けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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こちらの章は、けものフレンズからけものフレンズ2までの間の物語となっています。
かばんちゃんがかばんさんになるまでの間にどんな事があったのかを自分なりに描いてみました。

海の外への冒険からサーバルちゃんを失って戻って来たかばんちゃんがどうやって過ごしてかばんさんになっていったのか。

よろしければお付き合い下さい。


かばんResart前日譚
①『おさなので』


 ここはジャパリパークの居住区。

 かつてイエイヌのフレンズが一人で住んでいた場所であるが、今はパークの何でも屋となった皆が暮らす賑やかな場所となっていた。

 今日は庭に設えた新しい屋外テーブルで食後のお茶の時間だ。

 もちろんお茶の給仕はイエイヌである。

 用意したお茶をティーポットからカップに注いで皆へと配る。

 

「はい、どうぞ。かばんお姉ちゃん。サーバルさん。」

「ありがとうイエイヌちゃん。」

「ありがとー!」

 

 テーブルにつくかばんさんの右隣はサーバルの指定席だ。

 では左隣はというと…。そこは実は激戦区なのだ。

 果たして今日は誰がそこに座るのか。

 

「はい!じゃあ、かばんお姉ちゃんの隣に座りたい人っ!」

 

 ともえの号令に一斉に手をあげるフレンズ達。

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 手を挙げたのはイエイヌ、アム、アライさん、それにともえの4人だ。

 

「あ…。じゃあボクもたまには。」

 

 とキュルルまで参戦する始末。

 さて、どうやってかばんさんの隣の席を決めるか…。やはりここは公平にジャンケンにでもすべきか。

 そんな思案を巡らせて全員が白熱のジャンケン勝負を始めようとした刹那。

 

―トコトコトコ。

 

 やって来たコノハ博士があっさりとかばんの隣の席に座った。

 

「あ、あぁああああああっ!?ちょ、コノハちゃん博士ぇー!?ズルくない!?」

 

 それに気づいたともえが猛抗議をするが博士はどこ吹く風だ。

 さらに空いてるコノハ博士の隣にミミ助手が座って鉄壁の構えになってしまった。

 

「何を言うのです、ともえ。我々はこの島の長なので、どこにいようが誰にも文句など言わせないのです。」

「そうなのです。我々はこの島の長なので。長の特権というものなのです。」

 

 そうして涼しい顔の博士と助手である。

 そんな二人の様子をかばんさんはクスクスと忍び笑いを漏らして見ていた。

 

「ふふ。なんだかそう言われると昔の事を思い出しちゃうな。」

 

 ともえはなおも抗議しようかと思ったけれど、かばんさんがそうしているのを見ると、まあいいか、という気分になってきた。

 それよりも昔の事、とは一体何の事だろう?

 

「あー…。いやあ…。なんか昔の話って結構恥ずかしいなあ…。」

 

 気になっているともえ達にかばんさんはなおも話を渋る。

 

「よいではないですか。かばん。話してやるのです。」

「何なら我々が話してやってもよいのですよ。」

「もうー!?博士も助手もー!?」

 

 だが、黙っていてもどうやら昔の話をされてしまうらしい。

 それなら自分でした方がまだマシか。とかばんさんも覚悟を決める。

 

「そうだね…。これは私が海の外への旅から帰って来たばっかりの頃のお話だよ。」

 

 そうして話がはじまると、ともえもキュルルもイエイヌもアムも大人しく適当な席につく。

 ついでに見守っていた他のフレンズ達、フェネックやカラカル、アルマーやセンちゃん達も席に座って聞く体勢に入った。

 

「ちょうどね。その時にも今日と同じ事を博士が言ってたんだ。」

 

 こんな具合にね、とかばんさんは昔話を始めた。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 数年前のサバンナ。

 

「かばん。本当に行ってしまいますの?」

「はい。カバさん。お世話になりました。」

 

 幾人ものフレンズが集まる人気の水飲み場、その主であるカバは心配そうに目の前のヒトの女の子を見る。

 かつてここにサーバルと一緒に来た赤い毛皮と柔らかい甲羅のような何かを背負った女の子で、彼女の名前はかばんという。

 初めてこの場を訪れた時、彼女は頼りなく、何も出来ないと思っていた。

 けれど、彼女は巨大セルリアンからパークを守り、そして海の外へヒトを探す旅に出たのだ。

 その時の事をカバは昨日の事のように思い出せる。

 あの日、海の外へ旅立ったかばんはきっとどこに行っても自分の力で生きていけるだろうと確信できる程にたくましく成長していた。

 だから誰もが快く送り出したのだ。

 それがまさかあんな結末になるとは。

 かばんの旅にはサーバルキャットのフレンズで彼女のパートナーとも言うべきサーバルと、アライさん、フェネックの3人も同行していた。

 けれど、戻ってきた中にサーバルはいなかった。

 あまりの事態に、誰もが何が起こったのかを問い質す事が出来なかった。

 海の外から戻ったかばんはしばらくの間、このサバンナでカバと一緒にいた。

 

「カバさん。ボクを鍛えてくれてありがとうございました。」

「いいえ。貴女は元から強かったですよ。それに、海の外で見つけてきたという技もすっかり身に着けたようですし。」

 

 二人の様子を見ていたフレンズ達は狩りごっこみたいな何かをしていた、と噂していた。

 その狩りごっこはサバンナの実力者であるカバをして互角と言われる程だったらしい。

 なんでも、かばんは海の外で見つけた技であるジュードーだとかカラテだとかを使っていたという。

 

「かばん、貴女は強くなりました。今なら一人でも生きて行けるでしょう。ですが、ここで私や他のフレンズと助け合って暮らしたっていいのですよ。」

 

 それはカバの願いであった。

 かばんは強くなった。

 それは間違いない。

 けれども、何というか今にも消えてしまいそうな印象があるのだ。

 だから、出来れば側にいて欲しい。

 そんなカバの願いにかばんは首を横に振った。

 

「お気持ちだけで十分ですよ。」

 

 かばんは次は図書館に向かうらしい。

 そこで色々と調べたい事がある、と。

 

「じゃあ、ボク行きますね。」

 

 一人で行くという彼女の意思は固い。

 だからカバは引き留める事をしなかった。

 

「必ずまた来るんですのよ!約束ですからね!」

 

 代わりにそう言って見送るのが精一杯だった。

 振り返って手を振り返すかばんの顔には笑顔が見られた。

 けれどもその笑顔は却ってカバの胸を締め付ける。

 

「あの子にとって、誰もサーバルの代わりにはなれませんわね。」

 

 彼女の隣にサーバルがいない。

 それだけでこんなにも不安になるものなのか…。

 

「かばん。貴女の隣に誰かがいてくれるように祈っていますわ。」

 

 その願いと共にカバは彼女が見えなくなるまで見送った。

 

 これは、かばんちゃんがかばんさんになるまでの、そんなお話。

 

 

けものフレンズ2after かばんRestart 前日譚①『おさなので』

 

 

「で?かばんは来るなりすっかり本の虫なのですが相変わらずですか?」

 

 ジャパリ図書館の主にしてこの島の長でもあるアフリカオオコノハズクのフレンズ、博士が訊ねる。

 

「ええ。別に本を読むのは構わないのですが、一体いつ寝ているのやら。」

 

 答えるのは博士のパートナーでありもう一人の長であるワシミミズクのフレンズ、助手である。

 かばんはといえば、図書館の一角に根っこでも生えたかのように陣取ってずーっと本を読んでいた。

 時折本のページをめくったり、本を取りにいったりする以外は何にも動いてる様子もない。

 

「気持ちはわからなくもないのです。」

 

 それを見守る博士もかばん達が帰って来た時の事は聞き及んでいたし、その時の状況から何があったのかを察してもいた。

 だから今彼女がこうして無茶とも言える行動をとっている事だって無理もない事だとは思っていた。

 

「け、れ、ど!」

 

 博士は言いながら怒りの表情を露わにした。

 

「かばんはここに来てから<りょーり>を作っていないのですよ!帰って来たなら来たで島の長であるこの私に<りょーり>の一つも振る舞うのが道理というものなのです!」

 

 それを聞いていた助手は何とも博士らしい、と感想を抱いた。

 

「うぅー…!もう我慢ならないのです!」

 

 どうやら博士はとうとう業を煮やしたらしい。

 ずんずんとかばんが陣取るテーブルへと進んでいく。

 

「ちょ!?博士、何をするつもりなのですか!?」

 

 助手が制止の手を伸ばすも博士はどうやら行動をやめるつもりはないらしい。

 何をするのかと助手がハラハラと見守る中、博士はかばんの座っていた椅子の隙間に自分のお尻を割り込ませた。

 そうして、じーっとかばんの方を見る。

 

「……?博士さん?もしかして、ここ、お邪魔だったりしました?」

 

 この攻撃にはさすがにかばんだって反応せざるを得ない。

 少しばかり怒ったようなむくれた表情で見上げてくる博士にかばんは困惑した。

 

「ふん、別に邪魔ではないのです。私はここにいたい。だからいるのです。」

 

 邪魔ではない、という事はここにいてもいいという事なのだろう。

 かばんはホッとしたけれども…。

 

「でも、ちょっと本が読みづらいといいますか…。」

 

 いくら博士が小さくても一つの椅子に二人腰掛けるのは中々大変だ。

 集中して読書なんて出来るはずもない。

 

「文句は言わせないのです。私はこの島の長なので。どこにいようと誰にも文句など言わせないのです。」

 

 博士はどうやらどくつもりはないようだった。

 だいたいにして他に空いている椅子だってあるというのに。

 もしかしてこの椅子がお気に入りとか?

 そう思ったかばんは自分がどいて空いている椅子に座り直した。

 しかし、そうしても博士はピッタリとその後をついてかばんと同じ椅子に座ったではないか。

 

「あ、あの…。博士さん?」

 

 ますます困惑するかばんに博士はやはり怒ったままの表情で言う。

 

「だから私はいたい場所にいるだけなのです。」

 

 なんとも困ったかばんは助手に助けを求めて視線をやる。

 しょうがない、とでもいうように助手もこちらにやって来た。

 助けが来たか、とホッとするかばんの期待とは裏腹に、なんと助手は博士とは反対側にお尻を乗せてかばんをサンドイッチにしてしまった。

 

「かばん、お前の負けなのです。博士はこうなると頑固なのです。」

 

 両側から挟まれて窮屈な思いのかばんは相変わらず話が見えない。

 窮屈ではあるけれども、二人の体温までも感じ取れる。

 この暖かさは随分と久しぶりだな、なんて心のどこかで感じていた。

 

「まったく、かばん。ヒトはかしこい生き物のはずです。なのにわかりませんか?」

 

 ふう、やれやれ、と肩をすくめてみせた博士は続ける。

 

「我々はお前の隣にいる。そう決めたのです。何か文句でもあるのですか?」

 

 逆側を見やれば助手がニヤリとしていた。

 

「文句があっても受け付けないのです。」

 

 そして二人の声が揃った。

 

「「我々はこの島の長なので。」」

 

 かばんは二人を交互に見ていたがじっと見つめ返してくるばかりだ。

 何をどう反対したって聞かないぞ、と顔に書いてあった。

 なので苦笑と共にかばんは観念した。

 

「いえ、はい。文句ないです。お二人はこの島の長なので。」

 

 その答えにようやく博士も満足したようだ。

 

「わかればいいのです。」

 

 満足気に頷く博士の腹がぐぅー、と音を立てた。

 それを見た助手が苦笑と共に言う。

 

「かばん、我々はお腹が空いたのです。今日はカレーがいいのです。」

「え、ええと…今からですか?」

「かばん、お前もどうせ腹を空かせているはずなのです。図書館に来てからロクに食事をしていないのは知っているのですよ。」

 

 助手に言われてかばんも気が付いた。

 ずっと集中して本を読んでいたせいで殆ど食事をしていなかった事に。

 博士はそれを聞くと再び頬っぺたを膨らませて見せた。

 

「それはいけないのです。いいですか?かばん。美味しいものを食べてこその人生なのですよ?」

「さぁ、かばん。わかったなら<りょーり>を作るのです。我々はおかわりも待っているのですよ?」

 

 二人に迫られては抵抗なんて出来るはずもない。

 仕方ない、と調理場へ向かうかばんであった。

 

「もう、わかりました!お二人ともわかりましたから!そんなにくっついたら料理しづらいですったらー!」

 

 二人に(火を使う時以外)くっつかれたまま作ったカレーは随分と美味しかったかばんだったとさ。

 

 

 

けものフレンズ2after かばんRestart 前日譚①『おさなので』

―おしまい―

 

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