁には突っ込んでくれないんですね!

 

『カルデアの皆さんとは違った可愛さで、不肖マシュ・キリエライト、少し見惚れてしまいました!』

「整いすぎた顔は純粋な後輩まで誑かすのか……!」

 

なんていうことだ……!!と思わぬ伏兵に膝をつくと先輩!?と戸惑ったような声が聞こえた。

 

「クレオパトラを見たってそこまでならなかったじゃん……」

『彼女は美しすぎて、美しいという感想以外に出てこないからね』

「モナ・リザ(小)に言われると説得力があるなぁ!」

 

美を追求した絵とそっくりな彼女にそんなことを言われてしまえば納得するしかなかった。これが世の常、上の言葉には逆らえないのだ。

崩れ落ちていた俺に影がさす。見上げると原因である伊之助がこちらをその整った顔を歪めながら不満そうに見ていた。

 

「なんだ!テメェら、俺の顔に文句でもあるのかよ」

「文句なんてこれっぽっちもない事はないけど、顔面と声の違和感半端ねぇな!!!」

 

アンデルセン程じゃないけどさぁ!!と声を荒げると炭治郎と禰豆子ちゃんがうんうんと首を縦に振っていた。やはりあの見た目の齟齬は例え美人と低音という組み合わせでも勝てないようだ。

 

「アンデルセンさんは俺が初めて出会った異形の鬼と声そっくりで驚いたなぁ」

「良くあることだね」

「良くあることなのか!?」

 

良くあることだよ。

 

「俺だってカルデア来て初めてアルジュナ召喚した時なんか自分の声が大英雄の口から飛び出てる事に違和感感じまくったし」

 

特異点先でも何かと会う恩讐の彼方に行こうとする復讐者とも同じ声だからか、自分が言ってるみたいで恥ずかしくなったからね。まぁ後々開き直って、二人の真似して色んな人を騙したりとかしたけど。楽しかったなぁ。

 

「それにほら、炭治郎だって小太郎と声一緒でしょ?」

 

そういえば、と頷く炭治郎。

さっきまで一緒にいたのに違和感感じてないのは単にカルデアで慣れたからだとは思うけれど、慣れてないうちは本当に違和感が途轍もなく働いてしまう。

 

「柱合会議でいた半々羽織の寡黙な人なんてマーリンと声一緒だし、でもマーリンぽくないのは声音の違いだと思うよ。声帯は一緒でも声の発し方で聞こえてくる音は違うと思うし、あとは性格かな?」

「ぇ」

 

さて、この話は終わりだ。本来の目的のために動かなければ。

畳の上に付いていた膝を持ち上げて襖を開けて廊下に出る。とりあえずこの区画には多分いないだろうからいるとすれば病室のある場所だろう。あの三人組娘達が歩んでいった方向へと向かうと後ろからやってきた伊之助に、炭治郎に何を言ったんだ?と聞かれた。良く分からなくて首を傾げると彼は、固まってんぞ?と後方を指差された。

そこには固まったまま動かない炭治郎がいて、その横で禰豆子ちゃんが腕を引っ張って引きずっていた。ちっとも姿が変わってないのに、大人サイズの炭治郎をずるずると引きずれるのはやはり彼女が鬼だからか。ちょっと感心しちゃったけれど、今は禰豆子ちゃんのことではなく彼の方だ。

何故固まったまま動いてないのだろうか。

 

『立香君、少しは自身の言動を振り返ってみると良いよ』

 

ダ・ヴィンチちゃんにそう言われて振り返るも分からず、今度はマシュに小声で先輩と声をかけられる。

 

『先程のマーリンさんのことでの発言がいけなかったと思います。もしかしたら半々羽織の方と知り合いだった可能性が』

 

え、まさかマーリンに会ってなかった系!?普通にいるけど!?ノウム・カルデアになっても徒歩で来ちゃってるけど!?会ってなかったの!?それでいて悪い噂ばかり聞いていた感じか!

 

「た、た炭治郎!ごめんね!まさかそこまで衝撃受けるとは!マーリンに会ったことなかったなんて!あいつロクデナシで人で無しでグランドクソ野郎だけど決してあの半々羽織の人と違うからね!!」

『先輩!それはトドメになるかと!!』

「む゛ー!」

 

崩れ落ちそうになる炭治郎を支える禰豆子ちゃんとマシュから怒られてしまった。

だってあのグランドキャスターをどうやってフォローしろと!?無茶な!!

 

 

 

 

 

 




おまえはグランドクソ野郎!

まいどお世話になっておりますマーリン。でもいつも使ってるのは諸葛孔明。そしてサポートではスカディ、実はそんなに使ってないっていう。
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