俺を喚んだのは過去の俺 作:鬼柱
3.未来
その日、桑島慈悟郎は美しいものを見た気がする。いや、あり得ないものか。
うーん、うーんと寝込む善逸の額にある濡れタオルをとってやりもう一度水にしたらせる。
「(見事な金髪になってしもうて、まぁ)」
雷の呼吸を扱う自分の弟子が雷に撃たれて髪色を変えるなど可笑しな事を見るとは思わなかった。もしかしたら善逸は雷に愛されているのかもしれない。
しかし、しかしだ。彼が撃たれた後が問題だった。
枯れ木の上で稽古をボイコットしていた善逸は当然、雷に撃たれた直後その場から落ちた。その時は少々焦げ付いた程度で命に別状はなかったのだが、その落ち方が駄目だった。頭から落ちたのだ。確かに頭の方が全体より比率が重いために逆さまになるのは当たり前なのだが、桑島がいた場所から助けようとするには少しだけ距離が足りなかった。現役ならば行けたかもしれないが、退役した今じゃ間に合わない。そう直感した。
したが。
「まるでカミナリ様のようじゃのぉ」
一筋の雷が走った。桑島の横から飛んできたそれは善逸の名前を叫びながら、いとも簡単に善逸を抱きしめたのだ。誰かはわからない、だが善逸を助ける姿勢は信頼できるものだと確信していた。それに見知らぬ男が着る服には随分前に見慣れていた“滅”の文字。敵ではないことは確かだ。
頭から落ちて死ぬという事もなくて安心したのもつかの間、その男と善逸にまた雷が降り注いだ。いや、あれは落雷と言うよりただの高密度のエネルギー体。受けてしまえば身を焦がし、内から焼ききれてしまうだろう。
いきなりの事で助け出すのも叶わなかった桑島はその場から離れ、見守った。己が行っても死ぬだけ。言っては悪いが、まだ雷の呼吸を全て継承する存在がいないからこそ死ぬわけにはいかなかった。それにあの男が善逸を護っているとわかっていた。
身体から天から注ぐ光と同じものを発してうけ流すその姿は、まるで神をも思わせる。空に向かって啖呵を切ったその姿勢は、武人をも思わせた。
「…………」
さらさらと色が変わってしまったその頭を撫でる。相変わらずの指通りだ。しっかりと切り揃えたならば、それなりの見目にはなるものだろうに、単にそうしないのは彼なりのポリシーなのだろうか。この弟子の考える事はたまに想像を超えてくる。
そういえばと桑島は思い出した。最後に見たあの男の姿を。
『じぃ、ちゃ』
さらりと舞う金色は確かに目の前にあるこれと同じだった。
「カカッ!」
“同じ金”、“同じ羽織”、そしてその羽織の下にある“滅”の文字。
「真っ事、面白いわ!」
桑島は笑う、破顔う、微笑う。
「良いモノを持っておるな! 善逸よ!」
泣き虫で、臆病で、女好きで。この子は確かに側から見れば、恥ずかしい事この上ない。しかしそれらを考慮しても余りあるほどの優しさを持つ、我が弟子は将来。
「とんでもない大物になるやも、しれんのぉ」
カカカッ!
じぃちゃんの口調、ちょっと分からない。
あらすじに注意書き加えました。手遅れな気がしますが。
正直最新刊まだそこなの?と驚いてたり。