けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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第12話『リスタート』(後編)

 

 

 それから……

 

 シーンはかわって居住区、イエイヌちゃんのおうちの庭。

 

「かばんさーん!依頼達成したのだー!アライさんにお任せなのだー!」

「まったく、依頼達成できたのはみんなの力じゃないですか。」

「そうだよー。センちゃんの言う通りだよー。」

「そうなのだ!アライさん達群れの力なのだー!」

 

 賑やかにやって来たアライさんはえっへん、とばかりに胸を張ってから

 

「アライさんとフェネックとセン達とともえ達とそしてかばんさん!無敵の何でも屋さんチームなのだー!」

 

 と高らかに宣言する。それを聞いてセンちゃんとアルマーの二人はやれやれ、と言いたそうにしながらも嬉しそうだ。

 

「アライさんお帰りなさい。フェネックさんもセンさんもアルマーさんもお疲れ様。」

 

 帰って来たアライさんとフェネック、そしてセンとアルマーのダブルスフィアを出迎えるのはかばんさんだった。

 黒ジャケットの丈が少し短くなってて、レギンスはニーソックス状態。そして腕も肌が露出している状態ではあるが髪は元通り。

 まだ超進化セルリアンに取り込まれていた時の影響が残っているけれど順調に回復しているようだ。

 そんなかばんさんは帰って来た4人にいつも通りの優しい笑顔を向ける。

 

「で、かばんさーん。そっちの依頼はどうなのさー?」

「んー…。いやあ。その……なんというか……」

 

 フェネックがかばんさんに訊ねると少しばかり困ったような複雑な表情でほっぺをポリポリしてみせるかばんさん。

 その後ろでは大の字になってともえちゃんとイエイヌちゃんとアムちゃんが転がっていた。

 

「ともえちゃんがセルリアンに食べられないようにするっていう皆の依頼なんだけどね。ともえちゃん自身に技を教えてセルリアンに食べられる事がなくなるようにするって考え方はあってると思うんだけど…」

 

 と、ともえちゃんの手がノロノロと持ち上がり

 

「かばんお姉ちゃんが強すぎて参考にならない件……」

 

 とかばんさんの後の言葉を引き継いでフェネックに答える。

 

「これでまだ回復しきってないってどうなってるんですかぁ……」

「がうー…」

 

 イエイヌちゃんとアムちゃんも揃ってぐったりとした様子を見せている。

 そんな二人にセルリアンハンタートリオの一人、リカオンが…

 

「うんうん。三人ともオーダーキツイですよねー…。わかる。わかりますよ!」

 

 と同情していた。

 どうやら、かばんさんの特訓は思っていたよりもハードだった事が伺いしれる。

 

「あーらら…。」

 

 そんな息も絶え絶えのともえちゃんの横にしゃがみ込んでフェネックが彼女のほっぺをツンツン。

 

「仕方ないのです。ともえがセルリアンに喰われたらまたあんな強力なセルリアンを生む事になるかもしれないのです。」

「その為にカバやヒグマやキンシコウやリカオンにまで協力してもらっているのです。頑張るのです、ともえ。」

 

 と、そんな光景を見守る博士と助手。ちゃっかり敷物を敷いてお茶とクッキーを頬張っていたりする。

 

「いやあ…。あのセルリアンの場合はもともとが凄く強かったから、っていうのもあるとは思うからそうそうあんなに強力にはならないと思うけどね。」

 

 とかばんさんが困ったような笑いで続ける。

 そんな彼女の横にカバがやって来る。

 

「それにしても、ともえの方がかばんよりも力も強いし足も速いのだからすぐにかばんよりも強くなると思いましたのに…。」

 

 そうやってほっぺに手を当てて考える仕草を見せるカバ。

 

「ついでに鍛えて欲しいっていうイエイヌとアムの三人でかかってもまだかばんに狩りごっこで勝てませんのね」

 

 カバは嬉しいやら困ったやら複雑そうな表情で続ける。かばんさんが強く成長していたのが嬉しいのが半分。

 そして残り半分の困った、の感情の裏にはもう一つ、事情がある。

 

「ただ、そろそろ次の依頼人も待たせ過ぎてもいけないのです。」

 

 博士の言う通り、次の依頼人がそろそろ到着する頃だった。

 

「ヒグマ。実際のところどうなのです?」

 

 と助手がたずねる。口ではなんだかんだ言いつつも面倒見のよいヒグマの事だ。きっと訓練の進み具合もきちんと把握しているに違いない。

 

「まずイエイヌとアムの二人はかなり腕を上げた。例の技だって仕上がりは完璧だ。正直セルリアンハンターに欲しいくらいだな。」

 

 そうして博士と助手に頷いてみせるヒグマの顔をキンシコウがニコニコしながら覗き込む。

 

「ヒグマ。ベタ褒めですね。」

「うるさい!」

 

 とプイっとするヒグマ。

 

「ともえさんの方も私と互角以上に渡り合ってますよ。特に勝ったら撫でていい、っていう条件を出した時は100%私から一本とってます。」

 

 と何故か顔を赤らめるキンシコウ。ちなみにともえちゃんの訓練は主にキンシコウもサポートに回っていた。

 

「柔らかさが先にくる感じの非常によいモフり心地だったよ。」

 

 と、ともえちゃんがガバリと身を起こして親指立ててみせる。

 キンシコウをモフるともえちゃんの絵面は残念ながら見せられないよ!な事になりそうだったので内緒にされていた。

 

「じゃあ、そろそろですかしら?」

 

 カバが他の皆を見回して問いかけると、博士、助手、ヒグマ、キンシコウ、リカオンがうん、と頷く。

 

「ともえ、イエイヌ、アム。そろそろ最終試験といきましょう。」

 

 その頷きを受けてカバがあらためるように宣言する。瞬間、ともえちゃん達の空気がかわった。

 ゆらり、とともえちゃんがまず立ち上がり、それにイエイヌちゃん、アムちゃんと続く。

 そして、フレンズ達がその後ろに回ってかばんさんと対峙するような形に。

 一人、かばんさんだけがこの状況の変化についていけてなかった。

 

「かばん。ごめんなさいね。今回はともえ達の応援をさせてもらいますわ。」

 

 とカバがこれまた複雑そうな笑顔で言う。

 

「かばん。次が最後の狩りごっこなのです。」

「これが最終試験なのです。」

 

 博士助手がかばんさんに告げる。

 ともえちゃん達に課せられた試練。

 それは狩りごっこでかばんさんに勝つ事だった。

 そして今日に至るまでにまだ一本すらとれていないともえちゃん達である。

 これからのともえちゃん達の生活にも関わる為、かばんさんとしても手を抜くわけにはいかなかった。

 もちろん怪我をしないように配慮はしていたけれど、わざと負けるような真似は出来ない。

 

「うんうん、何か作戦があるんだね?楽しみにさせてもらうね。」

 

 言いつつ一歩を歩み出て半身で構えをとるかばんさん。

 それに対峙するともえちゃん、イエイヌちゃん、アムちゃんの三人。

 

「かばんお姉ちゃん!」

 

 ビシイ!とともえちゃんがかばんさんを指さす。

 

「アタシ達が勝ったらかばんお姉ちゃんには次の依頼を絶対受けてもらうからね!!」

 

 と続ける。

 

「うん、いいよ。でもそこまで言うってすっごい大変そうだね?どんな依頼なのか怖いなー。」

 

 と苦笑いのかばんさん。その言葉にともえちゃんはじめ、イエイヌちゃんもアムちゃんも、そして後ろで控えるフレンズ達も一様にニヤリとした。

 

「じゃあそういう事で話は決まりましたかしら?」

 

 カバがお互いの中間地点に割って入る形で手を伸ばす。

 

「それでは最終試験を開始しましょう。ともえ。イエイヌ。アム。頑張ってね。」

 

 と言ってから「はじめ!」の合図を出す。

 

「がうっ!!」

 

 すると、まずはアムちゃんがドンッ!と音を立てながら野生解放。

 放たれた圧で空気がビリビリと揺れるようだ。

 さらに、ともえちゃんとイエイヌちゃんが手を繋ぐ。

 そして、お互いの瞳に相手の瞳の色を宿した4色の炎が灯る。

 

「よしよし……。サンドスター制御も完璧…。野生解放を完璧に自分のものにしているな…」

 

 初手を見守るヒグマが嬉しそうに拳を握りしめていた。

 

「ヒグマさん嬉しそうですねー。」

「リカオンの時もそうでしたよ。」

「お前たちうるさい!?」

 

 とリカオンとキンシコウに茶化されて真っ赤になるヒグマ。

 

「ところで、ともえさんとイエイヌさんがやってるのは何ですか?普通の野生解放とは違うように思えますが…。」

 

 ヒグマの照れが怒りに変わる前の絶妙なタイミングで話題を逸らすリカオン。それには助手が答える。

 

「イエイヌはヒトと心を通わせる事が得意なフレンズでともえは『進化』の輝きを宿した特別なヒトのフレンズ…。だからこそ出来る技なのです。」

「あの野生解放はあの二人だけが出来る、あの二人ならではの技なのです。」

 

 と博士が後を続ける。

 それは超進化セルリアン戦の最後の最後に見せた技だった。

 あの時は出来るような気がした、という無茶な理由で編み出した技だったが特訓の成果でついに自在に使えるようになったのだった。

 

「そう…。名付けて!」

 

 と、ともえちゃんが言いつつ見守るフレンズ達も「「「「名付けて…?」」」」と息を呑む。

 

「名付けて!なかよし野生解放!!」

 

 ジャーン!とイエイヌちゃん、アムちゃんと一緒になって決めポーズ!こそっとアライさんとアルマーが混じって決めポーズしてる。

 でフェネックとセンちゃんがそれぞれパートナーを引っ張って元の位置に戻っていった。

 それに他のフレンズ達は揃ってびっみょーーっていう残念そうな表情をして見せていた。

 

「うんうん、ともえちゃん達らしい可愛い名前だね。」

 

 けれど、かばんさんはニコニコしながらパチパチと小さく拍手していた。

 

「ダメなのです…この一家。」

 

 と博士が残念そうな表情。

 

「残念一家なのです」

 

 と助手がはぁーと小さく嘆息。

 それまでずっと黙って成り行きを見守っていたフレンズから思わずツッコミが飛ぶ。

 

「おい!?もうちょいカッコいい名前にしろよ!?」

 

 とツッコミを入れたのはG・ロードランナーのフレンズ、ゴマちゃんだった。

 それに他のフレンズ達がよくいった!という顔をする。

 

「えー?わかりやすくていい名前だと思うんだけどなー。」

 

 ともえちゃんはそんな事を言いつつ…

 

「ゴマちゃんも野生解放できるようになったら一緒にやろうねー!」

 

 とゴマちゃんに向かって手を振っていた。

 

「念の為に言っておきますが、決めポーズもですからね…!」

 

 ほんの少し頬を赤らめたイエイヌちゃんがジトーっとした目をゴマちゃんに向けて言う。

 言外に「逃がさないからね。」とでも言いたげだ。

 

「コノハちゃん博士ー!ミミちゃん助手ー!ゴマちゃんの特訓も頑張ってねー!」

 

 そんなイエイヌちゃんの胸中を知ってか知らずか、ともえちゃんは元気にゴマちゃんに手を振り続けている。

 

「ってなんであたしが特訓中だって知ってんだよ!?あとバラすな!?」

 

 ちなみにゴマちゃんもともえちゃん達が始めようとしていた何でも屋さんチームの一員となるべく内緒で特訓中だった。

 ゴマちゃんの特訓は本人の希望で博士と助手がこっそり見ていたのだが、どうやらバレバレだったようである。

 

「さて、それじゃあ…そろそろ行くよ、かばんお姉ちゃん。」

 

 とかばんさんに向き直るともえちゃん達3人。

 先ほどまでの和気藹々とした空気もどこかへ吹き飛び緊迫した空気が流れる。

 

「うん、こっちも全力で行かせてもらうね。」

 

 ともえちゃん、イエイヌちゃん、アムちゃんの視線を受けて構えをとるかばんさん。

 あらためての仕切り直し。

 

「イエイヌちゃん!アムちゃん!」

「はい!」

「がう!」

 

 ともえちゃんの掛け声とともに三方向に散った三人。

 それぞれ別方向からかばんさんに襲い掛かる。

 

「凄く速くなったね。これがなかよし野生解放の力かな。凄いね。」

 

 まるで目の前からかき消えるようにして凄まじい速度で襲い掛かってくるともえちゃん達。

 しかし、それでも…。

 

「でも、そのくらいの速さなら何とかなるかな?」

 

 かばんさんの想定内だったようだ。

 それぞれにタイミングをずらしてカウンター対策をした上で繰り出された攻撃をいとも簡単にいなしてしまうかばんさん。

 見守るフレンズ達からはするり、とそれぞれが突撃した側から逆側へ抜けるかのように見えている。

 

「まだです!」

「がう!」

 

 今度はイエイヌちゃんが目隠しになって続けて後ろからアムちゃんがイエイヌちゃんごと貫かんばかりの勢いで拳を繰り出す!

 そしてイエイヌちゃんが後ろのアムちゃんの一撃を受ける直前に切り返して一瞬でかばんさんの後ろに回り込む。

 アムちゃんの拳に対処すればイエイヌちゃんに背後をとられる。

 かといってイエイヌちゃんに対処しようとすれば眼前に既に迫っているアムちゃんの拳をモロに受けてしまう。

 

「うん、コンビネーションもすごい上手になってきたね。」

 

 申し分のないタイミングにかばんさんも満足気であった…。

 

「でも、もう一息かな。」

 

 かばんさんはアムちゃんの方に向けて一歩を踏み出す。

 唸りをあげる拳を紙一重でかわして懐へと潜り込みそのままその腕を巻き込んでしまう。

 アムちゃんの攻撃の勢いまでも利用して背中へと担ぎ上げてそのまま流れるように一本背負いでぶん投げるかばんさん!

 ちょうど背後へ回り込もうとしていたイエイヌちゃんへぶつけるようにアムちゃんの巨体を投げ飛ばす!

 

「それに作戦もよく考えてると思う。」

 

 言いつつ、ひょい、とお辞儀するように頭を下げるかばんさん。瞬間、先ほどまでかばんさんの頭があった位置を死角から近づいていたともえちゃんの蹴りが行き過ぎる。

 行き過ぎたともえちゃんの蹴り足をガシリ、と掴むかばんさん。

 そのまま身体を一回転させてジャイアントスイングの要領で先ほど投げたアムちゃんと同じ方向にぶん投げる。

 背後をとろうとしていたイエイヌちゃんは投げ飛ばされたアムちゃん、そしてともえちゃんを順番に辛うじて受け止めていたのでどうにかノーダメージで済んだ。

 しかし、背後をとって攻撃するという作戦もまた失敗してしまっている。

 

 体勢を立て直してあらためてかばんさんと向き直る三人。

 

「やっぱり強いや、かばんお姉ちゃん…。」

「はい。ですが負けるわけにはいかない。ですよね。」

「がう!」

 

 ともえちゃん、イエイヌちゃん、アムちゃんが言いつつニヤリとして見せる。

 先ほどの一連の攻防もどれもが必殺のタイミングで放ったはずの攻撃を全ていなされてしまった。

 野生解放の力で底上げした能力をもってしてもその結果であったのにまだ闘志が失われたようには見えない。

 その姿に対峙するかばんさんも心の中で満足を覚えていた。

 技もチームワークもずっと格段によくなった。

 それによく色々な事を考えている。

 だからこれからも皆でジャパリパークで生きていくのに申し分はない。

 それにまだ諦めていないその目。

 きっと何か作戦があるのだろう。

 どんな事をしてくるのか楽しみにしつつも決して油断だけはしない。

 緊迫した空気が流れる。

 きっと次の攻防で決着がつく。

 見守るフレンズ達も一様に固唾を飲んだ。

 

「かばんお姉ちゃん。次の作戦は割と危ないので怪我はしないで下さいね。」

 

 言いつつイエイヌちゃんが一歩下がってアムちゃんの真後ろに。

 そしてその後ろにともえちゃんを隠して三人一列の状態になる。

 

「うん、何かとっておきの作戦があるんだよね。楽しみにさせてもらうね。」

 

 かばんさんも右手を真っ直ぐ伸ばして上に向けていた手のひらをクイ、と自分に向けて「来い」とばかりに応じてみせる。

 瞬間、三人一列になっていたアムちゃん、イエイヌちゃん、ともえちゃんが同時に駆け出す。

 

「ぐるぁああああああああああああああっ!」

 

 咆哮とともにアムちゃんが途中にあった大岩を持ち上げてイエイヌちゃんへと視線を送る。

 

「いっけぇえええええええええええええ!」

 

 と、アムちゃんが持ち上げた大岩に続けて蹴りを叩きこむイエイヌちゃん!

 砕けた岩の破片が散弾のようにかばんさんを襲う!

 

「これはいいね。カウンターで返しようがない、上手い作戦だよ。」

 

 と言いつつもかばんさんの対処は的確だった。

 後ろに飛び退って放射状に広がる石礫から距離をとり、自分に向かってくるものだけをかわしたりいなしたりしていく。

 結局、このとっておきでもかばんさんにはノーダメージだった。

 しかし……。

 

「……?」

 

 と、かばんさんは疑問の表情を浮かべる。

 何故なら、イエイヌちゃんもアムちゃんも作戦大成功、とでも言いたげな満足気な表情を浮かべていたからだ。

 

「ともえちゃんは…?」

 

 と、かばんさんが疑問の正体に行きつく。周囲を見渡してもともえちゃんの姿はなく、他のフレンズ達が固唾を呑んで成り行きを見守る姿だけしか見えない。

 気配も全く感じられない。

 ともえちゃんだけが忽然と姿を消してしまったかのようだ。

 かばんさんが全周警戒の構えに入る直前…、「かばんお姉ちゃん捕まえた。」と耳元で囁かれる声が背後から聞こえた。

 と同時に背中から手をまわしてともえちゃんが抱き着いていた。

 

「とうとう負けちゃったね。三人とも頑張ったね。すごいよ。」

 

 回された手にそっと手を重ねるかばんさん。負けてしまった事よりもともえちゃん達がとうとう自分を倒してくれた事の方が嬉しかった。

 

「でも、全然気配しなかったけど、最後のあれ、どうやったの?」

 

 と疑問を口にする。

 そのかばんさんの疑問にともえちゃんはしばらく名残惜しそうにその背中にぐりぐりと頭を押し付けるようにしてからぱっと離れてかばんさんの前に回る。

 

「ふふー。あれが最後の秘策だったんだよ。あのね、サンドスターを沢山使って野生解放が出来るならその逆も出来ないかなーって思ったの。」

 

 んふー。とばかりにドヤ顔のともえちゃん。

 

「でー、サンドスターを出来るだけ使わないようにしたら…こんな感じ?」

 

 すぅ、とその場にいるのに物凄く存在感が薄くなってしまうともえちゃん。

 

「わ、目の前にいるからわかるけど、これで姿を隠されたら見つけられないよ。」

 

 ともえちゃんは先ほどアムちゃんが大岩を持ち上げた瞬間に野生解放を一旦解除してこの技を使いこっそりかばんさんの死角へと潜り込んでいたのだった。

 

「名付けて!」

「「「「名付けて…?」」」

 

 ともえちゃんが再びドヤ顔で続けるのに一同何やらイヤな予感がしつつ聞き返す。

 

「逆野生解放!」

「そのまんまじゃねえかあああああああああああ!!」

 

 とゴマちゃんのツッコミが入り、見守るフレンズ達一同、よく言った!という顔になる。

 

「でも、この技はすごいね。ともえちゃんのサンドスター量が多いからセルリアンに狙われやすいって問題も解決できるんじゃないかな。」

 

 かばんさんの言うとおり、ここまで自在にサンドスターをコントロールできるならセルリアンに狙われても身を隠す事だって出来るし普段から出来るようになれば狙われる頻度だってずっと少なくなるはずだ。

 

「どうしても勝ちたかったからね。みんなで作戦考えて頑張ったんだから。」

 

 くるくる周りながらイエイヌちゃん達のところへ戻るともえちゃん。

 と、ともえちゃんもイエイヌちゃんもアムちゃんもどこかその顔が寂しげだった。

 

「アタシ達は大丈夫だから、ね。次の依頼は絶対受けてよ?かばんお姉ちゃん。」

 

 ってともえちゃんが言う。

 

「正直寂しですけど、私はお留守番が得意ですから。それに皆もいてくれるからお留守番してても寂しくないですから。」

 

 とイエイヌちゃんも寂し気に笑って

 

「かばんー…」

 

 とアムちゃんも寂し気にしょんぼりしている。

 かばんさんだけがその表情の意味を理解しかねていた。

 

 

 そうしているとゴマちゃんが「おーい。」とやって来る。

 

「おーい、次の依頼人連れてきてやったぜー。」

 

 ゴマちゃんが連れて来たフレンズ。それは……。

 

「サーバル……ちゃん…」

 

 だった。

 かばんさんの目の前までやってきたサーバルちゃん。

 何かを迷うようにするサーバルちゃんに目を丸くするかばんさん。

 

「あのね!かばんちゃん…!あのね……!」

 

 と何か言おうとしてやっぱりやめてを繰り返すサーバルちゃん。

 そんなサーバルちゃんの肩を後ろからカラカルがやってきて一つ押す。

 

「いいから言いなさい。アンタが何言ったって文句言うヤツは誰もいないわよ。」

「けど……だって、かばんちゃん忙しいのに…私の為だけなんて…」

 

 それでもなお逡巡を見せるサーバルちゃんの頭をバシン!と音を立ててカラカルが引っぱたいた。

 

「もう!じれったいわね!ひっぱたくわよ!?他人なんかどうでもいいからアンタがどうしたいのか言いなさい!サーバル!」

「いたいよカラカル!?叩いてから言わないでよ、もー!?」

 

 と頭の後ろを抑えながら言うサーバルちゃん。

 

「でも、ありがとう。カラカル。」

「ふん。いいからさっさとアンタが言いたい事言ってきなさい。それで文句言うヤツもひっぱたいてあげるから。」

 

 そっぽ向いたカラカルにもう一度礼を言うサーバルちゃん。カラカルはそっぽ向いたままだけど少しだけ頬を赤くしていた。

 

「あのね、かばんちゃん…私やっぱりね…。思い出したいの!だからね…依頼、そう依頼なの!私の思い出を一緒に探して!」

「え?え?」

「やっぱりね。忘れたままなのイヤなの!だからお願い!」

 

 かばんさんは事態についていけずに目を丸くしたままだった。思わず一歩後ずさるがその背中を誰かがとめた。

 

「はい、約束したよね?次の依頼は絶対に受けてもらうって。」

 

 と、それはともえちゃんだった。

 ここに至ってようやくともえちゃん達が仕込んでいた最後の罠に気が付いたかばんさん。

 

「ちなみに、同じ依頼が他多数のフレンズちゃん達からでてまーす。同じ依頼をした人ー?」

 

 と、ともえちゃんが挙手してみせる。

 続けてイエイヌちゃんとアムちゃんが挙手。

 

「こっちは安心して下さい。なんたってかばんお姉ちゃんにだって勝ったんですから。」

「がうがう!」

 

 とイエイヌちゃん、アムちゃんが頷きながら一緒に挙手している。

 博士、助手がさっさとしろと言わんがばかりの顔で挙手して、カバさんがいつもの笑顔で挙手して、セルリアンハンタートリオが同じく挙手。

 フェネックがいつもの調子で挙手してアライさんが両手をあげてピョンピョン挙手してダブルスフィアもそれぞれ挙手して、カラカルがそっぽ向いたまま挙手。でゴマちゃんが周りをキョロキョロ見回してから挙手。

 

「あとねー、トキちゃん達やアルパカちゃん達でしょー。プレーリーちゃんやビーバーちゃん達にアリツカゲラちゃんやイルカちゃん達でしょー。まだまだ沢山のフレンズちゃん達から同じ依頼出てるけど名前、聞く?」

 

 と指折数えるともえちゃん。

 どうあってもこの依頼からは逃げられない。逃がさないというのがジャパリパークの皆の総意のようだ。

 それでも、かばんさんにはどうしても気がかりがあった。

 ここまでお膳立てされても首を縦には振れない理由があった。

 

「ボクも同じ依頼をお願いしたいんだ。かばんさん。」

 

 その声にハッと振り返るかばんさん。そこにいたのはキュルルだった。

 

「だって…そうしたら今度はキュルルちゃんが…。そんなのダメだよ…」

 

 記憶をなくした後のサーバルちゃんはキュルルとのチームだ。

 それを引き裂くような事だけは絶対に出来ない。

 かつてそれを経験してしまったかばんさんだからこそ、それを他人が味わう事だけは絶対に許せない事だった。

 それにキュルルはゆっくりと首を振る。

 

「あのね。かばんさん。ボクわかった事があるんだ。例え離れてても友達は友達だよ。ボクにとって離れたってサーバルが大切な友達なのはかわらないんだ。」

 

 そのまま続けるキュルル。

 

「大切な友達が悩んでたら力になりたい。その悩みを解決できるのはかばんさんしかいないんだ。だからお願い。かばんさん。」

 

 とキュルルはかばんさんに頷いていた。

 

「ついでに言うならサーバルが忘れた思い出で悩んでるとからしくないったらないのよ。さっさと思い出す事思い出していつものドジっこに戻りなさい。」

 

 とキュルルの後ろにカラカルが来ていた。

 サーバルちゃんが「ドジは余計だよっ!」と言っていたがそこは皆でスルーだった。

 

「いいの…?」

 

 全ての障害を取り払われてしまったかばんさん。ようやくそれだけを絞り出す。

 

「約束したよね。かばんさん。サーバルの事、力を貸してくれるって」

 

 と頷くキュルル。

 

「それに!かばんさんだってボクの大好きな友達だよ。だから、力にならせてよ。」

 

 かばんさんの背中を押してサーバルの方へと近づけるキュルル。

 

「さ、ボクは言いたい事全部言ったからね、次はかばんさんの番なんだから。」

「はい、後はかばんお姉ちゃんがどうしたいのかだよ。頑張って」

 

 キュルルの後ろにともえちゃんもやって来て頑張って!とばかりに両手に拳を握る。

 

「かばんお姉ちゃん。記憶はなくたって絆は残りますよ。だから頑張って下さい。」

 

 とイエイヌちゃんが言って

 

「かばん…がんばれ」

 

 とアムちゃんも頷いていた。

 

 かばんさんの目の前にはまだ不安そうなサーバルちゃんだけがいた。

 全員で固唾を飲んで成り行きを見守る。

 

「あのね……サーバルちゃん…」

 

 しばらく言葉を探すようにお互いに見つめあうかばんさんとサーバルちゃん。

 何度も何かを言おうとして、それを引っ込めてを繰り返すかばんさん。

 さらに一歩を歩みだして、サーバルちゃんを抱きしめるかばんさん。

 

「何を言っていいのか頭の中ぐるぐるしちゃって…。でもね。ボクもサーバルちゃんと一緒がいいよ。一緒に思い出を探したい。見つからなかったらもっと大切なものを一緒に作りたい。だから一緒に行こう。サーバルちゃん。」

「うん…うん!かばんちゃんと一緒に行くよ!」

 

 と二人が抱きしめあって…それを見ていたフレンズ達もようやくか、といった表情をそれぞれに浮かべている。

 

「カバン。サーバル。三人デノ旅。楽しみダネ。」

 

 とボスウォッチが言ったところでBGMはオンボーカル版のぼくのフレンズに変更。

 

 

 

 

 そこからはダイジェスト形式で旅立ちとその後の場面が一枚絵で流れる中でスタッフロールが始まる。

 アライさんがえっへんってしながら港湾施設跡からフェネックとダブルスフィアと一緒に掘り起こしてきたジャパリバスをお披露目。

 博士助手が直してやったのです、という顔で同じくえっへん。

 かばんさん、ボスウォッチ、サーバルちゃんがジャパリバスに乗って旅立つ。

 手を振って見送るみんな。

 

 困ってるフレンズにサーバルちゃんが手を伸ばしてて、かばんさんが豆電球ピコンとして、で笑顔になったフレンズに手を振りながらまた冒険を続けるかばんさんとサーバルちゃん。

 何故か転がってくる大岩から二人して必死で逃げるかばんさんとサーバルちゃん。

 小型セルリアンの群れに出くわして背中合わせで戦うかばんさんとサーバルちゃん。

 で、そんな場面にジャパリバイクで突っ込んでくるともえちゃん。

 サイドカーにはイエイヌちゃんとアムちゃんが乗っててタンデムシートにはゴマちゃんが乗っててセルリアンを蹴散らしてみんなで「「「「b」」」」ってしてくれる。

 

 さらにある日、ロッジにやってきたかばんさんとサーバルちゃん。タイリクオオカミ先生が修羅場っててキュルルがアシスタントに駆り出されて二人してぐったり。

 かばんさんも手伝うんだけど、同じくぐったり。

 サーバルちゃんがかばんさんを抱き起して慌て、カラカルがダメだこりゃ、と肩をすくめてやれやれってして。

 で、そんなロッジにともえちゃんもやって来る。

 タイリクオオカミ先生とかばんさんとキュルルとともえちゃんみんな揃ってぐったり。

 そうして尊い犠牲を出しつつもどうにか修羅場を潜り抜けたタイリクオオカミ先生。

 お礼に、とともえちゃんとキュルルに新しいスケッチブックを差し出す。

 早速そのスケッチブックに新しい絵を描いてそれを見せあって笑いあうキュルルとともえちゃん。

 

 で、海で一緒に水着で遊ぶかばんさん&サーバルちゃん。

 防寒着を着て手をつないで雪山を登るかばんさんとサーバルちゃん。

 一緒に温泉に入るかばんさんとサーバルちゃん。

 ジャパリカフェでちょっときゅーけーするかばんさんとサーバルちゃん。

 そんな一枚絵が続いていってそして…。

 

 夕暮れのサバンナで一緒に沈む夕日を眺めるかばんさんとサーバルちゃん。

 

「これからもずっと一緒だよ。サーバルちゃん。」

「うん!かばんちゃん!」

 

 夕日にお互いに寄り添うかばんちゃんとサーバルちゃんのシルエットが溶け込む。

 で、かばんさんとサーバルちゃんがお互いに見つめあって笑ってる絵でボクのフレンズも歌が終わってシーン終了。

 

 

 

けものフレンズ2after☆かばんRestart

―おしまい―

 

 

 で、3等身デフォルメ絵でイエイヌちゃんの住んでる居住区を上から見下ろした図が出て来て

 ポンって音でともえちゃん、イエイヌちゃん、アムちゃん、ゴマちゃんの顔が一つのおうちに。

 ポンって音が続いて、かばんさん、サーバルちゃんの顔とボスウォッチが近くの別なおうちに。

 ポンポンって音がもう一つ続いて、キュルル、カラカルの顔が別の近くなおうちに。アライさんフェネックの顔が近くのおうちにそれぞれ配置。

 で、少し画面が引いて、『わすれものセンター』と書かれた建物の絵が出て来てそこにはセンちゃんアルマーの顔がポンっと追加。いがいとちかい。と但し書きが追加。

 さらにカメラが引いて図書館のデフォルメ絵に博士助手の顔が配置されてて、双方向矢印が出て、ちょっと遠いけどご飯食べにいつもくるよ。と但し書きが追加。

 で、デフォルメかばんさんとサーバルちゃんがぴょこんと出て来る。

 

「近くに住んでるしみんな遊びにくるしでよく会うんだけどね。」

 

 ってかばんさん。

 

「みんなで遊びに行ったりもするよねー」

 

 ってサーバルちゃん。

 

 で、背景のフレンズ達の顔アイコンがわちゃわちゃ動き回っていろいろ組み合わせをかえたり、追加のフレンズアイコンが加わったりする様子を見せてから

 二人で「「ねー♪」」ってして……

 

 

 今度の今度こそ

 

 

―おしまい―

 




【あとがき】

以上で私が頭の中で妄想したけものフレンズ2のその後の物語を終了とさせていただきます。
けものフレンズ2最終回を視聴した直後は具合が悪くなるほどのショックを受けていました。
それからしばらくして同じような想いをしている人がたくさんいた事も知りました。
そうしたショックはケムリクサなどを見る事でも癒されていったのですが、やはりそれでも何かモヤモヤとした想いは残っていました。
それはけもフレ2でのかばんさんの扱いや打ち捨てられた伏線らしきものたちに対する想いでした。
それらを何とかしたいなあ、と思った時にふ、と頭の中に浮かんだ場面がありました。
それはかばんRestrt11話の場面でした。
かばんちゃんが成長したかばんさんだったら必ずこうするだろう、と考えた時に妙に納得してしまっていました。
けものフレンズ1期で受け取ったかばんちゃんの魂だとかそういったものはきっと自分の中にもあるのだろう、と思い至りました。
なら、それは何かの形で返したらいいんじゃないだろうか。
と考えてこの妄想を出力してみるに至りました。
誰かの中のかばんちゃんに届いたり、同じようにモヤモヤした想いを抱えた人の心を少しでも晴らせれば幸いです。

この世界では今後もみんな仲良く幸せに暮らしていきます。
その後の物語もおまけで考えてある分があるので年明け後を目途に第12.1話とその後の物語を投稿させていただきたいと考えています。
まずは一旦けものフレンズ2after☆かばんRestartを完結とさせていただきたいと思います。

元々はけものフレンズちゃんねる併設のけものフレンズBBS内の、とにかくポジティブ!誰でも妄想を吐き出していいスレで連載していた物語でしたが改稿版も無事に完結できました。
ともえちゃんをお借りした祝詞兄貴、感想や応援いただいた皆様、評価してくださった皆様、そして最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございます!
完結したあとですが感想や評価などいただけたら小躍りして喜びます!

それではまたいずれお会いしましょう!
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