けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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③『子育ては大変』

 イエイヌちゃんがヒナを助けてから数日。

 大変な事の連続でした。

 

【ともえ】「ふぇえ…。またご飯なのぉ?」

 

 夜中でも構わずにエサをねだってきたり。

 

【ゴマ】「水…ほんとにこれだけでいいのか?もう少しやった方が…。」

【イエイヌ】「いえ。あげすぎもよくないって教えてもらったじゃないですか…。」

 

 と不安になったり。

 

【アム】「うへぇ…。」

 

 抱えて温めていたアムちゃんの服の上でウンチしちゃったり。

 ともかく大変だったけれど一生懸命にお世話したおかげでヒナは1週間もしたらすっかり見違えるようになってきました。

 すっかり毛も生えそろってきて鳥らしい外見になってきたように思えます。

 その頃には自分で動いたりもするようになって来ました。

 

【ともえ】「なんか可愛いねえ。」

【イエイヌ】「そうですねえ。」

【ゴマ】「だなあ。」

【アム】「がうがう。」(コクコク)

 

 とそれぞれに甘えてくるヒナの様子にすっかりメロメロの4人でした。

 

【ともえ】「ねえ。この子にも名前、欲しくない?」

【アム】「なまえ…いい。」

【ゴマ】「そうだな。どんなのがいい?」

 

 すっかり懐かれてしまえば情も移るというもの。ともえちゃんの提案ももっともな事に思えました。

 ですがイエイヌちゃんだけは暗い顔になりました。

 

【イエイヌ】「あの…。名前まで付けてしまうとこの子も離れづらくなっちゃうんじゃないでしょうか…?」

 

 そうです。

 もともと、このヒナは仕方なく大きくなるまでの間お世話をする事にしただけなのです。

 いつかは自然に返してあげないといけません。

 

【ともえ】「そっか…。そうだよね。でも…。」

【ゴマ】「ああ…。」

【アム】「なまえ…ほしい。」

 

 決して遠くない未来の事にともえちゃんとゴマちゃんとアムちゃんも一緒に暗い表情になってしまいます。

 いずれ別れるからこそ、思い出が欲しい、という想いもまた理解できました。

 イエイヌちゃんだって別に名前がつけたくないわけじゃないのです。

 

【イエイヌ】「わかりました。名前…つけてあげましょう。」

 

 イエイヌちゃんも頷くと、ともえちゃんが嬉しそうに顔を輝かせて抱き着いてきます。

 ついでにここぞとばかりにモフりまくっていました。

 でもってアムちゃんも嬉しそうにイエイヌちゃんにすりすり顔をこすりつけるようにしています。

 

【ゴマ】「なんだかんだお前が一番コイツの事気に入ってるもんな。」

 

 とゴマちゃんはそんなイエイヌちゃんの背中をべしべし叩くのでした。

 そして、ヒナもまたイエイヌちゃんに甘えるように擦り寄ってくるので、もうイエイヌちゃんは苦笑しかできませんでした。

 

【イエイヌ】「で…どんな名前がいいでしょう?」

【ともえ】「それなんだけどね。ちょっと考えがあるの。」

 

 ともえちゃんは肩掛け鞄からフレンズ図鑑を取り出すとカラスのページを開いてみせました。

 それは古びていて残念ながら写真は色あせてわからなくなっていたものの、文字は読めます。

 

【ともえ】「でね、この子は多分だけどハシボソガラスっていう種類だと思うんだ。これってね英語っていう別な言葉だとクロウって分類になるんだどね…。」

【ゴマ】「ともえ…。アムが煙吹き始めたから手短に頼む。」

 

 ともえちゃんの言葉を一生懸命に考えていたアムちゃんはぐるぐると目を回していました。

 両側から手で仰いで風を送ってあげるゴマちゃんとイエイヌちゃんでした。

 いつの間にかヒナも加わって大きくなりはじめた翼でパタパタと真似っこして風を送っています。

 それを微笑ましく思いながら、ともえちゃんは続きを話します。

 

【ともえ】「だからね、クロウからとってクロちゃん、とかどうかな?」

【イエイヌ】「ええ。ステキな名前だと思います。この子の黒い毛並みともよくあってますし。」

【ゴマ】「おい!いいじゃねえか!」

【アム】「クロ…。いい。」

 

 ともえちゃんの提案にみんな賛成のようです。

 肝心の本人は…

 

【クロ】「くあー。」

 

 大分大人らしい鳴き声で翼を広げてみせました。

 どうやら気に入ったようです。

 こうしてクロちゃんと名付けられたカラスのヒナが仲間に加わったのでした。

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 それからさらに数日が経ち…。

 クロちゃんもかなり大きく育ってきました。

 つい数週間前には掌ですっぽり覆えるくらい小さかったのに、今ではそれでは収まらないくらいです。

 

【ゴマ】「で!やっぱ飛び方を教えるんならこのG・ロードランナーのフレンズ、ゴマ様の出番だなっ!」

 

 すっかり成長して、もうヒナとも呼べなくなってきたクロちゃんに飛び方を教えようという話になりました。

 やはり野生で暮らすにしても今の生活を続けるにしても飛び方はきちんと知っておいた方が絶対にいいはずです。

 そして、その役目は鳥のフレンズであるゴマちゃんには適任なように思えました。

 ただ一つ懸念材料は……。

 

【ともえ】「でもさ?ゴマちゃんは空を飛ぶよりも地面を走る方が得意じゃなかったっけ?」

 

 という事でした。

 ゴマちゃんの元となった動物、G・ロードランナーは空を飛ぶよりも地上を走る方が速いのだ。

 

【ゴマ】「まあ、別に空を飛べないってわけじゃねーんだから何とかなるって。なー。クロー?」

【クロ】「くぁー。」

 

 ゴマちゃんが両手を広げてみせるのに合わせてクロちゃんも同じように真似っこして翼を広げてみせます。

 ゴマちゃんが手を上下させてみるとそれに合わせてクロちゃんも翼を上下させました。

 

【ゴマ】「なっ?クロってかしこいよな。」

 

 それには見守るイエイヌちゃんもともえちゃんもアムちゃんも揃って何度も頷きます。

 みんな揃ってクロちゃんには甘いようです。

 

【イエイヌ】「で、ゴマさん。具体的にはどうやってクロちゃんに飛び方を教えるんですか?」

【ゴマ】「そりゃまあ、習うより慣れろ、だろ?」

 

 ゴマちゃんは頭の翼を広げるとそれをはばたかせて軽く浮いて見せた。

 そのまま数度羽ばたいて軽く10歩分くらいの距離を飛んでみせる。

 

【ゴマ】「よっし、やってみよう……ぜぇ!?」

 

 振り返ったゴマちゃんは素っ頓狂な声をあげました。

 なんせバサバサと翼をはためかせたクロちゃんがゴマちゃんの頭の上にとまったからです。

 

【ともえ】「飛んだね。」

【イエイヌ】「飛びましたね。」

【アム】「がうがう」(コクコク)

 

 三人で顔を見合わせたあと

 

【ともえ・イエイヌ・アム】「「「やったぁああ!」」

 

 と抱き合って喜びました。ところが…。

 

【ゴマ】「いや…あのな…」

 

 ゴマちゃんだけは何だか浮かない顔です。

 それにつられて、ともえちゃんもイエイヌちゃんもアムちゃんも心配顔になってきました。何か問題があったんでしょうか?

 

【ゴマ】「クロのツメが意外と痛いんだよおおおおおっ!?」

 

 どうやら頭の上には乗れない程にはクロちゃんは成長していたようです。

 クロちゃんはごめんね?とばかりに今度はイエイヌちゃんの肩の上に移動しました。

 もう短い距離だったら自由に飛び回れるみたいですね。

 

【ともえ】「やったよ!すごいよクロちゃん!」

【クロ】「くぁー!」

 

 ともえちゃんは大喜びですが、イエイヌちゃんだけはほんの少し苦笑を浮かべていました。

 それは嬉しいけれど寂しい。

 そんな複雑な笑顔でした。

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