・8代目ってどんな人?
そうですね、メリハリがよく付いている方かと。よく遊びよく鍛錬しよく寝ています。まあ遊び過ぎていますが。
それでも剣と生き残ることに関してはとても真面目な方ですよ。あの方、他人を助けるのにも自分が生き残るという前提があるほどですから。とにかく自分の命第一なんです。
あの方が自分の命を考えないときは、よほど大切なものを守る時なのでは?
注)煉獄さんの口調など頑張って考えましたが多分、煉獄さん好きな方にとっては受け入れられないかもしれません。私の力不足です。すいません
武蔵殿があそこまで焦っているのを見たのは初めてだった。
だがそれ以上に武蔵殿に足手纏いと思われたのがとても悔しかった。
確かに鬼と同化した列車が脱線し無理矢理死人を増やそうとした際に相当消耗し、その後急襲してきた上弦の参と戦った時に負傷した。
それでも共に戦えると思って昂ぶっていた己がいた。
だが現実は非情だ。武蔵殿にも自分一人の方がいいと言われ俺は逃げに徹することになった。
蹴り飛ばされその勢いで竈門少年を拾い上げ今度は列車の方に行く。普通の人も沢山いるからそれらも助けなければ。
「まっ…まってください!煉獄さん!武蔵さんを…助けないと!」
「無理だ!竈門少年では足手纏いだ!無論俺もだ!だが心配するな!武蔵殿は何があっても生き残ると豪語していたからな!今回もきっと…」
「違うんです!武蔵さんから
「何⁉︎」
「武蔵さんと煉獄さんが…話してた時、覚悟を決めてたのと…嘘の匂いが…きっと武蔵さん…」
「むぅ…だが君たちをまずは安全な場所に避難させる。俺は武蔵殿を信じる!きっと俺が戻るまで耐えてくれるとな!案ずるな!きっと俺が助ける!」
そうと分かれば早く武蔵殿の助太刀に行かねば!
「竈門少年!匂いで乗客のいる場所を教えてくれ!君は動くと致命傷になるからな!
「は、はい!」
「うおお!まかセロォ!」
むむっ、思った以上に時間がかかってしまった。一番近場の村に避難は終わった。早く武蔵殿の所へ加勢に行かなければ。
「皆はここで待機だ!鴉を二天屋敷と蝶屋敷へ飛ばしてくれ!8代目宮本武蔵殿が危ういとな!では!炎の呼吸・壱ノ型『不知火』!」
壱ノ型を使い武蔵殿の元へ駆ける。1分と経たずに武蔵殿のいた場所が見えてくる。
轟音が鳴り響いているということはまだ戦っているということだ!
再度壱ノ型を繰り出し加速すると武蔵殿を視界に捉えることができた。が、鬼に攻撃をされかけていた。
「炎の呼吸・弐ノ型『昇り炎天』!」
上弦の参の拳を最初に縦に真っ二つに斬ってやった技で今度は横から肘に命中させ斬り落とす。
「武蔵殿!」
「むむっ!あの柱も帰ってきたぞ!これは殺すチャンスじゃないか!なあ猗窩座殿!」
「黙れ」
「…っ!杏寿朗、なんで戻ってきたのよ…ゲホッ」
武蔵殿は明らかに重傷を負っている。血を吐き、右眼が負傷していて武蔵殿の特徴でもある青い道着も赤く染みていた。左腕も少々変な歪み方をしている。
「竈門少年がな!武蔵殿が嘘をついていると言っていた!嘘の匂いがするとな!だから戻ってきた!貴女を死なせるわけにはいかないからな!それに俺に愛を伝えておいて先に死ぬなど俺は許さん!」
そう伝えると余計に武蔵殿の顔が赤くなった。むう、余計体調を悪くしてしまったか?
「ふー。まあ来たのはしょうがないわ。どうせ戻ってくるでしょうね、とは思ってましたから。…せっかくいい雰囲気だけど、まずは目の前の鬼を滅殺しましょう。炎柱・煉獄杏寿朗」
「うむ!もちろんだ!武蔵殿は殺させはしない!貴女も守ってみせよう!」
「守るのは私だったはずなんだけどね…ゲホッ!がほっ…」
「む!大丈夫か!」
さっき血を吐いていてまた血を吐いた。内臓を痛めているのか?
「ゲホッゴホッ…大丈夫よ。……杏寿朗、私に命を、預けれる?」
「無論だ!元よりそのつもりだ!それに、だ。かの宮本武蔵と肩を並べて戦えるというのは素晴らしいことだ!特に俺は貴女を心の底から尊敬している!柱は皆を尊敬しているがその中で1、2を争うくらいにな!
思ったことをそのまま伝えると余計に顔が赤くなる。む、やはり血鬼術をかけられている?
「それくらいにしておきなよぉ。その子、悶えて死んじゃうぜ?」
「杏寿朗、気が変わったか。鬼になる気になったか?ならその女など放っておいてこっちに来い」
「断る!それに俺は君たちが嫌いだからな!…さて少しは回復したか?武蔵殿」
「ええ、ゲホッ。まだ内臓は痛むけどね。しのぶから貰った麻酔が効き始めたからいけるわ。……まあでも、右眼はもう見えないでしょうね。けれどもシノエに貰った
とっておき?シノエとは確か新たに柱になった少年の名だな。もう仲良くなったのか!
「鬼にならないならお前も殺す。柱を二人も葬ったならばあのお方も喜んでくださるだろう」
「さあさあ!いくぜ俺と猗窩座殿の息のあった攻撃!武蔵ももうちょっとは頑張ってくれよ!まだ見せてない型もあるだろう!型が4つなんて少なすぎるからね!もっと俺を楽しませてくれよ!」
「杏寿朗、私が伍ノ型使うときだけ、離れてね。味方すら巻き込みかねない技だから。それ以外は…私のことなんか気にするな。思う存分、好き勝手に暴れて。私が補助するから」
「承知した!俺は!俺の責務を全うするとしよう!では…参る!」
まず先に狙うは上弦の弐。こちらは呼吸と相性最悪とのことだ。こちらから狙うべきだ。その間は武蔵殿が参を抑え込む。
しかし…のらりくらりとよけられる。
「炎の呼吸・肆ノ型『盛炎のうねり』」
「わあ!炎の呼吸の使い手は初めてだよ!楽しませてくれよ!」
一気に距離を詰め、渦を巻くように剣撃を叩き込む。上弦の弐は少し驚いた表情を見せただけで氷のようなもので壁を作られた。
それを叩き割ると急に氷?が解けた。
「杏寿朗!それを吸うな!」
「お前は俺に集中しろ、宮本武蔵!」
武蔵殿の声でとっさに壱ノ型を真後ろに向けて使い吸うのを回避する。
「まだまだいくよぉ!そーれ!血鬼術・粉吹雪!」
「炎の呼吸・伍ノ型『炎虎』!」
血の吹雪を繰り出してきて伍ノ型で相殺する。
「二天の呼吸・参肆混合ノ型クズシ『霞阿修羅ノ舞・暴風』」
「お!すごいすごい!味方の邪魔をせずに的確に俺の血鬼術だけを吹き飛ばしたね!しかも猗窩座殿と戦っていたというのにまるで気配がなかった!さっき2対1で戦ってた時もそうだね!急に気配が消えた!いやー本当にすごい!」
押されかけたところで武蔵殿がきて血鬼術を共に吹き飛ばしてくれた。
武蔵殿がきたということは上弦の参は…。
もしや倒したのか!
「むー猗窩座殿は何してるんだい。もしや俺と共に戦ってくれるのか!」
「無駄よ。あいつ今頃夢見てるんじゃない?」
上弦の参をみると頸を切っていたわけではなかった。しかし、様子がおかしい。拳を振るってはいるが何もいないところに振っていて、一人で戦闘を起こしてる?みたいで、時々足がもつれている。
「むむっ、もしや毒かい?でも普通の毒であんな風にはならないと思うけどなぁ。どんな毒を使ったんだい?」
「教えるとでも思う?ゲホッ…はーぁ、こうしなきゃならない自分に腹がたつ。かっこよくお前ら全員の頸を斬れたらいいんだけどね」
「無理はするな武蔵殿!俺がきた時より傷が深くなってるのがわかるぞ!」
「うんうん、それに俺の血鬼術で肺胞がそこそこ死んでるはずだから息をするのもつらいよね!血が肺に入ってゴロゴロしてる音がするよ。辛いよね。だから…俺が救済してあげるよ!」
「はっ、看取られるならお前じゃなくてお館様に頼むわ。誰がお前なんかに。…杏寿朗、ちょっとだけ、1分だけ時間稼いでくれない?なんなら倒してくれてもいいんだけど」
「承知した!任されよ!」
武蔵殿がそういうからには一撃必殺の技があるのだろう。ならばそれを信じて時間を稼ぐだけ!
「じゃあ、任せたよ。杏寿朗」
武蔵殿が納刀し仁王立ちをしたのを見て上弦の弐に攻撃を仕掛ける。
まずは壱ノ型『不知火』で距離を詰めると同時に今度は肆ノ型『盛炎のうねり』で追撃する。
「1分だね!ならその間に倒すよ!頑張るぞお!」
「させん!お前は俺が倒す!」
そう意気込んだものの、あと一歩が届かない。
そして相手は氷の粉を散布してくる。着実に動ける場所をなくしてくる。
「なら…纏めて抉るだけ!炎の呼吸・奥義…」
「猗窩座殿ー!いつまで幻覚見てるんだい!早くこっちを手伝ってくれよー!」
上弦の参は意識を取り戻しかけている。先にやらねばこちらがやられる。
「玖ノ型『煉獄』!」
「あーーもう!血鬼術・冬ざれ氷柱!」
灼熱の業火のように猛進し、上弦の弐に迫る。
氷柱が落ちてくるがそれを意に介さず、多少傷を負おうとも必ず斬る!
鬼は血鬼術で止まらなかったのが意外だったのか少し初動が遅れていた。
「破壊殺・乱式」
だが、届く直前に横から衝撃派が体を叩いた。
これは上弦の参か!くそ、あと僅か…だったのに。
「が…」
急に吹き飛ばされた為、受け身が取れず背中から岩に激突してしまう。肺の中の空気が一気に出たような感覚になり、息が一瞬できなくなる。
「猗窩座殿!いいタイミングだったよ!ありがとー!危うく斬られるところだったぜ!」
「はぁ…くそ。変な毒だった」
「はぁ、はぁ…」
「宮本武蔵の方はどうしたんだい?」
「あいつにもやっておいた」
武蔵殿の方になんとか首を回し見ると、仁王立ちしているのは変わりない。だが明らかに傷がより深くなっている。頭からも血を流し、生気が感じられない。まさか……
「貴様ぁ!」
「ふん、あのような女にかまけるからだ。くだらない。そんなだからお前は至高の領域にたどり着けないんだ杏寿朗」
「おいおい待ってくれよ!あの宮本武蔵を追い詰めてたのは俺の血鬼術だぜ!偶々猗窩座殿がトドメを刺しただけだよ!猗窩座殿の手柄みたいにするのはやめてくれよ!」
怒りで体を無理やり起こそうとするも上手く動かない。
脚をやられたせいか。
だが!
「ものはついでだ!君に逃げられても困るし脚を凍らせておこうか!」
「やめろ。それでは意味がない」
「えー?意味って?」
「ぐぅ…!」
脚を無理やり動かそうとすると出血が酷くなる。
「だが…武蔵殿を殺した罪は!ここで償ってもらわなければ困る!」
そうだ、俺のせいで武蔵殿は死んでしまったも同然だ。だからこそ…
「何を言っている?弱いのが悪い。戦国の世から我ら鬼を脅かした一族と聞いているが…あれでは拍子抜けだ」
「まあそこまでしたのは俺の血鬼術のお陰だけどね!ちょっとめんどくさかったけど本気の宮本武蔵は中々強かったよ!今まで戦った柱の中で一番だ!でも死んでしまったね!これは次の宮本武蔵に期待するしかないな!」
「いつか万全の宮本武蔵と戦ってみたいものだ」
俺のことなど気にせず二匹の鬼は喋り続ける。二匹にとって俺はもうすでに脅威ではない、ということか。
それでも、ここで鬼を討ち取らねば…武蔵殿の家族に合わせる顔がないではないか!
「まあまあ猗窩座殿!喧嘩する前に先に柱は確実に殺しておこう!」
「それだけには賛成してやる。杏寿朗、これが最後だ。鬼になると言え。そうすればお前は生き残れ、剣技を極めれる」
上弦の参は再度俺に鬼になれと言ってくる。
だが答えなど決まっている。
「断る…!俺は、鬼にはならない!」
「そうか、ならば…死ね」
目の前まで上弦の参が迫ってくる、刀を振るおうとすると腕が凍った。上弦の弐の血鬼術か。万事休す…か。
「二天の呼吸・
その瞬間だ。急に鬼二匹が袈裟斬りにされた。頸を切り落とすには至ってないが、それでも体を真っ二つに斬り裂いた。
「たっく…誰が死んでるって?死にかけに間違い無いけど。にしても…陸ノ型すら僅かに逸らされた。逆八文字にしてやる技なのに…。しかも上弦の参のせいで片腕もう使い物にならないじゃ無い。…で、杏寿朗は…大丈夫そうね。よかった…」
「う、うむ!俺は良いが…武蔵殿はもう動いてはダメだ!」
それは死んだと思っていた武蔵殿だった。だがもうどう見ても死にかけだった。
文字通り死ぬ気で鬼を斬ってくれたが、もう回復しつつある。
「武蔵殿!早く逃げるんだ!」
「大丈夫よ。もうどちらにしろ終わりだから」
「それは?」
「ほれ、鬼どもはもう私たちに構ってる余裕なんてないわよ」
手の氷を砕いてくれて鬼が回復してるのに目もくれず武蔵殿が指したのは東の方角の空。そこには、僅かに陽の光が見えてきていた。
「わあやばいよ不味いよ!早く逃げなきゃ猗窩座殿!」
「黙れ!わかっている!」
鬼二匹は陽の光に当たらない場所へ焦って逃げ出した。鬼を狩れなかったのは非常に不本意だが…。
「えー、逃げんのあんたら?こんな死にかけ柱二人残して?卑怯者ねぇ。いつだって鬼殺隊はあんたらに有利な夜に戦ってるってのに。生身の人間が、失った手足の戻らないただの人間が、なんの能力も持たない只の人間が、奇天烈な技を使うお前達と、回復能力に長けたお前達と戦ってる。
お前達は得意げに人間を殺すが…お前達がやってるのは道端に転がる虫を殺して粋がってるだけの、ただの醜いバケモノだ。
だが、人間をなめるなよ、バケモノ。私たちは、常にお前達の頸を狙っているぞ」
とても通る声で、大きな声で逃げてる鬼に聞こえるように、言い放つ。それと同時に夜が明ける。
「……」
「武蔵殿!」
武蔵殿が倒れたのもまた、同時だった。当たり前だ。あんな状態で立っていたことの方が奇跡だ。
「絶対に死なせはせん!待ってろ!すぐに蝶屋敷に連れて行くからな!」
最低限の止血を施し、背負って蝶屋敷へ向けて走った。
どうか生きてくれ!
大正コソコソ噂話
上弦の参に使った毒はダチュラという植物の花だよ。
ある火星に行く漫画を見てる方にとってはチョウセンアサガオの方が聞き覚えがあると思うよ。
本当は武蔵ちゃん死亡ルートをこの作者は最初に作ってたよ。
でも煉獄さんと関わらせたことで何とか強引に生き残れないかな、と模索してたよ。
次は誰目線がいい?
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宮本武蔵
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胡蝶しのぶ
-
竈門炭治郎