「アルディスはどう思う?」
ミノタウルス戦の翌日、俺がダンジョンからホームに戻ってくると、ランクアップが可能になったベルさんから、発展アビリティについて相談を受けた。
選べるのは三つ、耐異常と狩人と幸運。原作通りで内心ホッとしながら、ベルさんとヘスティア様から説明を受ける。
まあ、原作を知っている人間からすれば、選択肢は一つだ。
「わたしは幸運のアビリティですね」
「お、アルくんもか!」
「うーん……」
俺の言葉に喜ぶヘスティア様。悩むベルさん。
なので、俺は助け船を出す。
「とは言え、今後の冒険者としてどう言うプレイスタイルを目指すのか、それを決めるのはベルさんです。アドバイザーのエイナさんにも相談した方が良いかと思いますよ?」
「あ、そっか」
俺の言葉にどこか納得したベルさん。
そして、ヘスティア様が首を傾げながら、俺に問いかけてきた。
「アルくんプレイスタイルって、なんだい?」
「え、あ、ああ、ええっと。どう言う風に戦っていくか、理想ですね。わたしの場合は力と耐久のアビリティの伸びが高いので、最終的にはロキファミリアのガレスさんに近い形になるかと」
「アルくん、エルフなのに……」
だぁー、涙を流し始めるヘスティア様。
いや、仕方が無いじゃないですか。俊敏のアビリティが伸びなくなってきたんですから。
最初はバランスの良い魔法戦士を目指すつもりだったけど。
力=耐久>器用=魔力>俊敏の順番になったのだから。
「あ、そうだ。アルディス」
「はい、何でしょう?」
「リリはどうだった?」
「ええ、今日も元気でしたよ。ペアでウォーシャドウ狩りをしていました」
キラーアントでも良いけれど、あれはハンマー系でないと武器の消耗が大きい。
関節部分を切り落とすのは問題ないけれど、数が多いからリリがいることを考えると、数が少ないウォーシャドウの方が安全で効率が良い。リリを怪我させる訳にはいかないし。
最近では俺は新米殺しキラーとか呼ばれ始めた。最初の頃は他の冒険者から少し引かれていたけれど、俺が見慣れてきたのか、普通にすれ違った時に「お疲れ」とか「よっ」とか挨拶されるようになった。
地道に挨拶とか手助けしてきたお陰だね。もちろん、誰でも助けているわけではない。
MMORPGのように危なそうな時は「手伝おうか?」と声をかけて助けを求められた時だけ、手助けしているし、助けた後に文句を言ってくる冒険者も居る。そういうのは見かけたら距離を取る様にしている。
マナーは大事。
「復帰するまでは、わたしがリリと組みますから、安心して下さい」
「ごめんね。アルディス」
「いいえ、わたしとしても、腕の良いサポーターが居ると心強いですから」
ベルさんは今は休暇だ。格上のミノタウロス撃破したたばかりで疲労もあるだろうし、装備もない。冒険は暫くお休みだ。で、ベルさんが休みなら、リリは世話になっているノームさんの所で手伝いをすることになるのだが。
それはそれで問題は無い。ノームさん良い人だし。
でも、今後のことを考えるとやっぱり、少しでもアビリティを上げた方が良い。と言う訳で、リリは俺とダンジョンへ、それと別れる最後の三十分ほど。お互いに金属盾を持って、お互いにぶつかり稽古をした。
リリのことを考えると耐久と俊敏、器用なら上げることが出来るかもしれない。
その中で、俺が手伝えるのは耐久だろう。リリと話し合い、弱いなりにアビリティを上げることを提案した。ベルさんの成長速度を考えると、焼け石に水でもアビリティを上げておかないと、中層以降はサポーターとして連れていけなくなると俺が告げると、リリもランクアップをしていないが、ベルさんの強さを知っているので、俺の提案を受けた。
ただ、アビリティの更新については、金が貯まり次第。交渉をして脱退する。ということになった。現状はそれ以外に方法が無いし。原作を考えれば暫くは放置だ。
とリリに関してはしばらくアビリティ訓練をするだけにしておく。
盾でのド突き合い。それと眠る前にはひたすら魔法を使う様に言っておいた。
俺が帰りに無意味なほど連続でセイント・ランスを使っているのは魔力上げだとリリも知っている。
微々たるものでも毎日使って合計すれば、結構な数値になるからね。
「しばらくは、ベルさんは休んで下さい」
「うん、本当にごめんね。アルディス」
「お気になさらずに」
俺はそう言って、装備を脱いで。シャワーを浴びた。
△▼△▼
さて、今日はアウラさん達とリリ(狼人姿)の六人でダンジョンへ。
あ、ちなみにメンバーは、前衛は俺と盾持ち片手剣戦士の潔癖エルフさん。両手剣戦士のクールエルフさん。後衛は魔法使いの年下好きなおっとりエルフさん。ヒーラーのアウラさん。サポーターのリリだ。
アウラさん達は常に三、四人で行動している。
ちなみに遠征(ギルドのノルマ)は終わったばかりなので、精神的に余裕があるそうだ。
「ハードアーマードを一撃ですか、流石ですね」
「いえ、これは武器のお陰ですよ」
ダンジョンの11階層。最初の戦闘で出てきたモンスターの群れの最後の一匹、ハードアーマードを鎚で叩き潰すと、アウラさんがちょっと呆れた様子でそう言った。
ガチャガチャと色気の欠片もない白い重鎧を着た俺はちょっと苦笑い気味に、持っている鎚を掲げた。
見た目はモンスターハンターに出てきそうなデザインの金属製の両手で持つタイプの大ぶりなハンマーだ。
流石にモンハンに出てくるような大きさは無いが、それでも俺の○0歳が持っていると不釣り合いな大きさだ。
恩恵と力のアビリティが無かったら、まず持つことは出来ないだろう。
俺が戦いで振り回せる重さにしている。
「どんどんエルフっぽくなくなってきますね。アルディス様」
「うん、実用性重視ってことで」
リリに言われて、俺がそう言うと皆苦笑いを浮かべた。
動きは遅いが、ゲームの時の経験のお陰で最小限の効率の良い戦いで、アウラさん達から「相変わらず隙のない戦いですわね」と称賛された。
地味にゲームの経験って、チートだよね。
そして、黙々と戦闘を続け、少し休憩しようということになった。安全地帯に移動すると、ふとアウラさんが何かを思い出したかのように呟いた。
「そういえば、そろそろ神会でしたね」
「ああ、そう言えば、今回はどんなすごい二つ名が生まれるのかしら?」
潔癖さんとアウラさんがそんなことを言った。
安全地帯でもモンスターが来る時もあるから、実は油断できないけれど、アウラさん達は話ながら、周囲をしっかりと警戒している。
「前回も素敵な二つ名が沢山ありました。【闇夜の聖歌】や【氷結の触れ得ざる堕天使】など」
俺は意図的に情報を仕入れなかった前回の神会の二つ名を聞いて戦慄していた。
神会でヘスティア様がロキにせっつかれて、面倒なことになるはずだ。
もちろん、原作通りに神フレイヤが介入してこなかった時の為の対応策を紙に書いて渡しておいた。だから、問題はないと思う。
神フレイヤが俺という存在がある状態で、どう動くか分からないけど。
たぶん、大丈夫だとは思う。
「アルディス様は、どう思いますか?」
「え、えっ?」
「二つ名ですわ、アルディス様はハイエルフです。きっと素敵な二つ名が送られる筈ですわ」
アウラさんに、話を振られて、内心焦る。ああ、それは考えないようにしていたのに!!
要らないよ。二つ名なんて! と言えたらどれだけ楽か。
「そ、そうですね。その時になってみないと分かりませんが、わたしは無難なモノでいいですね」
ぎこちなく俺は笑う。
どうすっかな、二つ名。Lv.4くらいなら、根回しとか敵に回したら恐ろしい。と言えるけれど、俺がLv.2になった直後では、根回しや脅しは意味が無い。
……今は耐えておくか。
「あ、少し何か食べましょう」
「はい、アルディス様」
狼人に変身しているリリに言って、俺は軽食を出してもらう。
ま、今から悩んでもしょうがない。今は、戦って経験値を習得して強くなる為に頑張るだけだ。チートスキルは歓楽街にでも行かないと使えないし。
使う訳にもいかない。
けれど、本当に歯痒いな。
お久し振りです。
ループモノの主人公みたいな気分です。
何回やっても、何回やっても、フィルヴィスさんが!!・゜・(つД`)・゜・
なので、アルディスにはベル君以上に……?
それと、アルディスの二つ名も…………