俺を喚んだのは過去の俺   作:鬼柱

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第二十節 鬼、おに、オニ。2/4

 

 

 

 

 霹靂一閃を放つ。流石上弦の伍であって一発では倒れてくれない。放った瞬間に壺の中に消え、次の壺から現れるというのを繰り返していた。

 

 ———霹靂一閃・神速!

 

 ただの霹靂一閃でダメなら神速で。単純な思考だが有効な手でもあるであろう神速を霹靂一閃を放った直後に入れていけば相手は驚いたように見ていたが、すぐに引っ込んでしまった。ザシュッと何かを斬った感触はしたけど、あまりの手応えのなさに頸じゃないなと眉を顰める。

 

「逃げてばっかかよ」

 

 あっちの瞬間移動の方が若干速いとか思わずムッとしてしまって、そんな悪態を吐く。

 

「ヒョッヒョヒョッ。逃げてるのではない、避けているのです」

 

 そう言いながら壺の中から出てきた玉壺は腕を一本無くしていた。あぁうんそこにビチビチと跳ねてるから魚かなって思ってたけど、腕だったんですね。気持ち悪い。

 ただ腕一本ぐらい失くしたって上弦の伍には関係がなく、何もなかったかのように直様生えてきてた腕を確かめている。グッパー、小さな生まれたての赤ん坊のようなそれは未だに見慣れない。

 

「避けきれてないじゃん」

「……避けきれてなくても意味のない攻撃でしたねぇ」

「いや」

 

 意味のある攻撃だった。

 

「お前が神速に付いて行けてないんだからなァ!!」

 

 ———霹靂一閃・神速!!

 

「ですからその攻撃はもう見切りましたよ」

 

 そう嘲笑って玉壺は壺の中に消えていった。

 あぁ、うん。避けると思ってたよ。でもね、さっきだって逃げたのはこの攻撃を受け止めることができないからでしょ。確実に頸を飛ばしてくるということしか認識できない、俺の剣筋を見切れていない。だから、こういうことが起きる。

 

「ッ! 貴ッ様ァ!」

 

 スッと刀が縦に通る。いつも固い鬼の首を斬ってるんだ、壺を斬ることぐらいわけない。そうして先ほどまで玉壺がいた壺が縦に裂け、ゴロンと地面に転がる。ただの壺だ、普通の壺。血鬼術でできたわけでもなく、しっかりと土から作ったんだろうそれを壊されて怒らない作者はいない。現に玉壺は丁寧な口調を忘れて、何をしている!! と怒鳴ってきた。

 

「貴様! それを作るのにどれだけ時間がかかったと思っている!! ただの壺ではない! この玉壺様が手ずから作った逸品だぞ!」

 

 いや、そんなこと言われても。

 

「俺にとってはただの壺だし。そもそもそんな大事なら戦場に持ってくんなよ。家に飾っとけよ」

「飾るような家などないわ!!」

「えぇ? そこ……? というか、めっちゃ可哀想なこと言ってんな。気付いてる? すっげぇ惨めなこと言ってるの」

「貴様も似たようなものだろう!!」

「そうだけど?」

 

 それが??

 生前なら柱になった時に賜った屋敷があるけど今はサーヴァントだからね、あるわけないよね家。当たり前の事実を言われても悲しくともなんともない。けど、鬼である彼らが根無草なのはどうにも可哀想ではある。だって雨に降られたって雨宿りできないんだぜ? 何せあの異形だ、気持ち悪いったらありゃしない。

 ま、壺に潜んで過ごしてるんだろうけど、そこはそれ。

 

「殆どの鬼殺隊士はそんなもんだよね、家無し子。鬼に襲われたとかで」

 

 鬼に襲われて生き残ったってまともに住める環境じゃないんだ。力のある相手に何もできなかった事実、目の前で家族が食われた恐怖。それがずっと付き纏って、落ち難い血痕を見ては思い出す。精神的に住めるわけもなく、だからといって行く宛てもなく目の前にいる鬼狩りに縋り付く。連れて行ってください、帰る場所なんてないんです、親を食べたのはなんなのですか、兄弟の仇を元凶はなんなのですか、俺も、私も、貴方みたいになれますか……?

 そうして鬼舞辻曰く異常者の一人へと落ちて行く。まさに悪循環。元凶さえいなくなれば終わるこの循環も、生み出してる奴らは何も思わずのうのうと生きている。それが大半の鬼殺隊士は許せない。

 うん、まぁ、俺はマスターが生きてさえいてくれれば別にどうだって良いんだけどね? 今の俺には他の鬼殺隊士達が掲げるような人々を助けたいなんて崇高な願いなんてない、ただマスターが平穏に暮らせる世にするのが俺がサーヴァントとして現界した意味だと思うから。

 

 ……生前はまぁ、同じ様な願いは持ってはいた。鬼殺するのは罪滅ぼしの色合いが強かったけれど。

 

「鬼狩りの話などどうでも良いわ!」

 

 ———血鬼術・蛸壺地獄!

 

 だよな! 俺もそう思う!

 

 ———壱ノ型 霹靂一閃・六連!

 

 玉壺が取り出した新しい壺から蛸足が大量に出てくる。蛸自体はいない様で、しかし壺に収まりきらないであろう八本の足は鋭く此方に向かってくる。それらを霹靂一閃を使って斬り落とす。弾力があり斬り難かったが、サーヴァントの膂力を嘗めないで頂きたいものだ。これぐらい朝飯前である。

 何処となくとある神話を思い浮かばせる様な触手達(蛸足)は俺が輪切りにして斬り刻んでくる危険な存在だと理解したのか、スルスルと中に戻って行く。なんだか呆気なくて、息を吐きながらもあの壺も壊そうかと少し大きなそれを最後の霹靂一閃で真っ二つにする為に近づき、壺の中から水が溢れてることに気づいた。

 なんだこれと思いつつ聞こえてきた面白がる音にハッとする。罠か!!

 

「遅い!」

 

 ———水獄鉢!!

 

「しま———っ!」

 

 ガポッ。

 空気が口から溢れる音がした。水の中にいる感触、全く入らない空気。目を見開き周りを見れば歪んでいる景色。耳も少し遠くて、でも周りの音を拾えなくはない。玉壺の嬉しそうな音が響いた。

 

「ヒョッヒョ、ヒョッヒョヒョッ! やぁっと掛かってくれましたね。さーゔぁんとという者でもやはり呼吸の使い手である限りは、この牢からは一生出られまい。精々も掻き苦しみ死ぬが良い」

 

 恨み辛みが凄い。

 呆れた様に首を振っては、ピッと親指で頸を斬り下に向ける。この煽りを知っているかどうかで相手の反応が違ってくるがどうやら知っていたらしい、白い額に青い筋が走っていた。

 

「そう余裕ぶって居られるのも今のうちにだ」

 

 口調ー口調戻ってますよー!

 なんて言えず俺の事を鼻で笑った玉壺はくるりと反転して霞柱がいる場所へと向かって行った。あぁくそ、ある程度離れられると外の様子なんてわからない。出るしかないだろう、そもそもこのままでは俺の肺が保たないだろうし霞柱が危ない。

 

「(流石に上弦の伍なだけはある、普通に苦しい。鬼殺隊士相手だったらとても有効な一手だろうな)」

 

 でも俺はサーヴァント。そこんところを玉壺は理解している様でして居ない。こんなただの水の牢、宝具でもない逸話でもない何でもないモノで捕らえられると思っている。こんな物、霊体化すれば一発で抜け出せるというのに。

 ただの水の塊で良かった。血鬼術で生み出しているとはいえ、これならいくらでも対処のしようがある。

 

「(霊体化して抜け出すのも良いけどっ!)」

 

 ここは一つ、カッコつけさせてくれ。

 強化魔術を全身にかける。サーヴァントの膂力に加えての強化魔術、それだけで充分なのに更には魔力放出で刀を覆った。水の中で上段に剣を構え、そして思いっきり振り下ろす! 足場はないからただ単に腕力だけの腕任せだが、刀を振るうぐらいわけありませんて。

 パァアン! と水が弾け飛ぶ。ピリピリとした感触が肌を駆け巡り、滴り落ちた水を通して地面に流電する。どうやら純粋な水ではない模様……そんなこと今気付いたって意味ないのにな。

 

「…………は?」

 

 そうして見えたのは俺と同じ様に水の中に閉じ込められてる霞柱の姿だった。上弦の伍の姿は近くにはない……いや、気配と音からしてすぐそこの荒屋の中にいる。あの中には小鉄君や鋼鐵塚さんがいるというのに!

 まだ持って、苦しそうに見えるけどまだ息は持っていて、寝んなよ!? 死ぬぞ!

 体勢を低くする。息を吐き、地を蹴っては刀を振るった。必要最低限、荒屋の中にいた上弦の伍が危機を感じて引っ込んだのを確認し、その残った壺を外へとの蹴り出した。サッカーならゴールの角に入っていただろう見事なカーブを得て、コロコロと外に転がり出る。

 まだ他の壺はない。その隙に水の牢の中に無理矢理腕を突っ込み、霞柱の腕を掴んで引っ張り上げる。人サイズまで膨れ上がった水は抵抗が凄く腕が重いが知ったことか。マグロの一本釣り宜しく、霞柱一本釣り。

 霞柱が出た瞬間に水の牢は解け、ゲホッガホッと咽せている霞柱にホッとする。生きていた、さっきちょっと意識飛びかけだったから心配だったんだ。

 さて、と刀に手を添えて壺の中からもくもくと出てきた上弦の伍を睨みつける。相手方もあの水から抜け出してきた俺を危険な存在だと認識したのか殺気を仕向けてきた。絶対に殺すと決意している感じだ、さっきまでは当たり前のように殺そうとしてきただけだから気の持ちようが違う。

 

「ヒョッヒョ、ヒョヒョッ……もう貴様は許さないぞ」

「許すも何も最初から殺す気だったくせに」

「ふん。普通に殺すのでは飽き足らん、無残に惨たらしく殺してやる」

 

 あっ今無惨の名前言った? 言ってない? 嘘。鬼舞辻無惨の判定ガバガバ説。

 そんな軽口を言いながら玉壺に刀を叩き込む。先程の蛸の血鬼術で刀を防がれ、そのまま押し切りながらも玉壺が現れている壺を蹴り上げて竹に叩きつけてやる。衝撃から逃げる為か引っ込んだのを見ながら、その壺を追いかけ踵落としの要領で地面に叩きつけて割ってやる。ガシャーンという音が耳をつん裂くが我慢して上空に逃れる。蛸足が俺を捕らえようと脚を伸ばしていた。

 ぐっと力を入れて刀を振り魔力放出で感電死させ、地面に降り立った。とっとととバランスを取っていると、ヒョヒョと玉壺が笑う。

 

「ヒョッヒョッヒョッ! 貴様も毒に犯され死ぬが良い!」

 

 そうして壺を取り出すから、なんだか隙だらけだから。

 

 

 ———雷の呼吸 漆ノ型

 

 

 宝具解放とまでは行かずとも、ただの型で。

 

 

 ———火雷神(ほのいかづちかみ)ッ!!!

 

 

 その頸を刎ねてやった。

 

「な、にっ?」

 

 何が起きたのかわからないという顔で此方を見る玉壺にハン、と鼻で笑ってやった。

 

「遅過ぎだっての、バァカ」

 

 上弦の伍の名が泣くな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「(僕の出番あれだけ……?)」
「(私の出番もたった二話?)」

正直すまんかった。
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