けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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【前書き】

 本編は完結となりましたが、その後のアフターストーリーがいくつかありますので少しずつ投稿させていただこうと思います。
 こちらもお楽しみいただければ幸いです。
 今回は12.1話という事で本編で描き切れなかった部分に焦点を当てさせていただきました。
 それではお付き合いの程、よろしくお願いします。



アフターストーリー
第12.1話『ごー・まい・うぇー』


 夕暮れのとある岩場。

 

「……ふう。」

 

 とため息をついて手近な岩に腰かけるプロングホーン様。

 

「何よあんた。ゴマのヤツが旅に出て寂しいの?」

 

 とその隣に腰を降ろすのはチーターだった。

 

「そうだな。寂しいぞ。」

「ふうん?てっきりもう少し強がるかと思ったけど案外素直じゃない。」

 

 珍しく素直に自分の軽口を肯定してくるプロングホーン様の姿にチーターは思わずにひひー、とイタズラっぽい笑みを浮かべてしまう。

 しかし、いくら彼女達が軽口を叩き合える間柄とは言っても、追撃をするのはさすがにチーターの良心が許さなかった。

 

「ああ…あのゴマがなあ……。」

「そうねえ……」

 

 寂しいのは二人とも一緒だった。

 今頃この場にいるはずだったもう一人はどうしているだろう、と二人は夕暮れの空を見上げるようにして思い出す。

 

 

の  の  の

 

 

 それは超進化セルリアンとの戦いに勝利した後の宴会での出来事だった。

 その宴会は盛大なものだった。

 主役となっているのはかばんさんであった。

 超進化セルリアンに食べられていた彼女はサンドスターを大量に消費していた為、それを補充する必要があったのだが…。

 

「はい!かばんちゃん!食べて!こっちも!こっちもっ!!」

 

 と、サーバルちゃんがかばんさんの口にジャパリまんを次から次に放り込んでいた。

 

「このおバカっ!?そんなに一辺に詰め込んだら今度こそかばんが死んじゃうでしょっ!?」

 

 カラカルが慌てて止めていたが、時すでに遅し。

 かばんさんの顔色は赤から青へと変わろうとしていた。

 ボスウォッチが「アワワワ…」と流されて、キュルルが慌てて水を持ってきたりして、パーティの主役達の方はどったんばったんの大騒ぎだった。

 そんな場面を少し離れたところで見守るプロングホーン様とチーターであったが、そこに……。

 

「プロングホーン様ぁ!」

 

 と、ゴマちゃんがやって来る。それを出迎える二人の顔も自然と綻んだ。

 

「ゴマ。お前も大活躍だったな。」

「そうね。あんたが背中を守ってくれたたからいっちばん先頭で思う存分暴れられたわ。」

 

 チーターのこの物言いにプロングホーン様がムッと顔を引きつらせる。

 

「おいおい、チーター。いっちばん先頭は私だっただろう?」

「いいえ、私だったわよ。」

 

 素直に認めるならめでたい席で喧嘩をする事もあるまい、と思っていたプロングホーン様であったが負けを認めないチーターに本格的に火花を散らし始める。

 

「前半はチーターの方が前だったかもしれないが後半は私の方が前だっただろう?」

「そんな事ないわよ!私の方がずっと前だったってば!」

「何を言う!その証拠に私の方が多くセルリアンを倒していたぞ!」

「へっへーん。残念だったわね。私の方がアンタよりちょっとばかりセルリアンを倒した数は上だったんだから。」

 

 いよいよ本格的ににらみ合い口喧嘩を始めてしまったプロングホーン様とチーター。

 と、二人は一つ言う度に、チラチラ、とゴマちゃんの方を見る。

 視線どころか、小声で「そろそろいいよー」と言い始めてすらいた。

 プロングホーン様とチーターが口喧嘩をするのはいつもの事なのだが、そんな時は大体ちょうどいい時にゴマちゃんが仲裁するのが常だった。

 だが、今日に限ってはそれがいつまで経ってもこないのだ。

 

「「ゴマ?」」

 

 とうとう口喧嘩をやめて心配そうにゴマちゃんの方を見る二人。

 

「どうした、ゴマ?」

「そうよ、あんたがそんな調子じゃ安心してケンカできないじゃない。」

 

 しかし、そんな二人を前にしてもゴマちゃんは下を向いたまま何かを迷っている様子だった。

 しばらくの間そうしていて、やがて意を決したようにゴマちゃんは顔を上げてプロングホーン様を真っ直ぐに見やる。

 そしてようやく口を開いた。

 

「プロングホーン様……あたし……旅に出ます!」

 

 そんな突然の宣言に固まる二人。先に我に返ったのはチーターの方だった。

 

「ちょ、ちょっと。何いってるのゴマ。あなた何か悪い物でも……」

 

 慌てたように言おうとするチーターの言葉は途中で遮られた。プロングホーン様が手でチーターを制していたからだ。

 腕組みの姿勢になるとプロングホーン様は一度深呼吸してからゴマちゃんを真っ直ぐに見つめ返す。

 

「ゴマ。どういう事だ?」

 

 訊ねるプロングホーン様とゴマちゃんの視線が絡まる。こんな事は初めてのチーターはただオロオロとお互いを見比べるしかなかった。

 そんな中、ポツリ、とゴマちゃんが返す。

 

「あいつ…すっごいカッコよかった…。」

 

(ここで、回想シーンで超進化セルリアンの『石』にかばんキックを叩きこむともえちゃんの場面が入ります。)

 

「ふむ……それは私よりもか?」

 

 何を言っているのかはプロングホーン様にもしっかりとわかっていた。

 だから敢えて訊ねる。

 普段のゴマちゃんだったら絶対に首を横に振るだろう質問を。

 ゴマちゃんはそれにしばらく迷って瞳を泳がせ、それでから唇を引き結びプロングホーン様の目を見つめ返す。

 そして首を縦にコクリ、と一つ頷かせた。

 

「そうか。」

 

 プロングホーン様は瞳を閉じて腕組みを解くと満足そうな笑みを浮かべる。

 そしてから腕組みを解いた両腕をゴマちゃんの肩に置いて…。

 

「ゴマ……。いってこい。」

 

 そう言って柔らかく微笑むプロングホーン様。

 その言葉にゴマちゃんも頷きを返す。

 

「プロングホーン様……あたし…絶対アイツよりカッコよくなってプロングホーン様が自慢できるあたしになります!」

 

 見つめ返しつつ言うゴマちゃんの言葉にプロングホーン様は満足そうに大きく頷く。

 

「ゴマ。お前は今でも私の自慢だが、もっと自慢できそうだな。」

 

 その言葉にうるうると目に涙をためるゴマちゃん。……その涙がこぼれそうになった時、ふと気づいて横を見ると…。

 

「ってうぉあ!?チーター!?!?なんでお前がめっちゃ泣いてんだよ!?!?」

「だって…だってぇえええええ!!」

 

 と、チーターがドン引きするくらい滂沱の涙を流していた。

 

「あー、もう。チーター。別に会えなくなるわけじゃないんだぜ?あたしはともえ達が始める何でも屋の仲間になるんだ。」

 

 その言葉にチーターもまだヒクヒク言いながらもようやく落ち着きを取り戻してきた。

 

「うん……うん…じゃあ、ちゃんと寝るところあるのね?ちゃんとご飯も食べられるのね?」

「当たり前だろ?あたしも雛鳥じゃないんだぜ?」

 

 それに安心したチーターはようやくいつもの調子を取り戻すとゴマちゃんに詰め寄る。

 

「あとあんた、めちゃくちゃいい子なのに口が悪くて誤解されやすいんだから気をつけなさいよ!」

「余計なお世話だ!」

「それからそれからたまにはちゃんと帰ってくるんだからね!」

「あーもう、わかった。わかったから!?」

 

 と、そんな時に遠くの方でともえちゃんがゴマちゃんに手を振っているのが見えた。

 このままではいつまでもチーターに捕まって旅立ちどころではないだろう、とプロングホーン様はチーターの肩に手を置いてともえちゃん達の方を指さしてみせる。

 

「さ、ゴマ。呼んでるようだから行ってこい。」

 

 言いつつチーターを優しくゴマちゃんから引き離すプロングホーン様。

 

「わかりました!プロングホーン様ぁ!チーター!いってきます!」

 

 と駆け出そうとしたゴマちゃんだったが、ふと思い出したかのように振り返る。

 

「そういえば、プロングホーン様。あたしに付けてくれたゴマ、って呼び名。あれどうしてそういう名前にしようと思ったんですか?」

「ああ、それは……」

 

 ゴマちゃんの言葉にプロングホーン様が答えようとした瞬間、少しばかり顔を引きつらせたチーターがその前に立ちはだかって遮った。

 そしてプロングホーン様が何かを言う前に口を開く。

 

「図書館で博士に聞いた言葉なのよ。あんたのGロードランナーのGからとって、ごー・まい・うぇー。わが道を征くって意味なの。でもってそれを縮めてゴマ、なのよ。ね。プロングホーン。」

 

 しばし固まっているプロングホーン様にチーターはギラリ、と眼光鋭く「ね?」ともう一度重ねて同意を求めてきた。

 

「ああ、うん。そうだ。そうだぞ。」

 

 とチーターの剣幕に押されつつ腕組みしたまま何度も頷いてみせるプロングホーン様。

 

「あたしの名前ってそんなカッコいいものだったんですね…!ありがとうございます、プロングホーン様!この名前に恥じないようにあたし、カッコよくなってきます!」

 

 言いつつ二人に手を振りながらゴマちゃんは駆け去っていったのだった。

 

 

の  の  の

 

 

 そして回想は終わって夕暮れの岩場へと戻る。

 

「さすがに言えないわよね…。博士が食べようとしてた胡麻ふりかけの見た目が髪の模様とそっくりだったから、だなんて…」

「う、うむ…そこは面目ない…」

 

 チーターの嘆息にプロングホーン様もこればかりは認めざるを得なかったらしい。

 もしもあの時、そのままの名付け理由を言っていたらあの呼び名を気に入っているゴマちゃんはガッカリしていただろう。

 そうならずに済んだ事には感謝しかない。

 きっと今もどこかでゴマちゃんはその名前を誇りに頑張っている事だろう。

 

「それにしてもゴマのヤツ帰ってこないわね…。」

 

 岩に腰かけたチーターは足をブラブラさせて頬杖を突きながらポツリと呟く。

 それに「そうだな。」と返すかと思ったプロングホーン様であったが、一つ思いついてしまった。

 そしてニヤリとしつつ思いつきを口にする。

 

「なあ。ならいっそ、こちらから会いに行ってみるというのはどうだ?……ジャパリパーク最速コンビがゴマに挑戦状を叩きつけにいく、なんて面白そうじゃないか?」

 

 その言葉に一瞬何を言われたかわからないように目を丸くするチーターだったが段々に不敵な笑みへと表情を変えていく。

 

「それいいわね!アンタもたまにはいい事言うじゃない!それじゃあ早速行きましょうよ!」

「せめて出発は明日の朝な。」

「ええー!?」

 

 一人分寂しくなっていた夕暮れの岩場だったが、今日はいつまでも楽しそうな声が途切れる事はなかった。

 そして後日。

 ジャパリパーク最速コンビとともえちゃん達のレースが開催される事になるのだが、それはまた別のお話である。

 

 

けものフレンズ2after☆かばんRestart 第12.1話『ごー・まい・うぇー』

―おしまい―

 




【後書き】

 今回は本編で12話にしか出番のなかったゴマちゃんを掘り下げる回とさせていただきました。
 ともえちゃん達のパーティー入りが急に決まっている感じですが、その裏ではこんな事があった、という妄想を思う存分させていただきました。
 ともえちゃん達には圧倒的にツッコミ要員が不足しているので案外常識人枠としてゴマちゃんには頑張っていただきたいものです。
 そして、ゴマちゃんの呼び名の元ネタがとあるネット流行語として1位を獲得したとか…。
 これからも愛を込めてゴマちゃんと呼んでいきたいです。
 まだいくつかアフターストーリーはあるので少しずつ投稿していこうと思います。
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