仮面ライダージオウが最終回を迎えたので、勢いのままに思いついたものを書いてみました。
一部、劇場版等のネタバレにつながるかもしれない要素があります。
独自要素マシマシです。
それでもよろしいという方は、お読みいただけると幸いです。

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Interlude:“Quartzer”

「……ようやく、ジオウが『王』へ至る力を手に入れたか」

 

 

 

ビルが建ち並び、人々が忙しなく行き交う街並み。

 

その光景を見下ろしながら、紫の衣を纏った男――スウォルツは、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

思い返すのは、先程目の当たりにした光景。

 

自身の配下であるタイムジャッカー・オーラが作り出した……アナザーライダー『アナザー電王』を、常磐ソウゴが新たなる力(グランドジオウ)を手にして打ち倒した瞬間だ。

 

 

自らの計画は着々と進行している。だが、まだ足りない。

 

スウォルツが目指す先は、この現在――2019年よりも遥か未来、2068年に君臨するあの最低最悪の魔王(オーマジオウ)が持つ力なのだから。

 

 

 

「このまま、常磐ソウゴには最低最悪の魔王(オーマジオウ)へと至って貰わなくてはな……」

 

 

 

その為には、常磐ソウゴをもっと追い詰めなくてはならない。

 

ポケットから紫と黒のライドウォッチ……『アナザージオウⅡライドウォッチ』を取り出したスウォルツは、次なる手を打つ為に行動を開始しようと、した。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

殺気を感じ、スウォルツが咄嗟に飛び退く。そして、先程までスウォルツが居た場所に、矢のようなエネルギー弾が突き刺さる。

 

 

 

「へぇ、今のを避けるんだ?さすが、タイムジャッカーって所かな?」

 

 

 

――そこに立っていたのは、見たこともない仮面ライダーだった。

 

半身で分けたかのような赤と青の鎧に、その手に握られたボウガン。

 

歯車を思わせる金の装飾と、右肩を覆う外套(マント)。

 

だが、スウォルツを最も驚かせたのはその腰に装着されているベルトだった。

 

 

「ジクウドライバーだと……!?」

 

 

その腰に巻かれていたのは、『ジクウドライバー』というライドウォッチの力を引き出すベルト。

 

スウォルツの知る限り、そのベルトを所持しているのは常磐ソウゴ……仮面ライダージオウと、オーマジオウの居る未来から来た明光院ゲイツ……仮面ライダーゲイツしか居ない。

 

そして、ジクウドライバーを持つ者の共通点はただ一つ。

 

 

「……ウォズの差し金か?」

 

 

スウォルツの脳裏に浮かんだのは、2068年において元レジスタンスであり、今は最低最悪の魔王(オーマジオウ)に付き従う男、『ウォズ』だった。

 

タイムジャッカーとしての計画を進める中でこちらに接触してきた『古い知り合い』ではあるが、その手に持つ預言書『逢魔降臨暦』といい、どこか図りきれぬ部分もある為、スウォルツも警戒はしていた。

 

だが、その言葉に謎のライダーは軽く首を傾げると、小さく笑うような素振りを見せる。

 

 

「……あぁ、確かにそう思っても不思議じゃないか。まぁ、当たらずとも遠からずって所だよ」

 

「なるほど……だが、詰めが甘かったようだな!」

 

 

謎のライダーに対しスウォルツが手を勢いよく翳すと、まるで世界が一時停止したかのように動きを止める。

 

これこそ、『とある世界の王族の末裔のみが使える』力。

 

スウォルツとその力を分け与えた『タイムジャッカー』を名乗る一党、そして常磐ソウゴの元に居る記憶喪失の少女ツクヨミ……スウォルツの妹『アルビナ』しか使えぬその力は、例えいかなる仮面ライダーだろうと逃れることはできない――

 

 

 

 

 

 

 

「残念だけど、『俺達』には通用しないよその力は」

 

「なに!?」

 

 

 

――はずだった。

 

だが、謎の仮面ライダーは時間停止の力など意に介さぬように、ボウガンを構えながらゆっくりとスウォルツへと歩き出す。

 

 

「このウォッチは特別製でね?他者からの時間操作は受け付けないのさ」

 

「ならば仕方ない。こうするまでだ」

 

〈ZI-O-Ⅱ〉

 

 

謎のライダーの言葉に対するように、スウォルツはその手に握りしめていたアナザージオウⅡライドウォッチを起動させ、その胸に押し付ける。

 

すると、スウォルツの体は禍々しい光に包まれ……白い怪物のような姿へと変貌を遂げた。

 

その名は、アナザーライダーが一人『アナザージオウⅡ』。

 

仮面ライダージオウが手にした新たな力『グランドジオウ』に呼応するかのごとく進化を遂げた、いわば『アナザーライダーの王』たる姿である。

 

その証と言わんばかりにアナザージオウⅡが右腕を掲げると、その背後に4体の怪物がどこからともなく現れる。

 

赤と青のツートーンカラーな体を持つ、『アナザービルド』。

 

飛蝗のような風貌を持つ、『アナザーアギト』。

 

落武者のような鎧を纏った、『アナザー鎧武』。

 

鬼のような姿を持つ、『アナザー響鬼』。

 

 

いずれも、かつて仮面ライダージオウ達が激闘の末に撃破した、仮面ライダーの歴史を奪うモノ(アナザーライダー)

 

歴史の狭間に消えた存在が、王の呼び掛けに答え再びその姿を現した瞬間だ。

 

 

「……行け」

 

 

アナザージオウⅡが翳した手を差し向けると、アナザーライダー達は謎の仮面ライダーへと一斉に襲いかかる。

 

対する謎の仮面ライダーは、時にボウガンを剣のように振り回し、時にエネルギー弾を放ちながら、アナザーライダーへ攻撃を仕掛けていく。

 

そして、その様子を眺めていたアナザージオウⅡは謎の仮面ライダーに背中を向けると、その場から立ち去っていく。

 

 

 

「あーらら、逃げられちゃった。まぁ、後は『アイツ』に任せて――」

 

 

 

アナザーライダー達の攻撃を捌きながらもアナザージオウⅡの背中を見送った謎のライダーはそんなことを呟きつつ、腕のホルダーからライドウォッチを取り出し、スイッチを押して起動させる。

 

 

 

 

 

 

「――こいつらを、狩るか」

 

〈AMAZON-NEO〉

 

 

 

 

次の瞬間、謎の仮面ライダー……『ザモナス』の体から生えた禍々しい触手が、アナザーライダー達の体を突き破っていた。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

一方、ザモナスの襲撃を凌いだアナザージオウⅡはというと、古びた倉庫街へと足を進めていた。

 

 

「ちっ……なぜ今頃になってオーマジオウが干渉してくる!?」

 

 

いや、正確に言えば違う。

 

ザモナスの襲撃を凌いだかに思われたアナザージオウⅡだったが、今度はオーマジオウの配下である機械兵『カッシーン』達の襲撃を受けたのだ。

 

その手に持つ、時計の針を思わせるかのような双剣を連結させた薙刀をアナザージオウⅡは振り回し、次々とカッシーンを破壊していく。

 

やがて、全てのカッシーンを撃破したアナザージオウⅡであったが……ガシャン、ガシャンと聞こえてくる、金属音が重なる足音の方へと視線を向ける。

 

 

アナザージオウⅡの白い身体とは対照的な、黒と深緑の鎧。

 

アンティーク時計を思わせるかのような、金の歯車と皮バンドの装飾。

 

そして、鈍く発光する真紅の複眼。

 

 

「貴様達は、いったい何者だ?」

 

「俺達はクォーツァー……歴史の管理者だ」

 

 

アナザージオウⅡの問いかけに、ジクウドライバーを携えた新たな仮面ライダー、『バールクス』が答える。

 

クォーツァー、その名が示す意味はわからない。

 

だがその存在が自分の障害になるものだと認識したアナザージオウⅡは、その背後に次々とアナザーライダーを召喚していく。

 

 

「歴史の管理者とは大層な肩書きだな。だが、俺が支配する世界にそのような存在は不要だ!」

 

 

アナザージオウⅡの叫びと共に、アナザーライダー達がバールクスの元へと駆け出していく。

 

だが、バールクスは落ち着いた様子で腕のホルダーからライドウォッチを取り出すと、それを起動させる。

 

 

〈ROBO-RIDER〉

 

「ボルテック、シューター」

 

 

ライドウォッチが光に包まれるのと同時に現れた、金の歯車のような装飾が施された銃を、バールクスは握りしめる。

 

そして、銃を構えるのと同時に放たれた光線がアナザーライダー達を次々と撃ち抜き、爆炎に包み込んでいく。

 

かろうじて光線に貫かれなかったアナザーライダーがその拳を振るうが、バールクスはいとも容易く受け流し、カウンターの要領で拳を叩き込んでいく。

 

 

「リボルケイン」

 

 

続いて、バールクスが取り出した剣の刀身が青白い輝きを纏ったかと思うと、バールクスが横を駆け抜けていくのと同時にアナザーライダー達が次々と斬り裂かれていく。

 

そして、一気にアナザージオウⅡの懐まで潜り込んだバールクスは、その刃をアナザージオウⅡの頭部へと振り下ろす。

 

 

「くっ!?なぜだ……アナザーライダーとはいえ、奴らもまた仮面ライダーの力を持つ存在!なぜその力が通用しない!?」

 

「平成ライダーが無意味だからだ」

 

「ほざけ!」

 

 

かろうじて双剣でリボルケインを受け止めたアナザージオウⅡは、もう一つの力……未来予知の力を駆使して、苛烈な攻撃をバールクスに浴びせようとする。

 

だが、スウォルツにも理解不能な光景が繰り広げられていた。

 

未来予知で浮かぶヴィジョンでは、アナザージオウⅡの凶刃にバールクスが沈む光景が浮かぶ。

 

だが、その通りに攻撃しても、バールクスは時に攻撃をいなし、時に攻撃をリボルケインで受け止めることで防いでいく。

 

そのことが、アナザージオウⅡ……スウォルツに焦燥と苛立たしさを募らせていく。

 

 

「言っただろう?平成ライダーは無意味だと。アナザーライダーだろうが平成ライダーの力を使っている以上、俺には勝てない」

 

「貴様の意見は求めん!」

 

「そうか、だが……これで終わりだ」

 

 

バールクスの言葉に怒りを見せたアナザージオウⅡの斬撃が大振りとなり、致命的な隙を見せる。

 

そこに、バールクスが構えたリボルケインの刃がまるで吸い込まれるかのようにアナザージオウⅡの腹部を貫く。

 

そして、バールクスがアナザージオウⅡの体からリボルケインを抜きつつ後ろを向き、残心の構えを取る。

 

 

「馬鹿な……俺は、世界を支配する王に……」

 

 

その言葉と同時に、アナザージオウⅡはゆっくりと倒れこみ……その身体は爆炎に包まれた。

 

 

「世界を支配する、王か……」

 

 

残心を解いたバールクスは、燃え上がる爆炎の中へと歩いていく。そこには、爆炎に耐え切れずに砕けたアナザージオウⅡライドウォッチの破片が散らばっていた。

 

だが、時計の針が逆回転しているかのような紋様が浮かび上がったかと思うと、ライドウォッチの破片はみるみるうちに一つとなり、やがて真新しいアナザージオウⅡライドウォッチがそこに現れた。

 

その様子を、面白くなさげに眺めていたバールクスは、おもむろに足をあげ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いよく、アナザージオウⅡライドウォッチを踏み潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして物語は、『最後の1ページ』へと進んでいく

 

 

 

 

 

 




この話では『TV版仮面ライダージオウと劇場版Over Quartzerはパラレルである』ということを前提としています。

ただ、完全にパラレルであるという訳ではなく、アドベンチャーゲーム等のように「どこかで選択肢が違った結果、進むルートが変わってしまった」といったイメージです。

じゃあ、どうやったらTV版のルートをなぞりつつ劇場版に分岐するかというのを考えた結果、「アナザージオウⅡが出る前にスウォルツ達タイムジャッカーが退場していないと劇場版ルートには進まないのではないか」という結論に至りました。

ただ、そうなった場合「誰がタイムジャッカーを排除するのか?」という疑問が当然浮かびますが、そこは「ソウゴが認識できないタイミングでタイムジャッカーが動く」という形に収まりました。

そこから、「アナザーライダー対クォーツァーのライダー」という構図が浮かび、こういった形にしました。

色々と荒い点はあるかと思いますが、ここまで読んでくださった方には感謝致します。

ありがとうございました。

※追記
ゾンジスは逃げるウールとオーラを追い詰めて排除してたりもするのですが、独自設定でクォーツァーのライドウォッチにタイムジャッカーメタ(平成ライダーメタ=平成ライダーの怪人および敵組織メタ)が搭載されている為ただの蹂躙にしかならないので、意図的に描写を省いています。


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