二天屋敷では、お館様から届けられた文を現代の宮本武蔵が読んでいた。
内容を要約すると
『上弦の鬼の可能性が高く、迎える者は救援へ向かって欲しい』
だった。
「…………」
だが、それを見ても尚、宮本武蔵は何かを考えながら動こうとはしなかった。
「よう、ヒナ。さっき来てた鎹鴉、なんだった?」
「ん」
手紙をその場に広げ、先代宮本武蔵…レンは読み解きながらも、特にこれといった感情を表に出すことはなかった。
「で、どうする?」
「私が行ったところでむしろ悪化すると思うし、ここは天元や伊織達の強さと悪運を信じる」
「ほーん。ウチの門下生で階級高い奴ら向かわせねえんだな」
「その子らに行かせるくらいなら親父殿に行かせるって」
「違ぇねえな」
2人は勿論、同僚や継子が死ぬかもしれない状況なのを理解している。
だがその声色は、どこまでも平常だった。
「我妻、猪頭。お前らは女の鬼を相手しろ。竈門は俺、伊織と一緒に男の鬼を狙う」
「わかった」
「おう!」
「わかりました!」
「伊織、間違っても手ェ抜くなよ」
「はい」
帯を使う女の鬼「堕姫」が、攻撃を仕掛ける。しかし届く前に善逸が動き、屋根上へ堕姫を連れて行く。
それに追従するように伊之助も動く。
「任せたぞ。お前ら」
夜はまだ、始まったばかり。
「(物凄い殺気だ!肘から首まで鳥肌が立つ!当たり前だろ!しっかりしろ!相手は上弦の陸だぞ!宇髄さんは毒を受けて、伊織さんは俺のせいで酷い怪我を負ってしまった!俺が守らないと!あいつが動いた瞬間に刀を…」
だが、男の鬼「妓夫太郎」が動き、炭治郎の顎に血鎌が肉薄し…
「(動け!動け動け!)…ッ⁉︎」
当たる直前、宇髄によって炭治郎は跳ね上げられ、そのまま宇髄と妓夫太郎が激しく剣戟を繰り広げていく。
「(何をやってるんだ!宇髄さんを守らなきゃいけないのに!庇われて、足を引っ張ってる!)」
「スゥーーーーー。ハァーーーーーーー」
伊織はそんな宇髄の事を気にもせず--全幅の信頼を抱いているがゆえに--ミシミシと手に力を込め続ける。
「ッ⁉︎上から…」
炭治郎が気配を感じたと同時、屋根から無数の帯が炭治郎達へ降り注ぐ。
炭治郎たち三人はそれぞれが対処し、伊織は帯の合間を縫い妓夫太郎へ接近する。
「(なんだぁぁ?さっきより疾ぇなぁぁ)」
「二天・風の呼吸……」
伊織はシィィィィと、独特な呼吸音と共に暴風と錯覚するほどの荒々しい技を何度も繰り返し、妓夫太郎と斬り結ぶ。その間降り注ぐ帯を宇髄と炭治郎が捌いていき、伊織が一瞬離れた瞬間に今度は宇髄が妓夫太郎へ接近する。伊織もまた、同じように宇髄が一瞬離れた瞬間を狙い攻撃を仕掛け続ける。
「(なんなんだコイツの太刀筋は!本当の蟷螂みてえだ!)」
「(太刀筋なんて呼べた物じゃない!それなのに師範並みに迅い!)」
2人は妓夫太郎の激しい斬撃と、文字通り飛来してくる血の斬撃の嵐を凌いでいる間、さらに上から降り注ぐ帯に四苦八苦していた。
互いに隙を見て斬りかかり続けるが、頸を斬るには至らない。一方、妓夫太郎は血の斬撃をさらに増やし、最も厄介な宇髄へ差し向ける。
「(やばい、逃げ場が無え!)」
「(まずい…宇髄さんが。間に合わない…!)」
「はぁっ!」
宇髄が防ぎきれない血鎌を炭治郎が受け止める。だが受け止められた血鎌は止まることなく、炭治郎へ進み続ける。
「(ああああ!重い!攻撃が重い!受け流せ!受け流すんだ!まともに受けたら刀が折れる!)」
炭治郎はヒノカミ神楽ではなく水の呼吸を使い、血鎌を受け流す。その僅かな隙を使い宇髄と伊織は攻め続ける。
「音の呼吸・伍ノ型【
「風の呼吸・壱ノ型【塵旋風・削ぎ】!」
「騒がしい技だなぁ、そんなもので押してきたところで意味ねぇんだよなぁぁぁ!」
妓夫太郎の正面から宇髄が、背後から伊織が挟み撃ちにするよう周囲一体を抉りながら接近する。
その間接近してくる帯は炭治郎が死ぬ気で、2人を少しでも守るためにも凌ぎ続けていた。
「(役に立て!少しでも攻撃を減らせ!勝利の糸口を見つけるんだ!)」
「はぁっ…はあっ……。ガホッ……」
「(まずいな。
宇髄と伊織は文字通り血反吐を吐きながらも、死力を尽くして攻撃を仕掛け続ける。
炭治郎も2人だけに任せようとせず、僅かな隙を死に物狂いで探し出し、頸を狙う。
「はぁ…はぁ……」
そんな4人の元へ、1人の女性が向かっていた。
「(天元様やあの子達が抑え込んでる今なら…!)」
それは宇髄が救出した3人の嫁の1人、雛鶴という女性。
逃げろと言われていたが、少しでも宇髄たちを助けるためこの場に戻ってきていた。
屋根上でクナイを大量に発射する絡繰を持ち、妓夫太郎目掛け発射する。宇髄達をも巻き込みかねないソレを見て、3人は即座に理解し、強引に距離を詰めにいく。
「(めんどくせぇなぁぁ。こんなもの無視して……。いや、待て。今更そんな無駄なことするかぁぁ?)」
思い直した妓夫太郎はすぐさま広範囲に血鬼術を放とうとする。だが伊織がそれを許さず、技が放たれるよりも疾く妓夫太郎の両肩を斬り落とすことで阻止する。
その結果、大量のクナイが妓夫太郎と宇髄達に突き刺さる。
「(こいつらも刺さってんじゃねぇか。何を考えて…)ぐっ⁉︎」
斬り落とされた両腕を再生しようとするも、何かが体を蝕む感覚を覚え、すぐに再生ができなかった。
その隙を宇髄達は見逃さず、まずは両足を宇髄が斬り落とし頸を狙う。炭治郎もまた、宇髄に追随し頸を狙う。
伊織は一度下がる。深く深く呼吸し、刀を握る力は最大限に、それ以外は最大限脱力する。
「だぁっ!」
「はぁっ!」
「キヒッ…」
だが、まだ宇髄と炭治郎の刀は頸には届かない。
既に毒を分解した妓夫太郎は両腕両足を再生し、宇髄と炭治郎の刀を受け止め、血鬼術を発動させようとする。
「二天の呼吸・弐ノ型【穿ち裂き】!」
発動するよりも速く伊織が踏み込み、頸目掛けて2本の刀で突く。だがそれすら読んでいたのか妓夫太郎は首を直角に曲げる事で僅かな傷を負うのみに留める。
「血鬼術【飛び血鎌】!」
「(くそッ!ふざけやがれ!)」
「(腕の振りも無しに広範囲に!)」
妓夫太郎の腕全体から血鎌が発生する。
「(まずい、避けれない…!)ぐうっ⁉︎」
宇髄は炭治郎を蹴飛ばし、技の効果範囲外へ逃す。続けて2人は血鬼術を相殺するため動き出す。
「音の呼吸・肆ノ型【
「岩の呼吸・参ノ型【
2人は妓夫太郎と同じく広範囲に技を繰り出し、血鬼術を相殺していく。
永遠とも思えるその時間が終わった時、既に妓夫太郎は何処かに消えていた。
「(どこだ!どこに消えた!)」
「ガハッ……ガホッ……(まずい……脚に力が…呼吸で、巡りを……)」
宇髄はなんとか追撃をもらわず捌き切れる。だが伊織は複数箇所に傷を負ってしまい、毒がさらに巡ってしまう。
「っ!天元様!」
「ぐっ⁉︎」
伊織を殺さんと襲ってきた帯を見て、宇髄は即座に伊織の元へ移動し帯を斬り裂いていく。
「天元様!帯は私が引き付けます!その子の治療も私にお任せください!だから、鬼を探してくださッ…⁉︎」
その瞬間、どこからか現れた妓夫太郎が雛鶴の口元を掴む。
「よくもやってくれたなぁぁぁぁ。俺はぁぁぁ、お前に構うからなぁぁぁ!」
「雛鶴!」
雛鶴を助けに行こうにも、帯が殺到し動けなくなる。伊織は動こうにも毒のせいで立ち上がるのが困難だった。
「やめろぉぉぉぉ!」
そして、妓夫太郎の凶刃は止まる事なく、雛鶴へ振り下ろされた。
「後どれくらい?」
「カァー!コノ速度ナラ後10分!10分!」
「わかった。スゥーーーーー毒の呼吸・蛇ノ型【
妓夫太郎に狙われた雛鶴。誰も妓夫太郎を止めることが出来ず、血肉で出来た凶刃が振り下ろされてしまう。
「っ……!」
「…?」
「はぁっ……はぁっ……」
誰もが雛鶴を助けれないと、思っていた。ただ1人を除いて。
「⁉︎」
「ハァッ……だい、じょうぶですか」
「え、ええ」
凶刃は雛鶴に刺さることなく、宙を舞った。炭治郎が文字通り死ぬ気で動き、妓夫太郎の腕を斬り飛ばしたことで、一命を取り留めていた。
「(随分とまぁぁ、速く動いたなぁぁぁ。コイツはぁぁ、もうここまで動けるはずがねぇんだけどなぁぁぁ)」
「(動けた!そうだ、呼吸を混ぜろ。ヒノカミ神楽と水の呼吸を混ぜるんだ!そうすればヒノカミ神楽だけの時より長く動けて、水の呼吸の時だけの時より強く斬れる!)」
炭治郎は無造作に振り下ろされた血鎌と鍔迫り合いをし、なんとかその場に留まるので精一杯だった。
「(飛んでくる斬撃よりも重い!でも負けるな!踏ん張れ!)」
だが、それを好機と捉えた者もいた。
「竈門炭治郎!お前に感謝する!」
帯を全て斬り落とした宇髄が、妓夫太郎の背後から強襲する。
だがそれも片手で受け止められてしまい、残ったもう一本で頸目掛けて突き刺すが、それも届かなかった。
「竈門ォ!踏ん張れぇ!」
「はい!」
「めんどくせぇなぁぁぁ」
再び妓夫太郎の腕全体から、予備動作無しに大量の血鎌が生成される。
宇髄は強引に妓夫太郎を引き離し、共に屋根下へ落下する。
「宇髄さん!」
「炭治郎!」
「おい!あぶねえぞ!」
「っ⁉︎」
炭治郎はすぐに加勢に向かおうとするが、堕姫の帯が襲ってくる。
善逸と伊之助は帯に翻弄されていたのか攻めあぐねていた。
「くそっ!作戦変更を余儀なくされてるぜ!あの蟷螂野郎はおっさん達を信じるしかねえ!」
「こちらの方がまだ力は弱い!3人で先にこっちをやろう炭治郎!」
「わかった!早く倒して宇髄さんを助けに行こう!」
「(だめ……ですね。脱力、効かせるとか、それどころ、じゃない。視界も、ぼやけて。力が、そもそも、入らない…)」
「ねえ、聞こえてる?まだ生きてる?」
「……?」
宇髄が単独で妓夫太郎を相手している中、既に立つことすらままならない伊織の元に、男の声が響く。
「よかった。生きてるね」
「あな……た、は……」
「悪いけど、自己紹介している暇はない。鬼は?」
「痩せ、細った、男…それ、と、帯を…。男が……危険…で、す」
「それだけ分かればありがたい。でも相手が上弦だというなら僕が加勢しても状況はあまり良くならない。だから君の力も必要になる。悪いけれど、もう少し踏ん張ってもらうよ」
「です…が……毒が……もう、力も……」
「わかってる。ちょっと荒療治でいくよ。麻酔なんてしてる暇もないから、かなり痛いよ」
「……?なに……を……」
「ひとまず止血する。いくよ、まずは右肩から」
「…?-----ッ⁉︎」
「次、左の太腿」
その男は、手に持っていた金属を熱し、それを特に深かった右肩と左太腿の傷は押し当てる。
「それじゃ次、解毒薬。強力な代わりにかなり苦いよ」
「んぐっ⁉︎」
伊織の返答を聞く前に、男は喉奥は強引に薬を押し込み、水を流し込む。更に太腿の内側にある太い血管へ注射器を刺し、解毒薬を流し込む。
「終わり。鎮静剤なんかも入ってるから、効いてくれば楽にはなるはず。僕は音が大きい方に加勢に行くから、君も動けるようになったら直ぐに来てね。雛鶴さん、ここはお任せします。毒の呼吸--」
「もうお終いだなぁぁぁ」
「はあっ……はあっ……くそ、が……」
妓夫太郎を相手していた宇髄は、既に満身創痍だった。欠損こそしていないが、身体中から血を流し、猛毒が体を巡っていた。
「(早く、早く『譜面』を完成させねえと…)」
「……んん?なんだぁ…?」
妓夫太郎は死にかけな宇髄に興味をなくしたのか、とある方向を見ていた。暫く何かをぶつぶつ呟いたと思うと、宇髄の元へ近寄る。
「じゃあなぁぁぁぁ。後でちゃぁぁんと喰ってやるからなぁぁ。安心しろよなぁぁぁぁ」
「っ……ざ、けんな」
血肉で出来た鎌を、宇髄の心臓目掛け--
「毒の呼吸・蜘蛛ノ型【
その腕を、横から入った男が斬り飛ばす。さらに複数箇所に傷を入れ、宇髄を抱えて距離を取る。
「お前……確か……」
「よかった、間に合った」
「(なんだぁぁ?斬られる直前まで気配が無かったなぁぁぁ。それに、こりゃ毒かぁぁ?)」
「毒露…シノエ……」
それは、毒柱・毒露シノエだった。
シノエは宇髄へ一つの小包を渡して日輪刀を構える。
「宇髄さん、この中に入ってる薬を飲むのと、注射器の中身どこでもいいんで打ってください。完全に解毒はできないでしょうが、幾らか楽になるはずです。宇髄さんが動けるようになるまでは僕が引き受けます」
「……。ああ、任せた。あいつの、斬撃に気をつけろ。毒に耐性ある俺ですらこの有様になる」
「わかりました」
夜が明けるまで
もう少し
大正こそこそ噂話
シノエが金属を熱するために使った道具は海の外で得た道具をさらに改良したものだよ。
現代風にいうならガスバーナーの火力上位版。
勿論取り扱い注意である。
リメイクするなら
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今ある話を直に修正していく
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新しく一から作り直す
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やる必要ない
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