俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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※番外編なので本編となんら関係ありません。
※謎時間軸でお送りしてますが多めに見てください。
※キメツ学園じゃなくてごめんね!!!


番外編 誕生日

 

 

 

 

『なぁ、セイバー。あの人達何してるの?』

 

 しんしんと雪が降り積もる中、寒さ対策として繋いでいた手をきゅっと引っ張っては己よりも小さな過去の自分がそう尋ねてきた。最初は何のことかわからなくて、少し考えてから彼が指差す方向を見てようやく納得する。

 彼が指した方向には一組の親子がいた。この時代にしてはハイカラな、でも平成や令和じゃ当たり前な洋菓子店の前で和かに話している。きっとケーキのでも買うのだろう。聞こえてくる会話じゃあの子供が今日誕生日なのだと理解した。

 

『誕生日ケーキを買ってるんですよ。あの女の子が今日誕生日なんでしょう』

『たんじょうびけぇき……?』

 

 俺の解答にこてりと小さき者は首を傾げる。意味がわかってないのだろう。誕生日、ケーキという言葉を繰り返しては親子を見ている。小さく手を引いて意識をこちらに向けてやった。

 

『誕生日ケーキです。あの女の子の誕生日を祝う為にケーキを買うんですよ。ケーキってのは異国のお菓子でとても甘い食べ物でして、有名なもので苺がまるまる乗ってたりしますね』

『甘いの?』

『とっても』

 

 パァアア! と顔を明るくさせる彼に俺はたじろぐ。きっと食べたいのだろう、聞こえてくる音も期待の音で一色になっている。でも無理な話だ。一応働いているとはいえ、俺たちが今持っているお金では買えない額である。異国のものとは素材も異国のもの。平成や令和じゃ安価なものであっても、この時代じゃ高価なものだ。気楽に食べれるのはそれなりに稼いでいる人達だけだろうな。

 でもここまで話して彼に食べさせてあげないわけには行かないだろう。聞こえてくる金額とポーチに入っているがま口財布の中身を照らし合わせてみても足りなかった。ホールじゃなくても買えなさそうだ。

 

『せ、セイバー。別に俺、食べたいなんて言ってないから。見たいだけ、だから』

 

 くいっと腕を引かれてそう言われる。目が完全に泳ぎきっているのに気付いてないのだろうか。奏でる音も嘘の音だ。俺に迷惑がかかると思ってんだろうなぁとため息を吐いた。びくりと彼の身体が震える。

 

『じゃぁ見に行きましょうか』

『う、うん!』

 

 見るだけならタダだ。冷やかしとか言っちゃいけない。食い逃げとかするよりマシだろう。

 

『ねぇ、セイバー……たんじょうびって?』

 

 思わず言葉に詰まる。まさか誕生日のことを知らないとは思っておらず、動かしていた脚を止めてしまった。怪訝そうにセイバー? と呼ぶ姿に何でもないと返して歩みを再開させる。

 そういえば彼はケーキの部分だけじゃなくて、誕生日の方にも首を傾げていた。“誕生日にケーキを食べる”事に疑問を持っていたのではなく、“誕生日ケーキそのもの”を不思議に思っていたのだと気づいて苦虫を噛み潰したような表情になってしまう。俺は記憶ありのまま転生したから、以前知らないものでも知っていたので違和感とか感じないけれど……確かに彼の境遇ならば“誕生日”というのに触れる機会というのが無くてもおかしくはない。それか触れる前に俺が現れたか、のどちらかだと思うけど少なくともこの幼き己は知らない事の様だ。

 

『誕生日というのは……生まれた日の事です。赤ちゃんが誕生した記念日……それが誕生日』

『ふーん……何で誕生日を祝うの? で、何でケェキ?』

『異国じゃケーキで祝うのが主流なんですよ。めでたい時に使うんですね。ですから、誕生した日はこの世に生まれためでたい日なので祝うんです。生まれてきてくれてありがとう、そしておめでとうって祝福の言葉と感謝を贈る』

『ありがとう? おめでとう?』

『貴方が生まれてきたからこそ貴方に出会えることができた、ありがとう。そしてまた一つ歳を取り大人になった、成長したね、おめでとう……まぁ、自己満足みたいなものですよ。相手も自分も、祝いたいから祝われたいからそうする』

『でも楽しそう』

『そうですね、あの親子はとても幸せそうだ。きっと心の奥底から感謝を贈りあってるじゃないでしょうか。にしても一年に一回の愛娘の記念日だとしても、ケーキなんて高級なもの買うとはハイカラですねぇ』

『セイバーは?』

 

 脈略のない言葉にきょとんとする。思わず彼を見るとこぼれ落ちそうな程大きな目がこちらを射抜いていた。

 彼の言葉に意味を見いだせないまま首を傾げると、彼はだからと続けた。

 

『セイバーの誕生日、いつ?』

 

 純粋な疑問の様だ。俺は返答に困った。生前の誕生日ならまだしも、前世での誕生日なんて覚えてない。けどここで適当に答えても、耳の良い彼には筒抜けなので一瞬で嘘だとバレる。

 うーんと悩んでいると、そんなに悩むもの? と聞かれてしまった。そりゃ悩むよ? だってお前と誕生日被るし……まぁいい言葉なんて見つかるわけもなく、えぇいままよ! と生前での誕生日を口に出した。

 

『九月三日です。私の誕生日、九月三日』

『九月三日……今って何月だっけ?』

『……十二月ですね』

『三ヶ月も前じゃん!!』

 

 うん知ってる。それもあったから答えたくなかってんだけど。でもなんで言ってくれなかったの!? なんて言われても仕方がない。その日はお前と出会った日なんだから。

 

『私を貴方が召喚した日がその日なんですから、祝うも何もないですよ』

『えっ、お前と会ったの九月三日? そんな前?』

『えぇ』

 

 そんな前。だから今更祝うなんてことしなくても良い。来年もその来年もずっとだ。正直この誕生日は彼の誕生日であって俺ではないからそこまで祝って欲しいとかはない。そもそも孤児に祝ってなんて言えないしな。

 そう考えてると彼が歩みを止めた。くんと腕を引かれて立ち止まる。振り返ってみれば何かを考えている姿が目に写った。うーんと顎に手を当てて悩んでいる……が、俺が声をかける前に決めた! と突然頭を上げた。

 

『九月三日にする!』

『はい?』

 

 何が?

 

『だから誕生日!』

 

 いやちょっと言ってる意味がわかりませんね。

 そう返すと彼はなんでだよ! と膨れっ面になる。うーん仕草がめっちゃ子供……って子供だったわ。特徴的な黒い眉が下げられて、不満げに蜂蜜色の瞳が細められている。

 

『俺、生まれた日わかんないんだ。気が付いたら一人だったし、その前なんて記憶ないから』

 

 そりゃぁ三歳児までの記憶って大抵の人は持ってないから普通だと思うけど、急に意識が覚醒して何故か街角にただ一人立っていたのは怖いよなって今でも俺も思うけどさ。

 

『今まで興味もなかったけど……今決めたんだ。九月三日が俺の生まれた日、誕生日にするって』

『……何故です? 私と被るけど、良いんですか?』

 

 決めるたって普通は他の人と違う日にするだろう。俺の誕生日を聞いた後に同じ日にするってのは些か不可解であるけど、まぁ彼だしなぁっていう納得材料は持っている。今更理由聞いても意味ないが、俺の口は疑問を紡いでいた。

 俺の疑問に彼はウェヒヒと照れた様に笑い声を押さえながら笑い、俺と手を引っ張る。俺に比べたらとても小さな力だが、何故だか抗う気は起きなかった。

 

『セイバーと同じだから良いんだよ! それにセイバーと出会った日でもあるんでしょ? なら尚更この日だな!』

『どうして?』

『だってセイバーと出会って今の俺が生まれたんだから!』

 

 それに、と彼は続けた。

 

『お前と一緒の方が、一緒に誕生日祝え合えるだろ? セイバーって絶対、自分の誕生日祝わないだろ!』

『…………ははっ』

 

 思わず笑い声が溢れる。

 

『仰る通りで』

『だろだろ!』

 

 得意げに胸を張る彼に、俺は余計に笑ってしまった。

 

『来年は二人でケェキ食べようぜ!』

 

 それまでお金貯めなきゃな、なんて笑う彼はたった三ヶ月の付き合いしかしてない相手を祝う気満々らしい。それも来年も一緒にいると信じている。

 どうしてそこまで、とか、そんな理由で誕生日決めて良いのか、とか言いたいことは沢山あるけれど。

 

『……えぇ、来年は二人で』

 

 幸せそうに笑う小さな彼にとっては、きっとどうでも良い話なのだろうな。

 はぁ、と白い息を吐きながらまだ小さい手を握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして過去の事を思い出したのだろう、それも現界してから善逸と出会って初めての冬の時の記憶を。その理由はきっと目の前にいる彼らが、誕生日についてあれこれ話しているからだ。

 幼き、まだ十五、六の彼らは鬼殺隊に身を置く立場。こうして三人揃うなんてのは久しぶりで、みんなでわいわい話し合っている。

 立香や大人炭治郎達は今はいない。蝶屋敷を出て何処かに出かけてはいるけど、行き先は告げられなかった。まぁ仲間外れにされた寂しさはあるけど文句はない。カルデア勢だけで話す事はいくらでもあるだろう。俺は耳が良いからこの蝶屋敷の中で話されたら会話が筒抜けだからな。

 アオイちゃん達が入れてくれたお茶を飲みながら、はふと息を吐く。暖かい。サーヴァントになった身じゃ外気温ぐらいは別に支障をきたすものではないが、寒いものは寒いのだ。ガラス貼りの障子窓から外を見るとしんしんと雪が降り積もっていた。

 時は十二月。丁度思い出した記憶と同じ月だ。

 

「善逸は九月三日なんだな……三ヶ月も前か、何故言わなかったんだ?」

「えっ、別に言うことでもなくない?」

「友達の誕生日ぐらい祝いたいに決まってるだろう! なぁ! 伊之助!」

「旨いもん食えるならな!」

「えぇー!」

 

 

「そう言う炭治郎は七月十四日とかだいぶ前じゃん! お前も人の事言えねぇだろ!!」

「俺の誕生日なんて言いふらすものでも……」

「言ってる事俺と同じなんだけどぉ!?!? ねぇ!? 伊之助!!!」

「同じだな」

「えぇっ!?」

 

 

「俺様の誕生日は四月二十二だ!! 敬え!!」

「どこに敬う要素が……?」

「伊之助は春に生まれたんだな! 命芽吹く季節に生まれるとは! 凄いぞ! 伊之助!」

「ガハハハハァ!!」

「えぇー……」

 

 楽しげにわちゃわちゃと話す三人組に取り残された禰豆子ちゃんは寂しいのか、小さくむーと声を発しながら此方に来た。胡座をかいてる俺の脚の隙間に三歳児並みに小さくなった彼女がいそいそと入ってくる。良いポジションを見つけたのか、むーんとご機嫌に微笑むと垂れている俺の横髪に手を伸ばしてきゃっきゃしてる。いや行動が赤ちゃん……とても可愛い。

 

「(本来は十四歳で、しっかりした子なんだよな……)」

 

 今の見た目からは想像も付かないけど、彼女は炭治郎の一個下であり、善逸の二個下なのだ。そういや霞柱も十四だっけ…………鬼殺隊って業が深いね。全員年端も行かぬ子供なところに闇を感じる。

 まぁそうしないと呼吸術が身に付かないのもあるのかもしれないけど。身体が完全に出来上がっているのよりは、ある程度の方が伸びが良いのは明白だ。それに子供の方が非現実の様な事実を受け入れやすい。

 あっ、そういえば。

 

「禰豆子ちゃんの誕生日、いつだっけ?」

 

 頭を撫で撫でしながら彼女を見ると、きょとんとした顔で見つめ返された。いや質問ってほどじゃない呟きだけど、そこで疑問に思われても。

 こてりと首を傾げた彼女に見習って同じ方向に首を曲げると髪の毛が彼女の頬に当たった。ごめんと謝る前に満面の笑みを浮かべて再び髪の毛を掴まれる。飽きてなかったんだな。

 

「ア゛ーーーーーッ!!!(汚い高音)」

 

 途端に善逸の叫び声が上がる。素早く耳を塞ぐけれど初動が遅れたせいで耳の奥から耳鳴りが聞こえてきた。この高音他者が聞くと煩いけど、自分が言ってるとあんまり煩くなく思えるのが不思議だ。まぁ頭蓋骨を伝って反響するので否が応にも頭の中に響くのだが。

 

「どうしたんだ! 善逸!」

「うるせぇぞ! 乱逸!!」

「アッごめんなさいね!? でも許して! セイバーの言葉で大事な事を思い出したから!!」

 

 ん? 俺?

 分からなくて自分で自分を指差すけど、善逸はこくこくと勢い良く頷き始める。どうやら俺のおかげで何かを思い出したらしい。雷の呼吸の使い手特有の脚の速さを活かして素早く俺の前まで来た善逸は、シュバッ! と禰豆子ちゃんの手を両手で握った。文字通り目にも止まらぬ所業である。

 

「ねぇねぇ! 禰豆子ちゃん! さっきセイバーも聞いてたけどさ! 禰豆子ちゃんの誕生日っていつ? 今更感なの拭えないし今みんなでそんな話してたし禰豆子ちゃんだけ放っておいて話し込んでいたのは謝るからさぁ! 教えてほしいな! そしたら俺、禰豆子ちゃんの為に何でも用意するから! 贈り物とか! ケーキとか!! 今の俺が用意できる中で一等素敵なの選ぶからさ!! その準備の為も先に聞いておきたいんだ! ねぇねぇいつ? 俺を助けると思って! ね? いつか教えてくれない???」

 

 因みにここまでノンブレスである。全集中の呼吸・常中を身に付けた善逸は伊達ではない。いやこれぐらい前からか。もしかしたらこの十倍はずっと話し続けれるかもしれない。俺だってできるけどその前に語彙力が死ぬ。そう考えると長々と話せる善逸は凄いよな、なんて変に感心した。

 両手を握りキラキラとした目で禰豆子ちゃんの返事を待つ善逸に、彼女は困った様に眉を八の字にしてむーんと唸る。困ってる。安心させる様に頭を撫でてあげた。

 

「善逸、気持ちはわかりますが禰豆子ちゃんが困ってる。そもそも彼女に聞くなら炭治郎に聞けば良いじゃないか」

「俺は禰豆子ちゃんの口から聞きたいの!! 男心がわかってないな! セイバー!!」

「お前は直球的すぎる。相手にバレない様探りを入れて、贈り物も欲しいものをさり気なく聞き出すんです。話題は誕生日を避けてだなぁ」

「あぁあああ!!! そんなモテそうなテク聞いてないんだよ!!!! というか、そんな事言うセイバーはさり気なく聞いて女の子の誕生日祝えたのかよ!!」

「そもそもそんな相手いないッ!!!!」

「悲しいこと言わないでッ!?!?」

 

 セイバーの口からそんなこと聞きたくなかった!! セイバーでモテないなら俺もう絶対無理じゃん!!! 結婚できないじゃん!!

 なんて叫びながら畳の上をのたうち回る善逸に手を添えて止めさせる。縋るように炭治郎の方を向けば、彼はしっかりと頷いてくれた。困り眉をさせてしまって申し訳なく思いながらも、善逸を止める為には仕方ない。

 

「善逸、禰豆子の誕生日なのだが……」

「エッ!? 炭治郎教えてくれるの!? 流石お義兄様!!」

「俺は善逸に兄と呼ばれる筋合いはない! じゃなくてだな! 禰豆子の誕生日は!」

「誕生日は!?」

 

 誕生日は?

 

「今日だ!!!!!」

 

 クソデカボイスで言われた言葉に俺達は目をぱちくりさせる。腕の中にいる禰豆子ちゃんも訳を分かってないのか、こてりと首を傾げていた。お前の話をしてるんだよぉ〜と頭を撫でくりすると、すりすりと頬を寄せてきた。ん゛っ可愛い。

 ただこの後来る絶叫の為に撫でる手を止めて、その両耳を塞いだ。鼓膜が破れるのは絵面が地味ながらも結構痛いからな。

 

「は、はぁあああああアアアアアァアッ!?!?!?!?!? エッ!? えぇっ!?!? どゆこと!? どういうことなの!? なぁ炭治郎!!! 可愛い可愛いお前の妹!! そして俺の禰豆子ちゃんの誕生日が今日!? 本日!?!? 終日!?!? 誕生日!?!? 誕生記念日!?!? なぁぁんんんで最低でも一週間前には言ってくれなかったのさぁ!!!! そしたら俺、何がなんでも色々と用意して!!! 盛大に祝ったのに!?!? ねぇ炭治郎!!! そもそも兄であるお前が祝わなくてどうする!!! 贈り物は!? おめでとうは!? ありがとうは!? 言ったか!? やったか!!! やってなかったら俺は一生お前を許さねえぞ!!!!!!!

 

 因みにここまでノンブレ(ry。

 絶叫した座っていた炭治郎の側に寄りがくがくと揺さぶっていた。

 

「わかったから!! ごめん! 善逸!! ごめん!」

「面白そうだな!! 混ぜろ!!」

「いやなんでお前が来んの!?」

 

 わーわー、ぎゃーぎゃー。一度騒ぎ出したら止まらない彼らを俺はいつもは止めないけれど、困ってる禰豆子ちゃんの為にもここは止めさせてもらおう。

 パンパンと拍手を軽く響かせて、その音に魔力を乗せる。ビリっとした電流が彼らの耳を通じて流れたらしい。一度驚いたように肩を跳ねさせた彼らがそろりと此方を向いたのを見て落ち着いたのだと確信した。満面の笑みを浮かべて良かったと思うと、何故か怯えた音が聞こえた気がするが気のせいだとしておこう。

 

「禰豆子ちゃんが困ってる」

「むーん」

「「「ハイ、スミマセン」」」

 

 同時に謝った三人に呆れるようにため息を吐いて、それでと話を続ける。

 

「禰豆子ちゃんに何か贈り物でもしたんです? 炭治郎」

「した……というかこの状況がそうなんだ」

 

 炭治郎の言葉に全員が疑問符を浮かべた。伊之助ならまだしも俺や善逸でさえ、その言葉を理解できなかった。

 

「禰豆子に贈り物何が良いか聞くと、久しぶりにみんなと過ごしたいって言った。今日はたまたま非番が被ったんじゃないんだ、しのぶさんに無理を承知で頼んで善逸と伊之助や俺を非番にしてもらった。だからこの状況が俺から禰豆子への贈り物だ」

 

 藤丸さん達がいないのは驚いたけど。

 苦笑いを零す炭治郎を尻目に腕の中の禰豆子ちゃんを見ると、彼女はその通り! とでも言いたいのか胸を張りながら何度も頷いていた。その通りらしい。えぇ……可愛い、健気。

 嬉しさのあまりに失神しそうな善逸や、ほわほわとし始めた伊之助に驚く炭治郎を見つめながら頭の中でこれからどうするか悩み始める。炭治郎から誕プレを貰っているからと言って、俺たちが何もしないわけにもいかない。俺だって禰豆子ちゃんの誕生日祝いたいし、きっと善逸だってそうだろう。好きな子が生まれた日は特別な日には違いないのだから。

 ところで今日何日だっけ? 十二月……えー……二十八日か。十二月二十八日が禰豆子ちゃんの誕生日。うん覚えた。今まで忘れてたけど、座じゃ時間や日付の概念がないから仕方ないって言い訳しながら、炭治郎に呼びかけた。

 

「炭治郎、クリスマスって知ってるか?」

 

 こてり、と首を傾げられる。

 

「くり、すます?」

「あぁ、クリスマス。十二月二十五日の朝、一年中良い子にしていた子供にサンタクロースから贈り物が贈られるって言い伝えがある行事です。イエス・キリストの復活祭、とか降誕祭とかでもあるんだけど……まぁ俺達はクリスチャンじゃないから、それはともかく……子供じゃない人達はクリスマスにはクリスマスケーキを食べたり、贈り物を贈りあったりするんですけど」

「それ俺知ってる! 毎年この時期になると赤い服を着たおっさんがクリスマスプレゼントにーって商売してた」

 

 まぁうん、いるよね。大事な売り時なんだから。今街に行ってももういないけどな。

 

「ぷれ……?」

「西洋の言葉で贈り物です。まぁとにかくそんな行事が二十五日はあるんですよ……で、だ」

 

 今日は二十八日。言うなればクリスマスはもうとっくに過ぎて、クリスマスムーブは無くなり見据えるのは年越しのみである。大掃除とか年越し蕎麦とか、お節とか作り始める日程だけど、今はそんなこと関係ない。考えるのは目の前の彼らの誕生日のことだけだ。

 

「プレゼント交換会しません? 私はケーキ買うか作るんで、貴方達はそれぞれ誰かに向けてプレゼントを用意する。折角お互いの誕生日を知ったんだし、この一年間祝えなかったのを一気に祝っちゃえばお得ってもんだ」

 

 それこそ中でダラダラするより街に繰り出して禰豆子ちゃんへの誕生日プレゼントや善逸達への数ヶ月遅れのプレゼントとか買えば良い。外は雪が降って寒いがお生憎様、鬼殺隊の隊服は防寒にも適している。夏でも通気が良いこれは年柄年中着れちゃう優れものなんで、マフラーでも巻いていけば充分だろう。

 指を立ててそう提案すれば、みんなが此方を向いて目をキラキラさせている。善逸に至っては何故か涙を流してる。目から鱗ってか?

 

「じゃぁ! そういうことで! これから禰豆子ちゃんの誕生日兼野郎三人の誕プレ交換会に向けて準備を開始しましょう!」

 

 はい、せーの!

 

「Merry Xmas!」

 

 どういう掛け声だよ!!! と善逸に突っ込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「禰豆子ちゃん」

「むー?」

「誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。あと…………俺と友達になってくれてありがとね」

 

 こんな俺でも、ずっと一緒にいてくれてありがとう。君や君のお兄さん、そして伊之助には本当に助けられたから。勿論今の君たちの事じゃないけど、それでもお礼を言いたかったんだ。

 皮肉なものだ。彼らの幸せが壊れたから、俺たちと友達になった。そこに罪悪感が湧かないわけじゃないけど、どうにも手放せそうにないから。心の奥にそれを押し込んで笑顔を作る。

 狐面を押し上げながら膝の上にいる彼女と視線を合わせて、へにょりと笑った。

 

「善逸をよろしくね、禰豆子ちゃん」

 

 あいつは俺と違って、とても優しい奴でいい奴だから……ね?

 

「むーん!」

 

 任せろー! と笑顔になった禰豆子ちゃんに抱きつかれられる。肩にぐりぐりと頭を押さえつける仕草は本当に子供で……でもそんな無邪気な姿に今度は自然に笑顔が出てしまう。

 

「禰豆子ちゃんには敵わないなぁ……」

「むふー」

「何今の可愛過ぎでしょ」

 

 

 

 

 

 

 




禰豆子ちゃん誕生日おめでとう!!!!!!!!

な小説でした。続きはない。
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