大事なモノを守るために   作:紀野感無

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2025/9/19 修正

お館様に聞いてみた
・何で武蔵ちゃんの名前をヒナって名付けたの?

ああ、もともとあの子は捨て子なんだけどね。先代と一緒に散歩していた時に、私が見つけたんだ。
共に先代に育てられていたらまるで鳥のヒナのように私達の後をずっと付いてくるようになってね、それから私がヒナって名前をつけたんだ。

・歴代宮本武蔵との関係は?
私が会ったことあるのは7代目だけだよ。宮本武蔵が本格的に鬼狩りをするようになったのは2代目からだと聞いてる。なんでも人に飽きたから鬼とやり合いたいとのことらしいね。


漆・ずるい人ですbyしのぶ

 

「カァーー!二天柱ガァーー!上弦ノ鬼二匹トー!対峙!炎柱トー!共闘ヲシテイル!最後ニ確認シタ限リー!二天柱ハー!トテモ重症!重症!至急治療スル準備ー!準備ー!」

 

鴉からの伝達を受け、屋敷は今までになく荒れていた。

 

--宮本武蔵さんが上弦の鬼と対峙し、重傷を負った--

 

絶対死なせない為に、任務に出たばかりのシノエ君も急遽呼び戻されており、どんな傷を負っていようともすぐに治療できるだけの準備をしていく。

 

他の患者もいるにはいるが、それら全員を後回しにし、必要になるであろう薬を片っ端から用意していく。

 

「続ケテ伝達!鬼ハ追イ払ッタ!炎柱ガ二天柱ヲ背負イ此方へ向カッテル!モウスグ!到着!到着!推測、アト20分!」

 

「しのぶさん!玄関壊します!」

「構いません!」

 

シノエ君は玄関を、正確には扉のみを蹴って破壊した。

いつでも入れるようにとのことだろう。

 

シノエ君は西洋医学という道具を、片っ端からとある一室に運び込む。そこには大量の沸騰したお湯が用意されていたが、この辺はシノエ君の専門だから私はよくわからない。

 

「きよちゃん、なほちゃんはありったけの布を、とにかくあるだけ用意!すみちゃんはとにかく沸騰した湯を作って!アオイは器具を布含めて全部お湯潜らせて!カナヲはアオイを手伝って!」

「「「はい!」」」「わかりました!」「は…はい!」

 

シノエ君がここまで大声で喋るのも本当に珍しい。よほど焦っている証拠だ。

 

「失礼!胡蝶殿!武蔵殿を助けてほしい!」

 

「煉獄さん!土足で構いませんのですぐに此方へ!」

 

「うむ!」

 

それから半刻(一時間)ほど経つと煉獄さんの声がする。

武蔵さんは遠目から見ても重症なのがわかる。

 

「吐血とかはしていましたか?」

「うむ!とにかく事あるごとに吐血していた!鬼の話では血鬼術を吸って肺胞が壊死しているとか言っていた!他目立った外傷は右眼と左腕だ!」

「ありがとうございます。敵の鬼は毒などを使っていたりは?」

「毒の類ではないと思われる!」

「わかりました」

 

今まで幾度となく重症な隊士を見てきたが、今回の武蔵さんはカナエ姉さんと並ぶくらいに群を抜いて重症だ。生きているのが不思議なくらいに。

 

「煉獄さん!ここから先は入らないようにとのことです!」

「う?うむ!承知した!」

 

シノエが作った手術室なる部屋の前で煉獄さんには止まってもらう。そして武蔵さんを代わりに受け取り中に入る。

 

「シノエ君!連れてきました!肺、右眼、左腕が特に重症です!」

「わかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

それからの一刻半(三時間)は本当に大変だった。

 

一瞬も気の休まる時がなかったし、武蔵さんの呼吸が止まった時は本当に血の気が引いた。

 

だけどシノエ君の奮闘のおかげでなんとか治療は終わり、規則正しい呼吸を繰り返していた。

 

が、右眼はほぼ確実に失明。

左腕は何でも肩の神経が死んでいるらしく、二度と動かない可能性が高いとのことで、治す技術はシノエ君も持っていないらしい。

 

肺に至ってはかなりボロボロで、しばらく…少なくとも一年は絶対安静。全集中の呼吸を使って戦うなんてもってのほか、という診断結果になった。

 

シノエ君は絶対に薬が足りなくなるからと調達に向かい、煉獄さんは煉獄さんで軽傷とは呼べない程度に怪我を負っているので治療がてら休んでもらった。

 

アオイやカナヲ達も、流石に疲れたのかみんなで同じ部屋にて寝落ちしていた。

 

「…はぁ、疲れました。本当に…」

 

麻酔は切れているはずなのに未だに目を覚まさない武蔵さんを横目に思う。

 

事あるごとに振り回されて、屋敷の食料は食い尽くしてしまうし。道場は壊されてしまうし。患者の取り扱いが雑すぎるし。

 

せっかく貰えた非番も、結局息抜きも何も出来なかった。

武蔵さんのためにと用意していた、彼女の大好物のおうどんも無駄になってしまいました。

 

 

 

私には、命に代えてもなんてのはやめろと言う癖に、貴女やるんですね。

好きな殿方と共に生きる為に、必ず、泥水を啜ってでも生き残ると言っていたのに。

 

 

一体どの口が『生き残ったもん勝ち』なんて言ってるんですかねぇ。本当に。

 

 

 

「……本当に、本当に心配しました…。また、大切な方を失うのかと…。

 

 

 

「ヒナァ!」

 

 

 

突然、だれかが大声をあげて入ってきた。そういえば扉は開け放していたかしら?

 

「……びっくりしました」

「っと、すまねえ。もうとにかく焦っていたもんで…。お久しぶりです胡蝶しのぶ殿。お元気そうで何より」

 

入ってきたのは両腕がなく、左眼に眼帯をしている6尺(180センチ)は超えてる上背のある黒髪短髪の男性。

たしか…

 

「いえ。此方こそご無沙汰しています。7代目宮本武蔵さん。その節はお世話になりました」

 

「やめいやめい。俺ァもう宮本武蔵じゃねえんだ。今の宮本武蔵はヒナだ。だから俺のことはレンと呼んでくれ。それはそうと…ヒナ。無事だったんだな…よかった」

 

7代目宮本武蔵さんもといレンさんは武蔵さんの顔を見て安堵していた。

それはもう、本当に心の底から安堵しているのがわかった。

 

「胡蝶殿、お疲れの所大変申し訳ないんだが、ヒナの容態を聞いても?」

 

「はい。勿論です。特に酷いのは右眼、左腕、肺になります。右眼は失明し、左腕はなんでも動かすための神経が死んでいるみたいです。肺は相当ボロボロになっています。他は全身打撲に脚骨折、肋も数本やられてます」

 

「そうか…。命に別状はないんだよな?」

 

「ええ。それは大丈夫です。…いつ目を覚ますかはわかりませんが」

 

「なるほど。ヒナを治療してくれたのは胡蝶殿だけで?」

 

「いえ、私だけではありません。シノエ君…私の同期の子と他2名の隊士、それとこの屋敷に住んでいる子達が治療の手助けを。他に炎柱の煉獄杏寿朗さん、後は竈門炭治郎という隊士のお陰で助かったようなものだと聞いています」

 

「そうか…。幸運だ。こんなにもヒナが恵まれている。本当に…幸運だ。…その治療をしてくれたシノエ殿や2名の隊士達というのは…」

 

「シノエ君は今は薬の調達に行っています。2名の隊士はこの屋敷で今休んでいます。呼んできましょうか?」

 

「そうだな…お願いしてもよろしいかな?」

 

「はい」

 

レンさんの要望によりアオイとカナヲ、きよ・なほ・すみの三姉妹を呼びに行く。

アオイは特に疲れていたのに嫌な顔せずきてくれた。けど相手が7代目宮本武蔵だというのを伝えるとあからさまに緊張していた。

カナヲはよくわかっていなかった。きよ、すみ、なほの3人は宮本武蔵と言う名前に少し興奮していた。

 

まあしょうがないわね。

 

 

 

 

「レンさん、連れてきましたよ」

 

「おう、恩にきる」

 

レンさんの元へ連れてくるも、それはもう大変だった。三姉妹はレンさんを見た瞬間に興奮は即座に冷めて怖がり、カナヲも珍しくガチガチに固まってレンさんを見上げていた。アオイも言わずもがな。

 

それを見たレンさんは「あぁ…」と何かを思い浮かべ、その場に正座した。目線の高さは確かに低くなったが、それでもまだ大きく感じる。

 

「怖がらせてすまねえな、お嬢ちゃんがた。菓子はいるかい?この腰の袋に入ってんだ。ヒナもよく屋敷で食ってたやつでな、ちょこれいとだとか、カステラだとか。ほれ、好きに取りな」

 

腰についていた袋を、座ったまま腰を切った?のか宙に浮かせてきよちゃん達のところに落としていた。……器用すぎる。

きよ、すみ、なほの3人は袋の中にあるお菓子に夢中になり、よほど美味しかったのか声にならない歓喜の声をあげていた。

 

「っと、話がズレちまったな。来てもらったのは他でもねぇ。

 

しのぶ殿、アオイ殿、カナヲ殿、きよ殿、なほ殿、すみ殿。

此度は俺の愛娘、ヒナを助けてくれて感謝する。本当に、ありがとう」

 

全員がきちんと正座したのを見計らい、レンさんは頭を下げた。

 

「本当ならそれ相応のお礼をしたいんだが生憎今は金やらなんやらの手持ちが一切無くてな。また後日伊織にでも持って来させる」

 

「いえ、お構いなく。元よりここは治療をするための屋敷でもあるのですから」

 

「いいや、それだと俺の気が収まらん。いくらこの屋敷が隊士の治療施設とはいえ、それは胡蝶殿達がいるからこそだ。貴女達がいるからこそ、鬼殺隊は鬼殺隊たりえる。だから、受け取れるもんは受け取ってくれ」

 

「……。わかりました。では、お言葉に甘えますね」

 

「あと、非常に勝手な物言いしてるのはわかってるんだが、しばらく泊めて貰えるだろうか?せめてヒナが目を覚ますまでは。無論、この屋敷の迷惑にならないよう心掛ける」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「感謝する」

 

 

 

 

武蔵さんを見るのを三姉妹に任せ、レンさんをベットのあるところまで案内する。確かこの部屋が一つ空いていたはずで…」

 

「あ、煉獄さんと炭治郎君も確かこの部屋ですね」

「そうなのか?そりゃ好都合だな」

 

部屋に入ると煉獄さんは既に起きていた。炭治郎君はまだ寝たきりではあるが目は覚ましているようだった。

にしても我妻善逸君?こちらが大変だったと言うのに、また食料を無断でとったんですか?いい度胸ですね?伊之助君は…寝てますね。

 

「レンさん、こちらが煉獄杏寿朗さんでこちらが竈門炭治郎君です」

 

「君たちが…。どうも。元が付いちまうが、7代目宮本武蔵だ。だが今はもう隠居して名も譲った身だ。だから俺のことはレンと呼んでくれ」

 

「こちらこそ!お会いできて光栄です!」

「こ、こちらこそよろしくお願いします。その…寝た状態ですいません」

 

「構わん構わん。お二人さんも深い傷負ってんだろ。まだ安静にしとけよ。それはそうと炎柱殿。先代炎柱の槇寿朗はお元気で?」

「はい!元気にやっています!」

「そうかい。ならこう伝えといてくれ。近々伺うってな」

「はい!」

 

「それと…お二人とも、俺の愛娘のヒナを助けてくれて、感謝する。本当にありがとう」

 

それから暫くかかりそうだったのと、流石にちょっと休憩したくて放っておいた。

 

 

 

 

夜、検査のために煉獄さん達の様子を伺いに行く。

扉に手を掛けたところで中で話している声が聞こえ、思わず耳をすませて聞いてしまった。だって…聞き間違いじゃなければ……。

 

「本当なら俺が助けに行ってやるべきだった。どのみち俺ももう50だ。老い先短い。ヒナの盾になることくらいはできたはずなんだ。だが鴉が来た時、ヒナなら大丈夫だとタカをくくっていた。

その後、再度鴉から伝達が来て己を呪った。ヒナに過度な期待をしすぎていた己を。…そんな勝手な身で虫のいいことを言っているのはわかっている。

 

改めてお願いしたい煉獄杏寿朗!ウチのヒナを嫁に貰ってくれないか!」

 

 

ですよねー!嫁云々の話でしたよね!びっくりしましたもう。

 

 

「何をバカなことを言ってるんですかレンさん」

 

「バカなことではないぞ!煉獄殿の父上とは柱時代に面識があるからな!あいつは押して押して押せばいける!」

「いえそういう問題では無くてですね」

「俺は構いません!元よりそのつもりです!」

「ほらな!」

「……」

 

宮本武蔵一族とはめんどくさい人しかいなかったのだろうか。

考える事をやめて、簡単に診察を済ませ自室へ戻った。

 

 

 

 

 

 

〜半月後〜

 

「ん……あれ……」

「よう。やっと起きたか寝坊助」

「…って!なんで起きて最初の景色が親父殿なの!私を枕にすんな!離れろっ!」

 

「…この分だと心配いらなさそうですね」

 

ずっと寝たきりだった武蔵さんがようやく目を覚まし、その事実にとても安堵した。体の事は心配が尽きなかったが、起きて早々レンさんと口喧嘩をする元気があるならば大丈夫だろう。

 

……にしても、心配したのがバカらしくなってくるほど武蔵さんは元気に騒ぎますね。この人、肺をやられてるはずなんですけど。

 

「だー!何となく重傷負ってここにいるんだろうけど親父殿!離れろって言ってんの!暑苦しい!」

「断る!」

「断んな!」

「俺がどれだけ心配したと思ってんだこのやろう!」

「アンタの心配性を私がどれだけ鬱陶しがってるのかも知れ!」

「何を!ならお前の好きな菓子ちょこれいと買って来んぞ!」

「構わんわ!私一人でも買えるわ!いつまでも子供だと思うなよ!」

 

「はいはい。レンさんはひとまず部屋の外へ。色々とやることがありますので」

「おう!いやぁよかった!本当に…よかった」

 

診察しなきゃいけないし、お館様や他の柱達に知らせなきゃならないし。他にもまだまだやる事は山積みだ。

 

「武蔵さん、体の調子はどうですか?違和感などは?」

 

「うーん、そんな事はないかな。しっかしまぁ、上弦2匹と殺し合って5体満足で生きていられたとは。運が良かったわぁ」

 

「本当、武蔵さんが運び込まれた時戦場でしたからね?」

 

「感謝してます。いやもう、本当に。しっかし、本当に死ぬかと思っちゃったわ」

 

ケロッとした雰囲気で武蔵さんは言うが、どうしても無性に腹が立ってしまった。

 

「ねえ武蔵さん」

 

「ん?」

 

「貴女、今回死ぬ気でしたよね?」

 

「……違うわよ」

 

一瞬黙り、顔も強張ったから本当だろう。それに炭治郎君も生き残ると言う言葉の時に嘘の匂いがしていたと言っているし。

 

「ほんっとうに……、本当に貴女はずるい人ですね。

私には相討ち覚悟なんてやめろと言っていたのに。

あれですか?好きな人を命懸けて助ける私かっこいい、ですか?それはそれは、かっこいいですねぇ。素晴らしくかっこいい自己欺瞞ですねぇ」

 

「うぐ…。そ、その……」

 

バツが悪そうに目を泳がせ、そんな様子を見て少し申し訳なく思いながら自分の抱えてた気持ちを吐露する。

 

「すいません、言い過ぎました。……改めて、本当に、生きててよかったです」

 

「うん、ありがとうしのぶ。私を助けてくれて。…杏寿朗にもお礼言っておかないと。多分連れてきてくれたの杏寿朗でしょ?」

 

「はい。それと治療に一番貢献したのはシノエ君です。彼がいなければ本当に死んでいたかもしれませんから」

 

「なるほど、わかった。シノエにもあとでお礼言わないとね…。あ、それはそうと私の体どんな感じ?」

 

一瞬、伝えるかどうか迷ったが、誤魔化しても意味は無いだろうし、ありのままを伝えることにした。

 

「右眼は恐らくですが失明しています。左腕は肩の部分の神経が死んでしまっていますから、二度と動かさないと思います。また、肺を少々やられていますから全集中の呼吸は暫く控えてください。それと全身打撲に右脚骨折です。控えめに見て全治6ヶ月といったところでしょうか」

 

「かーー!やっぱ左腕もうダメか!二刀流どうやって続けよ……」

 

……。ああ、レンさんの言う通り本当に刀を持てるかどうかの心配でしたね。

 

「ま、起きたばかりでそこまで元気なら良いです。私はお館様や他の心配していた柱、隊員に武蔵さんが目を覚ましたことを伝えてくるので。いいですか?絶対安静です。起きる時も必ず誰かを呼んで付き添ってもらってください」

 

「はーい」

 

 

 

「おーい!ヒナ!お前、煉獄杏寿朗との結婚を決めといたからなー!」

「……?え、ちょっと待って親父殿。もう一回。もう一回言って。聞き間違い?」

「え?だからお前と煉獄杏寿朗との結婚を決めといたぞ。心配するな、杏寿朗殿も乗り気だし向こうの父親にも言ってある」

「なにしてくれてんじゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

宮本武蔵一族とは本当にめんどくさい人しかいないのだろうか。




大正コソコソ噂話
シノエは西洋医学について、本格的に学んだわけでは無いけどかなり精通しているよ。本人の担当は主に外科。神経縫合などは流石に習得していないみたいで、今回の武蔵ちゃんの腕は治せなかったみたい。

武蔵ちゃんと対峙した上弦の鬼達、参はちゃんと鬼舞辻に報告に行ってるんだけど弐はそのまま帰ったよ。なお上弦の参はマジギレだった。

リメイクするなら

  • 今ある話を直に修正していく
  • 新しく一から作り直す
  • やる必要ない
  • いいから続きを書け
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