けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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⑤『つまりはこれからもどうかよろしくね』

 

 

【イエイヌ】「大きい…。」

 

 それは森に現れたセルリアンを見たイエイヌちゃんの感想でした。

 現れたのは蜘蛛のような足で身体を支えた巨大なセルリアンでした。

 セルリアンは大きい個体ほど強大な力を持っている傾向があります。

 そして、いま目の前にいる『石』を身体に持っている個体であれば尚更です。

 こうなってしまったセルリアンは『石』以外の場所は非常に硬くなってしまい攻撃してもなかなか倒せません。

 これをやっつけるには『石』を砕くのが一番です。

 

【イエイヌ】「でも…『石』に手が届きません。」

 

 セルリアンはイエイヌちゃんの背丈の3倍はありました。

 弱点である『石』はその身体の天辺にあるのです。

 これは一人ではとても倒しきれない、と判断したイエイヌちゃんは仲間達を呼びに行く事にしました。

 ですが…。

 

【イエイヌ】「!?」

 

 セルリアンの目の前にカラスの巣がありました。

 中にはまだ上手く飛べない小さなカラスもいます。

 きっと、クロちゃんよりも後に孵ったヒナ達なのでしょう。

 そう思ったらイエイヌちゃんは何故かセルリアンの前に飛び出してしまっていました。

 

【イエイヌ】「さあ、セルリアン!こっちですよ!」

 

 そう叫ぶとセルリアンはギロリ、と一つ目を動かしてイエイヌちゃんを睨みつけます。

 

【イエイヌ】「何とかここから引き離さないと…!」

 

 そのまま自分を囮にしてさっきの原っぱまで一旦逃げる事にしました。

 そうすればカラスの巣からセルリアンを遠ざける事が出来ますし、ついでに開けた場所の方が戦いやすいはずです。

 ですが、戦いやすくなったのはセルリアンも一緒でした。

 蜘蛛のような6本足で身体を支えたセルリアンはイエイヌちゃんに向けて足を一本振るいます。

 後ろへ飛び退ってかわそうとしたイエイヌちゃんでしたが、一つ誤算がありました。

 セルリアンの足がまるで蛇腹のように伸びたのです。

 十分な距離をとっていたはずのイエイヌちゃんにもその足の攻撃は届いてしまいました。

 

―バシィ!

 

 かろうじて両腕でガードしたものの、イエイヌちゃんの身体は弾き飛ばされてしまいました。

 

【イエイヌ】「くぅ…。」

 

 なんとか立ち上がるイエイヌちゃんですが、セルリアンはとどめを刺そうともう一度足を振り上げていました。

 絶対絶命のピンチです!

 そんな時……。

 

【クロ】「くぁー!」

 

 クロちゃんが鋭い鳴き声をあげながらセルリアンの目の前を横切りました。

 そちらに気をとられたセルリアンはクロちゃんに向けて足を振るおうとします。

 

【イエイヌ】「クロちゃんに手は出させませんよ!」

 

 今度はクロちゃんのおかげで難を逃れたイエイヌちゃんがセルリアンの足に攻撃を仕掛けました。

 自身の掌にサンドスターを集めて、まるで犬が噛みつくかのようにセルリアンの足の一本を握り潰してしまいました。

 しかし、そこでイエイヌちゃんの動きがほんの少し止まってしまいました。

 セルリアンはその隙を逃さずに今度は別の足を蛇腹のように伸ばしてグルリとイエイヌちゃんを取り囲みます。

 ちょうどロープのようになったセルリアンの足はそのまま縮んでイエイヌちゃんを縛り上げて捕まえてしまったのです。

 

【クロ】「くぁー!?」

 

 こうなってしまうと、クロちゃんではイエイヌちゃんを助けられません。

 

【イエイヌ】「く、クロちゃん…、わたしは大丈夫ですから…、おうちに戻ってともえちゃん達を…」

 

 セルリアンの足で締め上げられたイエイヌちゃんはクロちゃんだけでも逃がそうとしました。

 もしかしたらともえちゃん達を呼んで来てくれれば、という期待もしていました。賢いクロちゃんの事です、きっとそれを果たしてくれる事でしょう。

 ですが……。

 クロちゃんはいつまでも飛び去ろうとはしませんでした。

 それどころか、どういうわけかクロちゃんの身体が輝いているように見えます。

 その輝きはサンドスターの輝きでした。

 

【イエイヌ】「な、なんで…?」

 

 セルリアンに締め上げられながらも、イエイヌちゃんはその光景を見守ります。

 やがて、サンドスターの輝きが治まった時にはそこには小さな一人のフレンズがいました。

 黒いセーターに同じく黒のミニスカート。ニーソックスまで黒です。

 そして黒髪、黒目と頭に生えた翼も黒で黒づくめです。

 

【イエイヌ】「クロちゃん…ですよね?」

 

 イエイヌちゃんも、そしてセルリアンまでもがポカーンとその光景を見守っていました。

 あまりの事に一瞬疑問の生まれたイエイヌちゃんでしたが、すぐにそのフレンズがクロちゃんであると確信しました。

 クロちゃんは一度大きく息を吸い込むと…

 

【クロ】「すぅー……みんなあああ!手伝ってええええええ!」

 

 と叫びました。

 するとどういうわけかセルリアンへ向けてカラスの群れが一斉に襲い掛かったではありませんか!

 カラスは巣を荒らす外敵には群れで立ち向かう習性があります。

 クロちゃんの号令でカラスの群れ達はついにセルリアンへ一斉攻撃を始めたのです。

 カラス達を振り払うためにセルリアンはイエイヌちゃんを手放しました。

 解放されて落ちるイエイヌちゃんを受け止めたのは……。

 

【ともえ】「おっと。」

 

 ともえちゃんでした。

 

【イエイヌ】「ともえちゃん…どうしてここに?」

【ともえ】「いやあ。さっきクロちゃんがおうちの窓を叩いて大騒ぎした後にこっちの方に飛んでったから何かあったのかなーって。」

 

 どうやらクロちゃんは、イエイヌちゃんが森に様子を見に行っているウチにともえちゃん達を呼んでいたようです。

 ということは…。

 

【ゴマ】「いよう。遅くなって悪かったな。」

【アム】「おまたせ。」

 

 ゴマちゃんとアムちゃんがセルリアンとイエイヌちゃん達の間に割って入りました。

 

【ゴマ】「うちの可愛い妹分と…。」

【アム】「イヌ…いじめた…。許さない…。」

 

 瞳に強い輝きを宿した二人がセルリアンに一歩を踏み出します。

 その迫力たるや、セルリアンも思わずたじろいで後ずさりを始めてしまう程でした。

 ハッキリ言ってセルリアン終了のお報せです。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

【ともえ】「アタシの!アタシの出番はー!?」

 

 結局、『石』持ちの大型セルリアンといえど、ゴマちゃんとアムちゃん二人の連携の前には一たまりもありませんでした。

 アムちゃんが自慢のパワーでセルリアンの足を折って足止めしている間に、ゴマちゃんが得意のスピードで回り込んで『石』を砕いたのです。

 ともえちゃんはイエイヌちゃんとクロちゃんの二人に万が一にも被害が及ばないように目を光らせていたわけですが、結局出番がありませんでした。

 

【ともえ】「うぅー…。アタシもクロちゃんにいいトコ見せたかったよー。」

 

 と言いつつ、ともえちゃんはちゃっかりフレンズ化したクロちゃんに抱き着きモフモフしていました。

 

【イエイヌ】「あ、あれ?でもみんな、よくこの子がクロちゃんだってわかりましたね。」

 

 目の前でフレンズ化するクロちゃんを見ていたイエイヌちゃんですら一瞬戸惑ったのに、ともえちゃんもアムちゃんもゴマちゃんも何でか自然にフレンズ化したクロちゃんを受け入れていました。

 

【ともえ】「あー。まあ、なんでだろ。見たらクロちゃんだってわかったっていうか…。」

【ゴマ】「だよな。見たらわかった、としか言いようがないよな…。」

【アム】「クロはクロ。」

 

 うんうん、と三人して頷きあっています。なまじ目の前でフレンズ化されたイエイヌちゃんよりも素直に今の事態を受け入れてしまっているともえちゃん達でした。

 

【イエイヌ】「それにしても、なんでクロちゃんは急にフレンズになったんでしょう?噴火とかも起こっていないのに。」

 

 フレンズはサンドスターの吹き出す火山が噴火した時に生まれます。ですがクロちゃんがフレンズになった時は間違いなく噴火なんか起きていませんでした。

 

【ともえ】「多分だけどね。クロちゃんのご飯ってジャパリまんだったじゃない?」

 

 ともえちゃんの言葉に全員が揃って頷きます。

 

【ともえ】「ジャパリまんを食べると、使ったサンドスターも補給してくれるじゃない?」

【ゴマ】「ま、まさか…。」

【イエイヌ】「ジャパリまんに含まれてたサンドスターが身体の中に貯まってクロちゃんがフレンズ化した、って事ですか!?」

 

 ともえちゃんの言わんとしている事がわかってゴマちゃんもイエイヌちゃんも驚きました。

 ですが、当のクロちゃん本人は今はアムちゃんに抱き着かれていました。

 

【アム】「クロはクロ。これからも一緒。」

【クロ】「うん。アム姉ちゃんとこれからも一緒。アム姉ちゃんは暖かい。」

 

 そうです。フレンズ化した今なら、これからも一緒に暮らしていっても何の問題もなくなったのです。

 

【アム】「アム…。お姉さん。」

 

 そしてそれよりもアムちゃんとしてはお姉さんと呼ばれた事が嬉しいようでした。すっごいドヤ顔です。

 

【ゴマ】「クロぉー!あたしは!?」

【クロ】「ゴマ姉ちゃんは走るの速い。飛ぶの上手。」

 

 と褒められるとゴマちゃんもデレっと相好崩しました。

 

【ともえ】「じゃあ、アタシは!?」

【クロ】「ともえ姉ちゃん。ご飯美味しい。」

 

 ともえちゃんもクロちゃんにお姉ちゃんと呼ばれて嬉しそうにしています。

 そんな中でイエイヌちゃんだけはその輪に入れずにいました。

 イエイヌちゃんとしてはクロちゃんがフレンズ化してくれた事は嬉しく思いました。

 ですが、イエイヌちゃんはクロちゃんが野生の生活も選べるように敢えて厳しく接してきたつもりです。

 そんな自分がクロちゃんにお姉ちゃんと呼ばれる資格はあるのだろうか、と思い悩んでいました。

 そんな思いを知ってか知らずか、クロちゃんがてけてけ、とイエイヌちゃんに駆け寄ります。

 そして、手を差し伸ばすとこう言いました。

 

【クロ】「おうち帰ろう。イエイヌ母さん。」

 

 そう呼ばれたイエイヌちゃんの笑顔はそれはそれは嬉しそうでした。

 こうして、ともえちゃん達の暮らすおうちに一人の家族が増えました。

 おうちに飾られるともえちゃんの描いた絵にも、まずはとってもステキな笑顔のイエイヌちゃんとクロちゃんの絵が追加されました。

 きっとこれからも増えていく事でしょう。

 

 

 けものフレンズ2after☆かばんRestartアフターストーリー番外編『はばたけ!黒い翼』

―おしまい―




これにてアフターストーリー番外編『はばたけ!黒い翼』は終了とさせていただきます。
かばんRestartの完全新作はすごく久しぶりでしたが書いてて楽しかったです。

それと、けものフレンズR1周年おめでとうございます!
けものフレンズR投稿祭の企画ありがとうございました。
この機会に併せて色々考える事が出来て非常に楽しかったです。

今後も何か思いつけば、かばんRestartの方も更新したいなと思っていますのでその際には是非よろしくお願いします。
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