開拓のマイクラ地上隊(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新。 これで終わろうかなー、とも考えていたり……。


もうひとつのゲートと大動乱

「イケスカ上空で戦闘!?」

「あれは……わっかを巡っての戦い!?」

「ラハマで見たようなヤツか!」

 

出来たばかりの大怪鳥なブーンが雲間を行く。 そんなテストフライトをクラフターがしていたら、既存の大都市で大騒ぎが起きた。

最初こそクラフターの所為かと思ったが、どうも違うようだと搭乗する仲間が伝えた。

言われるがままに他も見下ろすように低空を見やれば空が騒がしい。 ブーンがたくさんいて、互いを攻撃し合っている。

まあ、それは規模こそ大きいものの想像し得る範疇として……クラフターが食い入るように観察するのは別にあった。

 

「見えるか!? わっかだ! 火薬を満載させた羽衣丸を わっかに突入させて、消滅させる!」

「飛行隊は羽衣丸を守るんだ!」

「イサオの思い通りにさせるな!」

「ユーハングに任せれば?」

「気紛れ過ぎてアテに出来ない!」

「だよね〜!」

 

見覚えのある 空に浮かぶ わっか だ。 初期スポーン地点と同じものと見て良い。

クラフターは溜息した。 ゲート類とは どうも、村人を興奮させて荒らしを生ませている気がしてならないからだ。 ネザーゲートを造らないのも、この辺が理由だ。

初期スポーンの わっか を黒曜石で覆う案が出ているのも、こういう荒らし行為があるからだ。 見ろ。 耐久がなくなったブーンが火の玉となって地上に激突した。

舗装された地面は砕け、小火が起きた。 それが彼方此方で起きている。 既存の都市がデコボコになっていく。 荒れていく様は見ていて悲しい光景だ。 補修が大変そうだ。 クリーパーと どっちが良いのだろう。

 

「むっ!? 富嶽接近、総員……って、なんじゃありゃああ!?」

「どうした……って、なんだアレはああああ!?」

「戦闘中にナニを……って、うおおおお!?」

「富嶽にユーハングの武装が付きまくってるうううう!?」

「富嶽に付いてるというより、武装に富嶽が付いてんじゃね? というか、どうして飛べるのおおおお!?」

「飛行機というより塊が動いてるように見えるよ!?」

 

忌まわしくも疎ましい光景を払拭せん。

青空の下にいながら自由と創造を束縛する荒らしがいる場所は晴れても闇の世界だ。

だが臆する事はない。 眠りに就き自らも闇へ沈むには至らない。 出くわしたモノが悪夢ならば、それこそTNTで消しとばしてしまえ。

そうして楽しい夢にしよう。 いや、悪夢すらも楽しもう。 寧ろ大義名分で動けて実験も行えて面白いのだから。

 

「いけない! 富嶽に敵の飛行隊がッ!」

「いくらユーハングでも、単騎では!」

「しかもマトがデカいんだ。 これじゃ直ぐに撃墜され……なんかスゴい撃ち始めたぞ!?」

 

実験体がワラワラとやって来た。 一直線ではなく、散り散りに様々な方向から攻めて来ようとしている。

四方八方、上下全角度。 ある者は太陽を背に。 ある者は迎撃困難な斜め方向、直上や直下に近い角度で突入。 ゾンビのような単純行動ではない。 包囲殲滅、迎撃され難いようにしてくる。 実に厄介な荒らしブーンどもだ。

だが操縦席のクラフターは慌てず、全てのレバーを倒して武装を起動。 前方と後方にTNTキャノンとファイヤーチャージ。 上は弓矢散弾砲と対空TNTキャノン。 下は自由落下TNTで弾幕を形成。

死角は大勢搭乗していたクラフターが弓矢で応戦。 その光景は空飛ぶ要塞。

ドッカンドッカンと激しい爆音が都市部上空にて鳴り響く。 祭りだ。 祭りだひゃっほい。

都市部も巻き添えにしてしまったが、まあ必要な犠牲だ。 そも、クラフターには関係ない集落である。 有名度が下がっても痛くも痒くもないので気にしない。

 

「うおお!? なんかスゴいぞ! 敵の飛行隊を返り討ちにしている!」

「イケスカも破壊してるけど!?」

「避難はしているけどさ……やり過ぎ」

「でもどうせ、直ぐにユーハングに直される」

「全部、アイツらだけで良いんじゃないかな?」

「いや見ろ! 流石に対処しきれない!」

「ああ!? ロケット弾を喰らったあ!?」

 

まさかの新手の攻撃を喰らってしまった。 爆発する飛翔体だ。 ファイヤーチャージのようで、そうではないものだ。 ガストの攻撃に似て非なるものだ。

運が悪い事にキャノンのTNTに引火、そのまま爆発して翼がもげた。 ブーンの底にも穴が空き、一部同志が地表へ落下してしまう。

しかも本体の大半の材料は引火性のある羊毛だ。 燃えてしまい、いつかのバカ鳥のように焼き鳥となってしまう。

 

「ああ!? 翼がもげたー!」

「ユーハング人も何人か落ちていくぞ!」

「燃えていく……!」

「でも機体は堕ちない……何故!?」

 

迫る地表にも慌てず、エンダーパールをブーンへ投げつける。 ノックバック効果のある弓矢を放ち、自らを射るようにもする。

して、高速で移動。 ブーンの狭き起立可能部分に着地しては間髪入れずに常時携行している土ブロックで修復開始。 直ぐに穴を塞いで、火を殴って消化していく。

 

「何か瞬間移動したー!?」

「空中にいながら機体を修復していくだと!?」

「というか、補修に使ってるのって……土じゃね!? なんでアレでイケるんだあああッ!?」

「殴ると鎮火出来るのも謎だろッ!?」

 

複雑なキャノン及び回路は放棄。 ディスペンサーだけの回路を直す。

やはり戦闘中のクラフトは至難の業だ。 簡単な防壁を作ってブーンの攻撃を凌ぎながら作業する。 回路が翼面に露出配線しているのも悪い。 これでは簡単に被弾、破壊されてしまう。 翼内部に隠蔽配線するか、防壁で守るべきだ。 それから焼き鳥はダメだ。 材質は固焼き粘土に変えるべきだ。

コストやロマンではない。 ドンパチして実験して初めて発覚する問題もある。 やはり やって良かったと思う。

まあ、完膚無きまでに破壊されても また造れば良いワケだが。 造り直す時は更に強いヤツが良い。 それもまた、楽しいから。

 

「羽入丸が わっか に突入する!」

「ドードー船長は!? 副センのサネアツは!?」

「赤とんぼで脱出したよ!」

「確認した!」

「総員、わっか から離れろっ!」

 

驚くべき事が起きた。 わっか に いつか見た、白い大型建造物が突入……次には大爆発した。 雷に打たれたクリーパー何体分かも分からぬ大爆発である。 して、その影響か わっか が閉じていくではないか。

その様から、ネザーの日を思い出す。 初めてで勝手が分からなかった頃の苦い思い出である。

黒曜石で火打石で造られたゲートを潜ってネザーの地に降り立った直後、空飛ぶ浮遊クラゲなガストに火の玉をお見舞いされた時。

攻撃そのものにも衝撃を受けたが、まさかゲートが破壊されようとは。 黒曜石製だと油断していた。 ロストを防ぐ為に火打石を置いていたのもある。 黒曜石自体は壊れないのだが、稼働状態を表す毒々しい紫の膜が消えてしまった。 帰れなくなった。

仕方ないからベッドに寝ようとして……今度はベッドが爆発した。 時計が狂っているからどうなるかと思っての結果でもある。 好奇心と新世界を前に安直な行動に出てしまったのだ。

結局、リスポーンして元の世界に帰還した。 ロストした品も決して安くはない。 今となっては勉強になった良い思い出だが、当時は落ち込んだものだ。

だが無知故に やってみる。 そして学ぶ。 過ぎた過去に対して後悔や別の方法が無かったのか考える事はナンセンスかも知れない。 そも、最初から知れていたらツマラナイ。 やらなきゃ始まらない。

きっと村人も、あれだけ大きいゲートだから通れるだろうと思って 試したのだろう。 そうしたらベッドみたいに爆発したと見る。

 

いいんだ……いいんだよ、それで。

失敗は成功の元。

 

やらなきゃ分からない。 始まらない。 終わりもまた、ない。 発展もない。

 

棒が背後に付いた、奇妙なブーンが閉じていく穴へと吸い込まれるように入っていくのが見える。 諦め切れないのか。

 

「あっ……震電……イサオが」

「……ヤツの選んだ道だ」

 

クラフターは頷いた。 それもまた、ひとつの考えだ。 否定はしない。

して、これもまた過ぎた事だ。 荒らしに同情はしないが、過去に囚われるつもりもない。

 

やがて消える わっか と 消えた ひとつの変なブーン。 あの向こうは、元の世界なのか別世界なのか興味はあった。

そこも楽しそうだ。 また、見かける事があれば飛び込んでみようとも思う。 なんにせよ、今は消えてしまったのだから別の事をしよう。

 

ブーンは わっかが消えたからか散り散りになっていく。 クラフターも倣うように、エンダーパールで一部は地表にワープした。

壊した都市の再建築。 それを楽しむ為に。

 


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