けものフレンズ2after☆かばんRestart   作:土玉満

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⑥『いつかまたどこかで』

 居住区跡地。

 そこでは、昔話を語る博士と助手とかばんに皆が聞き入っていた。

 

「えぇー!? じゃあコノハちゃん博士とミミちゃん助手とかばんお姉ちゃん三人で旅したの!? いいなー!?」

「まったく、何を言うのです。大変な事が沢山あったのですよ」

「ええ。かしこい我々だからこそ成し遂げられたのです」

 

 羨ましがるともえのオデコをツンツンする博士。

 今日のお茶会はかばんと博士と助手が語る昔の思い出話で盛り上がっていた。

 

「で、で!? その先ってどうなったの!? パークの危機って解決したの!?」

 

 一人大騒ぎのともえである。

 なんたって、もしも解決していないのだとしたら大問題だ。こうしてのんびりお茶している場合ではない。

 けれど、当のかばんはのんびりとティーカップを傾けてから言った。

 

「もちろん解決したよ。今は少しずつだけどパークのライフラインも修繕されているんだ」

 

 その言葉に、話を聞いていた全員が「「「おぉー……」」」と感嘆の声を漏らす。

 

「でも、どうやって?」

 

 やはり気になるのはそこである。

 

「キュルルちゃんは研究所の事を知ってるよね。あそこにパークの危機を解決する鍵があったんだ」

 

 そこにあった鍵とは一体……。

 

 

 

けものフレンズ2after☆かばんRestart 前日譚⑥『またいつかどこかで』

 

 

 再び時は昔に遡る。

 紆余曲折の大冒険を経て、かばんと博士と助手の三人は目的地の研究所へとやって来た。

 ジャパリバスが使えると言っても、決して楽な道のりではなかった。

 

「連日のキャンプ飯というのもなかなか乙なものでしたね、博士」

「ええ。屋外だからこそ出来る《りょーり》というのも悪くなかったのです、助手」

「作ってたのいつも私だったんだけどね」

 

 ほんの少し髪も伸びたかばんは博士と助手の言葉に苦笑する。

 黒いジャケットも大分身の丈にあっていたし、自分の事を呼ぶ時も『ボク』から『私』に変わっている。

 道中ではジャパリまんで食事を済ませる事だってないではなかったけれど、博士と助手はやはり事あるごとに料理をねだった。

 二人はいつでも美味しそうに食べてくれるので作り甲斐はあるのだが、旅の空では献立を考えるのだって一苦労のかばんであった。

 なんだかんだで、道中一番苦労したのは食事の事だったんじゃないだろうか、なんて思ってしまう。

 それはともかくとして、とうとう目的地の『けんきゅうじょ』へ辿り着いた。

 三人の前には巨大な門扉が固く閉ざされていてこのままジャパリバスで中へ進むのは難しそうだ。

 

「どうするです? かばんを抱えてひとっ飛びすれば、この門を飛び越すのだってわけないとは思うのです」

 

 確かに博士の言う通り、門扉は高いけれど、空を飛べるフレンズからすれば有って無きが如しである。

 ジャパリバスを置いて中に進めば、もしかしたらこの門扉を開ける方法もわかるかもしれない。

 一旦バスから降りて空から中へ入ろうかと思っていたけれど、そこでかばんが腕に着けているボスウォッチが声をあげた。

 

「カバン。ボクならこの扉を開ける事がデキルヨ」

「本当!? ラッキーさん!」

「マカセテ」

 

 ボスウォッチが何度か明滅した後、扉が軋んだ音を立てて開いていく。

 

「ふむ。やはり、この危機にはかばんが必要なのです」

「ええ。ヒトでないと反応しない機械なんかがあるかもしれないのです」

 

 それを見て博士と助手はお互いに頷き合う。

 やはりかばんを“ぷろじぇくとりーだー”に選んだのは間違いではない、と。

 

「もう、ラッキーさんだって頑張ったんだから。ね、ラッキーさん」

「マカセテ」

「ではそういう事にしておくのです」

「我々の言葉には反応しないですが聞こえてはいるはずなのです。ボス、助かったのです」

 

 そうしてお礼を言われれば、かばんには心なしかラッキービーストが照れているように思えた。

 そのままジャパリバスで開いた門の先へと進む。

 大きな門扉を潜り抜けた先には大きな建物があった。

 それこそが、目指していた『けんきゅうじょ』なのだろう。

 

「かばん。この先にパークの危機を救う重要な鍵があるのですね」

「はい」

 

 博士の確認にかばんは頷いて見せる。

 現在訪れようとしているパークの危機とは、ジャパリパークの各種施設を維持していたロボット、ラッキービーストの減少が原因だ。

 ラッキービーストの数が少なくなれば、フレンズ達の生命線ともいうべきジャパリまんの生産、配布だっていずれはままならなくなるかもしれない。

 機械は手入れをしなければ衰える一方で、その未来は必ず訪れる。

 

「けど、ジャパリパークのスタッフは、その備えもしていたんだ。」

 

 かばんが旅した海の外にはヒトが遺したであろう遺物や資料がそこかしこに残っていた。

 そのどれもがジャパリパークの存続を願っていた。

 

「ヒトはジャパリパークから去った。でも、いつか戻るまでフレンズさんが暮らして行けるようにラッキーさんや農園やジャパリまんの生産施設を残したんです」

 

 そして、かばんは旅の中でもう一つ、ヒトが遺していたあるものの存在を知っていた。

 

「それは……。ラッキーさん達の為の病院ともいうべき施設と、もう一つ……。」

 

 かばんが『けんきゅうじょ』の扉に左腕に着けたラッキービーストのコアを近づける。

 すると『けんきゅうじょ』の扉が開き、暗く沈黙していた廊下に明りが灯る。

 長い廊下は奥へと三人と一機を誘っているようだ。

 

「じゃあ、博士、助手……。一緒に行ってくれる?」

 

 未知の領域への不安にかばんの顔が曇った。

 

「まったく、かばん。“ぷろくじぇくとりーだー”がそんな顔をするものではないのです。そ・れ・に。私を誰だと思っているのです? かばんの助手の博士なのですよ?」

「そして、私はかばんの助手の博士の助手なのです。なので、かばん。ここはやり直しを要求するのです」

 

 かばんにも二人が何が言いたいのか分かった。

 

「うん! 行こう、博士、助手!」

 

 力強い言葉に博士も助手も満足そうに頷く。

 長い廊下には埃が積もっていて、長い時間手入れされていなかった事が伺える。

 そして、ある一室に辿り着く。

 

「これがラッキーさんにとっての病院。自動メンテナンス装置です」

 

 そこには大きな箱型の機械が鎮座していたが、どう見ても稼働しているようには見えない。

 それに自動メンテナンス装置に続くベルトコンベアの上には何人ものラッキービーストが物言わぬ状態で座っている。

 きっと、稼働するのに支障が出た為にメンテナンスを受けに来て、自動メンテナンス装置が動いていなくて、そのまま待機モードに入ったままなのだろう。

 そこに並んでいるだけのラッキービーストが本来の仕事をこなせていないのならば、ジャパリパークの機能維持にだって不具合が出て当然だ。

 

「かばん。この機械を修理する、というわけですか?」

 

 博士が言うように、そうすれば徐々にラッキービーストの数だって元に戻って行くだろう。

 しかし、かばんは被りを振って否定した。

 

「ううん。こういった施設はここだけじゃなくて色んなところにあるらしいんだ。だからここだけを修理してもダメなんだよ」

 

 つまり、ここの復旧は焼け石に水という事なのだろう。

 だとしたら、苦労して辿り着いた目的は一体何だと言うのか。

 かばんは自動メンテナンス装置のある部屋を抜けてさらに奥へと進む。

 

「このラッキーさんがパークの危機を救う鍵を握っているんだ」

 

 そこには明らかに他のラッキービーストとは違う雰囲気を纏った一機がコネクターに繋がれたまま眠っていた。

 赤いカラーリングに、目元は黒いサングラスのようなもので覆われている。

 そして何より尻尾が異質だった。

 その尻尾部分は動物を模したものではなくクレーンを小さくしたような指のついたアーム状になっていた。

 

「ラッキービーストRepair&Maintennance Model Prototype。記録によると呼び名は『ラモリ』っていうみたい。これがヒトが残したもう一つの備えだよ」

 

 かばんの解説によると、どうもこういう事らしい。

 ラッキービースト達はジャパリパークの農園やジャパリまんの生産や配布、設備の補修や保全などを行って機能維持に努めて来た。

 そのラッキービースト達を修理するのが各地に点在する自動メンテナンス装置だ。

 そして『ラモリ』と呼ばれるラッキービーストは、その自動メンテナンス装置の修理や補修や保全を行う為のラッキービーストなのだ。

 

「つまり、このラモリさんを起こせば、ラッキーさん達の病院も再開するし、そうなったら元気になったラッキーさん達がパークの危機を解決してくれるってわけ」

 

 そう結んだかばんに博士と助手は「「おぉー」」と思わず拍手してしまう。

 それが本当であれば既にパークの危機は解決したも同然だ。

 あとは、この『ラモリ』というラッキービーストを起こせるのかどうかだ。

 

「ラッキーさん、どう?」

 

 やはりこういう時に頼るのは腕に着けたもう一人の相棒だ。

 かばんの腕に着けられたラッキービーストコアはしばらく明滅を繰り返した後に言う。

 

「ダイジョウブ。マカセテ」

 

 すると、すぐに『ラモリ』が安置されていた台座に光が灯る。

 

『ザンテイパークガイド、カバンによる、起動申請ヲ受諾。ラッキービーストRepair&Maintennance Model Prototype、起動シマス』

 

 最初に機械音声がそう告げると、『ラモリ』の目に青い光が宿った。

 もっとも、サングラス越しなので、すぐにその光は見えなくなったが。

 俯き加減だったのが、今は真っ直ぐにかばんと博士と助手を見ている。

 ちょこちょことした足取りでかばん達の方へ近づくと、固唾を飲んで見守る彼女達の前で第一声を発した。

 

「アー。とりあえず、はじめまして、でいいのカ? 俺はラモリ。気楽にラモリさんと呼んで敬ってくれていいゾ」

 

 それに、思わずジト目になってしまう博士と助手だ。

 

「なんかこのボスは偉そうなのです」

「島の長である我々に対しても偉そうなのです」

 

 そうやって文句を言っていたら、ラモリさんは博士と助手に向き直った。

 

「お前達は、アフリカオオコノハズクとワシミミズクのフレンズだナ? 古くは知恵や知識の象徴と見られる事もあってフレンズになってモその傾向は強く好奇心と知識欲に……」

 

 ペラペラと喋り続けるラモリさんに博士も助手も驚いて目を見開いていた。

 

「ぼ、ボスが……」

「ボスが我々と喋っているのです……」

 

 ラッキービーストはフレンズに過度の干渉が禁じられている。

 その為、いくつかの例外以外ではフレンズとおしゃべりする事すら難しいのだ。

 

「アー。俺の場合ハ、パーク内の設備の不具合とかヲ聞き取りする必要があるからナ。フレンズとの会話もある程度認められているんダ」

 

 言って、えっへんとばかりに胸を張ってみせるラモリさん。そうなるとまるで上を見上げているようになる。

 何とも偉そうだ。

 

「それにしてモ、コイツは一体全体どうしたっていうんダ? パーク内の設備稼働率が危険水準ギリギリじゃネーカ」

「ええと、それには色々と説明しなきゃいけない事が沢山あるんです。聞いてもらえますか?」

 

 かばんはラモリさんの前に膝を折って座ると、話はじめた。

 このジャパリパークに今はヒトがいない事。

 ここでフレンズ達が暮らしている事。

 そして、ヒトがいなくなったせいで設備維持も出来ていない事を。

 

「なるほどナ。それデ試作機のこの俺の出番というわけダ」

 

 どうやらラモリさんは自分の役割を理解したらしい。

 

「そうだナ。とりあえズここの自動メンテナンス装置の修理からダナ」

 

 言うと、ピョインピョインと跳ねて自動メンテナンス装置がある部屋へ移動。

 換装されたアーム状の尻尾の先端を器用に使ってメンテナンスハッチを開け始めた。

 

「あー、こりゃあヒドいナ。駆動油が古くなってコビりついてやがル……。だがまぁ洗浄すれバどうとでもなるナ」

 

 言いつつ、ラモリさんは自動メンテナンス装置を分解していく。

 

「ねえ、ラモリさん。私達も何か手伝える事はある?」

「そうだナ。猫の手だって借りたいくらいだから助かるゼ。そうだナ。暫定パークガイドのお嬢さんにハ、外したパーツの洗浄手伝いを頼むゼ」

「ふむ。それくらいなら我々でも何とかなりそうですね」

「そうですね。皆でやればその分早く仕事も終わるでしょう」

 

 そうして、皆で汚れたギアやパイプなどの掃除だ。

 油汚れに塗れながらも作業を進めていく。

 再び洗浄の終わったパーツを組み直していくラモリさん。

 かなりの大仕事になったが夜にはどうにか仕事を終える事が出来た。

 

「サテ。これで動くト思うんだがナ」

 

 ラモリさんが言いつつ起動手順を試すと、自動メンテナンス装置はガタガタと音を立てて動き始めた。

 思わず手が油まみれになっている事も忘れて全員で手を打ち合わせる。

 非常にゆっくりとしたスピードではあるものの、稼働に支障のあるラッキービースト達の修理が始まった。

 

「こうした施設は他にモあるからナ。俺はこれからそいつラの修理に向かうゼ。そうすりゃあパークの設備稼働率も改善されるだろうヨ」

 

 言ってラモリさんはアーム状の尻尾で力こぶでも作ってみせるかのようなポーズをしてみせる。

 

「それだったら、私達もそれを手伝うよ。一人じゃ移動だって大変でしょ? 私達が手伝えばジャパリバスだって使えるし、博士と助手がいてくれるから空だって飛べるし」

 

 かばんの提案にラモリさんは意外そうな顔を見せた。

 パークスタッフらしいかばんというヒトはともかく、フレンズまでもが手伝ってくれるとは予想外だったからだ。

 

「このままじゃ、フレンズさん達が今までのように生活できなくなるかもしれないんでしょ? だったら私も出来る事をしたいんだ」

「こうなったラ、かばんハ、頑固だからネ」

 

 かばんが腕に着けたラッキービーストコアまでもが加勢してくる。

 これは渡りに船だ。仕事を手伝ってもらう事にしよう。

 

「わかっタ。確かにその方が効率もイイ。それに移動中にセルリアンに出くわしたらフレンズの協力があった方が心強いしナ」

「うん、博士と助手は島の長だから、セルリアンとの戦いだってすごく上手なんだよ」

 

 そうしてかばんに褒められたら博士と助手は胸を張ってえっへんとでも言いたげにしていた。

 実際ここまでの道中だって、何度となくセルリアンにも出くわしたが博士と助手のおかげで事なきを得て来たのだ。

 少しばかり自慢したってバチはあたらない。

 

「その代わり、仕事が早く終わったら一つお願いしたい事があるんだ」

 

 かばんの言葉にラモリさんは小首を傾げる。

 一体何を頼みたいのだろうか、と。

 

「ラモリさんって設備の改造も出来るよね? だから……」

 

…………

……

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 さばんなちほー。

 そこでは今日もロバのフレンズがかつて移動販売車であった車の残骸を縄張りに、他のフレンズ達にジャパリまんを配っていた。

 そこは『パンのロバ屋』と呼ばれていてジャパリまんをラッキービースト達が運んで来てくれる。そこからフレンズ達がそれぞれ貰っていくのだ。

 けれど、今日は少しばかり様子が違った。

 いつも色とりどりのジャパリまんが並ぶ『パンのロバ屋』に、今日は細長いジャパリパンや袋に入ったジャパリチップスや瓶に入ったジャパリソーダなども並んでいた。

 ジャパリまんを貰いに来たカバも見た事のない食べ物に目を丸くする。

 

「ロバ? これはどうしたのかしら?」

「ああ、カバさん。実はですね。なんでもヒトのフレンズが考えたものをボス達が作って運んで来てくれたそうなんですよ」

「あらまぁ。じゃあ私も今日はそちらを頂いてもいいかしら?」

「ええ! もちろんです! それにまだまだ新しい食べ物も追加されるらしいですよ。ジャパリコロネやジャパリスティックとか……」

 

 それを聞いてカバはまたも、あらまぁ、と口元に手を当てた。

 これをしたというヒトのフレンズというのは一人しか心当たりがない。

 

「かばん。元気でやっているようですわね」

 

 食べ物が増えた事よりも何よりも、かばんが元気に過ごしているらしい事がわかって嬉しく思うカバである。

 そして……

 

「かばん。あなたはしっかり約束を守ったのですわね」

 

 かつて海の外へ冒険に行く時、かばんはこう言った。

 

『美味しいものや楽しい事を持って帰って来ます』

 

 と。

 無事に帰って来てさえくれればそれでよかったのだが、こうして美味しいものが皆に届くようにしてくれるだなんて。

 そうやって感慨深げにしていたカバであったが、その傍らをヒョウ柄のカラーリングに塗られたラッキービーストが歩いていくのを見て、またも驚愕に目を見開く。

 そんなラッキービーストは今まで見た事はなかった。

 だが、このサバンナの風景に馴染んでいるような気がする。

 きっとこれも、かばんの仕業なのだろうな、なんて思えばカバの口元には自然に笑みがこぼれた。

 と。

 カバは気が付いた。

 まだフレンズになりたての気配を感じさせる二人に。

 茂みからこちらを伺っているようだ。

 

「そこのお嬢さん達。こちらにいらっしゃいな。美味しいものがありますから一緒に食べましょう」

「そういえば、先日噴火がありましたから、その時に生まれた子かもしれませんね」

 

 茂みに向かって声を掛けると、ロバもそれを察したのか、ジャパリまんやジャパリパン、ジャパリソーダの入ったバスケットを茂みの近くに置いてくれた。

 すると、茂みの奥で声がする。

 

「ねえねえ、カラカル。ご飯くれるって! 行こうよ! アレ、絶対美味しいヤツだよ!」

「わ、わかるもんですか! ちゃんと気をつけて充分警戒しながら行かないと……ってちょっと待ちなさいよサーバル!?」

 

 そんな事を言いながら出て来たのは二人の猫科のフレンズであった。

 その姿を見てカバは思う。

 一度失ってしまえば取り返しのつかない事はある。けれども、また新しい絆を紡ぐ事だって出来るのだ、と。

 

「はじめまして。私はカバのフレンズですわ。あなた達は何の動物ですかしら?」

 

 もしかしたら、いつかどこかで出会いを果たして再び絆を育む日が来るかもしれない。

 猫科二人の自己紹介を聞きながら、カバはそう思って遠くの空を仰いだ。

 

 

の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の  の

 

 

 再び時は現在に戻る。

 

「ってわけで、色んな場所でラッキーさん達の病院を直して回るついでに、ジャパリまんの製造工場を改造して、ジャパリパンとかジャパリチップスとか他の食べ物も作れるようにしたんだ」

「ソレカラ、ラッキービーストを各ちほーに合わせたカスタム仕様にできるようにしたんダヨ」

 

 かばんの後をボスウォッチが続けてとうとう話が終わる。

 

「ねえねえ、気になってるんだけど、その『ラモリさん』ってラッキーちゃんは今どこにいるの?」

 

 はいはい、とともえが挙手しながら訊ねた事は全員が気になっていた。

 

「多分だけど、今はジャパリライナーの修理をしてるんじゃないかな。あれは線路も大分傷んでたから大仕事になるって言ってたし」

 

 かばんの答えに納得の表情を見せる一同。

 確かに、ジャパリライナーは経年劣化やセルリアンの仕業などで線路が途切れてしまっている箇所が多かった。

 それを直すとなれば、かなりの時間がかかるだろう。

 

「そっかー。ラモリさんかぁー。会ってみたかったなあ」

 

 ポツリと呟くともえの後ろから声がした。

 

「呼んだかカ?」

 

 と。

 慌てて後ろを振り返ってみると、そこにはサングラスをかけた赤色のラッキービーストがいた。

 先の話の通り、尻尾が動物を模したものではなく、機械式のアーム状になっている。

 間違いない。

 

「ラモリさんだ……」

「オウ、そうだゾ。」

 

 先程の話に出て来たラモリさんが事もなさげに応える。

 

「お久しぶり。ラモリさん。ジャパリライナーの修理は終わったの?」

「アア。つい先日ようやく線路の補修が終わったところダ。ったくあちこち崩落してたからエライ時間と手間がかかったゼ」

 

 ちなみに、これもラモリさん一人の仕事ではない。

 自動メンテナンス装置が稼働したおかげで再び働けるようになったラッキービースト達も手伝っての大仕事であった。

 

「その甲斐あって、ジャパリライナーで各ちほーを周遊できるようになったゼ」

 

 そう言って胸を張ってみせるラモリさん。

 

「はいはーい! アタシ、乗りたい! そのジャパリライナーっていうの乗ってみたい!」

 

 ともえの提案に誰もが頷いていた。

 

「なら、テストがてら周遊してみるカ」

 

 ラモリさんの返事に歓声が沸いた。

 失われるばかりではない。

 このフレンズ達の楽園となったジャパリパークはみんなの努力によってこれからも平和に続いていくのだろう。

 

「みんなー! 早く早く!」

 

 ともえが皆を急かす。

 とりあえず、今は復旧したジャパリライナーをみんなで楽しもう。

 

 

けものフレンズ2after☆かばんRestart 前日譚

―おしまい―




 けもフレR秋の投稿祭用に書き直したお話も今回で一区切りとなります。
 かばんちゃんがかばんさんになるまでの間のお話を書かせていただきました。
 以前書きかけで終わらせていたネタを書き切る事が出来て楽しかったです。
 皆様にもお楽しみいただければ幸いです。
 お付き合いいただきありがとうございました。

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