魔王の妖精聖母は迷宮の奥底へ   作:迷走中

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妖精→幼生→ようせい→幼児→ロリ!!

無理矢理過ぎるかな?

駆け出し鍛冶師のエクレアさんの元ネタは世界な樹木の道具屋さんの看板娘からです。

あ、ちょっと捏造設定が入ります。


効率重視でベル君を待つ。

ビキニアーマーで、ダンジョンに行き、帰ってきたらエイナさんに怒られた翌日。

俺は朝イチでギルドへ向かうと、リヴェリアさんが待ち構えていた。

 

「早起きは感心だ」

 

ニコリともせず、真顔で腕を組んで待っていたリヴェリアさんを見て逃げたくなったが、逃げれば苦行が倍になると分かっていたので、大人しくギルドの個室に連行された。

 

そこから、やれ肌を出すな。無防備過ぎる。ポーションがあるからと言ってソロでモンスターの攻撃をワザと食らって耐久を上げるな。等々。

お説教が終わった時にはグッタリすることになった。

で、最後にハイエルフの見分け方について、教えてもらった。

 

「ハイエルフを見分けるには、いくつかの方法がある。まず耳が他より尖っていたり、大きかったりする。次に髪の色だ。白妖精の王族の祖の髪は私より鮮やかな翡翠色だったそうだ。後は瞳の色だな。そして、魔力の質だ。王族だけが持つとされるエルフ達にこの方が我々の王族である、と思わせる呪いとも言える魔力の質がハイエルフ最大の特徴だ。髪、耳、瞳の色は普通のエルフでも持つ可能性がある。だから、ハイエルフだと一番分かりやすいのは、魔力の質。アルディス、君の場合は他の白妖精の王族にはない特徴がある」

「それは?」

「その虹色の髪だ」

 

実はわたしは異世界のハイエルフです。と言いたかったけど、言えるわけがない。

だって、リヴェリアさん。なんか自信満々でちょっとドヤ顔だし、恥かかせるわけにはいかないだろ。

 

「今は滅多に見ないが、黒妖精族の王族の祖の髪は白銀、光が当たると虹色に輝くと言い伝えられている」

 

まさか、本当に虹色に輝く髪を見れるとは驚いた。とリヴェリアさんは言った。

 

ちなみに、今の黒妖精族の王族は銀髪が多いらしい。

 

「過去に白妖精と黒妖精の王族同士で婚姻をしていたこともある。アルディスの髪はその証だ。だからこそ、気を付けてくれ」

 

幼き同胞よ。と言ってリヴェリアさんは帰った。

 

うーん、やはり面倒な政治とか思想があるみたいだな。

利用されない為に、アビリティを上げてレベル上げしないと。

 

まずは、クエスト探してからだな。

そんなことを考えながら、ギルドのクエスト掲示板の所に移動しようとして、

 

「お待ちしてましたわ、アルディス様」

 

今日は時間があるので、良ければパーティーを組みませんか? とアウラさん達が怒りマークを頭に張り付けて待ち構えていた。

 

結果、リヴェリアさん程ではないが、肌を出すな! と怒られた。

ちなみにビキニアーマーロリハイエルフは、アマゾネス達に「エルフもやるじゃない」と、俺が切っ掛けで興味を持たれたらしく、ビキニアーマーはそこそこ売れることになった。

 

後、一部の特殊な性癖の神々から、俺のビキニアーマー姿は好評で、かなり騒いでいたが。

その話は直ぐに周りに知れわたり、その神々への評価が凄まじく下がったらしい。

ロリコン死すべし。

 

兎も角、今日も頑張って戦った。

アウラさんたちから見ると、かなりハイペースらしいが苦ではない。

 

「弱いままは嫌だから」

 

それに強くならないとヤバイ。

だから大丈夫だよ。と告げると、何故か痛ましいものを見る目で見られた。

この時、俺は忘れていたけど。この身体の年齢は○0歳なんだよね。

辛い経験をしてきたから、人並み以上に強くなろうとする。

うん、大人から見れば「無茶するな」と言いたいし、見ていて心苦しいのだろう。

 

でも、俺は気付かず戦い続ける。

 

それとアウラさん達が、俺に更に優しくする切っ掛けがあった。

それは、ダンジョンでトイレ休憩の時のことだ。

 

「終わりましたよ」

「あ、はい」

「どうかしましたか?」

「い、いえ、その平気ですか?」

「トイレですか? ええ、女性だけのパーティーですし、それに」

「それに?」

 

―――人前でするのは慣れてますから。

 

自然と口から出た一言。

自覚は無かったが俺の顔色が一時的に、かなり悪くなったらしい。

しばらくの間、俺の過去を想像して、憤りを隠せないアウラさん達によるモンスターの虐殺が行われた。

 

その気迫はたまたま近くを通りかかった、冒険者のパーティーがドン引きするほどだった。

 

うん、俺も正直、怖かったよ。

俺が色々あってこの街にたどり着いたの何となく察しているから余計に想像力を駆り立てられるみたいだ。

 

▼△▼△▼△

 

ロキ・ファミリアのホーム、個室が並ぶエリアにロキ・ファミリアの神、ロキが訪れ自室から出てきたリヴェリアに声をかけた。

 

「おー、リヴェリア。例のハイエルフのロリっ子はどないや? 何でもビキニアーマーで街を歩いたらしいやんか」

 

見たかったわー、くねくね体を動かすロキにリヴェリアは溜め息をつく。

 

「無茶もしていたのでな。良く言い聞かせた。あれが中堅ファミリアなら、なにも言わないが……」

「あのドチビのファミリアやもんな。大人がいないしなー。あ、なんならウチで引き取るか? なかなか将来有望みたいやし」

「いや、止めておけ。神ヘスティアに恩がある以上、此方へは来ないだろう。それにハイエルフを二人も抱えるとやっかみを受けるぞ」

 

やっかみなら今更やん、と笑う神。

 

「でも、そろそろ大型ルーキーが欲しいとは思うねん」

 

何処かに落ちてへんかな。と呟くロキに落ちてる訳がなかろう、とリヴェリアに窘められるロキ。

 

「今度、連れてきて!」

「断る」

 

本人は平気そうに振る舞っているが、ロキがアルディスにセクハラして、トラウマがよみがえって倒れられでもしたら、何と詫びれば良いのか、リヴェリアには分からなかった。

 

ハイエルフだからこそ教えてもらった発見時のアルディスの状態は同じ女性として、普段クールな彼女も憤りを隠せなかった。

 

普通なら心が壊れてもおかしくない。けれど、アルディスは何事も無かったかのような様子だ。

 

そして、しばらくして情報を集めて分かったのは、アルディスにとって、あのようなことが日常になるほど行われていたようだったことだ。

 

事情を知るヘスティア、ミアハ、ガネーシャ、ナァーザ、リヴェリア、フィルヴィス、アウラ、シャクティが一度集まり、話し合ったほど。

 

アルディスの精神状態は危ういと、大人達は考えていた。

 

まあ、実際は記憶や身体が覚えているが、中身。心には負担は0なのだが。

 

「だが、レフィーヤには会わせた方が良いか」

「なんでや?」

「アルディスは既に理想の戦闘スタイルを持ち、それを目指してダンジョンへ挑んでいる。更に戦っている姿を見たが、あの年であそこまで流れるように動けるのは異常だ。レフィーヤの良い刺激になるかもしれない」

 

更にリヴェリアは、才能はアイズ以上かもしれない。とロキに告げた。

それを聞いたロキは悔しそうにしていた。

 

「今は小さいが、ヘスティア・ファミリアが大きくなった時の為に、縁を結んでおけば損はないだろう」

 

フレイヤ・ファミリアとは、睨みあっている現状。

不要な敵を作るつもりはない。

あのハイエルフの少女は、自分達の居る場所まで上がってくる可能性は高い。

その時にフレイヤ・ファミリアと睨み合っている横から殴られる可能性は少しでも減らしておきたい。

幼い同胞が放っておけないのもあるが。

 

「ロキ」

「なんや~」

「神ヘスティアと喧嘩は良いが、抗争は止めてくれよ」

「せーへん、せーへんよ」

 

弱いものイジメはすきやないしな。そう言ってロキはその場を去った。

 

リヴェリアはロキを見送り、一瞬これが神々の言うフラグというやつなのだろうか? と考えて縁起でもないと忘れることにした。

 

▼△▼△▼△

 

 

「ふぅ、終わった」

 

今日はソロの日。

ダンジョンでモンスターの攻撃を受けながら、盾の練習をする。

それと平行して、セイント・ランスの検証を続けている。

改めて、セイント・ランスの特性だ。

 

【セイント・ランス】

 

・武器魔法

・速攻魔法

・神聖属性

・破壊または投擲することで消滅

 

武器魔法は、呼び出してそのまま槍として攻撃、防御にも使える。

速攻魔法はベル君のファイアボルトのように詠唱をしないで発動出来る。

神聖属性だが、火や雷はあるのは知っていた。

けど属性の特徴が分からなかったので調べた結果、この神聖属性が凶悪だった。

試しにゴブリンをうつ伏せに引き倒して、背中を踏みつけた状態で、ゴブリンにセイント・ランスを近づけたのだが、近づけただけでゴブリンが苦しみ出した。

ゲームでは破邪の魔法とも言われていたので、モンスターへの特攻の魔法のようだ。

ゴブリンに穂先を押し当てるだけで、ゴブリンが焼けたようにダメージを受けていた。

最後の破壊または投擲することで消滅だけど。

武器として使う場合は優秀な槍だ。

アウラさん達曰く、レベル1が使う分にはかなり良い武器だと言われた。

予想だけど、レベルか魔力。或いは両方が上がれば更に強くなる気がする。

 

ただ、ゲームではこのセイント・ランスはどちらかと言えば補助的なものだった。

使い方次第では強力な魔法ではあるけど。

 

だから、この魔法が強くなると信じて、俺は使い続ける。

 

「そろそろ、来る時期だ」

 

ベル君がミノタウロスを倒すまでに、俺もレベル2になれるアビリティでないと、ウォーゲームで足手まといになる。

 

頑張れ、俺!!

 

▼△▼△▼△

 

 

その日、ベル・クラネルはオラリオの街に入った。

ダンジョンに出会いを求めてやって来たハーレム願望のある少年は、街に入ってそうそう視線を感じていた。

何だろう? とベルが宿を探しながら街を歩いていると

 

「君、もしかしてベル・クラネルか?」

「え、あ、はい。そうですけど」

 

エルフの青年に声をかけられ、更に名前まで呼ばれて驚くベル。

だが、次の瞬間か、ベルは更に驚くことになる。

 

「かーくほーっ!!」

「ええええええええええええええ!!」

 

突然、エルフの青年に抱き締められたのだ。ベルは咄嗟に叫んだ。

 

「出会いを求めているけど、男性は嫌です!!」

「ば、馬鹿な勘違いするな!」

 

そして、ぞろぞろ集まってくるエルフ達。

ベルは突然のことに驚くが、まとめ役のような老エルフの男性が事情を話してくれた。

何でもハイエルフの王女が自分を探しているらしい。

初めは同性同名かと思ったベルだったが、渡された似顔絵がそっくりだったので、首を傾げながらも案内されたヘスティア・ファミリアのホームへと向かった。

 

「では、ワシはこれで」

「あ、ありがとうございました」

 

ボロボロな教会を見て、人が住んでいるのかと不安になるが、ベルは教会の扉をノックすると直ぐに扉は開けられ。

 

「あ、あの」

「ベル、クラネル?」

 

教会の扉を開けて出てきたのは、輝く虹色の髪を持つ見惚れるほどに美しい、エルフの幼い少女だった。

 

「入って」

「え?」

「入って、わたしはずっと貴方を待っていました」

 

まるで物語の一場面のような状況に、ベルは胸を高鳴らせた。

 

二人はそのままホーム地下室へ入り、ベルはアルディスと名乗った少女に、

 

「お願いです、何でもしますから、ヘスティア・ファミリアに入って下さい!」

「え、ええええええええええええええ!! 何で服を脱脱ぐのっ!?」

 

スタイリッシュに全裸土下座を決められた。

 

「ファミリアに入ってくれないなら悲鳴を上げますよ!!」

「止めてぇっ!!」

 

 

 

 

で、その日の夕方。

 

「それでは、二人目の団員。ベルさんにカンパーイ!!!」

「カンパーイ!」

「か、かんぱーい」

 

二人目の団員と言うことで、仲良くしているデメテル様からもらった野菜を使って鍋にしてみた。ちなみに肉入り、まあ、安い挽き肉で作った肉団子だけど。

 

「さぁ、遠慮しないで食べてくれよ、ベル君。アル君の料理は最高だからな」

「大袈裟ですよヘスティア様。あ、ベルさん、神タケミカヅチからもらった調味料で味付けをしているので、極東風ですが平気ですか?」

「あ、大丈夫だよ、アルディス」

 

和やかな歓迎会を終えて、翌日ベル・クラネルは冒険者になった。

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

ベルきゅんが、冒険者になって数日。

 

ベルきゅんがトマト野郎になって帰ってきた。

狙い通りにアイズさんに一目惚れしたようだ。

よしよし、これで【憧憬一途】が発現しなかったら、歓楽街の素敵なお兄さんズの店にベルきゅんを叩き込んで、ヘスティア様とこのオラリオから脱出するかな。

強いベルきゅんが居ないと七体目を倒せないしね。

 

あ、それと俺もロリだけど、一応は監督責任で怒られたが。

まあ、知ってて一人で行動させたから、甘んじて受けよう。

 

で、ギルドからの帰り道。

 

「ベルさん」

「ん、なに? アルディス」

「アイズさん、凄かったですか?」

「うん! 凄かったよ!! まず」

 

ベルきゅんの語りが止まらなかった。

で、その日の夕方、ベルきゅんがステイタス更新したのだが。

 

「ですよねー」

 

と言いながら、部屋を出てきたベルきゅんの後に、俺がヘスティア様に、小声で問いかける。

 

「スキル発現しましたか?」

「なっ」

 

俺の問いに驚きながらも、「何故、分かったんだい?」と聞かれたので、「ベルさん真っ直ぐで、目標を見つけたので」と、答えるとヘスティア様は微妙な表情をしながら、他言無用と言ってから教えてくれた。

原作通りのスキル【憧憬一途】だった。

 

「ベルさんには内緒ですね。下手すれば増長してスキルの効果が無くなります。それに狙われるでしょうね」

「あぁ、そうだね。僕もそう思うよ」

 

明日からが本番だ。

 

 

翌日、俺はベルきゅんにしっかりと用意していた防具を着せて、ダンジョンに送り出した。

ここ数日、ちゃんとアドバイスもして、上層なら問題ない筈だ。

 

俺? 俺はエクレアに武具の整備を頼んでいるから今日は休み。

 

で、その夕刻。

 

「……えっ」

 

ベルきゅんの驚く声が聞こえたので、ステイタス更新しているヘスティア様に近づく。

 

「か、神様、これ書き写すの間違ってたりしませんか……?」

「どれどれ? ちょっと見せて」

 

俺はベルきゅんが見ているステイタスの写しを見てみる。

凄い伸びてるね! 羨ましい!

 

「あぁ、成長期ですね」

「「え?」」

 

ヘスティア様とベルきゅんが揃って声を出した。

 

「明確な目標、憧憬が出来るとモチベーションが上がりますから、たまにあるみたいですよ。成長期」

「そ、そうなんだ」

 

とりあえず、納得したベルを置いといて、俺はヘスティアにサムズアップしておいた。

ヘスティア様も助かったと口パクで答えた。

 

「そうだ。二人とも今日はアルバイトの打ち上げがあるんだ。悪いけど夕食は二人で食べてくれ」

「あ、それは残念ですね」

「僕も残念だよ。じゃ、行ってくるね!」

 

そう言って、ヘスティア様はホームを出た。

 

「さて、ベルさん夕食は何が食べたいですか?」

「あ、それなんですけど、今日約束が……」

 

申し訳なさそうなベルきゅんに、俺は分かっていたけど、聞いてみた。

 

 

 

 

 

「ここ、だよね?」

「えぇ、ここですよ」

 

店の前で圧倒されているベルきゅん。

そこに現れたのは、

 

「ベルさんっ、あら?」

「はじめまして、アルディスと言います。ベルさんのお目付け役です」

「はじめまして、シルです」

 

で、俺達はカウンター席に通される。

 

「アンタがシルのお客さんかい? ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねえ! そっちの嬢ちゃんもね!」

 

可愛い顔と言われて、暗い顔をするベルきゅんに、俺はフォローを入れておく。

 

「ありがとうございます。それとベルさん」

「なに? アルディス」

「わたしは、キスするならオークみたいな男臭い顔より、ベルさんみたいな可愛い顔が良いです。ねっ、シルさん!!」

 

俺はベルきゅんの背後に立っていたシルさんにキラーパスをすると、やや、焦った感じでシルさんは「男臭いよりはベルさんかな」と目を逸らしながら言った。

お互いに顔を赤らめはじめたベルきゅんとシルさんを放っておいて、俺は注文をすることにした。

 

「注文良いですか?」

「投げておいて、二人を放置するなんて、なかなか酷い嬢ちゃんだね」

「ちょっとした仕返しです。本日のオススメをお願いします。あ、今日はお酒は要りませんよ」

「ガキに飲ませる酒は無いよ! 坊主酒は」

「あ、えっと、遠慮します」

「あいよ!」

 

ドン! と醸造酒を置かれて固まるベルきゅん。

何で聞いたんだよ。って顔をしているので、

 

俺が「大丈夫? 飲めるから、わたしが飲もうか?」と聞くと「大丈夫だよアルディス、」と一気に飲み干して、「良い飲みっぷりだ!」と、ミア母さんが追加の醸造酒をベルきゅんのテーブルの前に置いた。

固まる俺とベルきゅん。

うん、本当にごめん、ベルきゅん。

 

帰り道のこともあるから、チビチビ醸造酒を飲むようにベルきゅんに言い、店員さんに水を追加で注文してそれとなくベルきゅんに飲ませる。

 

大分食事が進んだところで、シルさんが合流。

シルさんの邪魔をしないように、ゲームの時を思い出して気配をゆっくり消した。

 

で、ちょっと時間が流れて、ロキ・ファミリアがやって来た。

ベルきゅんがソワソワし始め、ついにあの場面がきた。

 

「そうだ、アイズ! お前あの話を聞かせてやれよ!」

「あの話……?」

 

震えはじめるベルきゅん。

精神を研ぎ澄ませ、準備をする俺。

 

「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ……ぶくくっ! うちのお姫様助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

 

顔色が悪くなり、強く両手を握りしめるベルきゅん。

うん、悔しそうな表情だけど、男の子だ。

そして、あのセリフが聞こえてきた。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

ベルは椅子を飛ばして、立ち上がり店から飛び出して言った。

さて、俺も鶏冠に来ている。

一発くらい噛ましてやるか。

 

「女将さん」

「なんだい?」

「明日、本人が頭を下げに来るのでそれまで待ってください。わたしが払うと無粋なので」

 

不機嫌なミア母さんにそう言うと「分かった」と頷いた。

 

そして、俺はロキ・ファミリアの下へゆっくり近づく。

 

「アルディス?」

「リヴェリアさんこんばんわ。そちらの団員さんに、一言良いですか?」

「ああん? なんだガキ?」

「はじめまして、酒に酔わないと女を口説けないタマナシ野郎」

 

その瞬間、その場が凍りついた。

アイズさんだけは、「タマナシ?」と首を傾げていた。

 

「このメスガキ!」

 

怒気を滲ませて立ち上がるベート。

慌てて周りが止めに入ろうとする。

その前に俺は行動にでる。

好きなキャラでもあるベートではあるが、流石に鶏冠にきているので、言い返してやる。

 

まず、全てを見透かすように、じっとベートの眼を見つめて、次に「はっ」と、嘲笑ってやる。

 

「あぁ、やっぱり見てわかりました。貴方は守りきれなかったんですね」

「あ゛あ゛ん?」

「雌を守りきれなかった負け犬はやっぱり、吠えるしかできないんですね!」

 

最後に誰がとは言いませんが、可哀相に。と付け加えると。次の瞬間、顔面に凄まじい衝撃を受けて、宙を舞い、俺の見ている世界がスローモーションになった。

 

あ、これヤバい。流石に死ぬかも。

 

そして、恐らくカウンターに叩きつけられて、俺は気を失った。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「口で喧嘩を売られたので、口で返したら、いきなり顔を殴られました。レベル差がなくても酷くないですか!?」

「本当にすまない。ベートにはよく言い聞かせておく」

「でも、結果としてロキ・ファミリアが、怪物進呈紛いのことを行い、それを使って他のファミリアを侮辱するとは思いませんでしたよ。リヴェリアさん」

「重ねて、すまない」

 

本当に申し訳なさそうにしているリヴェリアさんに「冗談です。気にしないでください」と告げる。

とりあえず、あの騒ぎから一夜が開けた。

俺は豊穣の女主人に怪我の治療で一晩泊めてもらった。

まあ、気を失ったままだった訳だが。

 

で、先ほどベルきゅんがミア母さんに金を支払ってそのあと俺に顔を見せてから、ダンジョンへ向かった。

 

怪我は治ったが、俺がベートと口喧嘩をして、ぶっ飛ばされたことを聞いたらしく。悔しそうに「ごめん」と謝っていた。

 

ちなみにヘスティア様にはシルさんが連絡を入れているから問題ない。

 

「これはロキからの詫びの品だ。受け取ってくれ」

「ファミリアから、ということですか?」

「ああ、ミノタウロスの一件と昨日の一件含めてだ」

「受け取りましょう。わたしもまた芋虫の夢などを見ましたら、教えますね」

「……ああ、出来れば頼む。アルディスの夢のお陰で被害は最小限だった」

「いえ、偶然です」

 

ベルきゅんがトマト野郎になるイベントの前の遠征。

見送りの時に「夢を見たんです」「夢?」「はい、芋虫には近づかないで下さい。溶かされてしまいます」と伝えたところ。リヴェリアは「分かった」と笑って遠征に向かったのだが。

俺の夢の通りに芋虫によって被害と遠征が事実上の失敗したことで、スキルによる未来予知が出来ると思われているようだ。

 

「確認だが、夢とはスキルか?」

「お答えできません。ですが、これからも夢を見ることがあればご協力します。ですから」

 

ロキ・ファミリアとは仲良くしたいですね。と微笑むと、リヴェリアさんは真剣な表情で頷いた。

 

 

 

 

 

 

「流石はレベル5。手加減していただろうけど、耐久の上がりが凄かった」

 

前にフィルヴィスさん、アウラさんにそれとなくアビリティの上昇数を聞いてみたが、ベルきゅんほどではないが。俺もハイペースでアビリティが上がっているらしい。

 

ちなみに、ベートに殴られた一件は、ヘスティア様がロキに怒っていたが、ロキがファミリアとして詫びを入れたので、ヘスティア様も渋々受け入れた。

 

非はロキ・ファミリアにあるし、ロキ・ファミリアとしても、レベル1のロリハイエルフを殴ったことで、ロキ・ファミリアへの評判が必要以上に悪くなる前に謝って、この件を終わらせたいのだろう。

 

まあ、エルフ達には物凄い勢いで噂が広まって、翌日街を歩いたときにエルフ達から花やら薬やらを見舞いの品として渡された。

ヘスティア様もバイト中に俺へと色々差し入れを貰ったらしい。

うーん、罪悪感が……。

ポーションで既に怪我はないのだけど。

 

 

「四十八……、四十九……、五十……っ、ふう、終わり」

「お疲れ様、アル君。相変わらず君の筋力トレーニングは凄いけど無理しちゃ駄目だぜ」

「大丈夫ですよ。重りも恩恵を考えて使ってますから」

 

 

俺はエクレアに作ってもった冒険者用の大型ダンベルでトレーニングを続けた。

 

そろそろモンスターフィリアか。

うーん、レフィーヤとも顔を合わせたいし、モンスターフィリアは、レフィーヤを探そう。

そんなことを考えながら、俺はトレーニングを続けた。

 

 

 




誤字指摘、ありがとうございます( ノ;_ _)ノ

次はモンスターフィリアまでに起こった日常回です。


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